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今月の売れ筋商品(試食感想等)・流通革新レポート

PosBankシニアアナリストの村上が、座長を務めます。(尚、POSBANKは、商標登録済みです)

六、MDSにおけるロス退治が業革思想

2010年08月31日 | 流通革新             
六、MDSにおけるロス退治が業革思想

多くのチェーンは、マーチャンダイジング・サイクルを実施していくうえで、様々な問題点や弊害、あるいは、課題を抱えており、それらの解決案や改善案を各担当部署ごとに作成する。まず、部門内で解決できる問題点から、すなわち、部門間調整が必要である問題や他企業にからむ問題については、後回しにして改善をおこなっていく。これはこれで、部署内での効率化や省力化が図られ、それなりの効果は認められるのだが、後回しにした問題を解決しようとすると、新たな問題が発生し、その対応に追われてしまう。この繰り返しが、長い間「高度成長という美酒」に慣れ親しんでいるうちに、企業体質(組織体質、個人体質)として、自然に形成されてしまった。
後回しにした問題はそのまま放置され、本質的な問題解決がされないまま、現在にいたり、長引く経済不況と最近の消費環境の悪化によって、「売上があがらない、利益が出ない」という結果が出始めてから、やっと重い腰をあげだした。
業務改革を簡単に言うならば、「セクショナリズム」、「メンツ」、「プライド」、「思惑」といった「我」をすてて、「顧客の立場」に発想を転換して、物事の本質(根本原因)を捉え、ムリ・ムラ・ムダから発生するすべての「ロス」を排除する仕組みを作り上げることである。
「ロス」を排除すると言うことは、たとえば、一時的に表面を美顔に作る「エステティック・サロン」に通うのではなく、食事療法や適度の運動等を交えながら体の心(内臓)から健康にしていき、健康美あふれる身体を作り上げることと同様に、一時的に排除するだけでなく、「ロス」を排除し続ける仕組みを作り上げることである。
マーチャンダイジング・サイクルでは、「売れる商品・満足していただける商品だけ」を店頭に陳列することで、売上と利益を確保する。しかも、あらかじめ経費やロスを考慮して利益を確保できるかを考えたうえで、商品を仕入れて販売する。個人商店では、店主がすべてのことを考えて行うことができるため、原則を守って販売すれば実に簡単な仕組みであるが、役割分担ごとに担当者が介在する組織で運営すると、商品ごとの評価(原価、売価、利益、売れ数、売り方等)が違い、その商品に対する扱い方も違ってくる。

・ 売れる商品・満足していただける商品をどうみつけるのか
・ 地域の顧客ニーズの情報をどう得るのか
・ メーカーの計画している新商品の情報をどう得るのか
・ 満足させられる商品がない時どうするのか
・ 仕入れた(契約した)商品を店舗にどう伝えるのか、納得してもらうのか

以上が、バイヤー業務の主な役割になり、仕入れた商品をバイヤーが顧客の立場にたったスーパーバイザー(販売)とディストリビュータ(物流)に対し、商品の価値や売れる、満足させられる理由を明確にして、販売の仕方、販売予定数値の計画、安定供給のための物流面での調整をして納得させる。その意味では、バイヤーにとっては、事前検証をここで受けることになり、販売面での店舗指導はスーパーバイザーに、物流面ではディストリビュータに責任が付加される。

・ スーパーバイザー(販売)は、安易に納得していないか、店舗に説明できるのか
・ ディストリビュータ(物流)は、安易に納得していないか、店舗に説明できるのか
・ ディストリビュータは、物流面での改善提案ができるのか、(陳列棚ごとの仕分け、補充商品をまとめて納品、即、陳列等)

次は、スーパーバイザーが店舗責任者、あるいは、担当者と新商品の取扱いや補充発注、陳列方法、販売(値下げ)、在庫など販売全般について相談・指導する立場になり、商品そのものの数値責任は店舗側に移る。

・ 商品の「価値」を理解したうえで陳列方法をかえることができるのか
・ 商品の「価値」を売り場全員に伝え、顧客に伝える努力をしているのか
・ 食品(鮮度、味覚、量、価格)、衣料(素材、デザイン、価格)
・ 顧客ニーズの把握ができるのか、ニーズに合わせた売り方できるのか
・ 死に筋商品の理由分析(陳列、価格、価値、鮮度、容量など)したうえで排除しているのか
・ 売れ筋商品の品切れはないか
・ 売れ筋商品に売り上げ変化はないか
・ 値下げする理由(売れない理由)は何か
・ 地域ニーズに合った商品を品揃えしてあるのか(昔5%、今30%)
・ 陳列に工夫(価値の訴求)がされているのか
・ 楽をする売り場ではなく、楽しい売り場になっているのか
・ 発注のために必要な情報を売り場全員が共有しているのか
・ 発注の時に仮説をたてているのか
・ 売り場で、商品の動きをみているのか、発注の検証にいかしているのか
・ 「なぜ」に踏み込んだ単品管理の徹底を売り場全員が理解しているのか
・ 売り場の数字の見方、読み方を売り場全員が理解しているのか
・ 利益感覚、経営感覚が売り場全員に身に付いているのか

