Minor Swing @Room

ジョニー・デップ他日常あれこれ

『ゴッドファーザー伝説』(ビル・ボナーノ)

2008年06月19日 16時49分56秒 | 


極道にはまるで関心がない私ですが、なぜかマフィアには興味深々。
映画や小説では悪の代名詞として暗躍する彼ら。
思えば映画『ゴッドファーザー』を観たのが最初だったでしょうか。
フランシス・フォード・コッポラ監督の名作として名高く、ニーノ・ロータの哀愁に満ちたメロディがあまりにも有名。

こちらムード音楽にどうぞ(映像付き)
    ↓
Speak Softly Love[Theme From"The Godfather"] (((Original)))


メロディだけでいいという方はこちら。
    ↓
The Godfather Love Theme


どちらもいらないという方はこのままスルーで(笑)

かつてニューヨーク五大ファミリーのひとつで、映画のモデルとされるマフィアのボス、ジョセフ・ボナーノ。
この本の著者はその実の息子で、映画の中ではアル・パチーノが演じた三男マイケルに相当する人物です。

マフィアとして生まれたビル・ボナーノは父からマフィアの何たるかを学び、
伝統と名誉と忠誠と友好を信条として生き、マフィアの繁栄と没落をその内部からの目で赤裸々に綴っています。

まずは『マフィア』の語源について。
マフィア発祥の地と言われるシチリア島。
1282年、フランスがシチリアを占領した。ある日一人の兵士が母と娘に目をつけ、娘を我が物にしようとした。
兵士は母親を突き飛ばすと娘を捕え、暗がりに引きずり込んだ。母親は通りを走りながら叫んで助けを求めた。
『MA FIA! MA FIA!(私の娘が!私の娘が!)』
それをきっかけに暴動が起こり、征服者に対する反乱がそれに続いた。
反乱のスローガンは《Morte Alla Francia,Itala Anela(フランスに死を!とイタリアは叫ぶ)》。
頭文字を繋げると《MAFIA(マフィア)》…だそうです。

何世紀にも渡って占領下にあったシチリアの歴史が、自衛を目的とした組織(マフィア)を生んだと言います。
組織の絆は確固たる忠誠心に支えられ、名誉の名の元に行われるのが復讐だということです。
そう言えば映画でも『恩には恩を、裏切りには復讐を』という言葉があったのを覚えています。

ジョセフ・ボナーノはジョン・F・ケネディの父ジョセフ・ケネディとも親しく、
息子を大統領の座に就かせたい父ケネディは彼らに票の取りまとめを依頼。
結果めでたく第35代アメリカ合衆国大統領の誕生となりました。
やはり政治とマフィアの癒着も伝統ということでしょうか。
マフィアの支援なくして大統領なし。
その影響力はホワイトハウスにまで及んでいました。

そして大変興味深い記述はJFK暗殺について。
もはやオズワルド単独犯行説は胡散臭いでっちあげと推測されて久しいものです。
そこで、オズワルドを射殺したジャック・ルビーを著者が知っていたとあっては話の信憑性も高まるというもの。
数ある諸説の中でマフィアである著者の言い分が一番信用できそうな気がするのはなぜでしょう?(笑)

周知の通り、JFK暗殺についてはマフィアのみならず政府の関与も明白だと言います。
あらゆる証拠がありながらその捜査を封印したのが当時のFBI長官J・エドガー・フーヴァー。
また話はフーヴァーのプライベートでの女装写真の件に及び威厳丸潰れの話しが大変面白い。
どっちがマフィアなのか分からない状態ですが、そもそも世界は違えど同じ穴のムジナ同士。
ゆすりあり、根回しあり、弱みの握り合い、もしくは恩の着せ合いあり。
マフィアと政治家、両者の戦略や思考は限りなく似ているのでした。

そしてJFK暗殺に至る経緯を実行犯を含め名指しで暴露する著者。
裏社会に根を張る人物だけが知り得るあれこれを、包み隠さずここまで語っていいのだろうか…などと私が心配するまでもなく、
ビル・ボナーノはシチリアの誇りを持って、マフィア界並びに歴史の真実をも語り尽くすのです。

