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草堂

Web Shop草堂で扱う作家、作品の紹介、イベントや新着商品のご案内、店長の周辺雑記を日々つづります。

フランク永井 西銀座駅前 ABC……XYZ……

2016-12-01 | 歌と音楽

11月は全休してしまいました。リバイバルの一発目が相も変わらず歌謡曲、というのもどうかと思いますが、そういうことを気にしていると筆が進まないので、やはり思いついたところから書き進みたいと思います。

東海林太郎、近江俊郎、灰田勝彦の顔ぶれからぐっと若返った(?)フランク永井である。年代世代が違うだけでなく。音楽の背景がそもそも違う。同じ夜の盛り場に流れるとしても、前者は小料理屋飲み屋であるが、フランクはナイトクラブ、キャバレーに合う。牧伸二も歌っていたが『低音の魅力』の代表格だ。ナイトクラブやキャバレーがほぼ死滅した昨今では「とーてぇも~すーてきな~、とうきょうナイトクゥラァブ~」(東京ナイトクラブ、松尾和子とデュエット)といったって、どう素敵なんだか伝わりにくいのだが、憧れる行ってみたい見てみたいという想像力をじゅうぶん掻き立てる。

そのフランク永井のアルバム『The New Best One』の中でも、衝撃的なのが『西銀座駅前』。ABC……、XYZ……、それがおいらの口癖さ、ではじまり、いかすじゃないか、西銀座駅前。とシビれる低音で締める。凄い口癖があったもんだが、『いかすじゃないか』がなんともイカしてる。さらに、題名になっている『西銀座駅』が架空だというのもイカすじゃないか!?

ちなみにフランク永井は八代目三笑亭可楽の熱心なファンだった。イカした歌手は、落語を聞く耳もイカしていたのだ。

 


灰田勝彦 ホームラン全集 クルーナー唱法

2016-10-28 | 歌と音楽

先月の近江俊郎に続いて灰田勝彦である。このCDも音源がSPレコードで、曲によってはかなりシャーシャーパリパリのノイズが入っているが、やはり素晴らしい。歌も演奏も余裕がある。

独特の、鼻に懸かった歌い方は『クルーナー唱法』といって、さっき調べたら、ビング・クロスビーがその元祖らしい。灰田勝彦の場合はそれに裏声とヨーデルが加わるので豪華だ。

若いときは結構さらりと歌っていて、なかなか粋な声だ。『鈴懸の径』が灰田自身の作曲とは知らなかった。

いま25歳の甥が5歳くらいのときに「あったかい歌、歌って!」と言うので、どう暖かい歌なのか?最初は分からなかったが、それは『野球小僧の歌』でした。野球小僧にアッタカイ……。さあ、広島も日ハムもがんばれ。第6戦は野村祐輔と大谷翔平の先発か。

 


小沢昭一が歌う童謡、小学校唱歌、歌謡曲、映画主題歌のこころ

2016-09-28 | 歌と音楽

CD10枚組『小沢昭一の小沢昭一的こころ』を聞いていると、歌がたくさん出てくる。それも、さわりの一節でなくフルコーラス、3番まであるのは3番まで4番まであれば4番まで、きっちりウレシそうに無伴奏で歌い切る。数十分聞くうちに(全巻を通しで聞くと10時間以上になるので)、歌を期待する心もちになってくる。

それで、小沢昭一の3番4番まで続く歌を聞いていると、歌詞の1番は『歌の玄関』みたいなものだと思った。いつの季節で場所はどこで、今は何時頃なのか……、という状況説明が多い。花咲く野辺に日は落ちて、とか。丘のホテルの赤い灯も、とか。あなた知ってるミナト横浜、とか。

2番からドラマが本格的に動き出したり、登場人物が心情を吐露し始める。歌詞で重要なのは2番、ということが分かる。いい歌(僕が好きな歌)は2番の歌詞がいい、ということにも気がついた。

もうひとつ。小沢昭一は、聞き手に歌詞がしっかり伝わるように歌っている。美声や正確な音程、リズムで聞く以上に、歌詞の味わいが深い。小沢昭一の歌は、話芸なのかもしれない。


近江俊郎全曲集~男涙よ何故熱い~

2016-09-08 | 歌と音楽

最近見る映画と言えば小津安二郎の初期作品(サイレント)、読む本は川端、谷崎の戦前作品、聞く歌といえば東海林太郎、というように何もかもが昭和10年代になってしまって、自分ながら驚いている。

世相を見れば、ブラックマンデーで世界不況で失業者続出で軍部台頭で226事件でエログロナンセンスで高勢実乗が「あのね、おっさん、わしゃ敵わんよ」で人気者だった時代だ。

近江俊郎を聞いてみようと思ったのは、NHKラジオ第一『ラジオ深夜便』の午前3時からのコーナー『にっぽんの歌、こころの歌』で近江俊郎特集が、先日あったからだ。

美声である。唱法が垢抜けている。鼻歌みたいに聞こえるが、プロが歌ってるとはっきり分かる。クセ(物真似タレントが強調する)を取り除いた井上陽水、みたいな。なんか洒落ている。

近江俊郎は甘いムード歌謡を歌った歌手、というだけでない。信念に生きる情熱の男でもあった。武蔵野音楽学校の学生だった頃、進級試験のやり方で教授とケンカして同校を退学している。また、所属していたレコード会社の社長があまりにもワンマンである!と忘年会の席でケンカして、そこでも退社してしまった。

映画俳優として活躍したほどの美男子で(もっとも喜劇が多かったが)、由利徹の名曲『かっくんルンバ』を作曲したのも近江俊郎だ。

このCDは二枚組で『オリジナル盤による』と謳っているように、古いレコードを音源としている。そのためノイズ音が結構入っているが、聴きごたえのある内容になっている。資料としての価値、というだけではない。

サブタイトルの『男涙よ何故熱い』は、アルバムに含まれた曲名であるが、近江俊郎そのひとを指した名文句ではないか。


ラジオ深夜便 にっぽんの歌こころの歌 東京だョ、おっ母さん

2016-07-19 | 歌と音楽

きょうも作業をするのは夜中からで、3時から『にっぽんの歌こころの歌』(NHK第一 ラジオ深夜便)が始まると、さあやりましょうか、という気分になります。

きょうは昭和32年のヒット曲集。三橋美智也、フランク永井、三波春夫……大物てんこ盛り。森繁久彌の『荷物片手に』、三浦洸一の『踊子』もかかりました。

しかし、この時代をもっとも象徴する歌といえば、島倉千代子『東京だョ、おっ母さん』でしょう。集団就職で地方から上京した若者が故郷の母親を呼び、この歌どおりの東京見物をした、というエピソードを紹介していました。

きょう、放送でかかったのは、おそらく一番最初の録音で、若いときの高音がきれいだ。それほど芝居がかってないのに『泣き』がじゅうぶん効いている。それとマンドリンの伴奏が美しい。『すみだ川』や『むらさき小唄』とアレンジがあまり変わらない、というのも時代性か。

いちばん違うのは、後年挿入されたセリフが入ってないこと。おチヨさん、芝居しすぎです。『すみだ川』のセリフでも、森光子(東海林太郎盤)と聞き比べると、まあ相手は女優だけど、不自然に芝居がかっている。

新しく録音されたものに、かえって(ネガティヴな意味の)古さを感じるというのは、どういうところから生まれる感覚なのか?歌だけでなく美術、工芸、自動車や電気製品などの工業品にも似たことを感じたり思ったりするけれど、どういうことか?面白いと思いました。