発注した商品については、販売から在庫処分まで数値責任を含めたすべてを店舗が責任を持って対応することにより、店舗内の意思疎通をよくし、マーチャンダイジングをすすめていかなければならない。
・ 売れる商品だけを確実に選択して、チャンスロスや値下げ・廃棄ロスを最小限にする
・ 地域ニーズや顧客ニーズの変化や店舗で発生する様々な事柄をスーパーバイザーがパイプ役となって本部に伝達する
・ 全員がチャンスロスや値下げ・廃棄ロスを含めた計数管理ができる仕組みをつくる
・ POSデータ分析の重要性を理解(検証の道具)して、単品管理を徹底する

業務改革とは、マーチャンダイジングを遂行していくうえで、支障となる事柄を整理し、問題を解決していくことである。企業は、このことを繰り返しおこなうことができるよう体質改善する必要があり、企業を取り巻く経済環境の変化によって、いかにすばやく対応できるかが、二十一世紀に生き残れる条件となる。
21世紀にはいっても、従来と同じ運営方法で企業運営していることの多さにビックリするくらいであり、企業を取り巻く環境の変化やそのスピードの早さは驚くばかりであり、物余り時代、どこでも商品が手に入る『買える』、コピー商品の横行、希望価格による販売価格の自由さ、あの手この手の販売方法、ITを駆使した無店舗販売等の時代で、今まで経験したことのない状況が今日の姿であるので、三感主義(感動、感激、感謝)の徹底をすること以外に生き残る道はない。

五、MDSを支える販売時点情報(POSシステム)

2010年08月23日 | 流通革新             
五、MDSを支える販売時点情報(POSシステム)

マーチャンダイジングの精度を高めるうえで、POSシステムは小売業にとって、なくてはならない存在になってきているが、現在の課題は、

① ハード・ソフトのコストが高い
以前に比べてハードの部分については、コスト面ではかなり安価になっており、パフォーマンス性においては、日々向上している。結果的に、コストパフォーマンスが上がっていることになる。使い勝手や性能面でも、格段の進歩をとげているが、長時間、あるいは、24時間稼動が前提となっているため、バックアップを二重三重に考慮する必要があり、その費用を入れると初期費用としては、以前よりも高めになっている。これは、新技術を取り入れたことによるものなので、いたしかたないが、問題はソフトウェアの部分である。基本ソフト(Windows 3.1 ・Windows 95 ・Windows NT ・Windows 98 ・Windows XP・Windows 7・ その他DBソフト等)が、めまぐるしく変化する中で、業務システムの開発が行われている。店舗でそのシステムが稼動するときには、OS(オペレーティング・システム)のバージョンがあがっていたり、また、OSが新しくなっていたりするため、メーカーがこの変化に対応できず、フォローする体制が整えられないといったことや新規に業務システムの開発が行われることになっても、アプリケーション(プログラム)をメーカー側で請け負うことは難しくなっている。ひと昔前の汎用機を中心としていた時代には、業務面の知識を勉強して、第一線でコンピュータシステムのシステム設計やプログラミングを行ってきた訳だが、「リストラ」でSE自ら会社を辞めたり、会社都合によって辞めさせられたりし、また、「パソコン」の普及によって汎用機を中心とした仕事に携わってきた人にとっては、すんなりと入り込めない時代となってしまった今、業務システム・エンジニアと呼ばれる人がいなくなっているため、すべてと言って良いほど外注に業務(設計・プログラミング)を委託している始末である。そのため、ソフト開発費用が高くなってしまうことには、我慢できるが、悪いことにシステムの品質が以前より低下していることに対しては、頭を悩ますところである。また、修正対応に必要な期間と費用が、以前に比べると数倍かかっており、ユーザーにとって、システムを維持する費用(運用費用含む)が大きな負担となっている。先を見たユーザーは、メーカー系ではないS・I(システム・インテグレーション)企業や専業メーカー(まだ業務システム・エンジニアがいる)とのタイアップなどで対策をたてている。

② 小売業自身もリストラの結果、業務のわかるシステム・エンジニアがいない
メーカーだけの責任ではなく、小売業も営業に関係ない部門の人員配置や人員整理を行った結果、必要最低限(現行稼動している汎用系の業務フォロー)の要員しかいないため、新規業務や修正業務については、外注(外注先も専属ではなく、業務知識のない会社)に頼まざるを得ない状況になっている。会社の方針で、本業にあまり影響しない(養成に時間がかかる部分を)業務に関しては、外注化を推進し、それらの投資コストを見込んでいる場合は良いが、逆にシステム予算が絞り込まれているところでは、システムの改善や新規業務が予算にしばられて、中途半端なシステム開発に終わっている。

