「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

講演の上手いひと下手なひと

2017-07-28 | 学術全般に関して
当たり前の話ですが、面白い話を聞けば楽しいし、つまらない話を聞けば退屈を覚えるものです。それは、もちろん、科学の世界でも同様です。

私も、これまでに色々な機会に、様々な話をしてきました。話題も違えば、聴衆も異なるものですから、いつも同じ話をするわけにはいきません。したがって、毎回、それなりに工夫して準備して、本番に臨むわけです。
私は今までにも幾つか講演賞や発表賞なるものを頂戴していますので、客観的に見て、どうしようもなく下手というわけではないのでしょうが、しかし、上手いかと言われるとあまり自信がありません。準備が上手く行っても本番にミスしてしまうことがあるし、逆もまた然りです。とはいえ、もちろん、準備を入念にした方が上手く運ぶ可能性が高まるのは判っています。常に抜群のパフォーマンスが出来るわけではありませんが、聴衆に「時間の無駄」とは感じさせないように、それなりに頑張ることにはしています。
ただ、私がどんなに努力しても「上には上がいる」ということもよく判っています。したがって、一番であろうとするのは無理だと重々承知しています。

あくまで私見ですが、欧米人の方が講演が上手い人が多い気がします。ユーモアがあるし、全体のバランスもいい。講演というものが一方通行ではなく双方向性であることを教えてくれるように、いつも聴衆とのコミュニケーションを意識している方が多いように感じます。一方で、日本人は下手くそが多いと思います。

その原因としてはおそらく「聴衆は黙って聞け」というスタンスがどうしても多いからでしょうか。
この傾向は著明な科学者であってもそうで、ノーベル財団が配信している受賞者講演などを観ていても、僭越ながら、「日本人受賞者の先生方の講演は残念ながら圧倒的につまらないことが多い」と感じます。ノーベル賞以外の高名な科学賞、例えばガードナー国際賞や京都賞などでも、Youtubeなどで受賞者講演が配信されているのですが、日本人の大御所の先生方の英語の講演ははっきり言って稚拙です。科学的にはとても重要な発見や技術についてお話しされているのに、伝え方が下手な方が多いです。
つまり、淡々と、一方的に自分の研究の話を垂れ流しているだけなのです。

一方で、もちろん、業績に優れるだけでなく講演もとても上手な著明科学者もいます。
たとえば、iPS細胞の開発の業績でノーベル賞を受賞された山中伸弥教授です。留学時代にプレゼンテーション技術に関する講義・実習で学ばれたことがあるという話を伺ったことがありますが、おそらく努力されたのだと思いますが、たしかにユーモアを交えて、面白くお話しする術に長けていらっしゃいます。私も幾度か彼の講演を聞いたことがありますが、そのたびに「凄いな」と率直に思ったものです。話の内容はもちろん、そのプレゼンテーションの巧みさに対しても。
また、東北大学加齢医学研究所の所長で、いわゆる「脳トレ」で高名な川島隆太教授のプレゼンテーションも素晴らしいと私は思っています。一時は上司の上司でもあったので(もちろん先方は末端の私の存在なんてご存知なかったと思いますが)、彼の話を聞く機会は幾度かありましたし、英国のUniversity of Readingから配信されている彼のレクチャーを観て改めて「凄い」と感じたのでした。
お二人に共通されるのは、もちろん科学的な業績もありますが、やはり聴衆とのコミュニケーションの上手さだと思います。おそらく場数も相当踏んでいらっしゃるのでしょう、大舞台でも動じずに堂々としていらっしゃるのは確かな経験があってのものでしょう。

私も、講演の上手い先生方の真似をして、すこしでも良い話が出来るようになりたいなと願っています。