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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

またオリンピックを口実に今度は共謀罪を提出する安倍政権。五輪、テロ対策はオールマイティの大義名分じゃない。

2017年01月07日 | #安倍晋三が諸悪の根源

 

 オリンピック、テロ対策と言えば何でも通ると思っているのでしょうか。

 わたくし、スポーツ観戦が趣味ですのでどうしても五輪には甘くなってしまって舌鋒が鈍るのですが、受注などの様々な不正、巨額の公共事業で財政に負担をかけること、東日本大震災などの被災者を置き去りにして復興にしわ寄せを被らせるなど、オリンピックに良いことなど今のところ何も見出せません。

 さて、オリンピックのテロ対策を口実に、「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を政府が、2016年1月20日召集の通常国会に提出する方針だと報道されています。

 共謀罪とは犯罪を実行しなくても、話し合い(謀議)をしただけで処罰の対象にする条項です。近代刑法では日常頻繁に繰り返される行為と犯罪に特有のはっきりした実行行為を峻別し、実行行為があった場合だけを罰するのが大原則です。

 もし、話し合いだけで罰せられるとなったら日常会話との区別は極めて困難であり、捜査に不可欠な盗聴や監視によってプライバシーや内心の自由が侵され、市民運動の抑圧につながる危険性が大いにあると言えます。

 そもそも、実行行為概念が刑法の基本理念とされているのは、日常の行為は罰せられないことがはっきりとして市民生活が安心して送れるようにです。

 共謀罪が作られてしまうと、人が話し合うという最も基本的な自由が萎縮し、侵害されてしまうのです。

 そこで共謀罪を含む法案は安倍首相の師匠である小泉政権時代など2000年代に3度、国会に提出され、いずれも廃案になりました。

 ところが、2020年の東京五輪が近づき、テロ対策を前面に出して口実にして再び立法化の動きが強まっているのです。

 



 今回の改正案は、罪名を共謀罪ではなく「テロ等組織犯罪準備罪」に変え、適用対象を「組織的犯罪集団」に絞ると報道されています。また、謀議だけでなく一定の「準備行為」があることも構成要件に加える。

 しかし、その本質はを処罰することに変わりありません。法務省は、適用対象は極めて限定されると説明するが、組織的犯罪集団かどうかの認定は捜査機関に委ねられるので、政府に都合の悪い団体が組織的犯罪集団とされる可能性があります。

 また、何が準備行為にあたるかも明確でなく、改正案は、資金や物品の取得を例として挙げているといいますが、拡大解釈、恣意的な判断の余地は依然大きいといえます。

 米軍基地や原発に反対する運動をはじめ、政府の方針に異を唱える市民の活動が標的にされるなど、乱用の懸念は消えないといえます。

 では、テロ対策に共謀罪の新設が必要なのでしょうか。

 



 国連は2000年、「国際組織犯罪防止条約」を採択し、菅官房長官は、この条約を批准していないのはG7で日本のみであり、この条約を締結するには共謀罪の新設が不可欠と言っています。

 しかし、法律の専門家集団である日弁連は共謀罪に反対する意見書を出しており、その中で、現行法でも殺人罪や放火罪など重大犯罪には予備罪や準備罪が定められ、組織犯罪を未然に防ぐ措置がとられていることを理由に、条約の締結に新たな立法の必要はないと指摘しています。

 そもそも、この条約は本来、マフィアや暴力団による経済犯罪への対処を目的にしたもので、政府が今回言っているテロ対策自体が、後付けで持ち出されたにすぎません。

 逆に日本はテロ防止に関わる国連の条約をすべて締結しています。国際的な要請として、さらに共謀罪を導入しなければならない理由はないのです。

 最後に、共謀罪の対象になる犯罪は単純な窃盗や詐欺など含め670を超します。これらの罪はほとんどがテロとは何の関係もなく、テロ対策、五輪対策が共謀罪口実の導入にすぎないことがわかります。

 他方、実行行為のみを罰する刑事法の基本原則が崩れ、行動の自由を守るという刑法のもう一つの機能が完全に損なわれます。

 オリンピックやテロ対策と言えば何でもやっていいというものではありません。美辞麗句に踊らされて市民生活の自由を奪われないように、共謀罪には絶対反対しないといけません。

