Felineの札幌の日々

カリグラフィーを忘れたカリグラファーangelic felineの怠惰な札幌生活。

19世紀にリバイバルを迎えた中世写本芸術

2008年03月18日 14時44分05秒 | Calligraphy
意外に知られていませんが、中世の写本芸術は、19世紀にリバイバルを迎えているんですね。

その様子を紹介するために昨年出版された"Revival of Medieval Illumination"(書名をクリックするとamazonに飛びます)は、21世紀のカリグラファーにとって、インスパイアーされるものが多い、良い教材になると思いました。
本当はこの本、他の人には教えたくないかも。(笑)

全体の1/3をしめるフランス語論文を私は読めないわけですが、写真は見てるだけでも内容を物語ってくれます。(ちなみに2/3は英文なのでご心配なく。)
中世の写本芸術は19世紀になって良さが見直され、さかんに写本を真似た芸術作品が作られた時期です。
見直されたきっかけは、フランス革命軍の襲撃に遭った修道院から略奪された写本が、市場で売買されるようになったことでした。今まで修道院の宝として大切にされてきた写本が、悲しい略奪にあったものの、一般市民の目に触れ、惹きつける機会になったからでした。

それで19世紀にMissal Paintings(ミサ典書の描き方)という絵画技法書がいくつも出版されるようになり、英国やベルギーやイタリアやフランスなどを中心に、アマチュアを含めた一般の芸術家たちが、写本っぽい書き方で、各種の証書や宗教本や広告などをデザインするようになったのです。

""The Country Flowers of a Victorian Lady"書名をクリックするとamazonに飛びます)という本をごらんになったことがあるでしょうか?
ファニー・ロビンソンというアマチュアの画家で、中産階級の英国女性なのですが、写真の左側にその本の1ページを写しておきました。
まさに写本から影響を受けた作品を描いています。
"Revival of Medieval…”を読むまで、私はファニー・ロビンソンがたまたま個人的に写本から学んでイラストを描いているものとばかり思っていましたが、おそらくMissal Paintingsの技法書から学んだ一人にすぎなかったのでしょう。
学究肌ではなく、時代の子だったわけです。その証拠に、彼女のカリグラフィーはやや心許なく、ゴシック体にしては、文字と文字との間隔が開きすぎて素人っぽいのです。
写本から直に学んでいたらこういう文字は書かなかったと思われます。
ファニーの植物画は愛らしく、昔から好きだったのですが、時代の背景が見えたことで彼女に一歩近づけた気がします。

写真右は、The Revival of Medieval…からの1ページです。
全部お見せしたいところですが、米国アマゾンではSearch Inside機能がありますので、そちらで多くのページをごらんになれると思います。
アールヌーボーとも重なる時代の作品たちですので、その洗練され具合は大いに参考になるでしょう。
残念ながら、どのページの写真も大写しばかりではありません。縮小されたものが多く、細部までじっくり研究するには不向きですが、作品全体のバランスの取り方などには適しています。
高価な本ですが、ぜひ蔵書に加えられては?

アクロスティックをひねる

2008年03月11日 20時07分27秒 | Calligraphy
今学期のカリグラフィー最終課題に出たのは
アクロスティックスを使ったカード作りだ。

アクロスティックスとは、単語に含まれる文字をそれぞれ頭文字にして文章を組み立てるもの。
CATだったら、猫に関するCで始まる文章(または単語)、Aで始まる文章、Tで始まる文章となる。

いやぁ~昔から俳句だの短歌だの、型が決まった詩歌のたぐいは大の苦手なんだよね。
高校時代、現代詩が大好きで、背伸びしつつマネして書いたものだけど、どちらかというと散文詩のほうが性に合ってた。
575なんて短さで、いったいどうして俳人は表現できるのか、私には絶対無理と思ったものだった。

それでも、なんとかひねり出さないことには、カードも作れないわけで、とりあえずCHRISTMASで行ってみた。

Christ is born
Hallelujah
Redemption plan of God
In that tiny baby boy.
Star of Bethlehem led
Three wise men.
Myrrh, gold and incense brought from far.
Angels sing high above.
Shepherds come to praise the Lord.

堅い、堅い。
3行目の「神の贖いの計画」なんて持ち出したら堅すぎてカードにならないよ。
それじゃ、これでどうだ。

Christ is born
Hallelujah
Rejoice all men
Immanuel is here.
Star of Bethlehem led
Three wise men with
Myrrh, gold
And incense for the child.
Song of angels fill the earth.

