音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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◆なぜ「ナポリの6」と呼ばれるのか!?

2010年10月14日 | 音楽(一般)

クラシック音楽における和声・ハーモニーに関する専門用語で、
「ナポリの6」と呼ばれる、ある魅力的な和音があります。


数字を省略して「ナポリ」と呼ばれることもありましょう。


それにしても、イマイチ分かりづらいのは、
なぜ「6」という数字が付くのか!?ということ・・・


この疑問を持っている人は、きっと
多勢いるのではないでしょうか!?(自分を含めて)


そこで、
ちょっとじっくり考えてみて、
まずは簡略にまとめてみるよう、試してみたいと思います。



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「ナポリ」の和音を、まずは
●「サブドミナント(下属和音)」であると捉えます。

「サブドミナント」とは、すなわち
「IV」の和音ということとなります。


そして、普通の和音(三和音、基本形)は、下から
「第1音・第3音・第5音」
という順番で、音符のお団子が並ぶわけですが、
ここで、
この普通の「サブドミナント」の和音が「ナポリ」と呼ばれる特殊なものになるのは、
●「第5音」が「ひとつ上がって(上方変位)」それが「第6音」となる、
これが

「ナポリの6」

と呼ばれる由縁なのだそうです。

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★この解釈は、私のドイツ留学中の和声の先生
 W.G.ライデル教授から指導を受けたものです。




さて、ここから先は、
より正確に、専門的に「ナポリの6」について書きまとめてみようと思いますので、
ご興味おありの方は、どうぞお付き合い下さいませ。



「ナポリの6」の特徴を挙げてみますと、
●このサブドミナントは、常に「短調サブドミナント」に限られ(長調サブドミナントでは「ナポリ」は出来ません)、
さらに、
●上方変位した「第6音」は、「短6度」である必要があります。


具体的に「移動ドの階名」でこれを表記してみますと、
まず、
●「短調サブドミナント」は、「ファ・ラ♭・ド」となります。
●この第5音「ド」が上方変異して短6度の音程を取ると「レ♭」となり、
すなわち、

「ファ・ラ♭・レ♭」

という三和音となり、
これが「ナポリの6」と呼ばれるのです。



ここでもうひとつ分かることは、
多くの音楽理論書等において
●「ナポリの和音は、第一転回形で現れることが多い」
と言われる由縁は、
この「ファ・ラ♭・レ♭」という和音を、まずは
●三度ずつのお団子、すなわち基本形「レ♭・ファ・ラ♭」
と解した場合、
●これの「第一転回形」となるのが「ファ・ラ♭・レ♭」であり、
よって、
「ナポリ」の和音が「第一転回形で現れることが多い」という話は
このような理由からと考えられるのではないでしょうか。


もうひとつ補足しますと、
ちょっと上記しました「長調サブドミナント」で「ナポリ」が出来ない理由は、
長調三和音の「ファ・ラ・ド」、
この第5音を上方変位させてみると「ファ・ラ・レ♭」となり、
これをさらに3度ずつの三和音の形に直すと

「レ♭・ファ・ラ」

という・・・歪(いびつ)な和音(増5度という音程ゆえ)が出来上がってしまい、
よって、
「長調サブドミナント」からは「ナポリは出来ない」ということが
ここに証明されそうです。



もうひとつ、
別の考え方と照らし合わせてみますと、
「ナポリ」は、時に「ナポリの2」と呼ばれることもあるようで、
その由縁きっと、
上記の「レ♭・ファ・ラ♭」を基盤としたとき、
この根音である「レ♭」は、
主音「ド」から数えて2番目(より正確には短2度・半音上)の音となり、
よって、
これが「ナポリの2(正確には「ナポリのII」と記した方が良いのかもしれません)」
とも言われる要因なのではないでしょうか。

もしかすると、
この「主音の半音上の音」が現れた場合に注意し、
「これはナポリかな!?」と判断するのが一番しやすい方法かもしれず、
「主音の半音上」というのは、
簡易で便利な「ナポリを探すコツ」と言えるかもしれません。

 

OGPイメージ

楽曲解析(Youtube用字幕付き):J.S.バッハ《インヴェンション第6番 E-Durホ長調》

■楽曲解析:J.S.バッハ《インヴェンション第1番 C-Durハ長調》 https://www.youtube.com/watch?v=Tw...

YouTube

 

■(動画の18分53秒あたりから「ナポリ」についての説明をしております)

 

最後に、
「ナポリの6」の和音の音楽的効用・力について考えてみます。

私個人としては、「ナポリ」の音楽的効用・力を考える上では、やはり
最初にご紹介いたしました基本の
「サブドミナントの第5音が上方変位したもの」という考え方が
最も理に適っているように思われます。

音楽として、
人が次に来るであろうと予想される「普通のサブドミナント」が
予想を裏切られて「第5音が上方変位されたサブドミナント=ナポリ」となることで、
上方変位された音ゆえに、感情的にも「上方変位」、すなわち「上がる」ような感触を
覚えるのではないでしょうか。

下手な例かもしれませんが、
車に乗っていて、立体交差などで急な下りに入るとき、
体が「ふわっ」と気持ち悪く浮く感触になることがありますが、
(これを「マイナスG」と呼ぶのだそうです、さらには
人はマイナス2G以上になると気を失うとか!?)
この「ふわっ」というのが、
音楽における「ナポリ」の感覚にちょっと似ているのかな?・・・なぞと
私は考えたりもしています。



以上、
「ナポリの6」の和音について、
ちょっと考え・まとめてみました。




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