ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

23年4月に読んだ本

2023-05-15 10:10:23 | 読書
4月は16冊、前半は20冊を超す勢いだったのが、後半で急に失速💦

22年の「ナツイチ」「カドブン」、6月末までには今年のラインナップが発表されてしまうので、それまでにラストスパートをかけないと、、、ということで9冊。

◆君たちの日本国憲法 (池上彰・集英社文庫)
やはり池上さんの説明はニュートラルで分かりやすい。昔中学校の社会の授業で日本国憲法の前文を暗唱させられたのを思い出した。(実際、期末テストで「憲法前文のうち、平和について謳った部分を全部書きなさい」という問題が出た)。意外とまだ半分くらい暗唱できた。

◆監獄に生きる君たちへ (松村 涼哉・角川メディアワークス文庫)
半端なく強い志で団地で虐待を受ける子供たちを救おうとする児童福祉士の茜が、彼女に救われた子供たち6人との旅行中に崖から転落死してしまう。彼女の死から7年後、その時のメンバーが何者かに当時の宿に呼び集められる。果たして茜の死の真相は、、、というお話。
話合いを重ねるうちに、それぞれの茜への微妙な想いの違いも明らかに。誤解もあり、次第に真相が見えてくる。真実は辛いものだったが、それでも前を向いて歩いて行ける結末、茜は皆の心の中に生きている、って感じで、あまり期待しないで手に取ったが予想外に面白かった。

◆聖なるズー (濱野 ちひろ・集英社文庫)
動物との性愛について書かれたノンフィクション本。
「動物と!」とまず思い浮かんだのは北斎の巨大な蛸に凌辱される海女の浮世絵、大学生の頃銀座の場末の映画館で観た洋物のポルノ、でも内容は全然違った。対等のパートナーとしての相互理解の延長線上のセックス、理解も共感もしないけど性の多様性の範疇として受容はできる。自分にとってその度合いはLGBTに対するものとほとんど変わらない(というとLGBTの人は怒るかもしれないが)。それよりもエクスプロア・ベルリンにはびっくり、こっちの方がよっぽど異常?

◆不在 (彩瀬 まる・角川文庫)
幼いころに両親が離婚、以来全く疎遠だった父が死んだ。医師だった父の病院の建物は、母でも父お気に入りの兄でもなく娘の明日香が相続するよう遺言が残されていた。父から愛されなかった彼女は父の遺品に触れ、やがて父にも似て自己中心的で支配的な自らの本性を周囲に発露していく。男の私から見れば重たい、面倒くさい女、明日香。最後はようやく他人を理解することに目覚め、前に向かって歩き出していく。私も自分大好き人間なので共感する部分が多かった。村山さんの解説もよい。

◆ショートショートドロップス (角川文庫)
女性の作家によるショート・ショートのアンソロジー。三浦しをんさんと村田紗耶香さんのは既読のはずなのだが記憶になし。個人的には辻村深月さんの「さくら日和」、短い中に詰め込まれた日常系ミステリと切ない少女の気持ち、うまい。

◆吸血鬼はレジスタンス闘士 (赤川 次郎・集英社文庫)
ものの1時間ほどで読了、大変失礼ながらわざわざ読むほどのものでもなかった。

◆ソウルメイト (馳 星周・集英社文庫)
犬の話で直木賞を取った馳星周さんの犬に纏わる短編が7編。「チワワ」は妻を亡くし娘に愛想をつかされ、犬と二人きりになった泰造の話。身につまされる。「柴」は東日本大震災、津波で家族を失ったのは人間だけではない、ボランティアに行った際に愛犬・愛猫を探す張り紙が街中にあったのを思い出した。「バーニーズマウンテンドッグ」、私も一昨年に愛犬を亡くした。苦しんでいるのに何もできないのが本当に辛かった。自分は本当に真一と鈴子ほどにすいか(我が家の犬の名)にしてあげたか、もっとできたのではないかと改めて自問自答した。

◆クローズアップ (今野 敏・集英社文庫)
スクープ・シリーズ第3作。今野さんの小説は、主人公のキャラが気に入って、このシリーズと隠蔽操作のシリーズを何作か読んでいます。物怖じしない、飄々した布施の度胸の座り方、内面の強さ、読んでいて痛快です。

◆父と私の桜尾通り商店街(今村 夏子・角川文庫)
表題作の他に「白いセーター」「ルルちゃん」「ひょうたんの精」「せとのママの誕生日」「冬の夜」「モグラハウスの扉」の短編が計7点。いずれもハッピーエンドではないというか、落ちもない淡々とした終わり方で、私は純文学はあまり読まないのですが、ああ、純文学だなーと。でもその割には文章が読みやすいので、すらすらと読めました。せとのママ、冬の夜のおばあちゃん、桜尾商店街のお父さん、死んでない?大丈夫なんでしょうか?

