SPIDERS IN LOVIN' COOL

ケロロ軍曹(主にクルドロ)や、名探偵コナン(主に平和)の小説。
毎週土曜日は「今週のクルドロ萌え」を予定。

俺が曹長になったワケ(ケロロ軍曹【クルル×ドロロ】)

2008-01-28 17:24:29 | ケロロ軍曹(クルル×ドロロ)
俺は、気づけばその日も極秘軍部情報に不正アクセスしていた。
少佐の俺も覗くことを許されていない、アサシン情報だ。
別に大して興味はない。
だけど、ただ軍にいるだけじゃつまんねぇ。
単なる暇つぶし程度だ。
今どこに誰が潜伏してるとか、
誰がやられたとか、そんなの知ったこっちゃない。
俺は、他人になんて興味ない。
アサシン情報は莫大な量だ。
全ての情報を一日で見ることは不可能だった。
とりあえず昨日の続きからだ。

「ゼロロ兵長…か…」

名前だけなら俺も知ってる。
ケロン軍アサシンのトップで、
宇宙一武闘会7場所連続優勝という前代未聞の記録を出し、殿堂入りしたらしい。
特別興味はないが、とりあえず見てみるか…。

「おい…嘘だろ…?」

俺が今まで見てきたアサシンは、どいつもこいつも残酷な瞳をしていた。
だが、こいつは違う。
写真のゼロロ兵長は、綺麗な、澄み切った空のような瞳をしてやがる。
しかもかなり真っ直ぐそうな性格だ。
俺とは正反対、きっと。

「こいつがアサシントップなんて…」

俺でも勝てそうな気がする。
一目見ただけで、惚れることしかできない俺がいた。
正反対そうだからこそ、気になる。
磁石のN極とS極みたいなもんだ。
一瞬で惹かれちまった。
こいつを…他の奴に見せたくねぇ。
俺だけがこのデータを所有していたい。
他人には興味ないはずなのに、どうかしちまってるぜ、俺は。
俺は、ゼロロ兵長の情報を他の奴らに見られないよう、
アサシン情報を改竄してやった。
俺だけが、あんたを見れればいい…
あんたを他の奴らの目には入れたくない。

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「アサシン情報に不正アクセス、及び故意に改竄、
以上を踏まえ、クルル少佐はこれを以て、
実質のない曹長への降格を命ずる
異議はないね?」
「はい、異議ありません」

軍法会議にかけられた俺は、少佐の階級を奪われた。
それでいい。
少佐なんて暇な日常から抜け出したかった。
曹長なら、どっかの星に飛ばされ、少しは刺激的な日々を送れるだろう。
それに…曹長だったら…もしかしたらあいつに逢えるかもしれないしな。
軍人なんてたくさんいることは判ってる。
あいつに逢えるなんて考えが、生ぬるいってことも。

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曹長になっても、暇なのは変わらなかった。
通信参謀は、機動歩兵や暗殺兵と違って、実際に戦闘なんてしない。
戦闘相手の情報を収集して現場に伝える役目だが、
それもどこかの小隊に配属されての話だ。
現場の兵士と違って、訓練もない。

「なんだよ、これじゃ少佐と変わらないじゃねえか」

結局、あいつにも逢えてない。見かけることもない。

「クルル曹長」

上官がノックもせずに俺の部屋に入ってきた。
かつての部下。階級だけで態度を変えるなんて、よくあることだ。

「そろそろ君にも、別の星に飛んでもらおうと思うのだが?」
「いいっすよ、俺今のままじゃ暇すぎて、
じっとしてるの、柄にあわねえっすから」
「そうか。君を含めた5人でペコポンに行ってもらおうと思ってるのだが」
「どこでもどうぞ。」

