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草堂

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王将 昭和36年の流行歌 村田英雄 船村徹

2017-04-14 | 歌と音楽

 

きょうの『にっぽんの歌、こころの歌』(NHKラジオ第一、3:00~)は、昭和36年の流行歌の特集。『恋しているんだもん』(島倉千代子)、『じんじろげ』(森山加代子)、『北上夜曲』(和田弘とマヒナスターズ)、『惜別の詩』(小林旭)などがどんどんラジオから流れる。仕事をいったん休憩、じっくり聞き入る一時間になった。

それぞれの歌のエピソードが面白い。『恋しているんだもん』は、お千代さんの口癖「~なんだもん!」を元に作詞したそうだ。また、歌詞全体の80%が意味不明の言葉の羅列『じんじろげ』は、戦後間もない頃に上野で香具師をしていたインド人の口上がヒントになった、とか。

珠玉の名曲の数々、その掉尾を飾ったのが村田英雄の『王将』。西條八十作詞、船村徹作曲。浪曲師から転身した村田英雄はこの曲の大ヒットで一躍スターになり、同年の紅白歌合戦に初出場した。

村田英雄は佐賀県生まれ、九州で天才と謳われた少年浪曲師だった。芸名が酒井雲坊、当時、関西で人気実力とも抜群な浪曲師、酒井雲の名前を無断借用していた。それを聞き及んだ御大が小言のひとつも言ってやろうと、わざわざ九州まで来て雲坊の高座を見たところ、あまりの見事さに感心して「雲坊の名乗りを許す」と言ったとか。

浪曲は、GHQの政策でラジオのコンテンツから外され、戦後人気が急落した。そんなこともあって、同じ九州出身の古賀政男の弟子となり、昭和33年に歌手としてデビューした。デビューはもちろん恩師の作曲による『無法松の一生』。

ところが歌手としては低迷が続き(その間『度胸千両』『人生劇場』など、今となっては彼の代表曲に数えられる歌もあるが)、心機一転を図り恩師を離れ、新進気鋭の船村徹に作曲を依頼した『王将』が大ヒット。古賀政男は「弟子に裏切られた」と立腹、その怒りはしばらく解けなかったという。

船村徹は今年2月に亡くなった。『王将』の前年に発表した『別れの一本杉』(春日八郎)が大ヒットして一躍注目されるが、このときわずかに23歳、当時もっとも高名な作曲家が怒るのも分かる気がする。

『哀愁波止場』も昭和35年の船村徹の作品で、天才少女歌手で一世を風靡した美空ひばりが、大人の歌手へ脱皮するために新人作曲家の船村に依頼した、という。美空の裏声が耳新しく、とても印象的だが、マネージャーでもある母の喜美枝は「風邪を引いたような声で、こんな歌はお嬢らしくない」と、嫌がった。その20数年後、美空ひばりの晩年を代表する『みだれ髪』が発表されるのだが。

船村徹の、ほかの作品として北島三郎の『なみだ船』、ちあきなおみの『矢切の渡し』などがある。それぞれの歌手のエポック・メイキングとなった曲が多く、興味深い。


美空ひばり ベスト1949~1963 悲しき口笛 万城目正

2017-01-18 | 歌と音楽

戦後日本を代表する歌手といえば、美空ひばりだ。抜群の歌唱力に加えてヒット曲の多さ、活躍年数の長さ、公私での話題の豊富さ、どれも文句のないところ。

しかし、美空ひばりくらい高名な歌手になると、出ているCDの種類がとんでもなく多い。彼女は映画にも出演していたので、その主題歌を収めたCDも入れたら、ほかの歌手と比べものにならない量になる。最寄りの図書館に収蔵されている中から選ぶのさえも苦労する。収録曲名がすべて『ひばりの〇×△Ω』というアルバムもあるくらいで、熱心なひばりファンはCDをどれだけ集めているのか?他人事ながら心配になる。

僕はそれほどのファンでないので、代表曲を集めたベスト盤を聞くことにした。しかし、ベスト盤でさえ何種類もあるのが美空ひばりの凄いところだ。それでも決め手になったのは『越後獅子の唄』が入っていたことだ。笛に浮かれて逆立ちすれば、で、泣いているよな昼の月、である。

解説書を見て知ったが、作詞西條八十、作編曲万城目正。『悲しき口笛』、『あの丘越えて』、『東京キッド』も万城目正の作曲によるもので、どれも洒落ている。どの歌も大勢で合唱するのでなく、ひとりで口ずさむのに向いている。ひとりでさびしい、と歌いながら何かほっとした気分になっていく。歌もたのしや、という歌い出しの『東京キッド』は、ひとりでも寂しかないわい!というツヨガリの歌だ。朗らかさと哀愁が同居している。

