どうもこんばんは、若年寄です。
大阪府・大阪市の二重行政を解消しようと、大阪維新の会が大阪市を廃止して4つの特別区に再編する「大阪都構想」を打ち出し、住民投票を仕掛けていました。
これが、令和2年11月1日の投票の結果、賛成少数で否決されました。
〇「大阪都構想」再び否決 松井大阪市長 任期全うし政界引退へ | 選挙 | NHKニュース
「賛成」67万5829票
「反対」69万2996票
二重行政とは、中央省庁と都道府県庁で同じような業務を実施し、あるいは都道府県庁と市町村役場で似たような公共施設を建設する等、複数の行政機関で公共事業が重複している状態を指します。二重行政の状態では、機能の同じ建物が近くにできてしまう無駄が生じたり、何かをしようとした時に中央省庁と都道府県庁、都道府県庁と市町村役場のそれぞれから許可を得たり調整しなければならないという非効率が生じます。
例えば、こちら
〇「国と地方の二重行政」の弊害の事例 福岡県
労働関係紛争、バリアフリー、職業紹介、職業訓練、商工会議所への指導、理美容の許認可、水産物販売・・・
様々な分野で中央省庁と都道府県庁が縄張り争いを繰り広げ、シマでの権益を主張しています。
「うちのシマで何やっとんじゃ、よそものが口出すんじゃねぇ」
「お前らこそ俺の縄張りで何勝手なことしとんじゃ」
って、まるでヤ〇ザですね。
例えば、こちら。
事前協議について | 長崎県
特定施設入所者生活介護事業所 事前協議の流れ
お分かりいただけるでしょうか。
事業者が事業を始めようとする時に、介護保険の保険者である市町村と話をし、県とも話をしなければならない構図となっています。事業者からすれば、県と市町村の両方とやり取りをしなければならない事になります。さらに、市町村がOKを出したとしても、県がNOと言えば手続きはやり直しという非効率さ。
自分が事業者なら、
「なんだよここの県。面倒くさいなぁ。早く書類受理して手続きを進めろこの税金泥棒め」
「県庁と役場で言う事が違ってごちゃごちゃ煩いから、他の県で事業しようかな」
と思うところです。
(ちなみに、法律上は、事業者がやり取りすべきは県のみであり、市町村は意見書という形で出てくるだけ、という流れになっています。法律で定められた指定権者としての県の事務を、要綱レベルで勝手に市町村事務にしてしまう事は法律上問題無いのでしょうか。)
日本が生産性を低下させ国際的な地位を年々低下させているのは、様々な分野に張り巡らされた規制の多さ・複雑さであると指摘されています。規制の複雑さに拍車をかけているのが、これです。複数の行政機関の間で、ある時は権限を奪い合い、ある時は事務負担を押し付け合うことを繰り返す中で、複雑さ・非効率さがどんどん増していきます。
中央省庁の省庁間での権限争い、自治体内部での担当部署争いという「縦割り行政」と、中央省庁・都道府県庁・市町村役場という水平方向での重複という「二重行政」、縦と横に入り組んだ規制によって、個人や企業は雁字搦めになっています。その中で、無理強いされる無駄な作業のなんと多いことか。
行政用語で、「補完性の原理」という言葉があります。地方自治における基本的原理とされているものです。
個人でできることは個人で
個人でできないことは家族で
家族でできないことは地域で
地域でできないことは最小の自治体単位で
最小の自治体単位でできないことは広域的な行政単位で
広域的な行政単位でできないことは国(中央省庁)で
というように、問題解決を出来るだけ身近な単位で処理し、それが出来なかった時に初めて一つ大きな単位での処理を検討する考え方です。これは、個人・家族・地域でできることに行政は手出しすべきでない、とするもので、「小さな政府」の考え方とも馴染みやすい理念だと思います。
さてこの時、最小の自治体単位は市町村であるわけですが、広域的な行政単位は即ち都道府県・・・とはなりうません。特定の問題について単独の市町村では解決できない場合に、複数の市町村で広域的に取り組めば対処できるものがほとんどだからです。隣り合う4~5市町村で解決できる事柄について、数十の市町村を管轄する都道府県が出てくる必要はありません。逆に、隣り合う市町村では対処できない、数十の市町村を管轄する規模でなければ対処できない事例って何があるでしょうか。
