若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

最低賃金UPで全てが上手くいく・・・わけがない

2019年06月28日 | 政治
夏の参院選に向けて、各党がバラマキモードに突入しました。

最低賃金「早期に1000円」骨太方針へ 地方に照準
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自民党の最低賃金一元化推進議員連盟(会長・衛藤征士郎氏)は22日の会合で最低賃金引き上げに関する提言を近くまとめ、政府に要請する方針を確認した。議連幹事長の山本幸三氏は「最低賃金の全国一元化は地方創生のカギだ」と述べた。
公明党の石田祝稔政調会長は22日、首相官邸で菅義偉官房長官と会い、政府が6月に決める経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に2020年代前半に最低賃金を1000円に引き上げる目標を盛り込むよう求めた。

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月1万円の家賃補助 国民民主が参院選公約 家計支援重点
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児童手当は年齢の上限を15歳から18歳に引き上げる。対象年齢などにかかわらず一律で月1万5千円を支給する。家賃補助は年収500万円以下の世帯を対象とする。最低賃金は「全国どこでも1千円以上を早期に実現」とした。
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立憲、最低賃金1300円に=参院選へ経済政策発表
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立憲民主党は20日、参院選に向けた経済政策「ボトムアップ経済ビジョン」を発表した。「賃金・所得アップで消費拡大を」と訴え、最低賃金を5年以内に時給1300円に引き上げる目標を明記。
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「減らない年金」提言=最低賃金1500円目標-共産公約
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共産党は21日、参院選公約を発表した。老後資金「2000万円不足」を指摘した金融庁報告書をきっかけに年金生活への不安が広がっていることを踏まえ、物価や賃金の上昇に応じて年金支給額を抑制する「マクロ経済スライド」廃止を明記するなど、「減らない年金」への制度改革を柱に据えた。中小企業の賃上げを支援し、最低賃金を全国一律1500円まで引き上げる目標を打ち出した
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政策 | れいわ新選組
=====【引用ここから】=====
全国一律!最低賃金1500円「政府が補償」
最賃1500円でも月収では24万円程度。
決して高すぎる賃金ではありません。現状が酷いだけなのです。
これまで政治主導で壊してきた労働環境や処遇を改善するためには、
賃金の最低水準を強制的に引き上げる必要があります。
中小零細企業に影響がない様に、不足分は国が補填。

=====【引用ここまで】=====


選挙を前に各党とも景気の良い無責任な主張を並べています。

このように、選挙があるたびに短絡的に補助金・給付金をぶら下げて票集めに走り、政府による社会・経済への介入を強めていくのが民主制の弊害と言えます。普通選挙制においては、このバラマキの弊害がより顕著に現れます。民主制・普通選挙制と自由主義は本当に相性が悪いと思いませんか。

【最低賃金の妄想】

さてここで、各政党の主張を見てみると、最低賃金の目標を時給1,000円、1,300円、1,500円とバラバラに設定しています。
一体、幾らが妥当なのでしょうか。
彼らは、どういった根拠に基づいて最低賃金の目標を設定しているのでしょうか。

高ければ高いほど良いのなら、じゃあ、時給3,000円でも良いのではないか、いっそのこと時給10,000円でも良いのではないか。こういった疑問がわいてきませんか。
最低賃金時給10,000円なら、一日4時間勤務でも40,000円。
一月のうち十日出勤で400,000円。
このくらい収入があれば、時間にゆとりを持ちつつ素敵な生活できそうです。

最低賃金時給10,000円社会、最高☆

・・・・・・なんてことは起こりません。

【最低賃金の弊害】

あなたは経営者です。最低賃金800円の地域で、あなたは時給900円でバイトを5人雇っていすます。1時間あたり4,500円の人件費が必要になります。

これが、お馬鹿な某党が主張するように、最低賃金が全国一律で時給1,500円になったとします。
あなたはどうしますか。

経営状況に余裕があるなら、今までと同じように5人を雇い続けて、1時間あたり1,500円×5人=7,500円の人件費を払うことができるでしょう。

経営状況に余裕がなく、1時間あたり負担できる人件費の上限が4,500円であれば、5人のうち2人を解雇して1,500円×3人=4,500円の体制で今までの業務を回すことになるでしょう。勤務内容、密度はハードになるわけですが、解雇されたくなければ仕方ありません。耐えて働くしかありません。

経営状況に余裕がなく、かといって3人で業務を回すことも難しいのであれば、ここで店仕舞いして5人全員を解雇することになるでしょう。

解雇された人達はどうなるでしょうか。
労基法や最低賃金法なんか最初から無視したブラック企業で働くか、違法な商品・違法な営業の世界に飛び込むのでしょうか。
あるいは、「党機関紙の配達は、党員としての活動であって雇用関係ではありません。だから賃金ではありませんし、最低賃金とか関係ありません」という某党の新聞配達員として時給120円でこき使われるのでしょうか。