③ POSを稼動させるための前提条件を整備していない
POSを稼動させるための前提条件として、店舗側では、EOSの定着化、売価の徹底(値下げ含む)、PLU(プライス・ルック・アップ)を徹底させることであり、本部側では、商品の正確な登録および修正、品揃えの徹底、店舗への指導(活用ガイドとPR)等があげられる。さらに仕入先では、ソースマーキング商品の対応、本部への商品変更の連絡等があり、これらの運用次第でPOSデータの精度が良くもなり、悪くもなる。

であり、これらの課題次第で、データ活用にも影響がでてくる。
とくに、店舗におけるPOSシステム導入の目的を明確にしておかないと、単なる省力化のツールや商品部の仕事を手伝っている程度の感覚でしかなくなってしまう。少なくとも、そういった感覚を持った従業員が今なお見受けられる。
POSシステムの導入による主な狙いは、

① 売れ筋商品の欠品防止(販売量とフェース管理)
② 売れ筋上昇傾向商品の拡充体制
③ 死に筋商品の早期排除と新商品の導入フェース確保
④ 売れ数下降傾向商品の縮小体制

であり、単品管理(図表5 ─ 51)の精度向上とあわせて、自店を現状分析(位置付け、ニーズとのギャップ)したり、オペレーションを検証するための道具として利用する。それによって、ストアロイヤリティを高めていき、地域の消費者に信頼していただける店舗をつくることが目標となる。そのためには、働く人全員が、データや数値を読み取る力をつけて、経営感覚すなわち利益感覚(営業数値)を身に付け、さらに店舗が目指している方向との検証で問題点を明確にし、早期に解決していく姿勢を身に付けなければならない。
パートさんに、担当部門の数値(発注データ、仕入データ等)を見て下さいと頼むと、「すいませんが、今忙しいので」とほとんどの人が断る。「簡単だから」といっても「ほんとは、数字に弱いので」と言う理由で断ってくる。「では、家計簿をつけていますか」と聞くと「つけています」と言う。「じゃ、大丈夫ですよ」と言って、数値の説明(家計簿を例にして)をしてあげると「意外と簡単ですね」と安心した顔になる。
「データや数値」の見方がよくわからない。あるいは、理解への不安が先に立ち、冒頭のような発言になってしまう。これは、データや数値の見方の説明が不十分だったことや店舗の数値類はパートさんには関係がないと勝手に思い込んでいたためである。
どこの小売業でも、パートさんの戦力化(社員なみ)を目指している中で、意外と数値教育を行わない企業が多い。やはり、社員並みであれば、売り場担当とバックルーム担当のパートさんにも数値教育(練習問題をだす)をおこなって、少なくとも利益感覚を身に付けてもらうようになれば、会社に対する帰属意識も高まり、仕事への取り組みも意欲的になる。
数値の意味するところが理解できてから、データ活用の手順を教育しなければ、自分勝手な解釈をしたり、わかっているものと思っていたことが、実は理解されていないと言うことがよくある。
データ活用の手順としては、

① 現状分析(問題点の提起)
・ 各々の帳票に出力項目ごとに比較データ(基準値)の設定と数値の把握
・ 業界基準、企業基準、部門基準、店舗基準、担当者基準
・ 計に対する構成比、時系列(前月比、前年同月比、予算比)
・ 現場の実態
 販  売…基本オペレーション、顧客ニーズや変化の対応
 商  品…品揃え、鮮度、在庫、発注等
 イメージ…宣伝、店舗内外装、照明等
・ 問題点の洗い出し
* 従来は「カン」や「思いつき」で問題提起が多かった

② 問題点の整理と対策案(仮説)
・ 真の原因の追求(現象面の洗いだしに終わっていないか)
・ 解決案の作成 (優先する立場を見失わないこと)
・ 優先度と実現性のチェック(計画をたてる)

③ 実施
・ 行動しなければ、何も解決しない

④ 検証
・ 該当する帳票の出力項目のチェック
・ ①に戻る

等があり、社員全員が自主的にマーチャンダイジングに参画する意識を身に付けることが大事である。
今や、パソコン・POS機器のハード性能は、一時期の大型汎用コンピュータと同様に年々性能が倍々に向上している(コア2からI3、I5、I7と言う具合に)ので、ソフトウェアの方の進歩が低迷している(各命令のスピードを意識しないで良い)が、運用面で入力の正確性や使い勝手、楽しさに重点がおかれている、CMと商品(ブランド)との効果分析等が充実してきている(CM総合研究所・CM DATABANK…http://www.cmdb.jp/を参照)。

四、MDSを支える情報システム(本部編)

2010年08月17日 | 流通革新             
四、MDSを支える情報システム(本部編)

チェーンストアの場合は、コンビニエンス・チェーンと商品の取扱い分野が違うので、マーチャンダイジングも商品の特性別に管理方法をかえている。
大きく分けて、4つの管理方法がある。

