その声は震え、顔は伏せられている。
彼女のそんな様子を見て、明日香の言葉を思い出した。
『だーいじょうぶやて。うちそっくりな奴やし』
ああ確かにそっくりだよ。でもあの場合、そっくりと言うのなら外見じゃなくて性格だろ?
まだ名前聞いただけなのにあんたとは正反対な気がするのだが。
「日永明です」
「岩白センです!」
「ちなみに神社は関係ないそうやで」
「え、え、あ、はい……」
三方から話し掛けられて慌てているのか、視線が俺達の間を言ったり来たりしている。
ただ名乗っただけだなのに、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「もひとつちなみに、こいつ寛の知り合いやで」
俺の方を指差す。
「え、寛くんの? そ、そうなんや……」
よく解らんが、少し安心してもらえたようだ。こっちはくん付けなんだな。
「その寛さんって、あの寛さんですか?」
センに尋ねられる。
「そうだ。あの梅干くれた寛だぞ」
「なんや。センちゃんも知っとんの? 大人気やなぁあいつ。なあ今日香?」
「うん……」
また顔を伏せてしまった。
「ところでお二人! アクションと恋愛もん、どっち見たい!?」
「それは今から見る映画の話か?」
「そや。今日香とうちで意見割れててな。多数決や。
公平を期すためにどっちがどっち見たいんかは秘密やで」
知ったところで判断材料にはならんのだが。しかも秘密にするまでもなくバレバレだし。
「じゃあセンに訊いてみよう。多数決は奇数人でやったほうがいいからな。
と言うわけで、どっちがいい?」
「え、じゃあ恋愛の方で」
即答だった。もうちょっと迷うかと思ったんだが。
「ほな決定やね。四人分纏めてチケット買うてくるわ。センちゃん大人でええねんな?」
こっちもあっさりしたもんだ。見たい方が見れないというのに。
「そうだ。悪いな」
「おごりとちゃうで」
解ってるよ。さすがにそこまで意地汚くないぞ俺は。
明日香がチケットを買いに行った後、今日香さんがおずおずと話し掛けてきた。
「あ、あの……迷惑と違いませんやろか。
明日香に無理矢理連れて来られたんと違います?」
「そんなことはないですよ。こいつなんか嬉しさの余り震えてましたから」
隣の人物の肩に手を置く。
「あんまり言わないで下さいよぉ……」
恥ずかしそうだった。なら自制できるようになるんだな。
「な、ならええんです。ごめんなさい、変なこと訊いて」
謝るほどのことじゃないと思いますけど。
「……あ、も一個変なことお願いしてええですか?」
「なんですか?」
「できたらその、あの、
明日香ん時と同じような感じでお話ししてもらえたら嬉しいんですけど……」
「はあ……」
対応に差があるのが気になるのだろうか?
うーむ……双子の心境なんて俺には解らんしな……
まあ、双子ってことが関係あるのかすらも解らんわけだが。
「解りまし……いやいや、解った」
こんな感じでいいのだろうか。
「ご、ごめんなさい無茶言うて……」
また謝られてしまった。
「買うて来たでー。買うて来たけど時間ないみたいやで。さっさと行こかいな」
……なんでここまで正反対なのかね。この二人は。
「その前に、金」
「おお。そやったな」
二人分の金を渡す。二人だけで来たんなら一人はタダ見も可能なんだがな。
それはこの際諦めるとして、とにかく明日香から全員にチケットが行き渡った。
「いざ三番ホールへ!」
明日香が握り拳を振り上げ、高らかに出発を宣言する。
「あ、俺飲み物買って行くわ」
「時間ない言うてるやん」
「あ、で、でも最初は宣伝とかやろし……うちもジュース買ってくわ」
彼女のそんな様子を見て、明日香の言葉を思い出した。
『だーいじょうぶやて。うちそっくりな奴やし』
ああ確かにそっくりだよ。でもあの場合、そっくりと言うのなら外見じゃなくて性格だろ?
まだ名前聞いただけなのにあんたとは正反対な気がするのだが。
「日永明です」
「岩白センです!」
「ちなみに神社は関係ないそうやで」
「え、え、あ、はい……」
三方から話し掛けられて慌てているのか、視線が俺達の間を言ったり来たりしている。
ただ名乗っただけだなのに、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「もひとつちなみに、こいつ寛の知り合いやで」
俺の方を指差す。
「え、寛くんの? そ、そうなんや……」
よく解らんが、少し安心してもらえたようだ。こっちはくん付けなんだな。
「その寛さんって、あの寛さんですか?」
センに尋ねられる。
「そうだ。あの梅干くれた寛だぞ」
「なんや。センちゃんも知っとんの? 大人気やなぁあいつ。なあ今日香?」
「うん……」
また顔を伏せてしまった。
「ところでお二人! アクションと恋愛もん、どっち見たい!?」
「それは今から見る映画の話か?」
「そや。今日香とうちで意見割れててな。多数決や。
公平を期すためにどっちがどっち見たいんかは秘密やで」
知ったところで判断材料にはならんのだが。しかも秘密にするまでもなくバレバレだし。
「じゃあセンに訊いてみよう。多数決は奇数人でやったほうがいいからな。
と言うわけで、どっちがいい?」
「え、じゃあ恋愛の方で」
即答だった。もうちょっと迷うかと思ったんだが。
「ほな決定やね。四人分纏めてチケット買うてくるわ。センちゃん大人でええねんな?」
こっちもあっさりしたもんだ。見たい方が見れないというのに。
「そうだ。悪いな」
「おごりとちゃうで」
解ってるよ。さすがにそこまで意地汚くないぞ俺は。
明日香がチケットを買いに行った後、今日香さんがおずおずと話し掛けてきた。
「あ、あの……迷惑と違いませんやろか。
明日香に無理矢理連れて来られたんと違います?」
「そんなことはないですよ。こいつなんか嬉しさの余り震えてましたから」
隣の人物の肩に手を置く。
「あんまり言わないで下さいよぉ……」
恥ずかしそうだった。なら自制できるようになるんだな。
「な、ならええんです。ごめんなさい、変なこと訊いて」
謝るほどのことじゃないと思いますけど。
「……あ、も一個変なことお願いしてええですか?」
「なんですか?」
「できたらその、あの、
明日香ん時と同じような感じでお話ししてもらえたら嬉しいんですけど……」
「はあ……」
対応に差があるのが気になるのだろうか?
うーむ……双子の心境なんて俺には解らんしな……
まあ、双子ってことが関係あるのかすらも解らんわけだが。
「解りまし……いやいや、解った」
こんな感じでいいのだろうか。
「ご、ごめんなさい無茶言うて……」
また謝られてしまった。
「買うて来たでー。買うて来たけど時間ないみたいやで。さっさと行こかいな」
……なんでここまで正反対なのかね。この二人は。
「その前に、金」
「おお。そやったな」
二人分の金を渡す。二人だけで来たんなら一人はタダ見も可能なんだがな。
それはこの際諦めるとして、とにかく明日香から全員にチケットが行き渡った。
「いざ三番ホールへ!」
明日香が握り拳を振り上げ、高らかに出発を宣言する。
「あ、俺飲み物買って行くわ」
「時間ない言うてるやん」
「あ、で、でも最初は宣伝とかやろし……うちもジュース買ってくわ」
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