経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

あとが怖い 消費増税対策 (下)

2018-12-19 08:08:53 | 景気
◇ オリンピックでダブル・ショック = 消費増税による税収増加は5兆6000億円。政府が総額5兆円前後の対策を講じれば、増税の景気押し下げ効果はほぼ解消されるだろう。このため来年も景気の拡大は続き、株価も上昇するという楽観論が聞こえてくる。しかしアメリカや中国の経済は下降気味。増税対策だけで日本経済は安泰、というわけにはいかないだろう。

もっと大きな問題は、消費税対策のほとんどが時限立法であること。軽減税率の1兆円と自動車税の530億円は恒久的な減税となったが、そのほかは1年程度で効力を失う。ちょうどオリンピックが閉幕したころ、増税対策も終了することになる。その2つの反動が重なり合って、経済はダブル・パンチを食らうことになってしまう。

そのときには、10兆円単位の大掛かりな景気対策が必要になるだろう。日銀はまだ超緩和政策から抜け出せず、対策は財政に頼らざるをえない。今回の増税対策で、財政事情はまた悪化する。そのうえに重なる財政支出に、日本経済は耐えられるのかどうか。大量の国債を日銀に買わせる手法が、いぜんとして通用するのだろうか。

消費増税は、なんとしても実現したい。それによる景気の下降は防ぎたい。その心情は判らないでもないが、「あとのことは知ったことではない」の姿勢では困る。そう考えると、今回の増税対策はやりすぎではないかという気がする。増税によるある程度の景気下降は甘受する方が、長期的にみれば正しかったのではないか。

       ≪18日の日経平均 = 下げ -391.43円≫

       ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

あとが怖い 消費増税対策 (上)

2018-12-18 08:13:02 | 景気
◇ 税収増を上回る財政支出? = 来年10月、消費税が10%に引き上げられる。前回の引き上げ時には個人消費が減退し、長らく景気を低迷させた。安倍内閣はこれに懲りて今回は政策を総動員し、増税前後の消費を平準化するための対策を練り上げた。その内容は多岐にわたり、多額の財政支出を伴っている。計算方法にもよるが、必要な財政支出は消費増税による税収増加分5兆6000億円を上回るという試算もあるほどだ。

消費増税でいちばん影響を受けるのは、やはり金額が高い住宅と自動車の購入。そこで住宅については、ローン減税の適用期間を現行の10年から13年に延長した。また自動車については、保有にかかわる自動車税を恒久的に減税する。特に小型車ほど減税の恩恵が大きくなるよう設計した。この住宅と自動車で、年1670億円の減税となる見込み。

次は消費増税そのものの負担を軽減する措置。飲食料品に軽減税率を適用して、税率を8%のまま据え置く。またプレミアム付きの商品券やキャッシュレス決済時のポイント還元など。財政負担は軽減税率だけで1兆円。その他の施策を含めると、およそ2兆円になると計測されている。

さらに政府は、18年度の第2次補正予算を編成することになった。防災や減災に向けた国土強靭化と、TPP(環太平洋経済連携協定)を睨んだ中小企業対策が中核。しかし景気対策にもなり、消費増税による経済の落ち込み防止も狙ったことは明らかだ。予算規模は3兆円に達するとみられている。

                           (続きは明日)

       ≪17日の日経平均 = 上げ +132.05円≫

       ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

今週のポイント

2018-12-17 08:17:41 | 株価
◇ ショック性ではない株価の下げ = ダウ平均は先週288ドルの値下がり。12月に入ってからは2週連続の下げとなり、この間の下落幅は1438ドルに達した。日経平均も先週は304円の値下がり。こちらも2週連続の下げで、下落幅は976円となっている。株価が大局的にみて下降局面に入ったことは明らかで、市場の内部でも先行きに慎重な見方が広がっている。

ただ株価の下げは一方的ではなく、大きく反発する場面もあった。これは実体経済の将来に不透明感が出ているものの、景気が底割れするような心配はないからだろう。したがって、リーマン・ショック時のように“売りが売りを呼ぶ”といった光景は見られない。上下動を繰り返しながら長期的には下がる、というのが今回の特徴だ。

日経平均の場合は、円安状態の持続、株価の割安感、それに消費増税対策としての財政支出という環境が加わる。これらの要因は、すべて株価の下落を緩やかにする効力を持っている。だとすると、次のテーマは「株安はいつまで続くか。底入れはいつごろか」ということになる。年末年始には、そうした議論が展開されることになりそうだ。

