「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

World Diabetes Day 世界糖尿病の日 2017

2017-11-14 | 2017年イベント
本日11月14日は「World Diabetes Day 世界糖尿病の日」として知られています。どうして今日が糖尿病に関係するのか長い間ずっと疑問だったのですが、最近Google先生に教えてもらったら、「インスリンを発見したカナダ人医師フレデリック・バンティング Dr. Frederick Banting の誕生日に由来する」とのことですね。
この日はあちこちでブルーサークルが掲げられ、ブルーのライトアップで彩られます。Belfastにも特別なブルーのライトアップがあるかなと思って、大学周辺を探してみたのですが、残念ながら私には見つけられませんでした。

さて、1921年にバンティング医師らが発見したインスリンについて、東北大学関係者の端くれとしては、熊谷岱蔵(くまがいたいぞう)にも言及しなければならないでしょう。バンティング医師とほぼ同時期に、独立に、日本でも血糖値を制御する因子(つまりインスリン)を報告し、解析していた医学者がいました。それが東北帝国大学医学部教授の熊谷岱蔵でした。

Kumagai, T., Osato, S. Experimentelles Studium der inneren Sekretion des Pankreas. Erste Mitteilung. Tohoku Journal of Experimental Medicine 1920;1:153-166.

論文は東北大学が刊行する総合医学誌Tohoku Journal of Experimental medicine創刊号に掲載されています。このドイツ語論文が1920年ですから、バンティングらがインスリンを精製して物質的基盤を与えた1921年よりも前ですね。研究業績の大きさとしては、やはり実際にインスリンを精製し、臨床応用したバンティングに軍配が上がるとは思いますが、熊谷の研究が世界のトップを競っていたことがよく判ります。
インスリンの他にも熊谷教授は様々な医学テーマに取り組まれ、多彩な業績を残しています。その後、東北帝国大学第7代総長(最後の東北「帝国」大学総長でした)、附属抗酸菌病研究所(現:加齢医学研究所)初代所長などを歴任しました。

北里柴三郎の後、明治時代後半には日本の医学研究は西洋に追いつき、第二次世界大戦前も一部では当時のノーベル賞受賞者らをも凌駕する成果を挙げていました(山極勝三郎らの発がん実験の成功、高木兼寛らの軍艦「筑波」による航海実験の成功など)。熊谷岱蔵もその1人だったと言えるのかもしれません。

私は浅学非才の若輩ですが、偉大な先達のせめて足元くらいには及ぶように、頑張りたいものです。