① 生鮮食品(精肉、鮮魚、青果、日配、惣菜)
・ 商品特性………商品回転率が高い、原料から加工、鮮度訴求、短期見切り
・ 管理ポイント…鮮度管理、ロス管理、加工管理
・ システム………生鮮システム、POSシステム、プロセスセンター
・ 商品処理………発注、仕入(検収・検品)、買掛・支払、加工・物流センター
・ 商品情報………売上・在庫、売れ筋・死に筋、販売効果分析、仕入先分析、
(ABC分析、値下・ロス管理、品揃管理、商品回転率)
・ 商品計画………予算・実績管理、商品別損益、仕入先管理、商品ロス管理
(予算の達成、過剰仕入の防止、商品原価の低減、計画の修正)

② 定番商品(一般食品、日用雑貨、肌着、靴下)
・ 商品特性………商品回転率が高い、補充発注、賞味期限管理、在庫管理
・ 管理ポイント…フェース管理、品切れ防止、死に筋排除、鮮度管理
・ システム………EOS、POSシステム、物流センター
・ 商品処理………発注、仕入(検収・検品)、買掛・支払、物流センター
・ 商品情報………売上・在庫、売れ筋・死に筋、販売効果分析、仕入先分析、
(ABC分析、品切れ防止、品揃・フェース管理、商品回転率)
・ 商品計画………予算・実績管理、商品別損益、仕入先管理、商品ロス管理
(予算の達成、過剰仕入の防止、商品原価の低減、計画の修正)

③ ファッション商品(婦人衣料、紳士、子供、洋品、服飾、ファニシング)
・ 商品特性………商品回転率が低い、季節・流行、コーディネイト、在庫管理
・ 管理ポイント…売れ筋・死に筋、売変管理、契約数量管理(消化率)
・ システム………FOS(ファッション・オーダリング・システム)、POSシステム
          タグシステム、ファッション物流センター
・ 商品処理………発注、仕入(検収・検品)、買掛・支払、物流センター
・ 商品情報………売上・在庫、売れ筋・死に筋、販売効果分析、仕入先分析、
(ABC分析、MDSの意志決定、品揃・属性管理、契約管理)
・ 商品計画………予算・実績管理、商品別損益、仕入先管理、商品ロス管理
(予算の達成、過剰仕入の防止、商品原価の低減、計画の修正)
④ 大型商品(家具、家電、カーペット、健康機器)
・ 商品特性………商品回転率が低い、見本売り、接客、アフターサービス
・ 管理ポイント…配達・集金管理、カラ売り防止、売れ筋在庫管理
・ システム………ビッグチケットシステム、POSシステム、クレジット、顧客管理

 チェーンストアの中でも、GMSでは、生鮮商品、定番商品、ファッション商品、大型商品を扱い、スーパーマーケットでは、生鮮商品、定番商品を扱っている。
コンビニエンス・チェーンでは、定番商品が中心で、おにぎり、弁当、惣菜やその他ファースト・フードの生鮮商品的な商品を扱っているが、管理的には定番商品に鮮度管理(廃棄等)を加えた方法がとられている。ここでは、両チェーン共通の定番商品を中心に、コンビニ本部での活用事例を紹介する。
店舗にPOSが導入される前までは、仕入データをもとに、地域別単品ABC分析表と店別部門別商品動向分析を店舗に配布して、フィールド・カウンセラー(FC)が店舗を指導し、地域別単品ABC分析表で、バイヤーが売れ筋、死に筋を判断して商品の企画及び商品の取り扱い中止を決定していた。これでは、仕入れた時期と売れた時期にズレが生じ、素直に実態が現れなかった。それでも、単品データと言えば仕入データしかなく、仕入=売上とみなして、バイヤー業務を「カン」と「データ」でなんとかこなしてきた。
しかし、小売業も低成長の時代に入った頃から、「カン」と「データ」のバイイングでは、通用しなくなってきた。ハードメリットだけで高価なPOSレジを導入(テスト導入)してきた小売業が、販売時点情報(POSデータ)を顧客ニーズの反映(購買)としての価値があり、また、その対応度合の尺度とする重要性があると認めはじめたのが、ほんの10数年前のことである。
その間、店舗POSの高額な導入コストと、膨大なデータ量の分析時間とコンピュータコストに悩ませられていたが、数年前から、通信コスト(ISDN…高速デジタル回線)やクライアント・サーバーシステム(オープンシステム)の普及で、POSデータの本格的な活用がはじまった。
さらに、近年では、2000年問題やパソコンの低価格化で、汎用コンピュータからクライアント・サーバーシステムの移行やモバイルコンピュータによる容易なデータ活用への見直し、安価なパッケージ・ソフトの導入等で、情報関連コスト(ペーパーレス化等)の削減とデータ活用による業績管理上の効果(ソフト・メリット)が注目されている。
図表5 ─ 41がコンビニエンス・チェーン本部での情報分析業務体系図であり、そして、この表の中の商品動向分析、商品傾向分析、商品例外管理分析、ベンダー(仕入先)分析等を商品部に提供している。
商品部(バイヤー)の役割とは、

