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Felineの札幌の日々

カリグラフィーを忘れたカリグラファーangelic felineの怠惰な札幌生活。

オダマキの装飾が入った写本文字O

2008年06月13日 15時45分33秒 | Calligraphy
久しぶりに写本画像をいろいろ見ていたら、文字があまり美しかったので…。

16世紀に書かれたバスタルダ体です。
もう写本の制作も終わりの頃に作られたものですね。
このあとどんどん印刷にとってかわられてしまったので。

バスタルダはふつうもっと読みにくい書体なのですが、この写本は一文字ごとに非常に丁寧に書かれ、また丸みを帯びたイタリアのゴシック体の影響を受けていて読みやすく書かれています。

フランスで制作された写本のようで、Rubric(赤文字)の部分はフランス語で書かれています。
残りの部分はすべてラテン語。

Transcriptすると:

dominum nostrum. Amen.
¶Oraison tres devote a la saincte croix.
O Crux †
salve preciosa.
Crux salve gloriosa.
Me per verba cu(以下なし)

聖十字架に対する賛美の祈りです。

飾り文字Oの背景は金粉で塗られ、ピンクの文字には、この時代に多く見られるリボンを巻いたような装飾が右側にほどこされています。

文字の中にはオダマキの花。
オダマキの象徴するものは、恋の苦悶や悲しみです。
中世初期には恋は肉欲とともに人間を堕落させる悪いものであるという観念があったようですが、中世後期やルネサンス期になるにしたがって、恋の苦しみに身をやつすことに美学を見いだすようになっていきました。この時代のモチーフには、オダマキや、同じ意味を持つ三色スミレが時祷書などの装飾によく使用されるようになりました。時祷書は祈りのための本ですが、聖職者が持つものではなく、裕福な世俗の者の所有物なので、モチーフの使用には全然制限がありません。

この時代がメランコリーに美を見いだすようになったのは、デューラーがそのままのタイトルの版画を制作したことにも表れているんじゃないでしょうか。

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