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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

ブーレーズ指揮 アンサンブル・アンテルコンタンポラン2(ピエール・ブーレーズ・フェスティバル 1995)

2016年01月18日 | pocknのコンサート感想録(アーカイブ)
pocknのコンサート感想録アーカイブス ~ブログ開設以前の心に残った公演~

1995年5月24日(水)
ピエール・ブーレーズ指揮 アンサンブル・アンテルコンタンポラン
~ピエール・ブーレーズ・フェスティバル 1995~
紀尾井ホール

1.シュトックハウゼン/コントラプンクテ
2.ダルバヴィ/王冠
3.ブーレーズ/ル・マルトー・サン・メートル A:フィリス・ブリン=ジュルソン ㊝

 シュトックハウゼンは非常に硬質な音楽。静止画のように動きは少ないが、そこから発する硬質な光をこのアンサンブルは良く再現していた。ダルバヴィの「王冠」は、ミキサーにより電気的処理が施された作品。陶酔感へ誘う類いの音楽で眠くなった。
 今夜の極め付けは何といっても最後のブーレーズの作品。ブーレーズの代表作である「ル・マルトー・サン・メートル」をブーレーズ指揮のコンタンポランという考えうる最高の演奏で聴けたという意義は大きい。アルト歌手を含むわずか7人の奏者が一つの宇宙を描き出す。この精緻で綿密で計算し尽くされ、そして夢幻(無限)の世界へといざなう音楽の効果を最大限に実現するには、どの奏者の一つの音のミスも、或いはアンサンブルのズレも許されない。そして各奏者の音への研ぎ澄まされた感覚が要求される。もちろん私にはすべての音が間違いなく演奏されたかどうかはわからないが、この曲に託された演奏上の諸要求が、完全な形で実現されているに違いない、と思える境地の演奏だった。計算し尽くされていながら、音たちは解き放たれ、自由に浮遊している。この演奏からは、譜面上の要求がキッチリ再現されたうえで、更に音楽的な高みへと昇華して行く余裕が感じられた。難解とされる現代音楽へ多くの聴衆の耳が自然に向き、それに浸っているのが感じられた。感動的な拍手が沸き起こり、それはいつまでも続いた。



「ル・マルトー・サン・メートル」の自筆譜(ブーレーズ・フェスティバルの総合プログラムより)

 前日に続いてブーレーズ指揮のアンサンブル・アンテルコンタンポランで聴いたこの日の「ル・マルトー・サン・メートル」の演奏会は、20年以上経った今でもよく覚えている感銘深いものだった。作曲家ブーレーズの厳しさが結晶のように実を結び、輝きを放っているこの作品の真価は、やはり卓越した優れた演奏によってのみ感じ取ることができる。
 ブーレーズの訃報に接して真っ先に聴いたCDはこの曲だった(メシアンの「世の終わりのための四重奏曲」とカップリングされた1965年の録音)。コンタンポランが創設される以前の録音だが、ブーレーズが名手たちを揃えて素晴らしい演奏を聴かせている。今聴いても全く色褪せていないどころか、聴く度に新鮮な驚きと感銘を与える音楽。演奏には困難が伴うのかも知れないが、この音楽が演奏される機会が殆どないというのはとても残念。とりわけ次代を担う若い演奏家にはこういう曲にも是非挑戦してもらいたい。
(2016.1.17)

ブーレーズの訃報に接して

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