今週は19日に、11月の貿易統計、訪日外国人客数。20日に、10月の全産業活動指数。21日に、11月の消費者物価。アメリカでは17日に、12月のNAHB住宅市場指数。18日に、11月の住宅着工戸数。19日に、11月の中古住宅販売。20日に、11月のカンファレンス・ボード景気先行指数。21日に、7-9月期のGDP確定値。また19日にはFRBが経済見通しを発表する。

       ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-12-16 08:17:49 | SF
第7章 終 局

≪63≫ 記録 = 近ごろは朝のうち、パソコンの前に座っていることが多くなった。ダーストン国では数多くの人に会い、いろいろな施設を見学した。その都度メモをしたが、そのノートは帰りの宇宙船に持ち込ませてくれなかった。地球人にダーストン星のことを知られたくなかったからだろう。

だが、あの5年間の経験は強烈だっただけに、ぼくはメモがなくても全部覚えている。ただ歳をとれば、記憶が薄れるかもしれない。そこでパソコンに記録しておこうと思い立った次第。もちろんウラノス博士との約束があるから、いまは公開できない。200年後の子孫が読んで参考にしてくれたらいいと考えてのことだ。

200年後の地球人が、ダーストン並みの医療技術を手に入れているかどうか。ぼくの最大の関心事は、この一点にある。ぼくはやや懐疑的だが、マーヤはとても楽観的だ。

「ダーストン人だって、200年前には完璧な技術を持っていませんでした。逆にいまから200年前の地球は、どうでしたか。200年という歳月は、世の中を想像できないほど変えるに違いありません」

いまは2094年だから、200年前は1894年。日本は明治27年、日清戦争が勃発した年だ。すでに鉄道や自動車は実用化されていたが、その当時の人で現在の宇宙船やリニア・モーターカー、それにロボットやiPSによる難病の治療、インターネット空間などを想像した人は、誰もいなかったに相違ない。

こう考えてくると、マーヤの言い分が当たっているような気もする。しかし真実は200年後の子孫にしか判らない。このパソコンを開いた子孫たちがどう感じるのか。

仮に200年後の地球人がダーストン級の医療技術を手に入れているとすれば、人間並みの能力を持ったロボットが人間の代わりに働いているだろう。その結果、地球からもおカネが姿を消し、経済のない世界が実現する可能性は大きい。

だが、ぼくが見てきた経済のないダーストン国は、なんとも活気のない世界だった。たしかに貧富の差はないし、働きたくない人は働かずに済む。犯罪もなく、病気の心配もない。しかし競争も刺激もない社会だ。うっかりしていると足を掬われる、金儲けにうつつを抜かす、事故や病気をいつも心配している。この現実社会とあのユートピアと、どちらが優れているのだろう。これも200年後の人類に、聞いてみたい点である。

                              (続きは来週日曜日)

狐と狸の・・・ : 参院議員の歳費削減

2018-12-15 07:38:32 | 参議院
◇ 公約はまだ果たされていない = 自民・公明両党は「来年の参院選後、参院議員の歳費を削減する」と公約した。ことし春の通常国会では、比例区に特定ワクを設けることを議決。参議院の定数が6議席増えることになった。この定員増で発生する経費の増加分を、議員全員の歳費を削ることで生み出すと約束したわけである。ところが、こんどの臨時国会ではその提案を見送ってしまった。

歳費の削減は、参議院の定員を増加したことに対する国民の批判を和らげるための公約だった。具体的には月額129万4000円の議員歳費を、3年間にわたって月7万7000円ずつ減らすという内容。しかし自民・公明両党は「野党の協力が得られない」という理由で、臨時国会への削減法案提出を見送った。

たしかに立憲民主党は「参院の定数増そのものに反対しているから、歳費の削減にも応じられない」と主張している。また維新の会は、独自に「月26万円の歳費削減」を提案している。自民・公明両党は「来年の通常国会に、削減案を提出する」と言っているが、年が明けても状況に変わりはないだろう。

なぜ自民・公明両党は、得意の強行採決をやらないのだろう。野党もなぜ反対し続けるのだろう。ヒガ目かもしれないが、どうも与野党ともに熱心ではないように感じられる。狐と狸の化かし合いみたいな芝居を演じて、国民の目をごまかそうとしているのではないか。でも騙されないぞ。とにかく公約はまだ果たされていないのだから。

       ≪14日の日経平均 = 下げ -441.36円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】   

Zenback

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