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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

『安倍改憲が私たちの基本的人権に与える影響』~人の支配から法の支配へ 青山学院大学特別講義から1

2019年07月07日 | 感動と人生

 

 ブロガーだって時にはパソコンの前から飛び出して、リアルに運動する。

 2019年7月5日金曜日、青山学院大学の人権教育委員会のお招きで、特別講義をさせていただいてきました。

 時まさに、参院選公示直後という絶好のタイミング!

 全員、選挙権がありそうな皆さんに熱く語ってきたわけです。

 

 

 

 講義の表題は

『安倍改憲が私たちの基本的人権に与える影響』~人の支配から法の支配へ

としました。

 人の支配とは、王侯貴族が好き勝手に政治をする社会体制、法の支配とは憲法という基本的人権を保障する法が政治の隅々まで行き届いている政治体制の事です。

 森友加計問題に象徴されるように、安倍晋三記念小学校という学校を作ろうとすると、国土交通省からも財務省からも破格の優遇を受けられるのに、安倍首相に反旗を翻したら逮捕拘留されて長期身柄拘束の憂き目を受ける。

「安倍記念小学院」の画像検索結果

 

 

 安倍首相の腹心の友なら、半世紀以上増設されてこなかった獣医学部の新設が認められる。

 そして、官僚が寄ってたかって、安倍首相に忖度して、安倍昭恵夫人の痕跡を消そうとする。

 こういうのが「人の支配」です。

 日本はまた中世に逆戻りしているということですね。

 

 

 法の支配とは、

1 憲法で基本的人権が保障され

2 そのような憲法が最高法規とされ、法律や行政が憲法違反だと無効とされ

3 そのような判断を立法・行政から独立した裁判所が行い

4 国民の人権を制約する場合に必要な適正手続きが規定されている

 そんな社会です。

 安倍政権は南シナ海の問題などで、さかんに法の支配が大事だと中国をけん制するのですが、肝心の自国内の政治が中国同様の人の支配なのでは、まったく説得力がないという話をしました。

 

 

 そして、なにより、安倍首相が憲法改正に執念を燃やすのは、真珠湾攻撃を行って太平洋戦争を始めた東条英機内閣の商工大臣で、東京裁判のA級戦犯容疑者であった祖父岸信介元首相の悲願だったからだということ。

 安倍首相はたとえばアメリカの上下院で演説した時も、何度も岸信介氏の話題に触れ、大切に思っている心情を吐露しました。

 しかし、そんなことは国民にとっては知ったこっちゃないわけで、おじいちゃんがやりたかったことだから孫の僕がやりますというのがもう人の支配そのものです。

 

 

 さて、安倍改憲は

1 憲法9条に自衛隊を明記する

2 緊急事態条項を加える

3 参議院の合区について規定する

4 教育の無償化について規定する

というのですが、3は一票の価値の平等に反しますから、法の下の平等と矛盾しますし、4は憲法に規定しなくても法律の整備で十分実現可能です。それをしなかった安倍政権が憲法を変える必要があるというのは、ためにする議論以外の何物でもありません。

 そして、自衛隊という言葉が憲法に書かれるとどう怖いかという話を、国旗国歌法を例にあげて説明しました。

 

元祖元号おじさんだった小渕官房長官が、首相になり、国旗国歌法を制定しました。

 

 

 国旗国歌法は

第1条 国旗は、日章旗とする。第2条 国歌は、君が代とする。

というだけの何の変哲もない法律でした。

 事実、1999年の国旗国歌法制定当時、「日の丸掲揚などが強制になるのではないか」という趣旨の質問に対する有名な小渕首相の国会答弁は以下のようなものでした。

「政府の見解は、政府としては、今回の法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務づけを行うことは考えておらず、したがって、国民の生活に何らの影響や変化が生ずることとはならないと考えている旨を明らかにしたものであります。なお、学校における国旗と国歌の指導は、児童生徒が国旗と国歌の意義を理解し、それを尊重する態度を育てるとともに、すべての国の国旗と国歌に対して、ひとしく敬意を表する態度を育てるために行っているものであり、今回の法制化に伴い、その方針に変更が生ずるものではないと考えております。」