関連記事

今度はテロ等組織犯罪準備罪の名前で出してくる共謀罪が、テロと無関係の犯罪600以上を対象にしている件。

自民党がパリのテロに便乗して憲法違反の「共謀罪」新設をまた言い出す。これぞ火事場泥棒、便乗商法だ。

 

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『秘密保護法対策マニュアル』『反原発へのいやがらせ全記録ー原子力ムラの品性を嗤う』などの著作でおなじみ人権派弁護士会度雄一さんが編集された、安倍政権ファシズム化への警鐘本。



共謀罪でさえ強行採決で通す悪夢がどうしても頭に浮かんでしまいますが、小泉政権時代だって自民党は多数だったのですから、今度の法案も廃案にする可能性は十分あります。

そのポイントは世論喚起!

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政府は、世界各地でテロ事件が相次ぐ中、各国と協調してテロ対策を強化する必要があるとして、いわゆる共謀罪を新設する法案を今月召集される予定の通常国会に提出する方向で最終調整に入りました。いわゆる共謀罪の新設には根強い反対論があり、政府にとっては、法整備の必要性に幅広い理解を得られるかどうかが課題になります。

世界各地でテロ事件が相次ぐ中、ことしイタリアで開かれるG7サミットではテロ対策が主要議題の1つに取り上げられる見通しで、政府は、3年後の東京オリンピック・パラリンピックもにらみ、各国と協調してテロ対策を強化する必要があるとしています。

政府は、その一環として、テロなどの謀議に加わった場合に処罰の対象となる、いわゆる共謀罪について、適用される組織を限定し、構成要件に資金の確保などの具体的な準備行為を加え、罪名も「テロ等準備罪」に変更した、組織犯罪処罰法の改正案を今月20日に召集される予定の通常国会に提出する方向で最終調整に入りました。

菅官房長官は記者会見で、「世界で187か国が国際組織犯罪防止条約を締結し、邦人が犠牲になったテロも発生しているが、G7ではわが国だけが条約に加盟していない」と述べ、条約の締結に向けて法整備を進める考えを示しました。

ただ、いわゆる共謀罪の新設には根強い反対論があり、過去3回、国会に提出された法案はいずれも廃案になっていて、民進党などからは「処罰の対象となる組織や行為が依然として不明確だ」といった指摘が出ています。

このため、政府にとっては、法整備の必要性に幅広い理解を得られるかどうかが課題になります。


 安倍晋三首相は五日、犯罪計画を話し合うだけで処罰対象とする「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を二十日召集の通常国会に提出する方針を固めた。共謀罪に関しては、国民の思想や内心の自由を侵す恐れがあるとの批判が根強い。捜査機関の職権乱用などによって人権が侵害されるとして、日弁連や共産党は反対している。民進党内でも反対論が強く、提出されれば国会で激しい議論になる。

 首相は五日の自民党役員会で、「共謀罪」法案の早期成立を目指す考えを示した。首相はこの後の政府与党連絡会議でも、通常国会に関して「大きな法案の提出も予定されている」と指摘した。

 与党の公明党内には、組織犯罪処罰法や通信傍受法が既に存在していることを踏まえ、「共謀罪」創設は不要との意見がある。公明党が重視する都議選が今夏に控えていることもあり、調整が必要となる。

 菅義偉(すがよしひで)官房長官は五日の記者会見で、「共謀罪」法案の通常国会への提出に関して、二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックに向けテロ対策の強化が必要だと主張し「テロを含む組織犯罪を防ぐことは、国民も望んでいる。これまでの国会審議の意見を踏まえ、最終検討している」と述べた。

 自民党の二階俊博幹事長は五日の記者会見で「政府の方針に従って党も協力していきたい」と述べた。

 政府は、国連が〇〇年に採択した国際組織犯罪防止条約の批准に向けて、小泉政権下の〇三年に初めて同法案を国会に提出した。しかし、野党や世論の反発で廃案になった。その後、小泉政権は二回提出したが、いずれも廃案となった。第二次安倍政権の発足後も提出が検討されたが、提出に至らなかった。

