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minority resistance

pcfx復活ブログ

海外にも長いこと行ってない 3

2011年02月08日 | ドライブとかりょこうとか
ともかく、タクシーに乗れば運転手を怒鳴り、鉄道のチケットを買うにもインド訛り英語
に困り時刻表すらなかなか買えず、買い物に行けば麻薬か女を斡旋され、何か食べれば
食あたりし、ちょっと話せばすぐには終わらせてくれずにいつの間にか何か買う話に
なり、道を尋ねれば大体間違っており、1日の平凡なやり取りで疲れ果てる。それが
インド旅行というものだ。pcfxも帰国してから心が病んだ事にきがついた。しかしそれは
自分に必要な病みだったのもわかっている。いわば病みに行ったのだ。

とはいえ、そんな異世界の旅行が面白くないはずもない。新鮮な体験の連続でもある。
特に鉄道を利用した移動はインド旅行の醍醐味ともいえる。なにしろJRだと自動券売機
で一発ポンで買える特急予約席券の購入作業が、インドでは1日仕事になることもある。
昔に比べだいぶ改善されたとはいえ、列車は時間通りに来ない、出ない。到着ホームは
コロコロ変わり油断できない。1等席に乗れば冷房が効き過ぎて極寒地獄、3等に乗れば
冷房なしの灼熱地獄。それどころか予約したのに席が空いてない。
しかし、車内販売は「うるせぇ!」と言いたくなる頻度で来るし、車内で出る弁当の
カレーはうまい。チャイもうまい。
車窓からは日本ではありえないような風景が広がっている。南国の木が生い茂り、半裸の
少年達が農作業の帰りに列車に手を振っている。インドは広いので、都市間の特急に
乗っても1日2日かかる。だから寝台車に乗ることになる。当然だが、3食カレーだ。
朝だけは軽食がでるが、味付けがカレーだから結局カレーだ。

1等はセレブの車両なので盗難の心配はあまりないが、セレブのインド人は外国人に
関わりたがらない人も多い。3等は庶民の車両なので、こっちが関わりたくなくても
向こうが関わってくる。ほっといてほしい時は1等を、寂しい時は3等に乗ればよい。


インド滞在中に必ず聞かれるのは「結婚しているか」「年はいくつだ」「仕事は何か」
で、これは遠まわしにこちらの身分を探っているのだ。身分差別がある国なので、相手の
階級が重要な情報になる。職業で階級を見定め、結婚で社会的な安定を探る。年齢は
人種の違いで年齢の見当がつかないから出る質問だ。無難な回答としては既婚で会社員。
これで向こうが安心するのだからウソでもよい。

あまり宗教は聞かれないが、インド人は日本人は全員仏教徒だと思っているので、そう
答えておけば無難だ。ヒンドゥー教徒は仏教のことをヒンドゥーの派生宗教程度にしか
思っていない(実際そうだが)ので、軽んじられて話は終わる。

インドは歴史が長い国だが、ヒンドゥー寺院はイスラム教徒にことごとく破壊された
ので、今ある寺院のほとんどが最近建造されたものだ。そしてヒンドゥー寺院のデザイン
はどこかファンシーで、あまり重みを感じない。どっちかというとラブホのような
印象だ。そして非常に人間臭い神様を、生々しく信仰している。日本人の希薄な宗教観
からは理解しにくいが、オタ的にいうと「アニメのキャラのファン」的な信仰だ。
神話と娯楽物語の区別が曖昧なままになっている。昔の日本もそうだったが、いつの間
にか両者は区別されている。これは「信じてもよいもの・信じてはいけないもの」の
差だ。インド人は信じ、日本人は信じない。アニメは楽しむが、信じている人はいない。


インドといえばマリファナ・ハシシュだ。そこらへんで適当に買える。もちろん違法だ。
しかしその違法性の重みは、酒を飲むほうがうしろめたい。警察署の裏にあるジュース
スタンドでマリファナ入りのドリンクが売っている。日中から平気でそれを飲んでいる
人がいる。黒い粘土みたいなハシシュ(マリファナの成分を抽出したもの)も売店で
普通に買える。質はピンキリなので、見る目がないと混ぜものや偽物をつかまされる。
一方、酒屋は裏通りの目立たないところにひっそりとあり、店主が申し訳なさそうに
ビクビクと販売している。酒は完全に違法というわけではない。しかし警察がワイロを
取り立てるのはジューススタンドではなく酒屋からだ。外国人は酒を出すレストランを
気兼ねなく利用しているが、インド人の酒好きは隅っこで大人しく目立たないように
飲んでいる。