「法制化に伴う義務づけや国民生活等における変化に関するお尋ねでありましたが、既に御答弁申し上げましたとおり、政府といたしましては、法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務づけを行うことは考えておらず、したがって、現行の運用に変更が生ずることにはならないと考えております。」

 要するに、法律は制定するけれども、国民に何ら義務を課すものではないから、今までと何も変わらないと繰り返し繰り返し説明したのです。

 

 

 しかし実際には、例えば学習指導要領に国歌斉唱、国旗掲揚時の起立が義務として定められ、これに反して君が代を歌わない、日の丸掲揚時に起立しない教職員は、厳しく処罰され、再雇用が認められないなど教員としての身分さえ奪われ、東京をはじめとして全国各地で裁判になっているのです。

 日の丸が戦争のときのまさに旗頭であって平和憲法にふさわしくないこと。

 君が代が天皇の治世が永遠に続くことを祈る歌であって、国民主権の現行憲法にそぐわないこと。

 などなどの理由で、日の丸君が代を心底拒否する思想を持つ人は多数派ではないかもしれないけれども、根強くいます。

 日の丸が国旗で、君が代が国歌。ただそう決めただけの法律を作らせてしまったら、案の定、反対する人たちの思想良心の自由、表現の自由を侵害する行政が行われてしまっているという厳然たる歴史があるわけです。

 

日の丸・君が代」を強制してはならない―都教委通達違憲判決の意義 (岩波ブックレット)

澤藤 統一郎
 2006年9月21日、東京地裁は、東京都教育委員会が教職員に対して「国旗に向かって起立し国歌を斉唱せよ」と命令できるか否かについて、明確な違憲判決を下した。本書では、この判決の内容の歴史的な意義について、そしてそこまでに至る、立ち上がった教職員や支援者たちの苦闘の軌跡が描かれていく。

 

青山学院大学経済学部の白井邦彦先生が、このブログの愛読者でいらしたというご縁でお声がかかりました。

去年の日本外国特派員協会で記者会見させていただいた申先生と言い、こんな偉い先生方にも読んでいただいているとなると、身が引き締まる思いです。

あらためてありがとうございました!

 

 

参院選まであと2週間。

人の支配を許すのか、法の支配を取り戻すのかの瀬戸際です!

今回は二部構成ということにしまして、青山学院大学での特別講義について、次回後半をお伝えしたいと思います!

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6 コメント

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似てるなー (ゴメンテイタ―)
2019-07-21 11:38:29
反社会勢力との関係があったことで、クビ、謹慎となった芸能人二人が記者会見をしましたね。
生放送で明らかになっていたことで、後の番組では報道されていない部分が、事の本質を表していると思いました。

一つ目は、「在京テレビも、在阪テレビも株主だから大丈夫」と会社から言われたこと。
つまり、芸能会社にとって都合の悪いことは抑えられるということでしょう。まるで安倍さんみたい。

二つ目は、「直営業の仕事のスポンサーが、会社を通した仕事のときのスポンサーだったから大丈夫と思った。」というところ。
つまり、会社も反社会的勢力とつながっていたということ。

