赤ガエルのボンヤリ日記

クルマもカレラ、自転車もカレラ、
すべて前世紀生まれの乗り物を愛する、クルマバカオヤジの中身うすーい日記です。

おっさんの見た「最終兵器彼女」とは?

2005-03-16 23:59:38 | こんな本を読んだ(マンガ編)
>浦沢直樹はともかく、高橋しんは意外ですねぇ。

失笑師匠からのコメントはまさにそのとおり、本来なら絶対ぶつかりそうにない対象です。おそらく1巻の頭から始めてたら数ページで終わってたでしょう。正直言うと画柄とかギャグとかは今でも僕にはちょいつらいです。(後で同じ作者の「いいひと」というのも読んでみましたが、いまいちノレなかった。)

だいたい初めて手に取ったのも例の「SS」がきっかけ。本屋で「著者名た行」の並びで上の棚にあったのを取っただけだから予備知識もなし。
なんか戦闘ゲームかラブコメみたいな題名だなあ。そういやBS「マンガ夜話」でやってたっけ。でも見たっけなあ?と開いたのがたまたま5巻。そしたらコメディじゃなかった。そのうえ昔の僕の地元を舞台にして戦争やってる。当時の彼女と冷やし中華食った店の前でヒロインがフランス兵としゃべってるし、ams西武では羽根生えちゃってるし、あげく街ごと消されちゃうしで、なんだこりゃ~?です。

(持ってる人しか通じないネタですが、4巻から5巻で出てくる町並みはすごく懐かしいんです。ハリストス正教会、パン屋のピーターパン、パチンコニュー光、楽々も棒棒も、(2階が麻雀屋の)不動産屋の看板まで全部知ってます。僕のいたころは駅前の高層ホテルやマツキヨやHMVはなかったけど))

そういうきっかけではじめから最後まで読み通してみたら、かなり突拍子もない設定となじめない画風だけど案外すんなり読めました。現実と非現実の描き方のバランスが切迫した状況を突きつけて見せていて面白いと感じたし、普段とは違う「極限状態での自分」とか男女の「純愛物語」をさらけ出させるために、平穏な日常と非日常な戦争とが同時並列に描かれるってのも、いいんじゃないかと思います。細部の説明をわざと省いてるから、背景の状況が見えないと言って不満な向きもあるようだけど、主人公2人の関係を描くのが主眼だろうから、その辺の細かいことはいいっこなしでも別にこだわらない。細い線のやわらかい画が内容の重さとバランス取れているような気もした。映像だと無茶すぎてついていけない状況でも、マンガなら子供の頃からなじんでいるからかえって受け止めやすいと言うのもあるのでしょう。

正直けっこう「泣け」ました。

ここからは個人的なつぶやきですが、僕らはただボンヤリと生きているだけで満足できるほど無欲な存在ではないので、何らかの充足感を求めて生きる。リアルな生活で充足感を味わえる人もいるでしょうが、社会が複雑になってバーチャルな情報ばっかりふくらんでいる状況下では、なかなかリアルに自分の居場所や存在を捉えるのは難しい。だから想像・夢想・妄想から満足感を得る方法が成り立ちやすい。小説・映画・マンガ・ゲームなどのフィクションには実現不可能な自分を作中に転化できるメリットがあるのだと思うんです。

物語の中で活躍するんなら今の自分にないものを探したい。今の自分が達成できないものとして、すごく強いとかカッコいいとかキーワードはいろいろ。クルマの運転がうまいなんてのもOKです。形や舞台はどうでも、荒唐無稽で実際にはありそうもない状況には常にそれなりの「需要」があるのだと思います。
そんな物語のネタとして、恋愛というのは不滅の人気アイテムでしょう。なんせこれほど自分を純化させやすい舞台ってないから。はた目に見たらクサい言葉とかも恋愛関係だと平気で出せちゃう。(実際には言えなくてもお話の中ならOK)
だからいつの時代も純愛物語はなくならないのだと思います。

さらに、純愛物語を作るにはとにかく大きな障害があるほど盛り上げやすい。「純愛→周囲の障害を克服→2人だけの世界」という筋書き作りや、読み手の感情移入という点でも、ドラマチックな設定は必需品だと思う。例えばヒロインを難病にしちゃうっていうセカチューや韓ドラみたいなのは、ある意味古典的だけど直球勝負でわかりやすいです。この作品だと、障害の設定はいきなり戦争だし羽根は生えちゃうしで、かなり無理やりな設定だけど、恋愛と非常事態の組合せって一つの王道と言う気もします。(兵器になっちゃうっていうのも「難病」の1種かも?)

その上、連載は中東がいろいろキナ臭くなっている時期で、フィナーレの真っ最中に9.11が起きたというからタイムリーと言えばこれほどぴったりな時期もない。作者が何気ない日常と同時に進む危機的な空気を無意識にでも感じ取っていたのだとしたら、嗅覚の鋭さは大したものだと思います。(偶然かも知れないけど)

~ちなみに読みかけの「となり町戦争」でも、日常生活の中に正体不明の戦争が突然入ってくるお話だし、主人公2人が平穏な日常と非日常な戦争との間を行き来しながらアパートでひっそりと同居していたりする。戦争も恋愛も状況が見えないままだし、男に比べて女は妙に根性座っていたりするあたりの描写も、なにやら共通点があっておもしろい~

~うちで取ってる中日新聞の文芸欄コラムで、「ほしのこえ」というアニメを紹介していたときに「最終兵器彼女」が引き合いに出されていて、日常と戦争の並立と言う舞台設定や、男より女の方が芯の強さを見せるという共通点が指摘されていた。男が描く純愛物語だから、男はおたおたして女は強くというパターンが生まれるのだろうか?
(ちなみにYahooの動画配信で「ほしのこえ」も見てみましたが、どうもロボット戦闘宇宙物はノリがわるいようで、僕としてはそれほど感銘はしなかったです。)~

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