これなら堅さはないか。
もうちょっとなんとかならないかな?
リズム的にはまぁまぁなんだけど。


Christ is born
Hear the song of angeles and
Rejoice
In God's mercy
Savior has come
To all mankind
Messiah has come
As a little boy
Sleeping in a manger

これのが短くてカードになりやすいかな。
でも詩心はゼロかも。
CHRISTMAS以外でなんか作ってみようか?
SPRINGでどう?

Sprouts push up the earth.
Plants and flowers
Reawakened
Into life.
Now comes the time to
Grow and blossom.

Reawakened into lifeがちょっと怪しげだな。
死の季節である冬から命の季節への移行を示そうと思って、命に目覚めるとしたんだけど…。
ああ、つらいものがあるわ。

もう疲れちゃって、出てこない。
クラスのみんなはどんなの作ってるのかな。


ところで最近、リスのように松の実をひたすら食べている。
止まらないのだ。
もともとナッツ類は好きだけど、松の実の柔らかさ、深い味わいがたまらない。
…中国産とわかっていても、松の実が切れるとまた買ってきてしまう。
ほとんど中毒。
油分は多いけど、これって貧血予防に効くらしく、私にぴったりかも。
体が欲しているんだろうか。
コレステロールを低下させてくれるし、美肌効果もあるらしい。
と、都合の良い言い訳を探して今日もまた買ってきてしまった。

Buika -資生堂IntegrateのCM曲

2008年03月10日 11時37分32秒 | Miscellaneous
アンジェリーナ・ジョリーが出演している資生堂のCMで使われているフラメンコの曲が前から気になっていた。
♪Alimentando la esperanza
Tu miras arrogado。。。でアンジーが眉毛をつり上げるやつ。

どんな人が歌っているのか一度調べようと検索したら驚いた。
年配のヒターナ(ジプシー)が歌っているものとばかり思いこんでいたけど、アフリカ系スペイン人のコンチャ・ブイカ(Concha Buika)という人だった。
独特の節回しから感じるのはこの人の中心はフラメンコらしいけど、枠にとらわれず、ジャズやソウルやヒップホップなどとミックスしたいろんな文化が融合した音楽なんですよ。

中でもすごく気に入ってしまったのはこの曲
http://www.youtube.com/watch?v=DEo1d1vAytI&feature=related
New Afro-spanish Collectiveという曲。カッコイイ~
出だしは14,5年前に流行ったDiana Kingっぽい。
ダウンのリズムだから似たところはあるのかもしれない。
ダンサブルでおしゃれ。古くて新しい感じ。
自分がどこの枠にも属さない自由な人間だと歌っている内容のとおりで、くるくると英語とスペイン語
を取り替えながら早いテンポで歌っていると、本当に分類不能な感じだなと思う。

もう一曲は対照的でフラメンコ色が強いけどこれもこの人っぽい。
http://www.youtube.com/watch?v=Lv4D5glbdx0&feature=related
Mi niña Lola (わたしの娘ローラ)
理由を言わず悲しみにくれている娘を心配する父親の気持ちを歌いこんでいるけど、この人は哀愁を帯びた歌も本当にうまい。外見は違うけど、心はヒターナそのものなのかも。
インテグレートのCM曲のイメージに近いのはこちらだった。

多面的ですごく面白い歌い手だと思った。
amazonで輸入盤は取り扱っているけど、まだ日本では発売されていない歌手のようで、これから注目されてくるんじゃないだろうか。

エリザベス・ゴールデン・エイジ

2008年03月07日 21時47分28秒 | Miscellaneous
そういえば「エリザベス・ゴールデン・エイジ」も映画の日(3/1)に見に行ったんだなぁ。
もう1週間も前になる。

わたしメの評価では5段階で★★★★だった。

衣装のすばらしさだけをいえば★★★★★なんだが。

内容的に星が一つ少ないのは、単に自分がその時に観たかったストーリーではなかったからだ。
威厳を保ち堂々と君臨しているエリザベス1世でも、一皮むけば執政で悩み、頼りになる殿方にもたれたいと思って生きてるか弱き女…ケイト・ブランシェットは、上手にその弱さを演技で示していた。でも、か弱き女性の内面の吐露なんぞ、今の私はあまり興味が持てなかっただけだ。

きっと仕事を頑張っているOLさんとかなら、共感する部分も多いだろう。きっと私より面白く観られるかもしれない。

歴史小説って、黒岩重吾さんや司馬遼太郎さんのものを勧められて、昔ちょっぴり読んだことがあるけど、どこまでが史実でどこからが創作なのか、当時、私にはわからなかった。

