「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

大丈夫だと言ってやりたいだろ、相手が墓であっても

2018-10-07 | どうして留学しようと思ったのか
先日、とある研修医に問われました。
「先生はどうして放射線の研究をしているのですか?」と。

自分にもたしかに研修医と呼ばれる時期があったのですが、もう、随分と昔のような気がしています。しかし、ある種の懐かしさと悼みをもって、あの頃のことを振り返ることがあります。今でも福島に居た頃のことを時々思い出すのです。

福島原発被災地で私は幾度も不条理を見たのでした。
原発が爆発して、放射性物質がばらまかれて、故郷を追われた人達がいました。そして、私はあんな最期を迎えるべきではなかった人達を看取りました。「家に帰りたい」と言いながら、亡くなっていった人達を。

「あなたが放射線研究をしたところで何かが変わるか?」と問われたら、何も変わらないと答えるしかないのかもしれません。しかし、誰かが放射線がヒトに与える影響をもっと研究すべきでしょう。被災者の方々に対してちゃんと大丈夫だと言ってあげられるように。

だから、私は言いました。
「福島は大丈夫だと言ってやりたいだろ、相手が墓であっても」と。

まあ、言ったことに対してはそれなりに責任をとるつもりです。


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