本屋大賞、発表になりましたね。
ノミネート作品から2作。

◆ラブカは静かに弓を持つ(安壇 美緒)
対象候補と思っていたので、、、2位は残念。
JASRACとヤマハ音楽教室の裁判並びにそれに伴うJASRAC職員の潜入調査を元ネタにした小説。音楽をテーマにした最近の小説としては「蜜蜂と遠雷」「羊と鋼の森」があるが、それに引けを取らない。タイトルも装丁の絵もすごく良い。音楽への情熱、教師に対する信頼や仲間との友情とスパイの業務命令のはざまで悩む樹(いつき)の運命にハラハラドキドキでした。

◆#真相をお話しします(結城 真一郎)
短編が5編、割と前評判が高かったので期待して手に取ったが、それぞれの出来栄えにばらつきがあるように感じた。「三角奸計」はリモート飲み会、「#拡散希望」はYouTuberが題材になっていて新しいし、話の展開も想像の上を行くエグさで、そうきたか!と面白かった。それと比較して他の3作品はまあ普通かな。

直近の芥川賞受賞作です。
◆荒地の家族(佐藤 厚志)
東日本大震災の喪失の物語。私も数年に渡り何度かボランティアで訪れたが、何もなくなってしまった街はそうそう元通りにはならない。主人公の祐治は病で妻を亡くし、後妻とは流産ののちに離別、会うこともままならない。友人の明夫は震災で妻子を亡くし自らも病に侵される。失ったものは家族も街も元通りにはならない。そんな中で時間だけが淡々と流れていく。やるせない思いが漂う静謐な物語。

ミステリの単行本を2冊。
◆俺ではない炎上(浅倉 秋成)
SNSで殺人犯に仕立て上げられた山縣泰介、前半はスリリングな逃走劇、後半は浮かんでは消える真犯人像にハラハラドキドキ。年齢的に泰介の娘が小学生?と思いましたが、叙述トリックにも納得。泰介や初羽馬に対してもそうですが、とりわけSNSに面白半分や独りよがりの正義感で投稿する匿名の輩に反感を持ちました。「自分の周りで起こる自分にとって不都合なことはすべて自分のコミュニケーションの結果である」昔参加したセミナーで言われたことば、改めて肝に銘じたいと思います。

◆仕掛島(東川 篤哉)
嵐の孤島という本格ミステリお約束のクローズドサークル、でも主役の二人が漫才のコンビ風キャラで本格臭さが薄まって読みやすかった。タイトルからして館か島全体に奇想天外な仕掛けがあることは必至、広間と個室、同じ1階の部屋に行くのに螺旋階段を上がって2階経由でしか行けないので、屋敷全体がエレベーター構造とかそういうのを想像してたのだが、そのはるか上を行く奇想天外さ、こんなの絶対に推理できるはずもない。

◆クロコダイル・ティアーズ(雫井 脩介)
面白かった。暁美が疑心暗鬼に陥る描写がうまい。それにしても暁美も東子もまさに鬼婆姉妹。暁美は自分の立場が脅かされる私怨を想代子にぶつけ、東子は興味半分で暁美を煽る。DNA鑑定はまだしも、息子を殺害した犯人嫁を貶める証言を求めるなんて狂気の沙汰。那由太は祖母から母を守ろうとしたんでしょう。階段じゃなくて地獄に落ちちまえと思いました。と思わせておいて、著者はラストをどっちに持っていくのか、まさかのイヤミス展開も視野に心配しながら読み進めましたが、読後感は爽やかでした。

◆望郷 (湊 かなえ)
著者の出身地である広島県の因島がモデルであろう。「みかんの花」「海の星」「夢の国」「雲の糸」「石の十字架」「光の航路」、島ゆえの閉そく感に悩んだ少年少女時代の思い出を大人になった自分がなぞ解きをする、そんな短編が6編。「みかんの花」はいやミスの湊さんらしい、ぞくっとさせられる話。「雲の糸」「石の十字架」「光の航路」はいじめがらみ、読後感は悪くなかった。

◆夢の島 (大沢 在昌)
夢の島のお宝って、そういうことですか。音信不通だった父親の死をきっかけに、何もわからないままに騒動に巻き込まれる駆け出しのカメラマン・信一。謎めいた前半で引き込まれ、じりじりした中盤からラストに向けて一気にド派手な展開に。悪役はいかにも悪役で、さらに鯉丸くんのキャラも際立ってました。大沢作品、楽しませていただきました。

◆「暗橋」で楽しむ東京さんぽ 暗渠にかかる橋から見る街
暗橋とは、今はなくなってしまった川にかかっていた橋の痕跡。私のお散歩コースにも多数あります。遺跡として保存されているものもあれば、打ち捨てられてひっそりと存在しているものも。泪橋とか鍛冶橋とか、地名だけ残っているところもたくさんあります。橋跡を起点に一皮むいた昔の街の情景に思いをはせるのもお散歩の醍醐味。撤去せずにそのままそっとしておいてほしいと強く思います。
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