この歴史映画もいったいどこまで史実なのだろう?というのが見終わった直後の、最大の関心事だったわけだけど、今はwikipediaという便利なものがあるから、すぐに調べられる。
実に意外だったが、ほとんど史実に即した映画らしい。
エリザベスが思いを寄せたローリー卿は実在する人物で、アメリカのヴァージニアを英国の植民地としたり、スペイン艦隊と戦ったり、侍女のベスとこっそりと結婚したことで牢獄に入れられたりしたことも映画どおりだった。

歴史の映画の良いことは、イメージが鮮明になり、その時代を思い浮かべる時、そういえば映画はああだったから…とすぐに結びつく。
今回のもカトリック国のスペインとプロテスタント国の英国の戦いの話があり、これでフェリペ2世の名前も記憶できた。このスペイン王の名前が出てきても、エリザベスの時代の人だとすぐに思い起こせそうだ。

私はカトリックな人なので気持ち的にはフェリペ2世を応援したいところだったが、そこは映画の世界。やはり主人公に肩入れして見てしまうようにできている。
スペイン人たちが話す言葉は全部スペイン語のままのセリフになっていた。
Isabel, quieres ser la reina de Inglaterra?
(イサベル王女よ、英国の女王になりたいか?)
暗くドスの効いたカステジャーノ(スペイン語)で無表情の娘に話しかけるフェリペ2世は悪人そのもの。黒い衣装も悪を連想させる。
戦いの人数的に不利な英国の前に迫ってくるスペインは強力な悪魔そのものに見える。
対するエリザベスはジャンヌ・ダルクのような甲冑を着込み、馬にまたがり必死に国を守ろうとする。
思わず頑張れと思ってしまう。

ああ、でも私がわかっていなかったことが一つあったことを、映画観賞後に発見。
エリザベスが処刑したスコットランドのアン・スチュワートを、てっきりエリザベスの異母姉妹のアン女王だとばかり思っていた。カトリック信者で、あの時代の女王って2人いたのね。
知らんかった。orz

神が油を注がれた者(註:王権神授説によって王位につく者は油注がれているとキリスト教では理解されている。)を処刑したくないと、アンの処刑をしぶるエリザベスも人間的で魅力があった。

わかさと美貌が衰え始め、愛する男も自分に仕える若い侍女にとられてしまう女王は悲哀を感じさせるが、人間的な心を持っている部分は魅力的に描かれていた。

とりとめない感想ですが…。

ウルビーノのヴィーナス展

2008年03月07日 18時23分13秒 | Miscellaneous
ウルビーノのヴィーナス展が上野の西洋美術館で開催されているので、昨日いってきた。http://www.venus2008.jp/index.html

目玉の一枚を除いた全体的な印象は、期待したほどじゃなかったかな、という感じだ。
「ウルビーノのヴィーナス」を中心に、ヴィーナスの構図やアイディアが変遷しながらも踏襲されていったことを展示している部屋はさすがに見応えがあったが、他はどことなく精彩を欠いているような絵が多かった。

部屋ごとにテーマ別に組まれていて、ヴィーナスとアドニスが主題の部屋、パリスの審判が主題の部屋、ヴィーナスとサテュロスが主題の部屋などと分かれていて見やすい構成にはなっていた。

ウフィッツィ美術館など観に欧州に行くと、どれもが主役級の絵ばかりずらりと並んでいるので、どうしていいのか、何を観て良いのかオタオタするばかりだが、逆に日本で借りてきて展示されているものは、目玉が一つしかないところに、あとはお茶を濁したようなものが多くて少しがっかりする。それも仕方がないか。
だが逆に言えば、一つの絵だけがフィーチャーされていて、じっくりとその1枚を集中的に鑑賞することができるから、心乱されることなく意識が集中できていいのかもしれない。

さて、写本も4つほど展示されていた。
うち一つはヒューマニスト体の洗練された文字とルネサンス期に特有のホワイトヴァイン(白抜きの蔓の装飾)のモチーフ。確か、内容はプリニウスの博物誌だった。

もう一つは、Mの飾り文字の背景がウルトラマリン色になったところに、プット(キューピッド)の絵があるもの。細やかで非常に洗練されている。キケロの書簡の一節。

もうひとつは写本関係の書籍によく取り上げられている天空のヴィーナスの絵で、足下には金星(ヴィーナス)が守護を司っている牡牛座と天秤座のマークが表されている。
よく観る写本だったので、ああ、現物はこれか、と思いながら堪能した。

別の部屋にもう一冊の写本があったが、ロマネスク体がつかわれたものだったかと思う。こちらはそれほど目を引かなかった。
西洋美術館はよく写本を展示してくれるので、楽しみだ。

この展示会は5月18日まで開催されているそうだ。