インドへ行く者にとって、麻薬は必ず付きまとう誘惑だ。毎日売ろうとする者が声を
かけてくるし、一言「欲しい」といえばすぐに手に入る。さほど高いものではない。
覚醒剤やヘロインなどはともかく、マリファナやハシシュ程度で即死するわけではない
が、体質が合わない人は悪酔いすることがあるし、何を混ぜられているのかわからない。
手を出さないのが無難だが、長い滞在中、好奇心を抑えるのも難しいだろう。結局、
自分で判断して決めることになる。まあ、大抵は手を出しちゃうだろうけど。そして
相場を知らないからボッタくられ、質の悪いものをつかませられ、混ぜ物で悪酔いして
最悪な気分になるんだろうけど、自分で決めたことだから仕方ないよね。もちろん
見つかれば逮捕される。ワイロで出られれば運がいい。でもかなりふっかけられる。
ワイロが効かなければ犯罪者。劣悪な牢獄に放り込まれる運命が待ってる。自分で決めた
んだから仕方がないよね。そういう覚悟でやったわけだし。

で、キッパリ誘惑を退けたのに、日本に帰った時の空港で麻薬犬が寄ってくる時の恐怖!
「え!もしかして誰かに荷物に仕込まれたかも?」という焦り。麻薬犬が素通りして
くれてホッとする瞬間までがインド旅行。おつかれさまでした。ちなみにアウトの
時は、あなたの後ろで麻薬犬がお座りするよ。そうなったらいろいろあきらめることに
なります。


インド滞在中はとにかくカレーばかり食べ続けることになる。もちろん他にも食べ物は
ある。都市にはハンバーガーもピザもサンドイッチもある。しかし安い価格で手軽に
食べられるものは、大抵カレー味だ。長期滞在していると金銭感覚が鋭くなる。毎食
高価なものを食べ続けるわけにはいかない。ターリー(カレー定食的なもの)が一番
コスパに優れているとすぐ気がつく。だから大抵毎日カレーになる。

北インドはパン食。南インドは米食。日本で有名な「ナン」はインドでは高級品。専用
の釜がある店でしか食べられない。通常は「チャパティ」というパンをカレーにつけて
食べる。カレーの具は大抵1品。「ホウレンソウのカレー」「ジャガイモのカレー」
「チキンのカレー」というように、それぞれの具に合うように香辛料も変える。
南インドの米は細長い。そして炊く水が厳選されているわけでもない。ボソボソの食感。
だから日本の米とは違う食べ物を考えたほうがいい。

インドにも中華料理はある。だが品数はまだ少ない。代表的なのは餃子と麺。しかし
純粋な中華とは言いがたく、「中華的ななにか」程度。チベットやネパール料理の
餃子(モモ)であり、タイ風の焼麺(チョウメン)だ。さすがの中華文明も、インドで
打ち切られる。中華屋が充実しているのは最東端の都市コルカタまで。そっから先は
ごく最近になってできた店ばかり。

インドにも日本料理屋はある。本格的な店からなんちゃって日本料理屋まで。本格的な
店には刺身定食からカレーまである。インドで日本のカレーを食べると、誰もが
「これだよこれ!カレーはやっぱコレだよね!」といいたくなる。価格は日本で食べる
時と大差ない。しかしインドの物価で考えると「超高級レストラン」と同じだ。だから
毎日行くわけにはいかない。

ちなみにpcfxがインド滞在中に夢に出てきて困った日本食は「焼き魚」。もう魚が食べ
たくて食べたくて、何度枕をヨダレで染めたことか。インドでは魚はあまり食べる機会が
ない。海辺の町の西洋料理店のメニューでかろうじて食べられる感覚だ。このとき醤油を
持参していればなおよい。醤油は大型スーパーで稀に買える感覚。

海外にも長いこと行ってない 2

2011年02月08日 | ドライブとかりょこうとか
インドへ行くには色々と方法がある。いちばんメジャーなのは直接ニューデリーに
到着する方法。pcfxも最初はデリーインだった。

