10月5日はボンドの日。第一作の『007は殺しの番号』から数えて50年。12月1日に公開される最新作『スカイフォール』と合わせて23作、およそ一年おきにジェームズ・ボンドの新作が発表されてきた勘定になる。これほど長期にわたって愛されたヒーローは、ちょっといないだろう。
ボンドのどこがいいのか。いうまでもなく、カッコいい。ダンディでスマート、筋肉隆々でスポーツ万能。そのうえに博覧強記で、ファッションからスポーツカー、ワインの当たり年まで何でも知っている。出てくる女性は片端からボンドのとりこになってしまう。男性の願望を絵に描いたようなスーパーヒーローという次第だ。
そのイメージを定着させたのが、最初の五作品に登場したショーン・コネリーである。スパイなのだから人目に立たないように動くはずなのに、ショーン・コネリー版のジェームズ・ボンドは隠れるどころかいつも堂々、名前を聞かれても「ボンド、ジェームズ・ボンド」というように、ちゃんと答えてしまう。考えてみればヘンだけど、それを当たり前に思わせるほどカッコいいのですね。敵に何度襲われても柳に風と受け流すクールな表情が粋でおしゃれで、男の子はこぞって真似をしたのだった。
だから、ショーン・コネリー版のボンド映画はいまでも輝いている。第二作『007ロシアより愛をこめて(007危機一髪)』は傑作の名の高い作品だが、他にも『007 ゴールドフィンガー』、『007 サンダーボール作戦』、それに日本を舞台にした『007は二度死ぬ』と、何度見ても面白い。タイトルが出る前にカメラのシャッターの中みたいな映像が映り、そこに現れたボンドがこっちに銃を構えて一発、そこからアクションをギュっと詰めたような挿話が展開してタイトル・シーン。書くだけで場面が浮かぶほど記憶に焼き付いている。
―朝日新聞―