 <国際組織犯罪防止条約> 複数の国にまたがる組織犯罪を防ぐため、各国が協調して法の網を国際的に広げるための条約。重大犯罪の共謀や、犯罪で得た資金の洗浄(マネーロンダリング)の取り締まりを義務付けている。国連総会で2000年11月に採択。12月にイタリア・パレルモで条約署名会議が開かれ、日本も署名した。政府は「共謀罪」の法整備が条約締結の要件だとして組織犯罪処罰法改正を目指すが、成立に至っていない。世界180以上の締結国全てが法整備したわけではないとの指摘もある。

 

 

  • 2017年1月7日 日刊ゲンダイ
安保法のようなことが繰り返されるのか(C)日刊ゲンダイ

 またこの“手口”だ。安倍政権が20日に召集する通常国会での成立に並々ならぬ意欲を見せている「共謀罪」(組織犯罪処罰法改正案)。過去3回も廃案に追い込まれた悪法だが、今回は「テロ対策」と「東京五輪」を“口実”に突破を図るつもりだ。「共謀」を「計画」としたり、名称を「テロ等組織犯罪準備罪」に変えたりしているが、「集団的自衛権の行使容認」を「安保法」と言い換えて強行採決した時と同じ。おそらくロクに審議もせず「数の力」で押し切るつもりだ。

「政府が検討しているのは従前の『共謀罪』とは別物だ」

 菅官房長官は6日の会見でこう説明していたが、大ウソだ。元朝日新聞記者で情報法制に詳しい中川亮弁護士はこう言う。

「対象をテロに限定した明示はどこにもありません。従前の共謀罪の対象とされた600以上の犯罪は今回の法案でも同じ。悪名高き戦前の治安維持法よりタチが悪い。『準備行為が必要』とされていますが、行為そのものではなく、考えたり、思ったりという『内心』が罰せられる、という本質は変わっていません」

犯罪の“意思”を立証するには、メールや電話を盗聴するか、密告しか方法がない。安倍政権は昨年5月、盗聴法の拡大や密告を奨励する「司法取引制度」を含む改正刑訴法を成立させた。これに今回の「共謀罪」が加われば、捜査当局は何でもやりたい放題だ。

■第2の「菅生事件」が起きるのは確実

当局が目をつけた団体にスパイや警察官を潜り込ませるのが、情報収集の確実な方法です。たとえバレたとしても『テロ対策』と言い逃れするでしょう。そういう恐るべき超監視社会が訪れる可能性があるのです」(中川亮弁護士)


 1952年に大分・菅生村で起きた「菅生事件」は、捜査当局が共産党内部に警察官をスパイとして送り込んだだけでなく、自作自演の駐在所爆破事件を起こし、共産党員らを犯人にでっち上げた。「共謀罪」が成立すれば、第2、第3の「菅生事件」が起きる可能性があるのだ。

「監視社会を拒否する会」の共同代表を務める田島泰彦上智大教授(メディア法)はこう言う。

「(安倍政権は)テロ対策と東京五輪という2つのキーワードを使って、表立って反対できないようにしてきました。だが、テロというなら、テロを生み出している貧富の格差や不平等など根本的な努力をすべきです。東京五輪だって、福島の原発問題にふたをして持ってきた大会です。それを口実に、共謀罪を新設するのは、欺瞞の上塗りです」

 この法案は安保法やカジノ法とは比べ物にならないぐらいタチが悪い。今度こそ、強行採決なんて暴政を許したらダメだ。

 

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11 コメント

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策士 w (ば印)
2017-01-07 20:22:51
慰安婦で注目を集め

