「平次、さっさとお風呂入ってしまい!!」
おかんの声は2階のオレの部屋まで響く。
「へいへい」
オレは買ったばかりの推理小説を読み切ってから風呂に入ろうかと思っとったが、
口答えすると言い負かされてまう相手なので、
ここは素直に従っておいた方がめんどくさくならんで済むと思い、
1階に降りることにした。
「あれ、オヤジは?」
家の主の姿は見当たらんかった。
「今日はそないに遅うならんゆうとったけど…まだ帰ってきてないで」
「さよか…ってもう11時やんけ!!」
「しゃあないやろ、仕事が仕事なんだし」
まあ、家におらんのはいつものことやし、
そないに珍しいことでもないんやけど…。
「ふぅ~極楽極楽~」
お湯に浸かりながらそないなことを言ってしまう自分は、
17歳にして既に年寄り化してるわ、なんて思う。
「平次、入るで」
「うわぁっ!何やねん、オヤジ」
いつの間に帰ってきたのか、家の主は風呂に入ってきた。
「オレが入ってるのに何やねん」
「ええやないか、たまには平次とゆっくり話そ思ってな」
何を話すねん…と思う。
大阪府警本部長の父は、冗談が通用せん、どっちかっちゅうと無口で強面。
そんな父が話したいこと…さては事件かなんかの相談か?
「と…とりあえず、お背中流しましょか?」
「あぁ」
自分の親と喋ってるとは思えへん程緊張する。
昔からこないに緊張しとったっけ?
相変わらず広い背中やな…。
「平次…」
「なん?」
「お前今高3やろ?」
「はっ?オレは高2やけど?
オヤジ、大切な一人息子の学年も知らんのかいな」
「そうか、すまんな。
いや、最近見るたびに大人っぽくなっとると思って。」
…………………………………………
しばしの沈黙。
忍耐ゲームかいな。
「平次」
先に口を開いたのはオヤジの方やった。
「お前、進路はもう決めてるのか?」
自分の進路を気にかけてくれてることが、意外で驚いた。
「あぁ、一応だいたいは…」
「東京大学に行くんか?平次の成績なら入れるって、静がゆうとったが」
だいたいオレのことはおかんを通してオヤジに伝わってるらしい。
「東大には行かへん」
「工藤くんは東大行くんやろ?」
オヤジは工藤の高校生姿には逢ったことはないし、
あのちっこい小僧が工藤の変わり果てた姿だと言うことも知らん。
唯一知っとるのは
【西の服部、東の工藤】
と世間でオレと並び称されてること。
そして、オレの大親友やっちゅうことくらい。
「いや、工藤とは事件の話ばかりで、
進路の話せぇへんから分からんよ。」
「平次は、どこの大学に進むんや?」
今オレの進路がそんなに大切か?と思うが、
いつか話さなあかんことやし、早めに言うっちゅうのもええかも知れん。
「オレ、京大に行こかと思ってんねん」
「そうか…」
「あそこやったらこっから通えるし、それに…」
「それに?」
「オレが大阪出てしもうたら、大阪を守る奴がおらんからな」
「おい平次、父ちゃんを信用してへんのか?」
「それだけちゃう、オレが家におらんかったら、誰があのお喋りなオバハンの話し相手になったるねん」
「確かに、無口な父ちゃんでは相手出来へんし、家にもあまりおらんしな」
ちょっと笑いながら言うオヤジは、オレが小さかった頃と変わらない優しい顔をしとった。
「オレ、絶対オヤジを越す刑事になったる…」
オヤジに聞こえんよう、呟いた。
「まだまだやで、平次」
父も子に聞こえんよう呟いた。
Fin
【あとがき】
服部親子の珍しい会話を書きたかったんだけど
撃沈した…
平蔵さんと平次は原作見る限りあまり会話のない感じだけど、
息子は父をなんだかんだいって尊敬してるし、
父は息子に期待してると思うんです。
