若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

人口問題と財政問題 ~ 行橋市政ウォッチ ~

2022年01月14日 | 地方議会・地方政治
知人のところに、「有言実行」と銘打った行橋市政に関するリーフレットが投げ込まれていました。
以前に私が書いた記事のテーマと重複している部分がありますので、読んで感想を述べたいと思います。

参考・以前の記事
田中純・行橋市長の「公約」「実績」を検証してみるコーナー - 若年寄の遺言

結論は、以前の記事と同じです。
8年間で行橋の人口問題、財政問題は改善していない。むしろ悪化している
ということです。

【行橋市の人口問題】


それにしても、表紙で笑ってしまいました。
有言実行
ですってwww

過去の選挙公約で
「人口10万人構想!」
とぶち上げていた行橋市長。

言ったとおりに実行しているのか。
2期8年を経た成果は、住民票ベースで

平成26年2月末の人口 72,830人
令和3年10月末の人口 72,830人

という、甘めの評価でも横ばい、ピーク時を考慮すれば人口減少が始まっています。
どこが有言実行なのでしょうか。

令和3年3月、市議会で工藤政宏市議から、田中純市長の人口10万人構想の公約を問われた際に、
リアルにこの人口減少時期に、リアルになるということは、私自身もクエッションだなということは、当時から申し上げていたはずであります。
などと供述する田中純市長。
自身の公約の実現可能性を自分で「クエッションだな」と否定し開き直る市長に、有言実行を求める。
木に縁りて魚を求めるようなものです。
このパンフを作った方々も、なかなか皮肉が効いています。

なお、

このグラフは国勢調査の人数なので、5年刻みでしか推移が分かりません。

グラフ中に「人口増に連動した税収曲線」とコメントが入っていますが、これもおかしい。
住民税の税収につながるのは住民票で把握している人数なので、税収と並べるのであれば国勢調査の人数ではなく住民票上の人数を並べないとおかしい。住民票上の人数を並べると人口減の開始が見える化されてしまうので、隠すために国勢調査の人数を使ったのでしょうか。

税収の増加については、総務省の資料を見る限り全国的に微増を続けています。自治体における税収増は全国的な傾向です。この8年の間に消費税増税をはじめとする税制改正が幾度か行われており、これが原因だと考えられます。
これを、田中純市長が実施した事業によって増えたと評価するのは困難です。実際、人口増えてないんだし、高齢者だけ増えてるんだし。

【行橋市の財政問題】

次に、



こちらの数字は、数字自体は合っていそうです。
私の以前の記事で紹介した数字を改めてご覧ください。
地方債は、
平成25年度決算
地方債現在高    173億 827万1千円 
うち、
臨時財政対策債    88億5738万5千円
(差し引きの債務)  84億5088万6千円

令和2年度決算
地方債現在高    214億8623万9千円
うち、
臨時財政対策債   101億4597万1千円
(差し引きの債務) 113億4026万8千円


そして、基金は、
平成25年度決算
基金全体   91億6771万2千円
うち、
財調基金   34億 815万7千円
減債基金    3億6627万2千円
その他    53億9328万3千円

令和2年度決算
基金全体  134億9950万2千円
うち、
財調基金   47億7899万3千円
減債基金    3億7168万6千円
その他    83億4882万3千円


ということで、パンフレットの数字自体は合っています。

問題は2点。

まず1点目は、基金の数字。
パンフレットの基金が全部込み込みの数字になっていて、比較対象を誤っているということです。

市の借金からは臨時財政対策債を除いているのに、基金は全ての基金込み込み。
基金の中には、借金に充てられない、使途を限定されたものが多数存在します。
借金の増減と比較すべき基金は、そうした特定目的基金を除く部分で見なければなりません。決まった目的があってそれ以外に使えない積み立て、こうしたものを除いた基金の残高はどうなっているでしょうか。
上記基金内訳の財調基金(自由に使える基金)と減債基金(借金返済のための基金)の合計は、

平成25年度 令和2年度
 37億7千万  → 51億4千万

と、13億7千万円しか増えていません
臨財債を除く借金は

平成25年度 令和2年度
 84億  → 113億

と、29億円も増えているのに、です。

2点目として、この、臨時財政対策債を除く地方債が増え続けている事自体がヤバい、ということです。
こちらをご覧ください。



これは全国の数字をグラフ化したもの。
グラフの上部の赤い部分、臨財債は毎年増え続けています。しかし、赤い部分の下、臨財債を除く地方債は減り続けています。これが全国的な傾向です。

たとえば、最近、財政破綻するのではないかと話題になっている京都市。
トータルの債務は増えていますが、臨財債を除く市債は徐々に減っています。

※参考 12分40秒頃から
【なぜ京都は貧乏?完結編】臨時財政対策債の闇!国めちゃめちゃ悪い説を検証してみた


財政破綻が話題になる京都市ですら、臨財債を除く地方債は減らしています。
他方、行橋市では臨財債を除く地方債が29億円も増えています。全国的な動向と真逆を進んでいます。

