株式会社プランシードのブログ

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その492.撮影前夜に思うこと

2020-07-03 08:34:56 | 制作会社社長の憂い漫遊記

くそコロナ明けでようやく撮影が始まる。
撮影自体はカメラマンに任せれば良い。
監督にとって大切なのは、撮影までの事前準備だ。
商業用映像である限り、まず顧客の意図を組込んだ上で
何を、いつ、どのようにして撮るかを考えなければならない。
経験を積むと、ある程度流れが予測できる。
ゆえに深く考えず段取り重視になりがちだ。
実際、現場ではそうそう大事件は起こらない。
しかし何が起こるかわからないという視点で
準備をすることが大切だ。
若手監督はこれを積み重ねることで、
雨が降ろうが、スタッフ・キャストが遅刻しようが、
ロケバスが渋滞に巻き込まれようが
慌てず対処できるようになる。

カメラマンならこのボタンを押せば動き、
レンズのこの部分を回せばズームができるなど、
カメラを操作するための基本を
知っておかなければならないが、
監督にはそういうものが全くない。
手法というものがないのだ。つまり何でもあり。
ただしそれは30秒とか、せいぜい1分位の作品のことで
それなら何とかしのげるが、10分なり20分という作品を
仕上げるには様々な手法を駆使しないと退屈で見ておれない。
編集でなんとかなるのはせいぜい1分まで。
結局、撮ったもの(素材)でしか
編集という調理方法が生きないのだから、
いかに(撮影)素材を集めるかにかかっている。

芋を調理して肉風にはなるが肉にはならない。
肉料理をつくりたければ肉を準備しなければならない。
若手監督はまず何の肉でも良いので、
がむしゃらに肉を集める努力(準備)をしなければならない。
逆にベテラン監督なら、肉なら牛か豚か鶏か、
はたまたジビエか。
あらゆる準備をした上で、さらなる課題を設けて、
時には意図的にイレギュラーを試みることを忘れてはならない。
シャンシャンで終わらせるのでは毎回同じになる。
現場で発見する心を捨ててはならない。
台本通り予定調和で終わらせることを
「悪」と考えるべきだ。

という私も時々「まっいいか」と思うことがある。
そういう時はたいてい二日酔いか、
夜更かしして体力低下の時だ。
だから己をアスリートだと思って
体調万全で撮影に挑まねばならない。
体調万全でありながら「まっいいか」と思うなら
もはや引退する時だ。
年齢もしかり。
体が衰えて、新しいことにチャレンジする気が
なくなったら引退すべし。

若手監督の中には、過酷な体力状況でも
「できたぜ」と思っている人もいる。
疲れた肉体では精神がハイになるからだ。
私もかってはそういう若手監督だった。
まぁ疲れきる経験をしてもよいとは思うが、
あまりメリットはない。
数カットは尖っているかもしれないが
撮りこぼしが必ず発生し、トータルで見るとマイナスだ。
監督は頭で考え、体で感じて、言葉を発して伝えるのが仕事。
よって体力がないとやっていけない。
撮影ではカメラマンや照明マン、録音マンなど
スタッフがフォローしてくれる。
ただしフォローしてくれるまでが一苦労で、
若手監督ならほとんどのスタッフが
「アホな監督なんていなくても」と舐めている。
北朝鮮の総統ではないので歯向かうスタッフを
死刑にするわけにはいかない。
問題は、なぜアホな監督と思われているのか?だ。
俺はアホじゃない、素人じゃない、
作品に一番思いがある監督なんだとわかってもらうには
コミニュケーションしかない。話せばわかる何事も。

そのためには撮影の前夜まで、夢に見えるまで考えるしかない。
思い付きから始まっても良い。見えるまで考え尽くす。
何を、いつ、どのようにして。
監督の仕事とは、見える形になるまで考えつくすこと。


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