「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

留学生には、優しくしてあげてください

2016-11-14 | 留学全般に関して
私の母校や仙台の職場には留学生が比較的多くいました。なぜならば、学風からして、そういう大学だったのでした。研究の質もそれなりに高かった。大半は中国からの方々とはいえ、中には比較的珍しい国からいらっしゃっている留学生がいることも知ってはいました。
しかし、ここに来る以前の私は、留学生の方々に関心を持っていませんでした。自分のことで精一杯だったという言い訳も出来なくはありませんが、やはり、無関心であったというべきでしょう。
むしろ、我ながら、欧米視点で作られた世界大学ランキングとやらの順位上げのために一生懸命に留学生を集めようとしている大学当局をやや冷ややかに見ていた面さえあったと思います。そんなことより大事なことがあるだろうと。つまり、大学の研究・開発の競争力をとにかく高めなければならないと。
サイエンスとテクノロジーで他を圧倒すれば、どうせ国際化は自然とついてくるものです。今も昔も、留学生はその時点での世界トップレベルの質を誇る場所にこそ集まるのです。そんなことは世界の科学史を知れば明らかです。今はたまたまそれがアメリカとイギリスであり、結果として、英語が世界最強の言語になっています。

そういう留学論はさておき。

今ここで日本人留学生がごくわずかしかおらず、外国人の集団の中にぽつんといる我が身を振り返ると、「ああ、あの時、もっと彼らに優しくしてあげれば良かった」とよく思います。なぜならば、私が研究センターの人たちから優しくされるたびに、とても嬉しく感じるからです。
わざわざ「コンニチワ」「オハヨウゴザイマス」と日本語で声をかけてくれる人たちがいるのですが、日本人なんて研究センターには私しかいないのですから、それはつまり私のために日本語をすこしは覚えてくれたということでしょう。私が拙い英語でどうやって伝えればいいか困っている時も、辛抱強く耳を傾けてくれる人たちばかりです。もちろん中には冷たいというか、私が「英語という外国語をわざわざ使っている」ということに無関心な人もいます。それはそれで仕方ないです。
とにかく、異邦の地で優しくされると、「惚れてまうやろ!」というのは冗談ですが、とても嬉しいものなのですね。時々、涙が出そうになるくらいに。

私も、留学生というある種の弱い立場になって、改めて気づくことが沢山あります。なるほど、ちょっとした親切でさえも、留学生にとってはとても有難いことだったのだと。だから、私もいつか母国に帰ったなら、留学生には出来る限り優しくしてあげたい――それがきっと「恩返し」になると信じて。