① 年間、月間、週間のマーチャンダイジング・プランを作成し、バイイングを行う
② 商品情報を店舗に定期的に連絡する
③ 商品の定期的な見直しと主力・重点(行事、催事)商品の決定
④ 売れ筋と死に筋商品の分析と提案
⑤ 商品トレンド情報の収集と新商品の開発(コーディネイト)及び推奨価格の決定
⑥ 販促(メーカー販促も含む)催事商品投入計画の作成
⑦ プライスゾーンの決定とプライスポイントの設定
⑧ 地区別取り扱いの決定
⑨ 標準在庫量、商品回転日数(食品5~10日、日用衣料、雑貨10~20日)の設定

等であり、参考までに、販売部(フィールド・カウンセラー(FC))の役割とは、

① 店舗オーナーに対し、ストア・マネージメントのアドバイスとフォローアップを行う
② 販売業務(地域)に関わる指導と教育(相談員として)
③ すべての商品情報を連絡し、取り扱いを相談する
④ 低効率部門の改善提案(商品構成、品揃え)
⑤ 販促、催事商品の販売指導を行う
⑥ 賞味期限管理による廃棄方法(2時間前)と粗利改善方法の教育
⑦ 適正なスペース配分の提案と在庫バランスの維持方法の教育
⑧ 目で見た商品の動きやその他商品情報(改善提案)を商品部と協議する

等であり、図表5 ─ 41の中の販売管理、経営分析、商品動向分析、商品傾向分析、商品例外管理分析、ベンダー(仕入先)分析等を販売部に提供している。
ここでは、商品動向分析を簡単に要約すると、クラス別のABC分析(パレート分析)から、単品の売れ行きを時系列に確認しながら把握し、売れ筋商品については、他地区への拡大、取り扱いのない店舗については、取り扱いを推奨する。死に筋商品については、売れない理由を把握して、その理由をつけて早期廃止勧告をする。
また、売れ筋、死に筋の属性分析(プライスラインと素材、ブランド、容量、容器等)を行い、商品傾向分析とあわせて、新商品の開発(商品情報として)に活用する。新商品開発では、これらの分析情報と外部情報を取り入れることで、売れ筋になる確率を高めることになる。
コンビニエンス・チェーンの商品部の業務量は、チェーンストアに比べると雑用が少なく、データ分析や商品情報の収集に専念できる時間も多く、さらにバイヤー一人当たりの担当単品数が約半分以下とかなり少ない。POSデータに客層(誰が買ったのか)情報がついていることも、売れ筋になる確率を高める要因になっている。
そのため、商品の改廃手順も、

① コンセプト(計画)通りの商品か
・ 商品イメージ(ターゲット、便利性等の特徴や価値)
・ 商品構成(クラス別、素材、味覚、品質、容量、ブランド等)
・ 売行予測(理由、データ、販売方法、メーカー販促)
・ その他(プライベート・ブランド(PB)化の検討、物流、値入)

② 売価・物流(便)と取り扱い地区の決定
・ 取り扱い中止商品の決定(中止商品の案内書を店舗に配布)
・ テスト販売地区を決定

③ ベンダー(仕入先)の決定
・ベンダーの取り扱い地区(物流を含めて)等の条件交渉
・ 物量予測、鮮度維持
・ プライベート・ブランド(PB)商品の仕様書およびレシピの作成(素材、加工、調理、保管)

④ 発注開始日と発注・納品サイクルの決定
・ 新商品の登録
・ 新商品の案内書を店舗に配布(伝送)

⑤ 新商品の売れ行きのフォロー
・ テスト販売地区の実績チェック(POS実績)
・ 他地区への拡大

などである。これを繰り返すことで、ニーズへの変化に対する対応と鮮度ある売り場作りの実現を目指すのである。
本部の場合、常時現場(店舗の売り場)に入れないので、店舗ごとの特長が解るような分析を行うことが必要であり、ありのままの実績を表示することと併せて必ず比較するデータ(同一条件に近い店舗や平均値等を表示することにより其の店舗の強弱が解るように分析すると個別店舖の特長がはっきりし、指導がし易い。

三、MDSを支える情報システム(店舗編)

2010年08月09日 | 流通革新             
三、MDSを支える情報システム(店舗編)