ここでちょっとマフィア用語及び思考の解説を。
【用語例】
排除…殺害
責任…殺害してきちんと処理を完了すること。
無様…殺し損ねること。
正義…ドラッグの偽造はしない(売るなら本物。ただし基本は禁止)
地元の問題…他からよけいな口出しをするなという意味
コミッション会議…ニューヨーク5大ファミリーにおける最高裁。

【思考例】
伝統…支配者や敵になる可能性のある者は友人とみなし常に協力すること。
警察、政治家…殺すのではなくたらしこむ。

【ある国がマフィアを通じてアメリカ政府に物事を依頼する手順】
根回しその1…マフィアの妻たちへ、ホテルの豪華なカジノで使える無限のチップを与える。
根回しその2…カジノで大勝利する妻たち。
妻たちの感想…大喜びしつつも『見え見えね』と冷静。場慣れしているもよう。
本題要求…『あなたたちの友人(アメリカ政府)に、○○と伝えてもらっても構わない』
NOの場合…『あなたは私達の影響力をかいかぶっておられるようだ』
国を挙げての豪華なもてなしの甲斐も空しく、マフィアに要求を拒否された例をお送りしました。

さて、《マフィア》《アル・パチーノ》と言えばもう一つの名作『フェイク』。



ジョニーが演じたドニー・ブラスコの精悍さと哀愁加減が絶妙で、
マフィアの下っぱレフティとの切ない友情が見事な余韻を残す名作でした。
実際のFBIによる潜入捜査で大量検挙の標的となったのがこのボナーノ・ファミリーだそうです。(Wiki参照)

せっかくなので、マフィア漬けの勢いで『フェイク』を再鑑賞したいと思います。
レフティとドニー。アル・パチーノとジョニー・デップ。
奇跡のコラボレーションに酔いながら、お互いを思いやる眼差しに心を濡らしてみたい…。
豪華なヨットの上、思いがけない昇進を果たしたドニーの前で海を見つめるレフティ。
そんなレフティに心を痛めるドニー・ブラスコのやるせない瞳。
“許し”という友情の到達点から下界を見渡せば、レフティがドニーと共に辿った荊の道が見えるだろう。
ああ、私はジョニー作品で『フェイク』が一番好きかもしれない…(問:あれ?アリゾナは?答:臨機応変に)

ということでついつい『フェイク』に心を持って行かれましたが、
この本を読めばマフィアのノウハウを知ること間違いなし。
また、アメリカ政府のもはや合法的マフィアと呼んでも差し支えないほどの腹黒い面も見えて一石二鳥。

このような、一般人にとっては何の役にも立たないことを楽しむのもまた読書の醍醐味と自分に言い訳しつつ、
悪の世界の魅力とは一体何なのだろう…と意味もなく想いを巡らせてみたり。

彼らの言う『友好的な関係』を作るテクニックは非常に奥深いものがありました。
平和を維持することが双方の利益となり、未来への発展が見込める唯一の方法だということです。
これはあらゆる面において有効な手段ではないでしょうか?
マフィアに学ぶ友好戦術と受け止めるのも可。

マフィアというものは感情に任せた暴力や脅しをするのではなく、
本音を隠し、優雅に冷静に且つ友好的に振舞うのが正しいやり方であると著者は断言します。
それを踏まえた上で、自らの名誉に対する侮辱を我慢することは有り得ないとも。
なぜならシチリアの血はいかなる時も伝統を重んじるものだと訴えるのです。

ここまで書いておきながら言うのもアレですが、“ものは言いよう”という感じがなきにしもあらず。
伝統を知る内側と外側には越えられない壁があり、
その壁に穴を開けて覗いてみたら面白いことが書いてあった、という結論で感想を終わります。

長くなりましたが、最後まで飽きずに読んで下さった方にお礼申し上げます。
どうもありがとうございました。


最新の画像もっと見る

12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
私も・・・ (ももなとん)
2008-06-19 17:14:53
私の場合は、映画の世界でなら、極道ものも好きです
「仁義なき戦い」は大好きだったりします