個別事案ごとに必要性に応じて広域連合を作れば足りるわけですし、その個別事案が消滅したり広域処理が不要になれば解散させる必要があります。恒久的に市町村役場よりも広域的な団体として都道府県庁を置いておく必要はなく、むしろ恒久的に置いておくことで、都道府県庁が自己増殖的に不要な業務を勝手に作ってしまいます。有害です。
二重行政の問題は、大阪府/大阪市だけで生じているのではありません。大阪府と府内全ての市町村でも生じており、また、全国各地の都道府県と市町村の間でも生じています。今回、大阪市を廃止することはできなかったわけですが、二重行政の問題は大阪市固有の問題ではなく、大阪市を廃止できたとしても二重行政の弊害は全国各地で残ったままとなります。
いっそのこと、都道府県を廃止してしまえばどうでしょう。都道府県を廃止し、都道府県がやっていた事業の中で、どうしても残すべき必要があると個々の市町村で判断すればその市町村で継続すればいいし、不要であれば都道府県廃止と一緒に事業も廃止してしまえばいい、ということになります。必要な業務だけど個々の市町村で実施するのが難しければ、近隣市町村で組んで広域的に実施すれば良いのです。
都道府県を廃止することで、中央省庁との二重行政を解消することもできます。
都道府県庁の職員は、都道府県の廃止とともに一旦は全員失業することになります。ですが心配ありません。都道府県庁がやっていた業務の中で必要なものは市町村が実施するようになるわけで、そこでのノウハウを持った元都道府県庁職員を市町村職員として雇おうという需要が生じます。もし市町村職員としての雇用が生じなかったとしたら、それは、元都道府県庁職員が不要な仕事で飯を食っていたことの証拠に他なりません。
(単一市町村であっても、既存の公共施設を廃止してわざわざ同種の施設を建てるという無駄なハコモノ行政をやってしまうところもあるわけで、都道府県庁を廃止したからといって行政の無駄を根絶できるというわけではありませんが。)
大阪府・大阪市の二重行政を解消しようと、大阪維新の会が大阪市を廃止して4つの特別区に再編する「大阪都構想」を打ち出し、住民投票を仕掛けていました。
これが、令和2年11月1日の投票の結果、賛成少数で否決されました。
〇「大阪都構想」再び否決 松井大阪市長 任期全うし政界引退へ | 選挙 | NHKニュース
「賛成」67万5829票
「反対」69万2996票
【二重行政とは何か】
大阪維新の会は、大阪府と大阪市の二重行政を解消するため大阪市を廃止しようとしていましたが、そもそも二重行政とは何でしょうか。二重行政とは、中央省庁と都道府県庁で同じような業務を実施し、あるいは都道府県庁と市町村役場で似たような公共施設を建設する等、複数の行政機関で公共事業が重複している状態を指します。二重行政の状態では、機能の同じ建物が近くにできてしまう無駄が生じたり、何かをしようとした時に中央省庁と都道府県庁、都道府県庁と市町村役場のそれぞれから許可を得たり調整しなければならないという非効率が生じます。
例えば、こちら
〇「国と地方の二重行政」の弊害の事例 福岡県
労働関係紛争、バリアフリー、職業紹介、職業訓練、商工会議所への指導、理美容の許認可、水産物販売・・・
様々な分野で中央省庁と都道府県庁が縄張り争いを繰り広げ、シマでの権益を主張しています。
「うちのシマで何やっとんじゃ、よそものが口出すんじゃねぇ」
「お前らこそ俺の縄張りで何勝手なことしとんじゃ」
って、まるでヤ〇ザですね。
【都道府県庁と市町村役場】
また、都道府県庁と市長村役場での二重行政もあります。例えば、こちら。
事前協議について | 長崎県
特定施設入所者生活介護事業所 事前協議の流れ
お分かりいただけるでしょうか。
事業者が事業を始めようとする時に、介護保険の保険者である市町村と話をし、県とも話をしなければならない構図となっています。事業者からすれば、県と市町村の両方とやり取りをしなければならない事になります。さらに、市町村がOKを出したとしても、県がNOと言えば手続きはやり直しという非効率さ。
自分が事業者なら、
「なんだよここの県。面倒くさいなぁ。早く書類受理して手続きを進めろこの税金泥棒め」
「県庁と役場で言う事が違ってごちゃごちゃ煩いから、他の県で事業しようかな」
と思うところです。
