若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

第三セクター鉄道の赤字補填と「経営者」「株主」 ~ 地域住民の足を守る? ~

2012年05月29日 | 政治
平成筑豊鉄道「優良」一転、赤字続き : 鉄道ニュース : 鉄道ひろば : 九州旅行情報 : 九州発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)2009年5月10日
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 少子化による乗客数減などで02年度に経営が悪化、沿線9市町村から経営安定化補助金を受け始めた。03年度までは赤字を回避したが、三井鉱山が輸送事業から撤退した04年度から赤字に転落。その額は07年度には過去最悪の約5100万円となった。
 08年7月には9市町村に対し、毎年度計約2100万円の補助金を約4700万円に増額するよう要請、同12月に了承を得た。それでも、08年度は約3000万円の赤字見込みという。

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○細る「地域の足」どう守る 平成筑豊鉄道の大幅減便 / 西日本新聞 2012年3月19日
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 福岡県の筑豊、京築地方を結ぶ第三セクターの平成筑豊鉄道(本社・同県福智町)は17日のダイヤ改正で、初めて平日と土日曜(祝日含む)を分けて編成し、それまで1日206本だった運行を平日は44本、土日は92本も減らした。過去最大の減便となった今回の改正は経費節減が目的。本年度から沿線自治体による新たな支援も始まっているが、なお経営改善の見通しは立たない。
  ~~~~(中略)~~~~
 旧国鉄の民営化に伴い、1989年に開業した平筑鉄道。かつてはセメントなど貨物輸送も手掛け、96年度まで8期連続で単年度黒字を計上するなど「三セク鉄道の優等生」と呼ばれた。
 だが、2003年度に貨物輸送が終わって状況は一変した。乗客数は92-94年度の年間各342万人をピークに減少に転じ、収入も右肩下がり。04年度から10年度まで7期連続で単年度赤字だ。
 20年度までの中長期資金計画に基づく試算では、10年間の合計で15億円の不足が予想され、沿線9市町村は補助金の上積みに合意。11年度から毎年、計1億5千万円ずつ支出する。ただ、現状では地域の少子高齢化などを背景に試算を上回るペースで乗客数が落ち込み、21年度以降はさらなる経営悪化も予想される。行武専務は「鉄道の将来を考えると、この10年間は本当に大事な期間になる」と厳しい表情だ。

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○福岡県庁ホームページ 平成22年度 公社等外郭団体経営評価結果
○(株)平成筑豊鉄道(エクセルファイル)
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・設立目的等:国鉄再建法で廃止対象となった伊田線、田川線及び糸田線の運行を存続させることにより、地域住民の足を確保するとともに田川地域の振興を図る。

・代表者名 :代表取締役社長 伊藤信勝
  区分  :田川市長 非常勤
・常勤役員名:代表取締役専務 行武嘉則 
  区分  :県派遣 常勤・総務部長兼務
・営業損益(単位:千円)
 H17 △ 50,101
 H18 △ 71,467
 H19 △ 95,466
 H20 △ 101,636
 H21 △ 115,954

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○温故創新 伊藤信勝プロフィール
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昭和33年弓削田小学校卒業
昭和36年弓削田中学校卒業
昭和39年西田川高校卒業
昭和44年北九州大学卒業
昭和45年福岡県上級職員
昭和58年自治大学卒業
昭和62年矢部村助役
平成15年田川市長初当選

=====【引用ここまで】=====


