毛唐もすなるブログといふものを

日本男児もしてみむとてするなり

選挙総括Q&A(暫定版)

2005-09-20 17:31:49 | 改革狂騒曲
Q1 「郵政民営化法案に反対した連中は郵政民営化を公約に掲げた小泉氏を総裁に選んだのだから後になって反対するのは筋が通らないのではないか」

A. 「反対派の多くは郵政民営化そのものには反対していない。民営化の中身についての議論に小泉総理・総裁がほとんど応じなかったことがほとんどの議員の反対の理由となっている。」

Q2 「反対派は特定郵便局局長会などの郵政票などを守るために反対した族議員ばかりであり、そういう連中がごねるのを延々聞く必要はないのではないか」

A 「そういう理由で反対していた議員のほとんどは先の衆議院における採決の前に賛成派に寝返っている。なぜなら、小泉総理・総裁が解散と公認権をちらつかせて翻意を迫ったからである。郵政票に過度に義理立てして選挙で落選したら元も子もないからである。」

Q3 「党中央の決定に議員が従うことは当然であり、これに従わない議員を非公認・除名することは二大政党制の母国・英国でも行われていることである。落下傘候補も同様であって、これを非難されるいわれはない」

A「 英国では党員が従うべき党の決定は、慣習として成立した手続きに則った議論が前提となっている。これを欠く決定は当然ながら党員を拘束しないし、そもそもそのような決定は党の決定とは言わない。したがって、前提を無視して『英国でも行われていること』というのは、誤解である。」

Q4 「そうだとしても、一応、郵政民営化法案は、自民党内の手続きを履践して提出されたものではないのか」

A 「少なくとも、これまで自民党がその党の歴史として積み重ねてきた慣習的な手続きは無視している。自民党をぶっ壊すのが小泉流だからといって何をしてもいいということにはならない。ましてや、解散権と公認権をちらつかせて翻意を迫るなどということは、自由民主主義国の政党においてはあってはならないことである。」

Q5 「しかし、改革のためには、守旧派がごねるのを座視するわけにはいかないのではないか。議論しても決して変わろうとしない連中を相手に改革を遂行するには、このような手段も時に必要なのではないか」

A 「仮に目的が正しくとも、その手段についての吟味は必要である。特に我々が真に正しいことを事前に知りえない存在である以上、手続きにおける適正は改革の現場においてこそ重要なはずである。自由民主主義という制度は漸進主義であり、急進主義がよければ人民民主主義を採用するべきである」

Q6 「党内手続きに問題があるとしても、この度の選挙で小泉自民党は圧勝したのだから、この法案を通すことが民意であり、国民主権に合致するのではないか。」

A 「日本は代表民主制の国であり直接民主制の国ではないから、国民の意思通りにすることが必ずしも国民主権に合致するとは言えない。代表者の実質的な議論を通じて法案が決定されることを憲法は予定している(憲法学の通説)。また、郵政法案賛成派が反対派を議席で圧倒する結果となったが、それは選挙制度に起因することであり、今回の選挙で郵政民営化法案賛成派の得た得票と反対派の得た得票は拮抗している。仮に今回の選挙が国民投票だった場合、反対派が勝利していた可能性もある。再度議論が必要と考えるのが正当である。」

Q7 「では、改革は必要ないというのか。」

A 「改革=善ではない。改善と改悪がある。それを吟味するのが議会における実質的な討論である。議会における実質的討論に敗れたから国民に聞いてみるというのは、内閣・国会の職務放棄である。国民は実質的討議などしていないし、その内容を十分知らされてもいない。国民がよく知らないことについて意思表示させ、それによって国会議員の討論を封じるのは代表民主制を踏みにじるものである。日本国憲法のもとで改革を改善に結び付けるには、一見迂遠のようだが、人類が歴史的に獲得した知恵であり、わが憲法の採用する代表民主制の土俵の上で議論を戦わせるべきである。」

Q8 「郵政改革はすべての改革の本丸であるから、ここを突破口にすれば世の中は変わるし、それを多くの人が望んでいるのではないか。」

A 「郵政改革が改革の本丸だったのは、財投改革を前提とするからだ。しかしいつの間にか郵政改革と財投改革は切り離され、郵政改革は『民に出来ることは民に』、つまり『規制緩和』と『小さな政府を目指す』という話にすりかわっていた。そして『小さな政府を目指す』とは生存権保障(憲法25条)を減らすという話である。しかし、多くの国民は小泉改革をそういう意味での改革と未だに了解していない。多くの国民にとって小泉構造改革とは財投に代表される役人の無駄遣いを無くすことであるが、小泉内閣の推進する政策はそれと大きく異なっている。それが証拠に特殊法人への天下りの大元締めである財務省は全く抵抗していない。それどころか、小泉改革のシナリオは財務省が書いたようだ。胡散臭さ爆発である。」

Q9 「仮に、郵政民営化の目的が当初のものから変質したとしても、少子高齢化社会の到来を考えれば、『小さな政府を目指す』こと自体は正しいのではないか。」

A 「小泉改革のいう『小さな政府』がどのようなものを指すかが問題だ。日本国憲法は社会権条項を明文化しており、欧州型の社会民主主義的な制度を予定している。その枠内で『小さな政府を目指す』というのならば問題はない。しかし、憲法改正なしにこれを社会権条項を持たない米国憲法型に変化させるのは憲法違反の疑いが濃厚である。結局、現政府と官僚が年金破綻や財投の焦げ付き等の失政を誤魔化す為に、これからは『小さな政府』だと宣伝していると考えるのが妥当である。」

Q10 「しかし、JRやNTTなどの例を見れば、民営化の機運が盛り上がった今民営化しておくべきではないか。」

A 「JRは毎年兆単位の赤字を垂れ流していた上、過激な組合の問題があった。現在の郵政にそのような問題はない。また、NTTのようなバカ高い通信料金に類するような問題も現在の郵政にはない。国民の税金で営々と築き上げられてきた国民共有の財産を簡単に民営化するには慎重であるべきだ。民営化すれば本来国民が等しく受けるべき利益を一部の株主が山分けする事態が生じうる。仮に民営化が正しいとしても国有財産の払い下げである私有化は原則不可と考えるべき、すなわち政府が過半数の株式を保有するべきである。しかし、今回の郵政民営化法案は完全私有化を目指しており、歯止めはない。」


※他のポイントについてはここを参照

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