だけどそれがうまく書けなかった…ハハッ。
おかんの声は2階のオレの部屋まで響く。
「へいへい」
オレは買ったばかりの推理小説を読み切ってから風呂に入ろうかと思っとったが、
口答えすると言い負かされてまう相手なので、
ここは素直に従っておいた方がめんどくさくならんで済むと思い、
1階に降りることにした。
「あれ、オヤジは?」
家の主の姿は見当たらんかった。
「今日はそないに遅うならんゆうとったけど…まだ帰ってきてないで」
「さよか…ってもう11時やんけ!!」
「しゃあないやろ、仕事が仕事なんだし」
まあ、家におらんのはいつものことやし、
そないに珍しいことでもないんやけど…。
「ふぅ~極楽極楽~」
お湯に浸かりながらそないなことを言ってしまう自分は、
17歳にして既に年寄り化してるわ、なんて思う。
「平次、入るで」
「うわぁっ!何やねん、オヤジ」
いつの間に帰ってきたのか、家の主は風呂に入ってきた。
「オレが入ってるのに何やねん」
「ええやないか、たまには平次とゆっくり話そ思ってな」
何を話すねん…と思う。
大阪府警本部長の父は、冗談が通用せん、どっちかっちゅうと無口で強面。
そんな父が話したいこと…さては事件かなんかの相談か?
「と…とりあえず、お背中流しましょか?」
「あぁ」
自分の親と喋ってるとは思えへん程緊張する。
昔からこないに緊張しとったっけ?
相変わらず広い背中やな…。
「平次…」
「なん?」
「お前今高3やろ?」
「はっ?オレは高2やけど?
オヤジ、大切な一人息子の学年も知らんのかいな」
「そうか、すまんな。
いや、最近見るたびに大人っぽくなっとると思って。」
…………………………………………
しばしの沈黙。
忍耐ゲームかいな。
「平次」
先に口を開いたのはオヤジの方やった。
「お前、進路はもう決めてるのか?」
自分の進路を気にかけてくれてることが、意外で驚いた。
「あぁ、一応だいたいは…」
「東京大学に行くんか?平次の成績なら入れるって、静がゆうとったが」
だいたいオレのことはおかんを通してオヤジに伝わってるらしい。
「東大には行かへん」
「工藤くんは東大行くんやろ?」
オヤジは工藤の高校生姿には逢ったことはないし、
あのちっこい小僧が工藤の変わり果てた姿だと言うことも知らん。
唯一知っとるのは
【西の服部、東の工藤】
と世間でオレと並び称されてること。
そして、オレの大親友やっちゅうことくらい。
「いや、工藤とは事件の話ばかりで、
進路の話せぇへんから分からんよ。」
「平次は、どこの大学に進むんや?」
今オレの進路がそんなに大切か?と思うが、
いつか話さなあかんことやし、早めに言うっちゅうのもええかも知れん。
「オレ、京大に行こかと思ってんねん」
「そうか…」
「あそこやったらこっから通えるし、それに…」
「それに?」
「オレが大阪出てしもうたら、大阪を守る奴がおらんからな」
「おい平次、父ちゃんを信用してへんのか?」
「それだけちゃう、オレが家におらんかったら、誰があのお喋りなオバハンの話し相手になったるねん」
「確かに、無口な父ちゃんでは相手出来へんし、家にもあまりおらんしな」
ちょっと笑いながら言うオヤジは、オレが小さかった頃と変わらない優しい顔をしとった。
「オレ、絶対オヤジを越す刑事になったる…」
オヤジに聞こえんよう、呟いた。
「まだまだやで、平次」
父も子に聞こえんよう呟いた。
Fin
【あとがき】
服部親子の珍しい会話を書きたかったんだけど
撃沈した…
平蔵さんと平次は原作見る限りあまり会話のない感じだけど、
息子は父をなんだかんだいって尊敬してるし、
父は息子に期待してると思うんです。
だけどそれがうまく書けなかった…ハハッ。