今年のはじめに、S社が情報システムに600億円超の情報投資をして、老朽化した店舗関係のストア・コントローラー(パソコン)、発注端末(E・O・B)や新POSレジおよび本部の商品情報検索システム(データ・ウェアハウス)などの導入、入れ替えを発表したが、その金額の大きさにコンビニエンス・チェーン関係者やシステム関係者は驚かされた。その情報投資をした内容を冷静に分析してみると、その金額の80%以上がハードや設備コストに投資されており、ソフト開発については(オペレーション・システムや2000年問題の関係)、ほとんどが従来の仕組みの乗せかえである。今のところ目新しい目玉として発表しているものに、衛星通信を利用した動画イメージの商品情報とペーパーレス化の推進、本部における商品情報検索(データ・ウェアハウス)の推進、それによるマーチャンダイジングの精度の向上と通信コストの削減がある。これらが主な狙いであり、最新の技術革新が著しい分野の取り込みをしたにすぎない。
ただ、7000店舗を超すストア・コントローラーの入れ替えが、今年の秋に終わり(予定)、新レジの入れ替えが始まってからでないと、業務関係の目玉はわからないが、金融や金融ビックバンに関連した業務、たとえば、バンク・カードからの即時決済や銀行が扱う金融商品等の取り扱いサービス業務が中心になるだろう。レジそのものについては、客面表示器の有効活用、たとえば、新商品のコマーシャルや天気予報、ニュース等、TVモニターに近いコマーシャルツールとして利用されるのではないだろうか。現段階では推測の域でしかないが、実際、活用されれば、店舗が情報の発信基地としての役割を持つことになり、イメージアップと共に集客ツールとしての役目を果たすことになる。
物販におけるマーチャンダイジング・サイクルとそのポイントをまとめたものが、図表5 ─ 31であり、コンピュータ・システム面でオペレーションをサポートできる範囲は、

① 店舗内における発注作業の省力化(商品を陳列順に登録)
② 発注忘れ等の防止(販売実績の表示)
③ 商品台帳の検索
④ 検品、検収処理のコンピュータ化
⑤ 廃棄処理のコンピュータ化
⑥ 商品改廃時におけるPOSデータの活用
⑦ 活性化(品揃え、陳列、在庫)のためにPOSデータを活用

等があり、店舗における「考える発注」の定着、商品の改廃作業の平滑化、適切な品揃、在庫の管理を含めた単品管理等の徹底をはかる。
ところが、発注システムをコンピュータ化して発注端末機を店舗に導入すると、発注時間を短くすませるための道具として考える人が多く、陳列棚をみて、あるいは、POSの販売実績をみて、売れた数量だけ発注する補充発注になりがちである。そのため欠品が増えたり、品切れになってチャンスロスを起こしたり、品揃え(陳列)商品が陳腐化し、売れない売り場になったりしてしまうことが多い。
発注端末機の導入が、省力化目的だけの入力機械ならば、POS実績で売れた分だけを自動発注すれば、発注端末機もいらないし、発注時間も少なくて済むので、発注コストがゼロになる。これでは高い機械を導入した意味がない。
発注の精度をあげるため、すなわち、「正しい発注」を行うために導入するのであって、顧客にとってその日に食べたり、使用したり、また、どうしても必要とする商品を多く扱っている店舗においては「欠品」は許されないことである。
小売業は、コンピュータ・メーカーの提案を受けて「省力化」目的で発注システムを導入することが多く、店舗には発注のやり方や仕組みについての説明をほとんどせず(メーカーSEに業務ノウハウがないため説明できない)、発注端末機やストア・コントローラーなどの機器説明や操作説明と言ったコンピュータ・システム説明だけで、システムを稼動するため、本来のソフトメリットが発揮されていないチェーンが多い。
小売業での発注の考え方は、商品一品一品の動きを追い続けて、売れ筋商品に対しては絶対に品切れさせない。また、死に筋商品に対しては早めに処分しいく等の単品管理を徹底することで、いかにストア・ロイヤリティを高めていくかと言うことである。
そのため、コンビニ店での発注のやり方は、

① 商品の動きを確認する(なぜ売れたのか、なぜ売れないのか)
・ 天候は、気温は、湿度は…
・ 催事は、行事は…
・ どの時間帯に…
・ どんな人が買ってくれるのか

② これから、商品はどう動くのか
・ 情報の入手(顧客、友人、知人、新聞から)
・ 発注担当者に連絡(メモでも良い)

③ 何をいくつ発注するか
・ 売れ筋は絶対欠品させない(品切れを起こした商品は10%アップ)
・ 売れると思った新規商品は多めに
・ 陳列方法(フェーシング、POPの計画)