しかしまあ、せっかく自由な時間もたくさんとれることだし、ということで、まず
バンコクに向かい、数日ゆっくりしてからコルカタ(旧カルカッタ)インするのを選択
した。

デリーでもコルカタでも、夜中に到着するのは大抵トラブルになる。空港から出ると
夜中なのでタクシーに乗ってホテルに向かうことになるが、このタクシーが絶対に、
素直にホテルに向かわない。間違いなく旅行代理店に連れて行かれ高額なツアーを
押し売りされる。またはガソリンがないので前払いでガソリン満タンにしてくれとか、
そのホテルは潰れたので他のホテルを紹介するとかいわれ、まず100%予約したホテル
までたどり着けない。前払い式のタクシークーポンを先に取り上げられ、到着してから
二重請求されるだろう。そして運転手だけではなく、知らないインド人が助手席に勝手に
乗り込んでくる。インドの戦いの第一ラウンドだ。

ここで相手を敬う気持ちとか遠慮とかは必要ない。タクシー運転手を殺す気でいないと
こちらが負ける。なにしろ、これからタクシーに乗るたびに同じ事を繰り返さなければ
ならないから練習だ。基本は怒鳴る。とにかく威嚇すること。言葉は全て命令形で。
相手は100%詐欺をやるつもりなのだから全力で自分の命令に従わせる。言う事を
聞かない場合はシートをボンボン殴りながらファック&シット&GOの連呼。降りろと
言ってきたら「警察署かホテルか選べ」と脅す。これが基本姿勢だ。空港タクシーは
戦いの場と心得るべし。大げさと思えるかもしれないが、なに、行けばわかるよ。

ホテルに到着しても油断できない。どんなクラスのホテルを選ぶかによるが、大抵の人は
一泊目のホテルはそこそこのクラスにする。でないと日本から予約できないからだ。
そこそこクラスのホテルのはずだが、その期待は必ず裏切られる。フロントのインド人は
インド訛りの英語で話が通じない。エレベーターの故障はあたりまえ。部屋に入れば
ゴキブリ。シャワーは水。外は深夜なのにうるさい。エアコンがあっても故障か騒音。
寝ようとすると蚊が飛んでくる。これから毎日これ以下の生活が続くのだ。まったく
物好きとしかいいようがない自分に腹が立つ。

生ぬるく快適で守られた日本。自分はそこで生まれ育ったお坊ちゃんだったと思い知る
第一夜が終わり、必ず寝不足でチェックアウトすることになる。ホテルでの朝食は
大抵は安全だが、運が悪ければこの朝食で食あたりを起こす。生ジュースをコップ一杯
飲んだだけで十分だ。一時間もすればお腹が鳴り始め、激しい下痢に見舞われる。そして
正露丸くらいでは絶対に収まらない。すぐに薬局に走り、抗生物質を購入することに
なる。そして数日ホテルのベッドとトイレを往復することになる。言っておくが、気を
つけていてもムダだ。長期滞在していれば必ず一回はこの洗礼を受ける。この程度は
まだいいほうで、アメーバ赤痢やコレラに罹って入院ということも珍しくない。
そして、入院したはいいが病院で更に他の病気に感染するのもよくある話だ。その結果、
インド入国後即入院→退院後即帰国という事もまた、よくある話だ。生きて帰る事が
できたならそれは幸運だったということ。

運良く軽症で済んだら旅を続けられる。神的な何かの試練のひとつをとりあえずクリア。
おめでとう。でも次に来るのは二つ目の試練なわけで、おめでたくはないんだけど。

海外にも長いこと行ってない 1

2011年02月08日 | ドライブとかりょこうとか
現在、病気でいろいろと休んでいる。人生そのものを休んでいる状態だ。
ぼちぼち復帰する予定だが、この一年余りはとにかく休養した。