で、勿論、「ゴッドファーザー」シリーズは、今でも好きな映画として挙手します。

これで、デ・ニーロが好きになりました

今思うと、このシリーズは、ジョニーも好きなはず・・・
だって、マーロンさんの代表作ですもんね

そこにいた大先輩のアルパチーノと「フェイク」で競演できるって、絶対ジョニーは嬉しくて仕方なかったと思います。

そういえば・・・ウィノナが降板したのは、ジョニーとガタガタだからでしたっけ?パート3・・・
(ここは思いださなくて良いですね

「フェイク」の原作も読んだ私。
Reiさんの記事も読みましたよ。

私も「フェイク」は、大好きな作品です。
甘いジョニーではない、精悍なジョニーに骨も蕩けます

階段下で何年でも待つ

Reiさんの紹介で、ますます、興味深く、
また、フェイク見たくなりました
返信する
う~む、興味深い・・ (じぇいそん)
2008-06-19 17:55:16
Reiさん、またまたお邪魔します

この名曲を聴きながらすっかり「ゴッドファーザー」観た気になっておりましたが・・
私ったら一度も観てな~~~い
マフィアに任侠・・そんな怖い世界って思っていたけれど・・
今回のReiさんの記事を読んで、見てみよっかなと思いました
それほど説得力のあるご説明・・

だから・・恥ずかしいんだけど・・「フェイク」も未見で御座います
今日早速見ることと致しますです・・はい
返信する
ももなとんさん (Rei)
2008-06-19 23:25:52
ももさん、こんばんは~

>「仁義なき戦い」は大好きだったりします
わ~、ももさんそっちもイケるのね!(笑)
『極道の妻たち』は観たことがあったけど、他は無いかも。

『ゴッドファーザー』は観たのがすごく昔で記憶もオボロ。。
なのできっと今見直しても楽しめると思うの。
レンタルしようかなぁ

アル・パチーノとの共演はジョニーも嬉しかっただろうね。
撮影もすごく楽しかったみたいだし(ブーブークッションでいたずらしたんだっけ?)

>・ウィノナが降板したのは、ジョニーとガタガタだからでしたっけ?パート3・・・
ジョニーが原因かどうか分からないけど、体調が悪かったせいと言われていたような。。
真相はどうだったんだろうね?

>「フェイク」の原作も読んだ私。
わ~♪そうなの??
原作も面白かったよねああいうのすごく好き

>階段下で何年でも待つ
プププ。。『階段の下にも3年』
『階段3年、馬車8年』・・・ダメ?
返信する
じぇいそんさん (Rei)
2008-06-19 23:44:00
こちらにもありがとうございます

私も任侠はパスなんですけども、マフィア関連はストライクゾーンです

ああ…じぇいそんさん、『フェイク』未見でしたか
ネタばれチックな文章でごめんなさいね
名作ですのでどうぞ泣き濡れて下さい(笑)
いえ、私は泣きませんけど、心の深~いところで涙ぐむ感じですね

フェイク、大好きです
返信する
面白い♪ (Yaaah)
2008-06-20 12:11:53
『ゴッドファーザー』いいですね~

また見たい映画のひとつです。
馬の首のとことか
お兄さんを殺しちゃうところとか
いろいろ忘れられない場面があります。

マーロンも勿論なんですが、私的には
アル・パチーノです!
外見は好みではないのですが、この人は
映画史に残る名優だと思います。
どの作品を見てもさすがと思わされますが、
『セントオブウーマン』はホントすごかった・・

『フェイク』も私はあくまでジョニーファンなんですが、パチーノの方が上かな~と
レフティーにぐっときて泣きそうになりましたもの・・
パチーノの出てる映画は全部見たいと思ってるんですが、数が多くて

『ゴッドファーザー』の3はオペラ”カヴァレリア・ ルスティカーナ”が下敷きになっていて、
このオペラの曲が大好きな私としてはうれしい作りに
なっています。ただ、ウイノナの替わりのソフィアコッポラは???
監督としては才能がおありなんでしょうけど・・

それにしてもReiさんの読書量すごいですね
スピードが速いし、分野も多岐に渡ってるし
集中力があるのかな?

