「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

南相馬市の帰還

2016-07-12 | 留学するまでの色々
ここ最近、関東と東北の間を幾度も往復しています。先日、その途中で、はじめて福島名物の凍天を食べました。なんだか、やけに美味しくて、ちょっぴり涙が出ました。
連日の当直業務もあって、すこし身体的に負担を感じていました。しかし、そんな私の状態には関係なく、凶報が立て続けに届きました。他人の目に見える範囲では平静を装っていますが、正直打ちのめされるような心地がして、ちょっと情緒不安定になる程度には動揺しているのでしょう。他人に迷惑だけはかけないようにと念じながら、なんとか仕事をこなしている状態です。

本日、南相馬市の避難指示が解除されました。
歴史的な出来事だと思います。

1万人以上の住民が帰還出来ることになりましたが、実際のところ、どれほどの方々が故郷に帰るのだろうと切なく思いました。小高駅も再び電車が停まるようになりました。あの駅前の綺麗な光景を見る人たちの数も増えるといいですね。

いつものことながら避難指示解除の目安はよく判りません。医科学的な根拠を欠いているような気がしますが、おそらくは政治的な影響も考慮してのことなのでしょう。私個人としては低線量放射線被ばく影響のことがよく判っていない現状をもどかしく思っているので、「はい、今日から故郷に帰れますよ、良かったですね」なんて簡単には言えません。
とはいえ、公立相馬総合病院で勤務していた時、幾人かの患者さんが「生きている間に家に帰りたかったなあ」と言いながら息を引き取るのを見てきました。その方々の無念さを思い出しながら、理由はともかく、今だけは「帰ることが出来る」ということをひっそりと祝福してあげたいと思います。

私の知人にも今回の避難指示解除の恩恵を受ける人たちが少なくありません。
これまで頑張ってきた人たちが報われるといいなと願っています。