Fのぼやき

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悪い標準は,標準がないことよりも悪い

2005-06-23 22:00:47 | セマンティックWeb
「従来のEJBは存在自体が間違いだった」――軽量コンテナ「Spring Framework」開発者のRod Johnson氏吠える : IT Pro ニュース
Spring Frameworkの開発者Rod Johnsonさんがかなり刺激的な持論を言っている。数年前登場した
J2EEのコアでもEJBあるに対して全否定をしているのだ。EJB自体が高性能(無駄に?)すぎて実際の使用に際して性能面で問題になることはいたるところで議論されてきた。標準とはいわれているものの、「EJBは使ってはならない」というのが業界でも暗黙の了解になっていたっぽい。実際EJB3.0では、今までのEJBに対して大幅な変更が加えられる。

この話の中でJohnson氏は次のような話をしたらしい

「標準化がうまくいくのは,トランザクションのような何十年も使われていてそれほど変化がない分野」とJohnson氏は語る。一方,イノベーションがある分野は,標準化よりも市場での競争にゆだねるほうがうまくいくという。

たしかにエンタープライズアプリケーションのフレームワークはフリーのものだけでもStrutsやJSFなどのWebアプリケーションフレームワークやSpringやSeesaaなどが乱立している。さらにいうとAOPやアノテーションなどの新たな機能もやまほどあるわけで、それらが淘汰されていくことにより成熟していくと考えられる。現状がそのような状態なのだから2,3年前にまともな標準が作れるはずがないというのはもっともな話だ。

このJohnson氏の仮説によって考えれば間違いなくダメな標準なのはOWLである。たしかに何十年も研究されてきたが、それは淘汰されてきたというよりも紆余曲折してきたというのが正直な感想だ。現在のOWLはJ2EE1.4にまけず劣らず扱いづらい(W3C自体もなんとかしようとしているが・・・)。
そもそも誰も使ったことのない機能を追加するにあたって、万人に受け入れられてもらえるような標準を策定しろというほうが無理というものだ。

実際現在のOWL自体はDescription Logicと呼ばれる飽くまでもローカルシステムでの処理のみを考えている論理を基にしているため、Webのような究極の分散環境で上手く動くとは到底思えない。

RDF自体は一応の成功を収めているし、これにセマンティクスを与えることにより機械可読な知識の提供ができれば、サービスの幅も大きく広がる。しかしその記述言語の(本当の意味での)標準が登場するのはもうしらばらく時間が必要なのかもしれない。

「A Semantic Web Primer」の翻訳本

2005-06-03 21:36:31 | セマンティックWeb
出版物・テキスト:CD-ROMで始めるセマンティックWeb
Frank van Harmelen(人工知能の大御所らしい)「A Semantic Web Primer」の翻訳本がJust Systemからでた。セマンティックWebの入門書としては神崎本が有名だが、日本以外でより有名な入門書はこのPrimerだと思う。
神崎本がやや実用目的に本を書いていたのに対し、Primerは大御所らしく学術的な視点で書かれている。両者の大きな違いはそのサンプルソースに現れるだろう。Primerのサンプルはまさに知識表現という言葉がふさわしい、各概念を綺麗に表現しているのが特徴だ。
以前新人研修の課題を出した際神崎本とPrimerのどちらを参考文献にするかを悩んだ際も、知識表現などについても考慮している点からPrimerを推した記憶がある。

そのPrimerだが今回の翻訳本では悲しいくらい俗物的な名前がつけられている。5年前ならいざ知らず今更「CD-ROMで始める」はないだろう。今日発見してかなり驚いた。一応Harmelen先生の本を翻訳するのだからもう少しなんとかして欲しかった。

W3Cのバーナーズ‐リー氏、セマンティックWebの牽引役としてライフサイエンスに期待

2005-05-21 18:48:45 | セマンティックWeb
ITmedia エンタープライズ:W3Cのバーナーズ‐リー氏、セマンティックWebの牽引役としてライフサイエンスに期待
いつも思うのだが、TBLはいつも技術をユーザの関心と違うところにもっていきたがっているようだ。この記事を読んだ人は改めてセマンティックWebへの誤解を深めると思う。

