プロ野球 OB投手資料ブログ

昔の投手の情報を書きたいと思ってます

鬼頭洋

2020-12-30 11:20:51 | 日記

1974年


物価高の年の瀬に、球団提示の限度最高の25㌫ダウンにも「仕方ありません」と、あっさりサインした二人の男がいる。大洋の平岡、鬼頭のベテラン両左腕。それもそのはずこの二人はつい九日前にいったんは「戦力から外れたから身の振り方を考えなさい」と、球団から整理通告を受けたばかり。その時のショックに比べればたとえ25㌫ダウンでも二人は口をそろえて「もう一年野球をやれてよかった」という。どうやらこの勝負、二人の年棒を大幅にダウンさせる球団側の判定勝ちであったようだ。もちろん二人はニコッと笑いこそしなかったが、ホッとした様子は、からだ全体で表していた。話し合い直後の二人は「来年にすべてをかけるよ」(平岡)「契約してもらってよかった」(鬼頭)とまっさきに話した。大洋の25㌫ダウンは黒い霧事件の時の鈴木、坂井以来だが、二人はそんなことより路頭に迷わずにすんだことで満足感に浸っていた。さる十一日、両投手は横田球団社長から「来季の戦力に入っていない。どこかあてのある球団があるなら考えなさい」と突き放された。途方に暮れた平岡は仲人である別当監督に相談し、鬼頭は家賃六万円のマンションを引っ越す腹を固めていた。それが百八十度の転換となったのは「過去に貢献のある男だし、この年の瀬に気の毒じゃないか」と中部オーナーがそれとなく球団フロントに言ってきたからだ。こうして二人は再度大洋のユニホームを着るが、よほどがんばらなくては一年後には再び今回のようにならないとも限らない。月給もぬるま湯モードに浸っていたこれまでとちがい、平岡は最高時の45万円から18万円と大幅ダウンだ。鬼頭も一時の40万円から25万円に下がった。「生活を相当きりつめるのは女房と話し合った。でも、ダウンした分は来年がんばって必ず取り戻しますよ」と二人はいう。大洋の選手は年々力が落ちながら「オレは生え抜きだから首はないだろう」と楽観している者が多いが、今回の二人へのやり方でほかのナインにもかなりのショックを与えたはず。


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