人口増を目指し積極財政に打って出たものの、人口は思ったように増えなかった。
積極財政に打って出たのに、これをペイするだけの税収増に結び付かず、結果、地方債が増えた。

これが今の行橋市です。

(追記)
リーフレット中に、
「平成30年度 ふるさと納税額 全国13位」
とありますが、この頃、地場産品でも何でもないipadを返礼品にして、総務省から怒られてましたよね。


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5 コメント

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Unknown (庶民A)
2022-02-02 00:22:49
現職市長のリーフの件ですが、住民基本台帳で見る事に私も若年寄りさんに賛成ですが、人口の増加には至っていていないという見解にはちょっと懐疑的です。

人口が大幅な伸びを達成していないのは事実ですが、
それではなぜ地方税が伸びているのでしょうか?
気になったので、ある人に聞いたら、
その人曰く、人口の伸び悩む状態で地方税が上昇しているのは、働く人が増えているから。と単純なものでしたが、
どう思われますか?

私個人としては人口減でも、働く人が増えて歳入が潤うのであれば、それに応じて歳出が多少なりとも増えるのは、
健全な感じを感じるのですが、
やはり、他候補がよく言われてた行橋の財政破綻はあり得るのでしょうか?







働く人が増えているそうです。
返信する
Unknown (若年寄)
2022-02-16 17:36:29
人口と世帯の詳細情報 | 行橋市ホームページ
http://www.city.yukuhashi.fukuoka.jp/doc/2013062600024/

田中市長就任時(平成26年3月)の行橋市の人口と内訳
総人口  72,698人
15~64歳 43,964人
65歳以上 18,785人

令和4年1月の行橋市の人口と内訳
総人口 72,687人
15~64歳 41,186人
65歳以上 21,879人

この8年間で、高齢者が3,000人増えて就労年齢人口が3,000人減っている、というのが中身です。
なので、
「働く人が増えている」
というのはちょっと考えにくい状況です。

税収増加は、行橋市の施策ではなく全国的な税制改正(消費税率アップ、控除の見直し等々)によるものと考えられます。この数年間で全国的に地方税収入は増えていますから。
返信する
Unknown (yoshimitu)
2022-02-22 21:50:07
ご返信ありがとうございました(^^)

若年寄り様のご返信内容を改めてその人に
伺いましたら、"課税状況の調"をみればよくわかると
いうことでした。

「生産年齢人口にこだわらず、まずは働く人が
増えている事で地方税収との相関
がかなりとれる!と言ってました。
単純に考えればそういう事です。」

ちなみにリーフの市税には、地方消費税交付金は
含まれていないとの事です。

なんかチンプンカンプンになってきました。
ワケワカメです。

ご教授お願いします。
返信する
Unknown (若年寄)
2022-03-05 09:45:14
総務省が掲載している課税状況等の調を見てみたのですが、多くの自治体で見てとれる傾向として、

「人口減・均等割納税者数微増」

か、

「人口横ばい・均等割納税者数増」

になっています。
控除や扶養をはじめとする制度の見直しで課税対象となる人が増えたこと、また、この8年間で定年延長の流れが加速したこと、などが要因として考えられます。
これは、行橋市の田中純市長の功績ではなく、全国的な流れです。田中純市長の人口増施策が功を奏したと評価するのは難しい。
返信する
Unknown (yoshimitu)
2022-03-07 21:42:19
ありがとうございます。

結局のところ、地方税収の増加は
「働く人が増えたから。」という事ですね。
あれから、地方自治について、ちょっと勉強しました。

よくよく考えると、人口減少は国レベルの話しなので、
ひとつの地方自治体でどうにか出来る事ではないですね。
労働者の使えるお金が減少する昨今、経済成長もままならず、年金だけで食べていくのが厳しい人が働き、外国人労働者も増えて地方税収が上がっているのですね。

確か田中市長は財政健全化をする為に人口増加を掲げてましたので、地方税収が伸びているのは市長としては、喜ばしいのではないでしょうか。

まず、働く人が増えなければ住民サービスは維持は出来ませんし、働く人が増えるのは働く場所があるからなので、ベットタウンとしての位置付けを念頭に、インフラ整備やインパクトのある施策を断行したのではないかと思います。(批判は様々ですが・・・特に彫刻展。さすがにあの彫刻は、どこかの公園に移した方がいいですね^^;)

しかし、この不安定な日本の社会情勢の中、(米中貿易摩擦、コロナ、消費税10%)非常に良くやっていただいたのではないかと思います。人口減少も軽微なものです。財政上も問題はないと思いますが・・・。

田中市政の3期目の施策を上回るものは、今回の選挙では
見受けらないのに(そもそも、他候補は政策はあっても、まともな施策がない。)マトモな論戦すらなくネガティブキャンペーンで終わってしまい残念な結果だと私個人は思ってます。

次期市長の重点政策は首長がやる事ですか?(リーフより)
どうですか?全てが人任せのようですが・・・。同じリバタリアンとして見解をお願いします。
返信する

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