④ 売れ具合はどうだったか
・ POSデータで確認する
・ つぎの判断の参考にする

である。
地域の催事とか、行事の情報を入手するのが、意外と難しいと考えているオーナーが多いが、たまたま、立ち寄ったコンビ二店での出来事である。それは、野球のユニフォームを着た集団がおにぎりやサンドイッチ等を買い込んでいた。小生もおにぎりを買いに陳列棚まで行ってみたが、もう既にほとんどの商品が無くなっていた。それでしかたなく、別のコンビ二店に行ったら、そこにも野球のユニフォームを着た集団がいて、同じようにおにぎりやサンドイッチを買い込んでいた。小生も前のコンビニで買いそびれたおにぎりを買いに陳列棚に行ってみると、まだおにぎりやサンドイッチが山のように詰まれていたので、いくつかとって、精算するためにレジ前に並んだ。多分、パートさんだと思うが精算をしながら、見慣れぬお客さんには必ず話しかけていた。
話の内容はこうである。その精算をしていたパートさんが「野球ですか(応援ですか)」と聞くと、そのお客さんは「そうです」と答えている。パートさんは続けて「チーム名は」から始まって「相手チームは強いの、弱いの」等といろいろ話しかけていた。最後には、「がんばって、勝ってね、そしたら、また帰りにも寄ってくださいね、ありがとうございました」と言って、精算を済ませてから野球のスケジュール表にマーカーでチェックをしていた。
小生の精算のときも同様に「野球ですか(応援ですか)」と聞くので「いえ、違います」と答えたら、「どうも失礼いたしました」で話をやめてしまったので、逆に小生が「なぜ野球のことを聞くのですか」と聞いたら、「この辺は、各健保組合のグランドが30ぐらいあり、毎年この時期になると、野球の大会が毎週のようにあって、それで、そのスケジュール表をお客さんから借りてコピーし、各チームの勝敗を記入しているんですよ」と言い、「なぜ記入するんですか」と聞くと、「試合に勝ったチームは、必ず帰りに寄ってくれるし、次の日程がわかれば、おにぎりやサンドイッチをあらかじめ用意しておくことができるので、そして、次試合だけでなく、来年も来て頂けるので」、と答えてくれた。さらに「売り上げもすごいでしょうね」と聞いたら、「普段の3、4倍ぐらいです」と言っていた。
これで質問は終わりにしたが、毎年10月、11月の2ヶ月だけでも土、日、祝日を入れれば、20日程あり、月約1000万円位の売上が増えるのだから、行事を把握して固定客化し、天候の具合を見て発注すれば、売上が増える例である。はじめに寄った店も、当然ながら野球の大会が毎週のようにあることは知っているはずである。その情報の活用方法を知らないだけで、かなりの差がついてしまう。
チェーンストアでも、発注に対する考え方は同様であるが、取り扱い単品数が多いことと、バックルームに在庫があると言ったことの違いだけである。
コンビニ店での発注のやり方は、商品の動きを確認する(なぜ売れたのか、なぜ売れないのか)だけで済むが、チェーンストアの場合は、これに現在ある在庫を正しく把握することがポイントとなる。正しい発注ができない要因は、

① 売り場やバックルームの商品が整理されていないので、在庫量が正しくつかめない
② 定番商品等のカットされた商品の処分ができていない
③ 商品の入れ替えに計画性がない
④ プライスカードの乱れが多い(フェーシング管理ができていない)
⑤ 商品の売れ行き動向をつかんでいない

等であり、特に、バックルームが狭くて、商品の管理ができる状態ではないと言うことと商品数が多いにもかかわらず、陳列する範囲や幅(ゴンドラの大きさ等)が狭いため、商品を陳列する数も少なくなる。こうしたことから、補充頻度が増えてしまい、労働過多となる。
しかも、バックルームには「死に筋商品」が山のようにあり、思い切った処分をして、品揃えの改善(図表5 ─ 32・図表5 ─ 33・図表5 ─ 34)をはかっていかないと、悪循環が繰り返されるばかりであり、業績面ではこれが利益の圧迫要因になっていることが往々にしてある。
品揃えや販売をサポートする資料として、POSデータからの単品別ABC分析をもとに最適化をはかり、現場を目で見る管理のやり方で調整していくことが重要である。
死に筋をカットする手順として、

① 死に筋商品のカット基準の作成(時間軸で早めにカットと在庫処分)
② データによる発見(単品別ABC分析)
③ 売り方の変更(陳列方法、陳列位置等)
④ 価格変更・量目・生鮮の場合は品質
⑤ 値下して処分(カット理由…次の新商品に生かす)
⑥ 新商品の投入…②に戻る

であり、繰り返し行うことで、死に筋を少しでも減らすとともに、利益面での改善が期待できる。
最近では、パソコンで簡単に、棚割り表などを作成できるソフト(棚割ソフト等)が発売されており、こういったソフトを扱いながら、たとえば、商品の画像の取り込みを本部側で行い、店舗側では、POSデータ、陳列順登録さえすれば、ゴンドラ別に単品ABC分析やスペース分析あるいは、レイアウト分析が日々可能になり、気象条件や時間帯別に陳列の変更(店舗側の作業との兼ね合いもあるが)ができるようになる。
図表5 ─ 35が、コンビ二店でのPOS分析を中心としたストア・コントローラーの機能図であり、その主な活用方法を説明すると、

① 現時点売上・時間帯(売上・客数)…情報分類別時間帯別売上分析
情報分類別売上分析・売上客数分析
本日の売上状況(予算があればその進捗も含めて)を把握して、店舗全体の状況分析をおこなう
・ 前日や前週同曜日と比べて客の入り具合はどうか
・ 時間帯別の客の入り具合はどうか
・ 売上を時系列にみて傾向はどうなっているのか
・ 部門別の売上はどうか

② 時間帯別客層別実績表(客数・単価)…時間帯別客層別販売実績
時間帯別の客層や曜日別の客層の変化を把握して、商品構成(プロダクト・ミックス)
や品揃えの見直しの資料とする
・ ピーク時間帯の売上はどうか、客層はどうか
・ 客層の分布はどうなっているのか、ターゲット顧客の増減はどうか
・ 店要員のシフト(スケジュール)の調整や作業内容の指示は