次、共謀罪をアップして読ませる


うむ、策士ですな。
たくさん取り上げてください。
返信する
書き忘れたけど (ば印)
2017-01-07 20:26:26
オリンピックやめたら、共謀罪いらないじゃん。
オリンピックなんか、やめれ!!(怒)
返信する
Unknown ()
2017-01-07 23:00:19
http://ironna.jp/article/2486
共謀罪は日本を監視社会にし基本的人権を縛るものです
絶対反対
ば印様へ
仮にオリンピック無くなっても安倍首相の事です
海外でテロ事件でも起きたらこれ幸いと
「対岸の火事と考えたらいけない
テロを防ぐ為共謀罪成立を」
とでも言うのが目に浮かびます
返信する
尻尾が見えてますぞ (道祖神)
2017-01-08 01:01:47
お困りのようですな、一派・お仲間たち。何故、事ある毎に、こうも愁眉にその赤い『尻尾』を現すのかな?
返信する
全身真っ茶色だな (Unknown)
2017-01-08 02:11:16
なんだか赤い尻尾とか書いている人がいるが、この人こそ見えるどころか全身真っ茶色だねw。
共謀罪を制定する合理性に疑問を投げ掛け、かつ、安倍自民党の札付きな右寄り思想を指摘したらこれだもの。ネトウヨに茶色の意味は分かるかな?さ、調べてごらんなさいw。
返信する
ネトウヨ…ねぇ (道祖神)
2017-01-08 02:29:28
ネトウヨってなんだい? 哀れだね。そんな切り返しで、自己満足するとは。お宅らの先輩らを散らしたグループを知らないとは、潜りかな?
返信する
よく考えましょう (アベの脱税疑惑)
2017-01-08 08:19:37
「特定秘密保護法」「盗聴法(通信傍受法)」に、この「共謀罪」が加わればかつてあった「治安維持法」に近づきそうです。
治安維持法がなぜ廃止されたのか。よく考えてみる必要がありそうですね、安倍さん。いや、よく考えたからこその制定願望ですか。

同じ過ちを繰り返すのかどうかがかかっています。

同じ過ちといえば、小池都政。まるで橋下大阪府政を見ているようです。
ウソの公約で票をかすめ取って当選。やるやらないは関係なく、とにかく騒ぎを起こして、やっているように見せる。新党をつくる。多数が「塾」に参加したそうですが、「議員は美味しい仕事」となっている今は、素晴らしい転職先ですから当然でしょう。
さて、次は何? もちろん「東京都構想」。なにせサル真似ですから。(お猿さん、ごめんなさい。)

新党で都議選に臨むことを「改革を進める仲間づくり」と小池さんがおっしゃったということですが、これは議会を身内で独占して、議会に求められる行政監視機能を奪いたいということになります。二元代表制の否定ですね。よほど政策に自信がないのでしょう。
返信する
「隠れ共産党宣言」広がり中 (茶碗を洗う人)
2017-01-08 08:29:12
「俺がアカなら、政権与党は真っクロ、それに媚びへつらうあなたはただのバカ」←あるweb農協新聞に載った「隠れ共産党宣言」より。

共産党じゃないけど、共産党を応援するまたは見直している人、多い。だからよけいに攻撃されるんでしょうか。共謀罪の話題が出ると、予想どおり、共産党の悪口言う投稿が出ました。

自民は共産党への嫉妬心からこんな改正案を上程するんじゃないかと思ってしまいます。

返信する
沖縄の海兵隊拡張 (時々拝見)
2017-01-08 10:07:33
 (一部の単語は英訳してみてください)
 例えば、沖縄(日本国民の生活の場としての国土の一部)で血税を使って、日本の国防には無用なUSA海兵隊を増強して、一番得するのは韓国という件は前に書きました(たぶん)。韓国は金も土地も出さずに、韓国の国防に役立つ海兵隊が増強される訳ですから、その分、竹島の占領に力を注げます。しかも、アベ政権の無能さ故に、日本にまーったく感謝を表明しなくても良いというおまけつきです。
 そのほか、自民党を中核とした富山市議のアレを暴いた件とか、自民党幹部が暴力団に巨費を払ったアレを暴いた件とか、論理的には自衛官虐殺事件としか考えられない「変死」事件とか…
 と言う訳で共謀罪の改称を求めます。
 売国行為保護および促進法、略して売国保護法
 愛国罪でもいいかも。
返信する
Unknown (さとう)
2017-01-10 16:06:29
共謀罪適用による監視社会化はおそろしいですねー
返信する

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