2009年と2012年の新聞記事を並べてみた。
沿線各自治体から平成筑豊鉄道への補助金合計が、
年間2100万円→4700万円→1億5000万円
と、うなぎ登りに増えているのが分かる。

10年間で15億円もの資金不足を出す見込みとなっている第三セクター、平成筑豊鉄道。「地域住民の足を守る」という大義名分の下、沿線自治体は平成筑豊鉄道を支援することを決定している。この資金不足分を埋めるため、沿線自治体は持ち株等に応じて約300万~4000万円を毎年負担する。

構造的な赤字体質であり、破綻を避けて運営を続けるのであれば、沿線自治体からの支援が不可欠な状況となっている。


さて。

このご時世、どの自治体も潤沢な予算があるわけではない。
そんな中、
・「地域住民の足を守る」という漠然とした理由で支援を要請した鉄道会社。
・支援要請を受け、「地域住民の足を守る」という漠然とした理由で負担金を支払う沿線自治体。


もし自分の財布であれば、「地域住民の足を守る」では納得しないだろう。
「地域住民と言うが、どの地域の人がどこまでの区間を利用しているのか」
「投じた資金に見合うだけの利用者が存在するのか」
「割安な代替輸送手段は出来ないのか」
「他に資金を必要とする分野があるのではないか。優先度はそこまで高いのか」
を、自分の納得がいくまで詳細に検討するはずだ。

通常、自分の納得や満足が無ければ自腹を切らない。そのため、消費者、顧客、支援者、出資者からお金を得ようとする経営者は、消費者を満足させ、支援者に納得してもらおうと懸命な努力をしなければならない。

ところが、「地域住民の足を守る」という漠然とした説明で、
3セク「赤字だから、補助金ちょうだい」
自治体「オッケー」
3セク「赤字膨らんだから、補助金増やして」
自治体「オッケー」

ということが罷り通っている。
なぜか?


それは、出資側も経営側も役所の人間だからだ。

支援する側は、自分の財布から負担し支援するのではない。徴税で他人の財布に手を突っ込み、集めた金をバラまくだけの首長。支援を要請する側の経営者も、首長の充て職や県職員の派遣。

どちらも、自分の懐を痛めることなく他人の金を左右する役所の人間。同じ穴の狢同士で役所特有の無責任さを発揮するため、いい加減な理由の公金支出がまかり通る。一旦通ってしまえば、法律上は瑕疵がないため、支出を止めることは困難になる。

鉄道は、決まった時間に決まった地点Aから決まった地点Bまで大量の人や物を一度に運ぶためのもの。一度にAからBへ行く人や物が少なければバスとかの方が効率が良いだろうし、鉄道路線を維持する必要性は低い。赤字3セクへの補助金は、手続き的には合法の支出だが、必要性の低い不当な支出だ。

赤字路線の鉄道を税金で維持することは、長期間にわたって膨大な赤字を納税者に押し付けることを意味する。それだけの覚悟を、3セクの経営者や支援自治体首長は持っているだろうか。



持ってないだろうな。



彼等にとって、税金はどうせ他人の金なんだから。

役所を信用しない公務員の、自由主義的法制執務(覚書)

2012年05月18日 | 政治
公務員の裁量の幅を狭める。
公務員が己の手足を条例で縛る、Mっ気たっぷりな法制執務。
公務員を縛ることで、個人の行動が、公務員の気分や思い付き、贔屓に左右されにくくなる。
役所の処理基準を明確にすることで、個人の予見可能性を確保する。


個人の自由保障を確かなものとするため、地方公共団体の例規(条例や規則等)を制定改廃する時にどういった点に気をつけるべきか。
思いついたところを、思いついたまま簡単に箇条書き。


1.「等」を極力使わない。

2.首長や議員は、条例を制定する際に職員を極力関与させないよう注意する。

3.「後法優先の原則」を最大限活用する。

4.長ったらしい前文や、「この条例は、○○をすることで△△を向上させ、もって□□に資することを目的とする」という崇高な理念を掲げた目的規定を避ける。「この条例は○○について定める」という簡単な趣旨規定に留めるよう心がける。

5.形式主語を避ける。誰が申請し、誰が判断し、誰が許可や処分をするのか、権限と責任の所在を明示する。

6.「首長は○○をすることができる」という規定は、極力「首長は○○をしなければならない」という規定にする。

