毛唐もすなるブログといふものを

日本男児もしてみむとてするなり

所信表明演説

2005-09-27 17:54:38 | 改革狂騒曲
※小泉首相所信表明演説全文《岩手日報》

昨日国会で小泉首相の所信表明演説がおこなわれ、各紙ともそれを社説で取り上げています。主要5紙の評価は、小泉首相への評価が甘い順に、産経・讀賣・日経・アサヒ・毎日の順で(産経社説からは各紙へのリンクが貼ってあるので便利です)、この中でわたしが一読を勧めるのは毎日の社説(社説:小泉演説 「あと1年」は消化試合なのか)です。

この社説はこう書きます。

『郵政民営化がすべての改革の出発点というなら、残る諸課題を具体的にどうしたいのか、せめて方向性くらいは示すべきだった。』

「それを選挙の前に書いてくれよ!」とおもうのはわたしだけではないでしょう。

讀賣も、

『しかし、課題を示すだけで、具体的な内容には言及しなかった。今国会の会期が短く、実質的には「郵政国会」となるからだろう。』

『郵政民営化関連法案を成立させた後、何を優先し、どんな手順で実現をはかっていくのか。首相は国会審議の中で、具体的な道筋を説明すべきだ。』

と書き、郵政以外極めて抽象的な総論に終始したとの評価です。
これに対してポチ・サンケイは、

『首相が力点を置いたのは、公務員人件費などへの切り込みによる小さな政府の実現だ。「政府の規模を大胆に縮減する」とうたい、具体的には、国家公務員の給与体系を「民間の給与実態に合わせる」とし、定員の純減目標を設定すると明言した。』

と、積極的に評価しています。どちらの印象が正しいかは、冒頭に所信表明演説の全文へのリンクを貼っておいたので、自分で読み判断されることをお勧めします。十分もあれば十分読めます(シャレではありませんので念のため)。

わたしの読んでみての印象は、「郵政民営化」については具体的、「地方への税源委譲」と「公務員の定員と給与改革」については具体例を少々挙げた、「政府系金融機関改革」と「社会保障制度改革」については総論のみ、といったところでしょうか。

小泉首相はこの演説の中でこう述べています。

『改革を進めていく際、基本的な方針は支持されるのに、個別の具体論に入ると、既得権益の壁にぶつかり根強い反対に直面します。』(「郵政民営化と構造改革の加速」の冒頭部分)

もとよりわたしも「改革の基本方針」についてはほぼ賛成です。改革の機は熟しているとおもいます。しかし改革とは小泉首相が考えるものが常に正しいとは限りません。もちろんわたしの考えるものが正しいとも限らない。人間の力には常に限界があり容易に正解を知り得ないから議論するのです。小泉首相は自分に反対する勢力を『既得権の壁』と表現し切り捨てます。確かに『既得権の壁』は打破しなければなりません。しかし既得権からではない反対論も現実に多数あるわけです。ほとんど報道されないため大多数の国民にはそういう反対論は届いていませんが確かに存在し特別委員会でも散々問題になりました。小泉内閣はそういった問題点の指摘に真摯に答えていません。答える気がそもそもなかったのでしょう。その点は残念ながらこの演説でも一貫しています。一体誰のための改革なのでしょうか。

そのこととも多少関連しますが、小泉首相は「自分の言う郵政民営化」がすべて改革につながる本丸だと散々繰り返してきました。その割りに郵政民営化がほぼ確実視される今国会の演説に郵政民営化がどのようにすべての改革につながるのか説明すべきでした。しかし、それらについては総じて抽象的表現に終始しました。なぜか。

それは、小泉政権が郵政民営化以外の改革については、具体的なビジョンを全く持ち合わせていないからに相違ありません。少なくとも現政権下では手を付ける気がない、そういうことでしょう。選挙で「郵政民営化はすべての構造改革につながる改革の本丸だ!」と絶叫しましたが、それは全くのスローガンに過ぎず、すべての改革にどうつながるかは、良くて「これから考えます」と言ったところで、実際は「退陣するので考えるのは次の人」とおもっているのではないでしょうか。『演説自体、新年度予算編成を受けた来年1月の施政方針演説までのつなぎという位置づけなのだろう』《毎日》との見方もできますが、それは買いかぶりだとおもいます。郵政後が見ものです。

小泉主義者は「小泉首相はやってくれるはずだ」と漠然と信じている傾向が顕著です。それはB層と呼ばれた人たちだけではなく、それなりに教養をもった社会人でも同様です。そういった人たちに小泉改革を信頼する根拠を尋ねると、「以前の橋本派時代よりましだ」という風な反応が返ってくることが頗る多いわけです。確かに就任1年目や2年目ならともかく、4年もやっていれば小泉首相自身の中身がもっと冷静に客観的に問われるべきではないかとわたしはおもいます。そういえばわたしも昔は小泉首相に期待した時期もありました。とっくに覚めましたけど。

ところで、毎日は、

『首相は「任期満了まで4年間は衆院選はない」と語っているという。自分が退陣した後もしばらく自民・公明政権が続くということだろう。ならば来秋以降、後継者にどうつなげるか、その道筋をつけることも、選挙で圧倒的支持を受けた首相の責務のはずだ。』

と書いています。常識的に考えて、これだけ大勝すれば4年間選挙はないでしょう。でもそれはこの度の選挙のとき散々自民公明民主党が流布したことに反するはずです。だって総選挙は国民が『首相を選ぶ選挙』だったはずですよね。ならば、小泉退陣後に選挙も経ずに後継首相を決めるのは良くないはずです。特に、今回のような単一争点でなおかつ首相指名選挙だということを強調した選挙では。郵政民営化法案が成立し小泉首相が退陣する時にはもう一度解散すべきとおもいます。

そうそう、先の毎日社説はこう締めくくります。

『「来秋まで」と首相が手じまい日程を示していることが、かえって改革を実現していくうえで足かせになっているのではないか。このままでは、残る1年は消化試合になってしまわないか--。そんな懸念を抱かせた演説である。』

奥歯に物の挟まったような言い方です。分かってるけど書かないということが行間から滲み出ています。要するに小泉首相は郵政以外に興味がない。そういうことです。初出馬の時の落選の原因は郵便局が支援しなかったからであり、輝かしい自分のキャリアに傷をつけた郵便局の連中は許さない。小泉首相の三十年来の一念はかなうのでしょう。おめでとう。さっさと退陣してくれ・・・とおもったが撤回。ボロを国民の前に晒して影響力がなくなってから退陣するのがいい。小池百合子などを首相にして院政を敷くなどされたらたまらないからね。

コメントを投稿