面白い内容のご紹介ありがとうございました
マフィアの語源などよくわかりました。
”On the Road”の書評が登場するまでに
私もがんばらなくては

で、『階段3年、馬車8年』って
爆笑しました
そういえば、新作川柳がそろそろ出てきても
いい頃かも?
いや今回は新ことわざ集でもいかがでしょうか?
返信する
こういう映画 (るみりん)
2008-06-20 16:00:28
ナゼか好きです^^
アル・パチーノもデ・ニーロも好きだからかも♪
ゴッド・ファーザー、フェイク、ヒート…
どれも男臭くてねぇ…なんで好きなんだか…笑
私もジョニー作品では「ヒート」です^^(と、「ギルバート」♪)
でも正直、ゴッド・ファーザーはどれがどれだったか、
ちょっとこんがらがってます・笑
3までですもんね、観直そ~っと♪(この間のSWに比べたら短いわ)

トコロで、首を突っ込みマス~
ウィノナは体調不良だったと思いマス~。
イタリア入りしてからの不調だったような…

Reiさんの感想、深いわぁ~☆マフィアの伝統…
政治との癒着…ニッポンジンニハムズカシイヨ!



返信する
Yaaahさん (Rei)
2008-06-20 23:19:31
Yaaahさん、こんばんは~

私ももう一度観直したいと思っているんです。
ほとんど忘れてますから(笑)

>『セントオブウーマン』はホントすごかった・・
これは観てないので要チェックアル・パチーノ、良いですよね

>レフティーにぐっときて泣きそうになりましたもの
そうそう、レフティが泣かせるんですよね
あの哀れな感じが何とも言えません。マイケルとは真逆ですもんね~!

『ゴッドファーザー3』もねぇ、ほぼ忘れてます
ラスト、娘を殺されて絶叫してるアル・パチーノの顔だけは克明に覚えてますけど。。

本の好みはかなり偏りがあるんです
あらゆる分野をまんべんなく読めたらいいんですけどね。。
『On The Road』は…もう少々お待ち下さいませ(爆)

>いや今回は新ことわざ集でもいかがでしょうか?
はい、了解です♪受け承りました(笑)
早速取りかからせて頂きますね
ありがとうございます

返信する
るみりんさん (Rei)
2008-06-20 23:29:45
るみりんさん、こんばんは

>アル・パチーノもデ・ニーロも好きだからかも♪
るみりんさんはデ・ニーロも好きなのね。
私はモノマネのデ・ニーロが浮かんで来て…(爆)アレ、けっこう好きなの(笑)
手に持ってる葉巻に羽毛がついてて笑ったなぁ。

>この間のSWに比べたら短いわ
SWって何だろう???

>ウィノナは体調不良だったと思いマス~。
>イタリア入りしてからの不調だったような…
確かそういうふうに伝わっていたね。
そしてジョニーが看病に行ったんでしょう?
ジョニーの看病って、、、、、、(羨ましいため息。。)
私ならとたんに元気になりそう
返信する
私も (マロン)
2008-06-20 23:32:16
好きです^^ こういう男臭いの。
『ゴッド・ファーザー』で洋画に目覚めたかも。
「愛のテーマ」もインパクト大でした。

『フェイク』はるみりんさんがイチオシと教えてくれていたのに、
レンタルになくって、再販でやっと観られたんです♪
ちょっち隙のあるレフティーと、緊張感MAXのドニー、
手に汗握っちゃいました・・・。

トコロで、私もるみりんさんに突っ込みを・・
>私もジョニー作品では「ヒート」です^^
「フェイク」やね! るみりんさんイチオシの! 

マフィアといえば・・・「アンタッチャブル」の
アル・カポネのデニーロもインパクト大でした。
マフィアって・・・ポーカーフェイスですよね。
いろいろ難しい掟があるんだな~・・・。
返信する
Unknown (るみりん)
2008-06-21 08:37:45
SW=スターウォーズです^^
先日ぜーんぶ通して観たんですよ、1週間かけて・笑

で、マロンちゃん、ツッコミありがとーーー・爆
全然気付いてなかった~!ぎゃっはー!
そうそう、ワタイの好きなジョニー作品は「フェイク」です!!

モノまねのデニーロさん、スキスキ!あれ、「ヒート」のデニーロじゃない?
違うかな?「ヒート」の記憶が薄れてきてるよ…

何度もお邪魔してすみませんでした~アセアセ
返信する

コメントを投稿