セマンティックWebの新レイヤーケーク

2005-05-12 00:53:29 | セマンティックWeb
ちょっとしたメモ - 2005版セマンティック・ウェブ・スタック
セマンティックWebのレイヤーケークが変わるかも知れない。

どうやらDL(Description Logic)ベースのOWLからDLP(Description Logic Programming)ベースのOWLになりそうだ。

これはOWL Flightなどに共通する論理への切り替わりであり、現在のOWL DL/Liteなどに比べ推論が楽になる。というのも従来のPrologベースの第5世代コンピュータで開発された推論エンジンが利用することができるようになるのだ。

DLの推論は非常に低速でありOWL DLに対しては実時間内での推論エンジンが現状ではないといわれている。それに比べたら第5世代コンピューティングでの推論はかなりましである(必ずしも高速だとは思わないが、、、)。

とにかくこの流れは非常に好感の持てる話だ。

WWW2005パネル・ディスカッション

2005-05-12 00:45:31 | セマンティックWeb
ちょっとしたメモ - WWW2005パネル・ディスカッション
Web KanzakiでWWW2005のパネル・ディスカッションの内容が紹介されていた。セマンティックWebに積極的な会議なのでありがたい。

神崎さんもいれて4人のディスカッションらしいが、この中でもセマンティックWebに対するイメージに微妙な違いがあるようだ。

一応神崎さんによる、4人の意見を挙げておくと

神崎さん:メタデータを用いた高度な検索は比較的進んでいるがオントロジ共有、エージェントなどはまだまだ。セマンティックWebに興味をもってもらうのが重要。今あるメタデータをもっとセマンティックWebに組み込もう。

Jim Hendler教授:教育、アウトリーチによってもっと利用者からデータが出てくることが重要

Zavisa Bjelogrlic (SW関連の起業家):何でもありではなくて、よりターゲットを明確にしたアプリケーションが必要

Bernadette Hyland(ソフトウェア開発会社):
さまざまなIT企業の取り組みを例示しながら、セマンティック・ウェブへの取り組みが実際に進みつつあることをふまえた考察

と4人ともそれぞれの背景そのままの意見を言っているw
つまりユーザ代表(?)の神埼さんはセマンティックWebによるメタデータの標準化、アカデミック代表のJim HendlerさんはWeb上での知識の共有、SWベンチャー代表のZavisa BjelogrlicはセマンティックWeb技術の有効利用法、ビジネスの視点をもったBernadette Hylandさんは一部の企業がセマンティックWebにやや興味を持っているということを言っているようだ。

恐らく神埼さんの考えているセマンティックWebはまず間違いなく実現できると思うし、実際にすでに始まっている。そしてRSSに代表されるその社会的インパクトは現時点でも相当大きい。すでにセマンティックWeb(もしくは同様の思想)によってWebは変わったといっても過言でない。これに関してアンチ派は「RSSはセマンティックWebじゃない」というかも知れないが、そんなことはないRSSも立派なセマンティックWebだ。

他の3人の意見はどうだろうか?
恐らく神崎さんの場合と違いアンチ派は否定する立場をとるだろう。ただそれは単に立場の違いだと見るのが妥当だ。多くのアンチ派はセマンティックWebに対してユーザーの視点で物事を考えているようだ。それに反して3人はそれぞれの立場からある特定の問題の解決策としてセマンティックWeb技術を使おうと考えているように見える。

今まで公の場では多くの場合3人のいったような意見に焦点があたっていた気がする。これらの意見は専門的であり、特定の学者や開発者が考えるべき問題である。利用者には目に触れないところでやるべきだろう(価値は多いにあるとは思う)。神崎さんのようなわかりやすいセマンティックWebのイメージを提供し、利用者に興味を持たせることが大切だと思う。