(ちなみに、法律上は、事業者がやり取りすべきは県のみであり、市町村は意見書という形で出てくるだけ、という流れになっています。法律で定められた指定権者としての県の事務を、要綱レベルで勝手に市町村事務にしてしまう事は法律上問題無いのでしょうか。)
日本が生産性を低下させ国際的な地位を年々低下させているのは、様々な分野に張り巡らされた規制の多さ・複雑さであると指摘されています。規制の複雑さに拍車をかけているのが、これです。複数の行政機関の間で、ある時は権限を奪い合い、ある時は事務負担を押し付け合うことを繰り返す中で、複雑さ・非効率さがどんどん増していきます。
中央省庁の省庁間での権限争い、自治体内部での担当部署争いという「縦割り行政」と、中央省庁・都道府県庁・市町村役場という水平方向での重複という「二重行政」、縦と横に入り組んだ規制によって、個人や企業は雁字搦めになっています。その中で、無理強いされる無駄な作業のなんと多いことか。
【補完性の原理】
さて。行政用語で、「補完性の原理」という言葉があります。地方自治における基本的原理とされているものです。
個人でできることは個人で
個人でできないことは家族で
家族でできないことは地域で
地域でできないことは最小の自治体単位で
最小の自治体単位でできないことは広域的な行政単位で
広域的な行政単位でできないことは国(中央省庁)で
というように、問題解決を出来るだけ身近な単位で処理し、それが出来なかった時に初めて一つ大きな単位での処理を検討する考え方です。これは、個人・家族・地域でできることに行政は手出しすべきでない、とするもので、「小さな政府」の考え方とも馴染みやすい理念だと思います。
さてこの時、最小の自治体単位は市町村であるわけですが、広域的な行政単位は即ち都道府県・・・とはなりうません。特定の問題について単独の市町村では解決できない場合に、複数の市町村で広域的に取り組めば対処できるものがほとんどだからです。隣り合う4~5市町村で解決できる事柄について、数十の市町村を管轄する都道府県が出てくる必要はありません。逆に、隣り合う市町村では対処できない、数十の市町村を管轄する規模でなければ対処できない事例って何があるでしょうか。
個別事案ごとに必要性に応じて広域連合を作れば足りるわけですし、その個別事案が消滅したり広域処理が不要になれば解散させる必要があります。恒久的に市町村役場よりも広域的な団体として都道府県庁を置いておく必要はなく、むしろ恒久的に置いておくことで、都道府県庁が自己増殖的に不要な業務を勝手に作ってしまいます。有害です。
【二重行政は都道府県/政令市に限らない】
今回、大阪維新の会は、現行の地方自治法の中で出来る事、出来ない事を考慮した上で、二重行政を解消する方策として「大阪市の廃止と特別区化」を大阪市民に提示しました。そして否決されました。二重行政の問題は、大阪府/大阪市だけで生じているのではありません。大阪府と府内全ての市町村でも生じており、また、全国各地の都道府県と市町村の間でも生じています。今回、大阪市を廃止することはできなかったわけですが、二重行政の問題は大阪市固有の問題ではなく、大阪市を廃止できたとしても二重行政の弊害は全国各地で残ったままとなります。
いっそのこと、都道府県を廃止してしまえばどうでしょう。都道府県を廃止し、都道府県がやっていた事業の中で、どうしても残すべき必要があると個々の市町村で判断すればその市町村で継続すればいいし、不要であれば都道府県廃止と一緒に事業も廃止してしまえばいい、ということになります。必要な業務だけど個々の市町村で実施するのが難しければ、近隣市町村で組んで広域的に実施すれば良いのです。
都道府県を廃止することで、中央省庁との二重行政を解消することもできます。
都道府県庁の職員は、都道府県の廃止とともに一旦は全員失業することになります。ですが心配ありません。都道府県庁がやっていた業務の中で必要なものは市町村が実施するようになるわけで、そこでのノウハウを持った元都道府県庁職員を市町村職員として雇おうという需要が生じます。もし市町村職員としての雇用が生じなかったとしたら、それは、元都道府県庁職員が不要な仕事で飯を食っていたことの証拠に他なりません。
(単一市町村であっても、既存の公共施設を廃止してわざわざ同種の施設を建てるという無駄なハコモノ行政をやってしまうところもあるわけで、都道府県庁を廃止したからといって行政の無駄を根絶できるというわけではありませんが。)