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エステ家別荘の庭園 ~噴水が織り成す壮麗なハーモニー~(ティヴォリ)

2016年12月18日 | 夏のヨーロッパ家族旅行2014
2014年 8月20日(水)

Villa d'Este(TIVOLI)

フランツ・リストが作曲した「エステ荘の噴水」という有名なピアノ曲がある。庭園のあちこちにある様々な噴水が、陽光をキラキラと反射して水しぶきを上げる様子が、生き生きと鮮やかに描写されている音楽だ。
曲を聴く(ピアノ:ジョルジュ・シフラ)Youtubeより
リストにインスピレーションを与えた噴水があるエステ家別荘は、ローマ近郊にある名勝で、2001年に世界文化遺産に登録された。リストの曲のタイトルがついた場所ということで興味があったし、噴水庭園なんて楽しそうで、前から是非訪れたいと思っていて、今回のローマ滞在時の中日に出かけることにした。

ホテルから最寄りのメトロA線Lepanto駅から、テルミニ駅でB線に乗り換えてPonte Mammolo駅へ。そこからバスに乗る。「地球の歩き方」にはバスの所要時間は約1時間と書いてあったが、途中で渋滞したものの約40分でエステ家別荘の最寄りの停留所、Largo Nazioni Uniteに着いた。


この別荘は16世紀の半ば、ローマ教皇に次ぐ地位にいた枢機卿イッポリート・デステが、教皇の座を巡る争いに敗れて失脚してティボリに隠遁し、ベネディクト会修道院を自分の別荘として改築したもの。中庭とそれを柱廊が取り囲む造りから、ここが元は修道院だったということがよくわかる。


豪華な内装の別荘内を見学してから建物の反対側へ出ると、水飲み場のような小さな噴水があった。


「水飲み噴水」の先にもう一つ噴水が出ていて、その向こうには庭園と背景の丘陵が覗いている。


広い庭園へ出る前にここで水を汲んでから、石段を上って庭園最上段にあるテラスへ向かう。


庭園の一番高い場所にあるテラスからは、庭園とティヴォリの村を一望できる。庭園のあちこちに噴水があり、オブジェも並び、テーマパークみたい。16世紀に作られた世界遺産の庭園には遊び心がある。

噴水の数は大小合わせて500もあるという。噴水は全て、上部を流れる川の水を庭園内に張り巡らされた水路に引き込み、庭園の斜面の高低差を利用して噴き上げる仕組み。


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庭園の噴水めぐりのお散歩開始。早速、噴水と戯れる凝った意匠のペガサスに出会った。


こちらの大規模な噴水は、ロメッタの噴水(La Fontana della Rometta)。小ローマの噴水とも呼ばれ、古代ローマ時代の街を模して造られた。


90度に広がるロメッタの噴水の右部分ではテヴェレ川とそこに浮かぶ帆船を表現し、その背後には勝利の女神が見守る。


ロメッタの噴水から卵型噴水へ向かう道なりの約100メートルに渡って、「百の噴水」(Le Cento Fontane)が並んでいる。遥か先まで噴水が続くシーンは壮観!

3段で落ちる噴水の一番下段、動物みたいな彫刻の口から水路に落ちる噴水だけで100あるそうなので、1段目と2段目を合わせた噴水の総数は300にもなる。この庭園の噴水の総数が約500というのは、ここの噴水を300としてカウントしているのだろうか?

炎天下の屋外見物っていうことで暑さは覚悟していたが、庭園内は噴水の水しぶきと緑のおかげでローマ市街よりかえって涼しい。


「百の噴水」の1段目の噴水を見上げると、飛び散る水しぶきがキラキラと陽光に反射して、ますます涼を誘う。この光景はリストの「エステ荘の噴水」の1シーンのようだ。


「百の噴水」の左端には「卵型噴水」(La Fontana dell'Ovato)がある。百の噴水を挟んで、ロメッタの噴水と丁度向き合っているこの噴水は、庭園で一番最初に造られたそうだ。噴水の裏側には回廊が造られていて、噴水を裏から見られるはずだが、回廊への入口は閉鎖されている。


別荘のすぐ下、庭園の中心を通るメインストリートが始まるテラスで、ひときわ高く水を噴き上げている「龍の噴水」(La Fontana dei Draghi)。水が出る周囲に4体のドラゴンの像が設えられているのが名前の由来だが、真っすぐに上がる噴水にも龍のイメージがある。


庭園の数ある噴水の中でも一番楽しみだったのが「オルガンの噴水」(La Fontana dell'Organo)。
水力を使ったオルガンの自動演奏をやるというので、12時半からの「実演」を見るために急いでオルガンの噴水へ向かった。

大小様々な噴水が複雑に飛び交い、その水の動きを利用してオルガン演奏が行われるパフォーマンスを期待していたのだが、噴水は何の変化もなく、ただオルガンの演奏が聴こえてくるだけ。「これだけ?」という感じだった。

コンピューターはもちろん、モーターも何もない時代に、そんな本格的な仕掛けは無理にしても、大規模なピタゴラスイッチみたいなからくり技術を駆使した楽しいショーが見たかったな…

ちょっとガッカリだった気分を感動に変えてくれたのが、オルガンの噴水のすぐ下から展開される壮大な「ネプチューンの噴水」"La Fontana di Nettuno"。これはこの庭園最大の噴水に違いない。


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この噴水は斜面を利用して大小様々な噴水や滝が、5段に渡って構成されている。


ネプチューンの噴水の最下部からは全体を見渡せる。一番上に見えるのはオルガンの噴水で、これも含めて一つの大きな景観を作っている。


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噴水をバックに写真を撮る人たちが沢山いて、僕たちもポーズを決めてみた。この噴水ができたのは、20世紀まで時代を下った1927年で、そうなるとこれは歴史的には他の噴水と同じには扱えないが、やっぱり見事な噴水だ。


庭園は、別荘中央の出入口から下方へ真っすぐ伸びる歩道を中心に、左右シンメトリーにできていて、他の道も碁盤の目のように縦横に規則正しく通っている。ただ、樹木も多く噴水が自由に配置されているため、整然とした印象は薄い。


庭園の一番奥の方にあったこの妙な噴水は、「豊穣の噴水」"La Fontana Dea Natura" 或いは、「自然の女神の噴水」"La Fontana dell'Abbondanza"と呼ばれている。ガイドブックには「豊穣の女神の噴水」とも。豊作や子だくさんを願う女神なのだろう。おっぱいは好きだけれど多ければいいってもんじゃないかなぁ… でもおもしろい!


全体が斜面になっている庭園の最下部からはティヴォリの町を間近に見渡せる。


別荘の中庭に戻り、リストのプレートを見つけた。
「ハンガリーの大作曲家でピアニストのフランツ・リストは、数年間ここに住み、仕事をした」と刻まれている。「フランツ」(Franz)というドイツ式の発音と表記のほうが馴染みあるが、ハンガリー語では"Ferenc"と書いて「フェレンツ」と発音するようだ。

実際にエステ荘で数々の噴水を見て、水音を聴き、水しぶきを感じたことで、ピアノによる「エステ荘の噴水」の描写が、より鮮明にイメージできるようになった。


【参考文献】
各地の水辺を訪ねる(5)エステ家の別荘噴水 亀田 泰武 著
工業用水 No.623 2014-3 日本工業用水協会

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ヨーロッパ家族旅行2014

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