最低賃金制度は、底辺の労働者の収入を底上げする制度ではありません。
最低賃金に満たない労働契約を違法なものとして失業者を増やす制度であり、同時に、経営基盤が不安定な中小企業、新規参入企業の経営状況を悪化させ、相対的に大企業を優遇する制度です。これによって大企業による独占・寡占が進みます。独占禁止法において最初に規制すべきは、この最低賃金法を運用する厚生労働省と、最低賃金UPを主張する各政党です。

最低賃金の引き上げと中小企業支援を同時に挙げる党公約もありますが、これは給付金を受け取る企業側と給付金を支払う役所側の双方に膨大かつ無駄な事務仕事を発生させます。同時に、不正受給の温床となり、企業と役所の無限のいたちごっこに悩まされることになるでしょう。

【第三者から強制されない賃金が妥当な金額】

本来、賃金とは雇用側と労働者との間で契約することで金額が成立します。そして、雇用契約が様々な場所、企業、組織で何度も任意に繰り返されることによって、その職種、その形態ごとの相場が定まってきます。これが妥当な金額です。

当事者間で任意に定められる賃金であれば、キツイが賃金の高い仕事が存在し、並行して、肉体的あるいは精神的に楽だが賃金の安い仕事もあるといった、多様な雇用が生じます。

しかし、最低賃金が上がれば、最低ラインの労働の強度も上がります。
経営者からは
「賃金を上げざるを得なくなったのだから、それに見合うだけの仕事を当然してもらうからね」
ということになります。この最低ラインに見合わないような、体の弱い労働者や未熟練の労働者、障害者や高齢者は、労働市場から締め出されてしまいます。

昨年、国民民主党の玉木代表が
Googleは就職の条件から大卒を撤廃する。AI時代、採用時の学歴、年齢、性別による差別禁止は当然。それと人生100年時代、これからは定年制の撤廃も不可避だ。私は高齢者就労を応援したい。そのためには、本人の同意など一定の条件の下、最低賃金以下でも働けるような労働法制の特例も必要だと考える。
補足すると、当然、同賃金が望ましいですが、生きがいを求めて働きたい意欲のある高齢者の働く場の確保がままらない実態があります。なので、下限(例えば最低賃金の7割)を設け、その下限との差額を助成することも一案ですし、逆転現象を防ぐため、生活保護費との整合性も考えていきたいと思います。
とつぶやいて炎上した件がありました。


(この発言の路線を突っ走っていたら、私は国民民主党の支持者になっていたかもしれません。)

賃金は本人の同意によって成立する、良いこと言ってるじゃないですか。
下限設定や差額の助成といった蛇足はありますが、この考え方に概ね賛成です。賃金や労働条件、解雇について様々な規制を設けた結果、条件に合わない人は排除され締め出されるのです。
この労働者が労働市場から締め出される度合いは、最低賃金が上がれば上がるほど強くなります。
上記の妄想で描いた時給10,000円にもなれば、ほとんどの労働者は職を失っていることでしょう。

年金デモのくだらなさ ~ 少子高齢化における賦課方式で将来を保障することの難しさ ~

2019年06月21日 | 政治
ゲームに夢中でツイッターやニュースをほとんど見ていない間、こんな出来事があったそうで。
波に乗り遅れました。完全に出遅れました。

【「年金やめろ」デモでなく「年金払え」デモだった】

「年金払え」デモに2000人=政府に怒りの声-東京 2019年06月16日17時07分
=====【引用ここから】=====
 老後資金に年金以外の2000万円が必要とした金融庁の報告書をめぐり、政府の説明や年金制度の改善を求めるデモが16日、東京都内で行われた。ツイッターの呼び掛けなどで約2000人(主催者発表)が集まり、参加者は「暮らせるだけの年金を払え」と怒りの声を上げた。
=====【引用ここまで】=====

最初、年金デモと聞いて

「少子高齢化における賦課方式の年金は、今の高齢者を厚遇する将来世代泣かせの悪政だ。金融庁の報告書でもこのことは明らか。違法とされる『ねずみ講』よりむしろタチが悪い。年金制度の早期清算・廃止を求める!」

ってデモなのかと勝手に想像していました。
ところが、このデモの主張は

暮らせるだけの年金を払え

とのこと。
これにはちょっと賛同できません。

今まで自分が払った保険料は、ほぼ全額、支払った時点に存在した高齢者への年金支給として費やされています。
「自分が高齢者になった時に年金が支払われるかどうか」
「どの位の水準の年金が支払われるかどうか」
は、その時点で保険料を払ってくれる人がいるかどうか、幾らくらい払ってくれるかに依存しています。

保険料を払ってくれる人が少なくなった時、政府は、年金支給開始年齢を遅らせたり、支給額を減らしたりすることで年金制度そのものは維持するよう努めるでしょう。現にそうしてきました。
厚生年金制度の発足当時、支給開始年齢は55歳だったそうですよ?
今は65歳で、今後70歳や75歳へ延長もあり得るそうですよ?