そりゃ、記者会見させないはずだわ。

ところで、会社が設定した場合の記者会見のQ&Aの話、安倍首相の記者会見のあり方と似てますなー。

会社の社長が、22日に記者会見をするあたり、選挙結果の報道つぶしを狙ったのでしょうね。どこまでもアベ友。
返信する
Unknown (茶碗)
2019-07-09 00:24:07
維新は9条を壊すのを前提で、自衛隊の海外派兵前提で、英霊追悼施設をつくるなんて言ってますから、正気とは思えません。
返信する
小渕氏の残した三大汚物 (時々拝見)
2019-07-08 17:13:05
 汚物じゃなかった小渕優子、つまり、二代目小渕氏、自民も人材枯渇かと。
 次の総理大臣、つまり小渕氏の次の代、その次の自民党の総理も何ですな。
 それと、国旗国歌法。
 二世でも三世でもなく、自民に血縁者もいないのに、自民に入ろうって、何考えてるんだか?あ、あと、タレントとか運動選手でもないのに。
返信する
あべ氏と令和と中世と (nanijiro-i)
2019-07-07 21:44:38
たまたまながめていた史料に、毛利輝元の書状がある。
それに、こんな一節があった。
「小笠原亊、長旌為夫婦五百石之地相渡し候、残地を以て公役仕、一家中各令和合」
これは、萩藩閥閲録という史料にあるらしい。
萩藩だから、あべ首相の故郷の山口県だ。
「一家中をして和合せしむ」ということだろう。
ここに「令和」という文字のならびがあることが、ちょっと興味深かった。
戦国武将が、自分の領国支配に貢献した配下の武将に論功行賞をするような場面に「令和」という文字の並びが使われていた例である。
あべ政権でも、内閣人事局による人事の私物化が猖獗し、大臣の組閣でも、同じような私物化・論功行賞がおこなわれてきた。
そうしたことが大きく加速した地点はどこかというと、2015年のあの戦争法の成立のあたりが大きな転換点に思える。9月19日の翌日にあべ氏は自民党総裁に無投票再選される。前年末に衆議院で勝っているから、これからしばらくは思うままだ。そういう転換点にもなったのが、あの戦争法の成立だった感じがする。すでに野田聖子の総裁選立候補は、阻める見通しもついた。そして、森友学園の名誉校長に昭恵夫人がなることになる講演は、9月5日で、首相も大阪に来ていた。その後の谷査恵子氏をつうじた働きかけをへての同年12月までの動きで、森友問題の骨格が決まったのではないかと僕は思っている。それだけではないことが、あのころに端を発して進んだようでもある。
上記の記事が、とても笑いを誘うほど簡潔なのが、いい。ということは、現状がなんともいえないほど変なのだ。
中世の人の支配なんじゃないか、と書いておられるので、このことを思いだした。
あべ政権は、選挙で期待した成果をあげるたびに、どんどん壊れてきた。
終わりにしよう、このへんで。
返信する
権利を捨てずに投票に行こう (ゴメンテイタ―)
2019-07-07 18:32:58
参議院議員選挙が始まっています。
投票日は21日。期日前投票もできます。

このところの国政選挙、衆議院議員選挙、参議院議員選挙の投票率は60%を軽く割って50%代の前半です。
二人に一人しか投票に行っていません。
政権与党の得票率は前回参議院選挙では50.13%です。わずかの票差で当選していることもよくありますね。
与党は利権がらみの組織選挙です。しがらみのない、投票を強制されてこなかった人たち、つまり投票に行かなかった人たちが、投票した人たちと同じ割合で各党に投票することはないでしょう。
だから、「投票率が増えれば結果が変わる」と言われるのです。
かつて、選挙時の世論調査で4割の人が態度未定と聞いて「寝ていてくれればいい」と言った首相がいました。
起きて投票に行けば、変えられるということです。

政治の私物化、税金ネコババ、イカサマ政権を変えたいなら、そして今の生活を変えたいなら、投票に行きましょう。投票は大きな大きな、大切な権利です。
返信する
Unknown (諦めぬ理屈屋)
2019-07-07 17:36:23
なんてタイムリーな出張レクチャー❗
青学の学生、けっこう集まってるじゃん(笑)

前回の元号おじさんに野中弘務とか、今のコンビよりはるかに穏健なのがしれっと通した国旗国歌法…。
これには敬愛する選挙分析のプロ、故石川さんも公聴会で反対の論陣を張られたこと、思い出してしまった…。
もうひとつ、この方面で厳しい突っ込みをしてきた人が今の世田谷区長だ。
彼はいやみを込めて賛成側の学校当局についでに音量計測もして歌っているかどうか試してみてはと質問したらそれは良いアイデアを頂いたと切り返されたという。
この小淵同様に人畜無害感が漂う法があの大阪をはじめどれだけ有毒を撒き散らしてきたかはこのブログ解説の通り💢💢💨
次回の出張レクチャー話、楽しみにしています(笑)。

ちなみに…
※世田谷区長さんが面白いことを提供していた。

論座より
(引用)
「民主党政権の悪夢」の呪縛を解き放て

野党共通政策を具体的に掲げて与党に迫り、取り込ませる。そのリアリティが勝利の鍵だ

保坂展人 東京都世田谷区長 ジャーナリスト

野党共闘側はこういう話にもっと関心を持たないとダメだろう。
なぜ彼がまたまた自民党公明党候補者をダブルスコア近い大差で再選できるのか?
保坂さんのような人が小池百合子に対抗できる、もしかしたら希望になるかもとも感じたところ。
返信する

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