一番の趣味である海外旅行も控えている。最後に行ったインドで心身ともに疲れた。
よくいわれるように、インド旅行というのは「呼ばれて行く」ものだ。日本育ちの
甘ったれ坊ちゃん嬢ちゃんは、インドで打ちのめされる。「自分は平気だった」という
人もあろうが、それは感性が鈍って何も見ていないからだ。「呼ばれる」というのは、
神的な何かに、「お前そろそろ試練を受けろ」というお達しに他ならない。決して
「観光旅行」というお気楽なものでは済まないのだ。

pcfxも日本生まれの日本育ちで甘ったれの坊ちゃんだ。東南アジアでどれだけ旅行経験
があろうと、中央アジアへ入ればレベルが違う。物売りのしつこさ、詐欺師の多さ、
衛生状態、交通の不便さ、命の危険、それらは格段に厳しくなる。油断できない出来事
の連続。それも派手なアクションではなく、地味な危険への対処の毎日だ。

「なんでそんな苦痛な所に行くの?行かなきゃいいじゃん」

しかりごもっとも。しかし「呼ばれて行く」というのは、実は選択の余地などないんだ。
インドから呼び声がかかると、どうしても行かなければならないという衝動に連日連夜
苛まれる。そして「インドを本格的に旅する」というのは生半可なことではない。「3泊
4日でちょっと行ってきます」という旅行にはなり得ないのだ。香港やバンコクなら
それで十分だが、「インドを旅する目的」というのは、そういう気軽なものとは違う。
香港やバンコクは「遊び」、インドは「苦行」が目的なのだ。そして「苦行」が三日や
四日で終われるわけがない。「最低一ヶ月、できれば半年」がインドの条件だ。

会社員が一ヶ月とか半年休めるわけがない。行くなら会社を辞めてからだ。だから大人
のインド旅行者は、大体無職状態だ。貯金をはたいて高いオープンチケットを買い、
節約旅行を余儀なくされる。この時点でもう苦行は約束される。そして帰ってからの
生活という漠然とした、しかし確実な不安を抱えながら旅に出るのだ。
そうまでして行くのがインドだ。そうまでして行く事になるのが「呼ばれる」という
事だ。

大学生ならもっと気楽に行けるかもしれない。金持ちなら不安はないかもしれない。
しかし「インドへ行く」という心理状態ってのは、そういう自分の立場とは別に、
使命感や焦燥感から沸き起こってくるものだ。だから待ち受ける苦難にみんな恐れを
抱きながら旅立つことになる。


pcfxにとって、インドの長期滞在は2度目だった。最初は二十歳のころ。半年間インド
を放浪したが、まだ気楽だった。若さゆえ怖いものがなかったからだろう。
だいぶ経って二度目。会社が潰れたが退職金は出た。その折、狙ったかのように旅行会社
からインド行きチケットの広告が来た。そして国内の旅先でインド人と知り合った。
だいぶ前に送った懸賞があたり、大量のインドのお香が届いた。近所にインド料理の
店が突然オープンした。本屋に行くと、「地球の歩き方・インド」が本棚から飛び出し
ていた。これが「インドが呼んでいる現象」だ。以前の時も同じような事があったので
pcfxにはすぐにわかった。インド関連のものが一時に押し寄せてくる瞬間だ。

旅行代理店に出向き、オープンチケット(行き返りの日時が自由にできる航空券)と
ビザを注文。代理店の人から「インドですか、うらやましいですね」と言われる。
この短い言葉には「お金はともかく、自由な時間が取れたのですね。そして浮ついた
旅行でなく、なにかを求めて行くのですね」という、多くの旅行の手配をしている人
ならではの感嘆が込められているのだ。


出発までに旅行の買い物にいく。インド旅行の旅の準備で買うものも、他の観光旅行と
はちょっとちがう。なるべく丈夫で壊れにくいもの。いくつもの鍵。質実剛健なものを
選んで買う。サイフも複数買う。一度に全財産を失わないためだ。旅行カバンもいつも
のカートではなくバックパック兼カートのもの。都市と地方で両方使うため。
そして医薬品リスト。インドではどんなに気をつけていても病気になる。主に細菌性の
下痢とマラリア、コレラの対策は予防接種など意味がないので、現地で買える薬品名を
知っておかなければならない。またインドでは抗生物質も薬局で1錠からバラで買える
が、日本人には強すぎるので、日本人の適量も知っておかなければならない。そして
傷害保険も必須。保険が使える病院リストも必須となる。

前回の旅で学んだ知識を思い出しながら道具を揃え、空港へ向かう日が来た。