音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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◆ブラームス《Fantasien op.116》とファーストコンタクト ~ シューマンの影!?

2008年10月25日 | ブラームス Johannes Brahms
ブラームスは晩年において、
いったん筆を置いた後、
再び創作意欲に駆られて、
いよいよ最後となる創作期を経たそうです。


その中には、クラリネットのための音楽が多いのですが、
幸運なことに我々ピアノ弾きにとっては、
《クラリネット・ソナタop.120》ではピアノ・パートを担うことで
その恩恵にあずかることができるとともに、さらには、
ピアノ独奏曲の一連の作品群があることを、
さらに大きな幸運と言うことができましょう。


具体的には、
《op.116》 《op.117》 《op.118》 《op.119》
という四つの集まりがあります。


このように四つある中で、
自分の個人的な思うところで大変恐縮なのですが、
なんとも最初の《op.116》には縁が浅く、
どのような音楽であるか、よく分かっていませんでした・・・


先日は《op.119》を初めて公の場で演奏する機会をいただき、
《ヘンデルの主題による変奏曲とフーガop.24》と共に、
それに向けて集中してブラームスを勉強し、今もなお
勉強は続いているところです。


《op.118》は、
これらのブラームス晩年のピアノ作品の中で
たぶん、一番演奏されることが多いのではないでしょうか?
2曲目の《Intermezzo A-Dur》の無上の美しさ、
情熱的な3曲目の《Ballade g-moll》など、
実に耳にする機会も多い名曲がそろっているようです。


そして、
《op.117》を個人的に思い返してみると、
多分まだ高校生の頃だったのではと思いますが、
草津夏期国際音楽アカデミーにて、
老エディット・ピヒト・アクセンフェルト先生にこの曲を
レッスンしていただいた思い出があります(実は
今、ふと思い出したのですが・・・)

音楽の世界における悟りの境地に達していらっしゃったのでは
ないだろうか!?とすら思える女史の人柄、演奏、身振り話しぶりを、
今、眼前に思い描いてみると、なんと貴重な体験だったのだろう!!
と、いまさらながら実感いたします・・・



・・・話があっちこっちしてしまいましたが、
そのようなわけで、自分にとっては《op.116》に触れる機会は
今まであまりなかったのです。
実際、ちょっと譜読みを、という程度のチャレンジはしたことがあったと
思うのですが、その時は挫折したのだと思います・・・

多分この《op.116》は、
ピアノ独奏曲のジャンルにおける最後の4つの作品集の中で
ピアノ演奏技術の面において、一番難しいのでは!?と思えるほど、
弾きにくいのではないでしょうか・・・「10度の音程のオンパレード」・・・



今日は先ほど、興が乗っていたのか、
なんとか一気に全曲を見てみることに成功しました。

すると・・・

非常に面白かった。いろいろ見えてきた気がしたのです。


そこにはなんと、

シューマンの影が見えたような気がしたのです。


このピアノ曲《op.116》は、全部で7つの曲からなります。
1. Capriccio - Presto energico
2. Intermezzo - Andante
3. Capriccio - Allegro passionato
4. Intermezzo - Adagio
5. Intermezzo - Andante con grazia ed intimissimo sentimento
6. Intermezzo - Andantino teneramente
7. Capriccio - Allegro agitato


自分はまだまだシューマンを徹底的に研究したことはなく、
ここに書くことが間違っていなければよいのですが・・・
たしか、
《Kreisleriana(クライスレリアーナ)》であったり、
あるいは《Liederkreis(歌曲集)》などのシューマンの作品集にて、
音楽が一曲ごとに

急 → 緩 → 急 → 緩 → 急 → 緩 →・・・・

と入れ替わり立ち替わりするような特徴があったのではと思います。
「フロレスタンとオイゼビウスのよう」と
言われているのではなかったでしょうか。


さて、
このブラームスの《op.116》においては、
このような法則が見えるのではないか、と思ったのです。

1曲目は激しく、情熱的な嵐のよう、
続く2曲目は、ゆっくりとした、子守唄を思わせるような別世界・・・
そして3曲目で再び、情熱の嵐が頭をもたげます。

ここまでで、「急→緩→急」が成立しています。
そして続くは・・・

4曲目、Adagioの《Intermezzo間奏曲》

ほらやっぱり!?「緩」の音楽がやってきた・・・。
どうもシューマン臭いです・・・(←これはとてもポジティブで
面白い意味においての言い方のつもりです)

すると5曲目は再び「急」の曲がくるのかな?と思いきや・・・
ここでは前曲に引き続き《Intermezzo》となりました・・・とはいえ、
なんともつかみどころのないような不気味な音楽・・・
「不安げな天使」とでもいったらよいのでしょうか・・・
・・・偶数曲数(2曲目、4曲目)とは違う別世界がここにあります。

6曲目は《Intermezzo》で、テンポはAndantino terenamente
「teneramente」というのがなんだかうれしいです、なぜなら、
これは、多分ベートーヴェンが使い始めた音楽用語で、
彼の《ピアノソナタop.90》や《op.109》に
この語が使われています。

天空からの呼び声を思わせるような・・・至福と静かな感動の音楽の時です。

最後は第7曲目《Capriccio》Allegro agitato
再び、嵐です・・・
最後のCodaに入って8分の3拍子に変わって
いったいどんな最後になってしまうのかドキドキしながら弾いていたら、

出ました!!!ピカルディ終止!!!

d-moll(ニ短調)の音楽が、明るいD-Dur(ニ長調)となって
大団円を迎えたのには、驚きました。

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ブラームスとシューマンは師弟関係にあります。
もちろん、このブラームスの《op.116》が書かれた時には、
シューマンはとっくにこの世の人ではありませんでした。
老ブラームスが、遠い昔の師シューマンといまだにどこかで
つながっているのだとしたら、これはなんという
感動的な人間関係でしょうか・・・そう思います。


・・・いやはや、
こうして、《op.116》を初めて弾いてみて思ったことは、
その他にも、
シューマンの臭いだけでなく、
ベートーヴェンの《op.106“ハンマークラヴィア”》の
第3楽章Adagio sostenutoをふと思い出す瞬間があったり、
そしてもちろん、
他のブラームス作品、《op.119》《op.118》や《クラリネット・ソナタ op.120》、
さらにはオーケストラと合唱の大曲《ドイツ・レクイエム》にまで至って、
いくつもの相通ずる作品同士の類似する点が
垣間見られた気がしました。

共通点が見つかるというのは、なんだか一層
理解が深まるような気のするものでして、
これが勉強の遣り甲斐というものでしょうか・・・

 
もっともっとブラームス道を突き進めて行きたいと思います。

 
・・・彼の背中はまだまだ遠いのかもしれませんが(苦笑)・・・



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