(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子36 ベンチで喋って腹ごなし

2007-01-10 22:07:06 | 欲たすご縁は女の子   三日目
すぐ近くにベンチがあったので二人で腰掛けた。
「い、いやあこんなお腹いっぱいになったの本当に久々ですよ。凄いですねぇデパート」
嬉しさと苦しさが混ざった微妙な表情で真後ろの巨大建造物を褒める。
「しかもまだ一階しか行ってないし……これ、何階まであるんですか?」
「四階までだな」
「うわぁ、恐ろし……いえいえ、えーと……とんでもないですね」
あんまり意味合い変わってないぞ。
「とにかく、これで食料は確保できましたね。
 全部食べる頃にはお金ほとんど入れ替わってるでしょうし」
「毎日ここに来る気か?」
ここまで来るのは結構疲れるのだが。途中で電車に乗るにしろ自転車オンリーにしろ。
「これだけ食べられれば毎日じゃなくても大丈夫ですけど……ダメですか?」
今の今まで食いすぎで苦しそうだったくせに、何故そんな話ができるんだお前は。
「機械の中でも食えるってんならここ以外にだってアテはある。しかも家の近くにだ」
「本当ですか!? どこですかそれは!?」
だからなんでそんなに嬉しそうな顔ができるんだ。ホントに腹いっぱいなのか?
実は全然食い足りないとか言い出すんじゃないだろうな。
「銀行とか郵便局」
「……なんですかそれ?」
そうきたか。
「金を預けたり引き出したりする所だ。だから途方も無い量の金がある」
郵便局はそれが本質ではないが、まあこいつにはこの説明でいいだろう。
「そんないい所があるなら言って下さいよ~」
「機械から食えるって知らなかったんだよ」
気がつかなかった、と言った方が正しいかもしれんが。
「コンビニでレジから食べようとしたじゃないですかぁ」
あまり突っついてくれるな。自分でも何故そこで気がつかなかったか不思議なんだから。
「レジだったら待ってりゃそのうち開くだろ。
 店員に見つからない為に消えたのかと思ったんだよ」
あの時はホントにそう思った。
「まあそれもありますけど」
便利だよな。二つの事が同時にこなせるなんて。
「そう言えばお前、『食べる為に消えることはしない』とか言ってたよな」
「はい」
「コンビニの時のは完全にそれだろ」
「レジは入口のすぐ傍でしたし、消えるのはほんの少しの間でいいと思ったんです」
「思ったけど、結果はあれか」
「消え損でしたね……」
あはは、と苦笑い。そして急に、
「では、お腹もこなれたところで行きましょうか!」
と声の元気のよさに比例するような勢いで立ち上がった。
「消化早すぎだろ」
食い終わってからまだ五分程度しか経ってないぞ。
「そりゃあ消化する必要ないですからね。食べたら即、吸収です!」
立ち上がったセンがまだ座っている俺の方を向いた。
「えーと、どういうことだ?」
急になんの話だよ。
「人間……って言うか、
 ほとんどの動物は食べたものを消化とか分解して、必要なものだけ吸収しますよね?」
「あー、そんな感じだろうな」
「センの体は欲でできてます。で、食べてるものは欲そのものです。
 不必要なものなんかないんですよ。はい」
「ふーん」
面白いんだか面白くないんだか微妙な話だな。
「まあ、全部想像なんですがね」
「なんじゃそりゃ」
「自分を解剖するわけにはいきませんからねぇ」
そりゃそうだな。
「んじゃ、行くとしますか」
ベンチから立ち上がり、再び店内へ。次の目的地はペットショップだ。
「ペットショップは何階なんですか?」
「一階」
「あれ? さっきは気がつきませんでしたけど」
「避けて通ったんだよ。透明なまま走り回られたら困るからな」
「それは……ありますね」
否定しろよ。

ウキウキ顔のセンと共にペットショップ到着、と思ったら何やら前方に見覚えのある顔が。

……誰だっけ?


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