俺には家族がいない。
この星を離れることに抵抗はない。
ただ…あいつに逢えなかったことだけが心残りだ。

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「ゼロロと申す。階級は兵長。よろしくお願いします。」

今目の前に立ってるのは、思い焦がれてたあいつだ。

「クルル曹長だ、よろしく」

握手を求められたが、拒否した。
少しでも触れたら、理性が利かなくなっちまいそうだったから。
なんて艶やかなんだ。俺は今まで、こんなに艶やかな男を見たことがない。

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クルル曹長、噂には聞いていたが、気難しそうな人だ。
小隊は、ペコポンを目指し、ケロン星を出発した。
母なる星が小さくなってゆく。

「寂しいのか?星を離れるのが」
「えっ?」

宇宙船を操縦しながら、クルル曹長が言う。

「いや…ただ、もう戻って来れないんじゃないかと…」
「なぁ…なんで寂しいんだ?」

何を言い出すんだろうこの人は。

「家族と離れ離れになります。
寂しくないわけがありません」
「じゃあ、益々わかんねぇ」
「………?もしかして、クルル曹長には家族がいないのですか?」
「…………あぁ」

メガネをかけているとしても、どんな瞳をしているのか判った。
なんて寂しげな瞳をしているんだろう。
冷たそうな手を、ギュッと握って暖めてあげたいと思ったが、
さっき握手拒否されたばかりだし、
嫌われたら今後の活動に影響が出そうだ。

「クルル曹長。あなた、今とても寂しそうな顔をしてますよ。」
「………まさか………」
「あなたは、寂しいことに慣れてしまっているんです。
慣れすぎてしまって、いつも寂しさと付き合ってきたから
逆に寂しいってことがどういうことなのか、判らなくなってるんです。」

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確かにそうかもしれない。
俺は、本当はずっと寂しかったのかもしれない。
異例のスピードで少佐まで上り詰めたが、周囲の視線は冷たかった。
出る杭は打たれる、あることないこと噂された。
曹長に降格になってから、ますます周囲に叩かれた。
俺と仕事で組みたがる奴なんて、一人も居なかった。
俺も特に気にはしてなかった。
俺の気持ちが判るのは、俺だけだと思っていたから。
だけど、実際は違ったんだ。
俺の気持ちを判っているのは、俺自身じゃなく、あんたなんだ。

「寂しいときは、素直に声に出して“寂しい”って言うことも大切ですよ。」

ニコっと笑って悟る。

「俺、あんたに逢えて嬉しい…かもな。」

ちょっと素直じゃなかったかな?
でも、今の俺にはこれが精一杯だ。

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「ク~ル~ル~くぅ~ん」

久しぶりにドロロがラボにやってきた。
修行で1週間、この街を出てたからだ。

「クルルくん、これお土産」
「土産なんていらねぇよ」
「なんで?折角買ってきたのに…
クルルくんが好きそうなもの、探すの大変だったんだからね!」
「土産なんていいんだよ。」

そういいながら、キツく抱きしめてやった。

「土産なんて無くてもいい…あんたが帰ってきてくれたから…
あんたがいなくて…寂しかった」
「…クルルくん…何甘えてるの?クルルくんらしくないよ、フフッ」
「おいおい、何笑ってるんだよ。
寂しい時はちゃんと声に出せって教えてくれたのは、
あんたの方だろ?それを笑うなんて」
「ゴメンゴメン、でも、素直なクルルくん、可愛いなって思って」

俺を素直にさせてくれるのは、いつもあんただ。
あんたの素直な瞳に、俺はあの時から惚れちまったんだ。

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僕は、やっぱり素直なクルルくんの方が好きだ。
もう、出来るだけ君に寂しい思いはさせない。
出来るだけ、君の寂しげな顔は見たくない。
綺麗に笑うクルルくんを見て、僕は満たされるんだから。


Fin


【あとがき】
無駄に長くなってクルドロの相手を思う気持ちがあまり書けなかった…
クルルはアサシン情報を見たときからドロロに惚れて、
ドロロ(ゼロロ)は宇宙船でのクルルの寂しげな瞳をみて気になったってことにしてください。
あとがき書かないと伝わらないって…(爆)
しかし、青年ゼロロがどんな喋り方をするのか判らなかったよ。
忍びの村にたどり着く前ですし…。