QAZのつれづれ日記

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中野二郎とマンドリン

2022年01月28日 | 読書


昨年11月、中野二郎(1902-2000)没後20周年記念企画として中野二郎研究の第一人者で日本マンドリン連盟副会長であられる工藤哲郎編著による「中野二郎とマンドリン」が出版されました。
A4版で上、中、下巻合わせて400ページ以上に及ぶ大作で、2021年度マンドリン界の快挙でした。


内容は
上巻
 第Ⅰ編 自ら語る 中野二郎
  第1章 明治末期~大正期 (1902~1923)
  第2章 昭和初期 (1927~1945)
  第3章 昭和中期 (1945~1962)
  第4章 昭和後期 (1963~1984)
  第5章 昭和後期~平成初期 (1985~2000)
中巻
 第Ⅱ編 データ 中野二郎
  第1章 演奏活動
下巻
  第2章 作・編曲活動
  第3章 研究活動
  第4章 教育活動
 第Ⅲ編 中野二郎の略年譜

内容から本書は伝記というより活動の記録を中心に記した書となっています。
伝記が著者のフィルタを通しての人物像であるのに対して本書は中野二郎の生の言葉の記録が集められている点直に心に響きます。
ご高齢のなかよくこれだけ緻密に資料を蒐集、整理されたものと驚嘆するとともに頭が下がります。
第Ⅰ編第2章の中野二郎と武井守成の関係についての項は大変興味深いものでした。

比留間賢八がドイツからマンドリンを持ち帰る7年前、日本人によってはじめて公共の場でマンドリンが演奏された義勇奉公報国音楽会が最も古く確かな記録であることからその開催年、1894年(明治27年)をマンドリン渡来の年と定められて今年で130年近く経ちます。

その間マンドリン、ギター界の発展に多くの人が携わってこられましたが、分けても中野二郎はその活動の幅、量、質ともに最大級であり、本書からそのことが改めてひしひしと伝わってきます。
その活動内容は人間一人が一生のうちにやり遂げられるまさにその極限に近く、中でも全生涯に亘って蒐集された膨大な楽譜、中野譜庫は多くの中野作・編曲集とともに私どもマンドリニストの至宝であると言えます。

これまで刊行されたマンドリン界で活躍されてきた方々の主な伝記としては
・評伝 古賀政男 (高橋功著、全音楽譜出版社、1984年)
・比留間賢八の生涯 (飯島國男著、全音楽譜出版社、1989年)
・鈴木静一 そのマンドリン音楽と生涯 (幡ヶ谷製販、1994年)
・評伝 古賀政男 日本マンドリン&ギター史 (菊池清磨著、彩流社、2015年)
などがありますが、本書「中野二郎とマンドリン」は間違いなく歴史的著作となることでしょう。
願わくば四竈訥治、武井守成、菅原明朗、服部正、カラーチェ、ムニエルなどについても適切な解説者を得て出版が待ち望まれるところです。

ホームページの「マンドリン関係の書籍」にも本件追記致しました。


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