10. 超高層ビルの男たちの身元
歴史上最も象徴的な写真の1枚だろう。ニューヨークの高所に渡された鉄骨の上に男性が並んで座って、和気あいあいと昼食を食べている。ネット上で何度となく見る写真だが、ほとんど何も分かっていない。
まず、これほど有名な作品なのに撮影者が誰だか分からない。長年、ルイス・ハインとされてきたが、最近の研究によれば、それはあり得ないのだという。可能性のある候補としては、ロックフェラーセンターの元写真責任者チャールズ・C・エベッツが挙げられるが、広報担当のトーマス・ケリーやウィリアム・レフトウィッチである可能性もある。
それが判明したとしても、そもそも被写体が誰なのかという疑問が残る。撮影者と同じく、男性たちのほとんどは名前が分からない。2012年になってようやく、2名についてはジョセフ・エッケナーとジョー・カーティスと判明し、他の2名についてもマティ・オショネッシーとパトリック・グリンではないかと推測されるまでにはいたった。だが、他の7名の身元は、20世紀最高の写真の被写体であるにもかかわらず、依然として不明だ。時が経つにつれて、その手がかりは消えてゆく。