7.住民、事業所の責務規定を設けない。

8.効果の曖昧な、努力義務規定を設けない。

9.可能な限り条例で定め、下位規範への委任を避ける。

10.審査会の委員を、公募で選ぶようにする。委員の基準を具体的に定めておく。

11.条例を新たに作るよりも、不要な文言、不要な規定、不要な条例を探して削ることを優先する。

12.役所外部に対する「○○基本条例」を作らない。

13.「その他首長が定めるものとする」という規定を作らない。

大企業への悪罵で「公務員バッシングの正体」を片付けてしまう愚かさ

2012年05月08日 | 政治
共産党の『しんぶん赤旗』で、「公務員バッシングの正体」という連載記事が掲載されていた。この連載の存在をここで知り、検索してみたところ、全文をネット上で見つけることができた。

公務員バッシングの正体 神戸女学院大学教授 石川康宏さんに聞く(1)市民の不満そらす世論操作

公務員バッシングの正体 神戸女学院大学教授 石川康宏さんに聞く(2)財界奉仕者への転換を狙う

公務員バッシングの正体 神戸女学院大学教授 石川康宏さんに聞く(3)「全体の奉仕者」の意味は

公務員バッシングの正体 神戸女学院大学教授 石川康宏さんに聞く(4)全国民への攻撃 見抜いて


「どこが公務員バッシングの『正体』なんか?」とツッコミをしたくなるような、底の浅い記事。大企業への妬みを繰り返すだけで、「公務員の給料は高い、身分保障が手厚すぎる」という公務員への批判に対し、的確な反論がなされていない。

・84万人から30万人に削減された(→郵政や大学が公社化・法人化しただけ)
・災害時、公務員はこれだけの活躍をした(→平時における給料額の根拠にならない)
・大企業は利益を上げている(→公務員の厚遇を正当化する理由にならない)

「公務員の給料は高い、身分保障が手厚すぎる」に反論するのであれば、「普段から公務員はこれだけ有用な仕事をしている」を論じなければならない。特に、公務員は会社員と違って、会社の売り上げからでなく、納税者の負担から給料が支払われているため、納税者に公務の有用性を納得してもらう必要がある。だが、多くの納税者は、公務の有用性、税負担の妥当性に納得していない。だから「公務員バッシング」が起きているのだ。

仮に財政状況が黒字で予算が潤沢にあったとしても、公務の有用性と公務員への給料が見合ったものでなければならない。好景気で黒字財政でも、公務員の不相応な厚遇は許されない。ましてや、財政が厳しく、与野党とも増税を企図している状況で、公務員バッシングが無い方が不自然だ。


さて。

この連載の冒頭で、「公務員=貧困者の敵神話」ということが言われている。これは、事実に基づかない「神話」なのだろうか。

私はそうは思わない。例えば、補助金について、この連載では大企業への補助金のみが批判対象となっている。しかし、大企業に限らず中小企業への補助金、あるいは中央政府から地方自治体への補助金、関税という名の生産者への補助金などなど、様々な形で行政が行う再分配は、効率性・生産性の劣る業種や企業を延命させる。その結果、実質賃金は下がり、雇用の総数も減る。

補助金を初めとする再分配は、補助対象以外の全ての人を貧しくしてしまう。警察・消防・自衛隊といった者以外の、中央官僚・都道府県庁職員・市町村職員は、再分配という(補助対象者以外の)全ての人を貧しくする業務に従事している。そういう点で、「公務員(中央官僚・都道府県庁職員・市町村職員)=貧困者の敵」なのだ。

上で、私は

>「公務員の給料は高い、身分保障が手厚すぎる」に反論するのであれば、「普段から公務員はこれだけ有用な仕事をしている」を論じなければならない。

と述べた。
ここで、再分配はマイナスの効用の方が大きい、という点を考慮すると、「主に再分配事業に従事する公務員に給料を払うことは、1円であっても高すぎる」ということになる。盗人に追銭をするようなものだ。広く強制的に税金を集めて回り、特定の個人、団体へ利益を誘導する公務員。そういった再分配に従事する公務員を擁護する共産党の論調は、全国民への宣戦布告といっていい。

「奪って配る」を生業とする公務員に、「各人の努力のうえに助け合い、連帯し合う社会」「壊されてしまった日本の社会や人間同士の関係」を築きなおすことはできない。