Felineの札幌の日々

カリグラフィーを忘れたカリグラファーangelic felineの怠惰な札幌生活。

色づかいに感心した300(スリーハンドレッド)

2007年05月30日 15時17分50秒 | Miscellaneous
色づかいに込められたメッセージが印象的な映画でした。

古代・中世の映画を観るのは好き。
でも殺戮・戦闘のスプラッター系が苦手なので、戦いがテーマの映画に耐えられるかどうか不安だったんですが、色づかいのせいで気持ち悪くはならなかったですね。

昔の話をセピア色の映像で表現するのはよく使われる手です。
でもこの映画はセピアではないけれど、全体の彩度と明度を下げ、低いトーンの映像で古代を感じさせます。語られる「物語」であることを色で表現しているのです。
同時にグレイッシュなブルーとイエローが男性的なイメージ、戦いを象徴するシャープさを表していました。
苦手な血の飛び散る場面もかなり出てくるんですが、血の色もトーンの低い赤なので、生々しさが抑えられているんですね。
力強さを示す赤になっている。

スパルタの王レオニダスと先鋭300人がみな鍛えられたギリシアの彫刻系のボディで、全員カニ腹なのが圧巻です。
うわぁ、おなか割れてるよ~
一人、二人がそういうボディじゃなくて、全員ですから。

最初はスパルタ式という言葉のゆえんになった子供時代からのスパルタの厳しい訓練方法が紹介され、国家のために戦えそうにない子供は生まれたら谷に落として殺すことも紹介されます。これにはちょっとやりすぎじゃないのと反発を感じていたけど、この思想の根底にあるのは国家への愛、家族への愛・・・やっぱり愛がテーマにあるんですね。自分の命を投げ出すことも厭わない厳しさというのは、守ろうとするものがあってのことだということがレオニダス王の姿勢から浮かび上がってきました。スパルタの人って合理主義なんだろう。
どのようにしたら国家が守れるか、と突き詰めていくと徹底した厳しさを自分のうちに求めていく。その厳しさに耐えられない者は最初から切り捨てていく。そうやって築いていった国家みたい。


レオニダスが険しい山を登って神託を受けに行く場面も映像美の一つでした。美しい巫女が神託を受け、舞うように浮遊し、のたうちまわるのは、ラファエル前派的な絵になっていて、もう一度よく見たい。

それに比べて葡萄状のできものができた肌の神官たちの醜さ。最近の映画って、古代ものでもSFチックに、醜いものは徹底して不気味に作るけど、ますますこの世のものとは思われない醜さを描くのがうまくなっている。でもこれ以上極めるのってもう限界かも?

ひとつ気になったのはペルシア王のクセルクセスの姿。
どう見てもエチオピアあたりのアフリカのイメージ。
スキンヘッドに顔中ピアス、浅黒い肌に腕輪と腰巻だけのような衣装。
やたらと背は高いけど、どこかお釜っぽい、なよっとした物腰。
あれは違うだろう。