こうした意味で、年金制度を破綻させずに維持させ続けることはできます。
しかし同時に、賦課方式の年金制度は、その時点その時点における保険料を支払ってくれる現役世代の人数や懐具合に依存せざるを得ないため、事前に政府と国民との間で景気の良い約束を交わしても空手形に終わることでしょう。

【「年金払え」デモに現役世代がいる怪】

暮らせるだけの年金を払え

というデモに押されて政府が現時点での年金支給額を上げたとしても、長続きさせることはできません。現役世代が20年後に年金を貰えるかどうかは、今の政府への圧力ではなく、20年後の現役世代が支払う保険料と高齢世代の数に依存します。

なので、「暮らせるだけの年金を払え」デモに参加して一時的にであれ得をするのは高齢者のみであって、デモ参加者は当然高齢者のみ・・・と思ったら、違いました。

=====【引用ここから】=====
 参加者は「老後を守れ」「2000万はためられない」などと書いたプラカードを掲げた。2歳の息子と加わった自営業の男性(46)は「老後に備えようにも余裕はない。報告書を引っ込めて解決するのか」と訴えた。
 友人と参加した千葉県船橋市の女性会社員(23)は「社会人になり、問題意識を持った。不安なまま(年金保険料が)天引きされており、きちんと説明が欲しい」と批判。高校で社会科を教える男性教諭(28)は「生徒から『年金は大丈夫か』と尋ねられても答えに窮する。政府はごまかさず、議論のきっかけにすべきだ」と語気を強めた。

=====【引用ここまで】=====

コメントが紹介されている人の年齢が、(46)(23)(28)。
ビックリです。
本当にビックリです。

既に年金を貰っている人、あと1年2年で年金を貰えるようになる人が参加するなら「自己中心的だなぁ」と思いつつも一応納得できるのですが、現役世代が参加する意味が分かりません。

【デモ参加者の疑問Q&A】

そんな現役世代デモ参加者の疑問や主張に対し、私なりに答えてみます。

Q1.「老後に備えようにも余裕はない。報告書を引っ込めて解決するのか(46歳男性自営業)」
A1.「『暮らせるだけの年金を支払え』というデモに参加して、今の受給者である団塊の世代への年金支給額を仮に増やしてしまったら、46歳男性が年金受給開始するまでの約20年間で老後の備えどころか、保険料の名目で政府から搾り取られて今の生活を脅かされることでしょう。その後、暮らせるだけの年金を受け取れる保障はどこにもありません。
なお、年金制度が続けば、2歳の息子さんに大変な負債を残すことになります。」


Q2.「社会人になり、問題意識を持った。不安なまま(年金保険料が)天引きされており、きちんと説明が欲しい」(23歳女性会社員)
A2.「問題意識を持ったのなら、デモに参加する前にやるべきことはたくさんあります。年金財政について勉強するのもその1つ。受け身で説明を求めるのではなく、自分から情報を取りにいきましょう。官公庁のホームページでいろんな資料を読むことができますし、書店で様々な解説本に触れることもできます。
なお、私は、政府がきちんと説明し不安が解消されたとしても、保険料天引きは正当化されるものではないと考えています。天引きシステムは制度に対する国民の無関心を増幅させています。」


Q3.「生徒から『年金は大丈夫か』と尋ねられても答えに窮する。政府はごまかさず、議論のきっかけにすべきだ」(28歳男性高校教諭)
A3.「政府は、年金支給開始年齢を遅らせたり支給額を減らしたりすることができる(現にしてきた)ので、年金制度自体の存続という意味では大丈夫です。制度維持の観点では、『100年安心』はあながち嘘ではありません。
ただ、老後の生活保障という意味では、大丈夫という約束は無意味です。高校生が高齢者になった時点の少子化・高齢化の度合いや、現役世代の懐具合に依存するからです。
なお、政府の手による物価上昇さえなければ、自分の蓄えで老後に備えることができるようになります。高校生の皆さん、『暮らせるだけの年金を支払え』デモに参加する教員へ冷たい視線を投げつけると同時に、政府の歳出拡大・国債発行・金融緩和に反対の声をあげていきましょう。」