このアルバムは独立した二枚組(分売)で、『ひばりの佐渡情話』の1962年までの曲が発表順に並んでいる。この曲と『哀愁波止場』(1960)は船村徹の作曲で、ここからひときわドラマチックに、演歌調になる。そして晩年期のヒット曲『みだれ髪』(1987)へと繋がっているわけだが、まあ美空ひばりという人はいろいろあったなあ、とあらためて思わせる一枚だ。


藤圭子 ヒットコレクション 宇多田ヒカル

2017-01-07 | 歌と音楽

年末年始にかけて、宇多田ヒカルがテレビ番組に何度か出演しているのを見て、「あぁ、お母さんに似てきたなあ」と思われた御同輩も多かろう。外見でなく、糸井重里との対談で自身の特徴に挙げていた「苦しそうに歌う」というのもそう。

宇多田ヒカルはあと何年かしたら、お母さんのカバーアルバムを出すのではないか?と期待しつつ藤圭子の『ヒットコレクション』を聞く。藤圭子の歌を聞いていると、歌謡が芝居や浪曲、落語や漫才と同じく、小屋(劇場規模ではない)で見聞きする芸能だったもののように思える。

『別れの旅』『明日から私は』『面影平野』の3曲が、特によかった。


園まり 全曲集 何でもないわ 蛾

2016-12-20 | 歌と音楽

数十年前の歌謡曲を聞くのは、しりとり遊びに似ています。活躍した年代が一緒、同じ頃に紅白に出ていたライバル、男女だと噂になった仲、結婚した離婚した……。いろいろな縁?をしりとりのように渡り歩いて、思いがけない一曲に辿り着くことがあります。

今はあまりないけど『各社競作』といって、同じ曲を各レコード会社が数人の歌手で同時に発売する、なかなか意欲的な企画がかつてありました。『ウナ・セラ・ディ東京』『赤坂の夜は更けて』『夢は夜ひらく』などがそうです。後になると、一番売れた人がオリジナルで、その他はカバーのように思われてしまうけど、そうではない時代があった、ということです。

少し前に藤圭子のアルバムを聞いていて、園まりを思い出したのは『夢は夜ひらく』がこの二人を含んだ数人の各社競作だったから。

アルバムの解説書を見て驚いたのが、どの曲も当時の人気作家が手がけていることで、岩谷時子、安井かずみ、川内康範、橋本淳……、と特に作詞家は豪華。どれもいいわけだ。

場末の酒場で働くホステスが主人公の、『蛾』という歌がありました。この歌、売れたのかな?北原ミレイが歌っていそうな凄い歌です。もうひとり(もう一曲)思い出したのが、三上寛の『おととし泣いた夕暮れと』。同じ場面を、女と男の立場でそれぞれ歌ったような感じです。『おととし……』をあんこにして『蛾』を歌っても違和感がないと思う。

すぐに北原ミレイに『しりとり』しないで、この年末は園まりを味わいたいと思います。


浜口庫之助自作自演集 黄色いサクランボ うっふん!

2016-12-13 | 歌と音楽

このアルバムはいい!ハマクラといえば『涙くんさよなら』『バラが咲いた』『愛のさざなみ』等々、有名なヒット曲が多々あり、それらもいいのだが、『港町涙町』『銀座の子守唄』のような哀愁切々とした歌がまたイイ。

『雨のピエロ』『月のエレジー』『甘い夢』のサンバ風アレンジも、60~70年代にこういう歌謡ポップスあったなー、と懐かしい。ホセ・フェリシアーノだっけ。なによりハマクラの声、歌唱が軽快なテンポに合ってる。

『愛しちゃったの』は、放送事故じゃないか?と一瞬驚くくらいの演技力です。くっくっ、苦しい~、と叫んでおります。そんな中で、いちばん強力なのが『黄色いサクランボ』です。後年、リバイバルでカバーされたので若い層にも知られていると思うが、ハマクラは想像を絶しています。知らないで聞いたら、酔っぱらいの悪ふざけだと思う。

この歌、スリーキャッツという3人組コーラスがオリジナルの録音だけど、そのレコードを聴いたハマクラの、憮然とした顔が目に浮かぶ。けど、あんなにふざけられるのはハマクラだけ、あんた以外出来ないよ!