③ クラス別単品実績表(単品データベース)…情報分類別単品分析
新規商品販売状況
クラス別に自店の強弱を把握して、さらにクラス別に単品をABC分析(パレートと色分け)をし、単品の位置付け(売れ筋、死に筋)を把握して各々の処理をする
・ なぜ売れないのか、(時系列では、客層では、導入時期は、陳列商品の鮮度は、…)
・ なぜ売れるのか(時系列では、時間帯では、曜日では、自店での商品傾向・属性は)
・ 品揃えのバランスはどうか
・ 新規商品の動きはどうか(扱い○、×、△の判断は)
・ 重点商品の動きはどうなっているのか
・ 実際の商品はどう動いているのか(陳列状況や在庫調査は)

④廃棄・値下実績表(部門・単品)
単品ごとに賞味期限切れ商品をスキャンして、当日および月累計を集計して出力し、利益管理を徹底する(廃棄データは単品データベースにも更新する)
・ 部門別の廃棄金額の傾向はどうなっているのか(重点管理部門は)
・ 担当者別ではどうか
・ 管理方法に問題はないか(教育は、情報のコミュニケーションは)

⑤日配の売切れ時間帯(時系列・発注対比)…日別時間帯別単品販売
単品販売10日間推移
基本的には、今日仕入れて、今日販売する日配商品(おにぎり、弁当等の賞味期限の短い商品)の販売、仕入、廃棄、在庫、品切れ時間等を便別にグラフで管理し、仮説に対する検証を行い、次の発注に反映させる
・ 品切れが続いているので、この商品を少し多めに発注したらどうか
・ この商品は廃棄が多いがどんな仮説をたてたのか
・ この商品は品切れと廃棄が交錯しているので、注意が必要だね(天候とか、曜日とか)
・ この新商品は売上が少ないね、どうしてなのか、(客層かな、量かな、味かな)
・ この商品は売れてきたね、(POPで訴求しようか)
・ 祭りがあったので、いつもの5倍発注したけど、やはり4倍ぐらいか(メモする)

 ⑥商品入替サポート…品揃え評価(マトリックス分析)
商品の入替作業の評価に使い、カット商品を決め、代替商品(新商品)の予約発注と商品構成を評価する
・ この商品をカットして、どの新商品を入れるか、新規商品の案内書を見てみよう
・ 売れ筋商品の属性分析をしてみよう
・ 死に筋商品の属性分析をしてみよう

⑦部門別商品動向分析(売上・粗利等)…情報分類別販売伸び率情報
部門別(コンビニの場合、PMAと呼ばれる)の販売、仕入、粗利、値下、伸び率(前
月比、前年同月比)を表示して分析、検証をおこなう

等であり、POSレジからの販売データをもとに、商品面からの経営を情報システムが支えている。
チェーンストアの場合は、レジ台数が多いのでストア・コントローラーでEOS、POS及び各種データを管理し、情報端末で各種情報(図表5 ─ 36)が得られ、商品面からの経営が行われている。
7&Iグループの情報投資は、毎年数百億円にのぼり、毎年着実に改善を繰り返している、他の会社は、情報投資後の効果分析を疎かにするところが多いが、7&Iグループでは、効果分析(SEE-PLAN-DO-SEE-ACTION)を情報システムに於いても着実に行っている・・・シンプルシステム・現状把握をありのままに・変化にいち早く追従する仕組みの構築、そして、情報を活用することにより、精度アップをさせ、楽しみながら活用することで意識改革を図っている。


二、MDSを支える物流システム

2010年08月04日 | 流通革新             
二、MDSを支える物流システム

「発注した商品が届かないほど、店の経営者は、いらいらすることはない、コンビ二店の昼時が一番の稼ぎ時なのに、12時になっても商品がこない、通常ならば、遅くとも11時までには到着しているのに、今日はまだこない、何か事故でも発生したのではないかというおおよその予想はたつのだが、その分今日の売上は、半分になるだろうし、明日からお客さんが何人減るのか心配で、心配でたまりません」と、コンビニのオーナーが言う。小生の会社は新宿なので、こんな光景を何度か見かけている。
コンビニの弁当を、ささやかな楽しみにしているサラリーマンやOLが店にはいったら、弁当がない、おにぎりもない、サンドイッチもない。買うものが何もないため、しかたなくそのまま買わずに店を出て、他のチェーン店に行く。次に行った店には、買いたいものがあったので買う。そして、買ったものを食べてみたら、これが意外とうまい。
他のチェーン店に行っても商品がなければ、顧客は何かの道路事情(交通渋滞、事故、気象状況によるトラブル)のためではないかと思い、翌日からまた元のチェーン店に買いに行くが、万一、他のチェーン店に商品があれば、元のチェーン店のことをいろいろ邪推(売れないから閉店するのだろうか、とか、儲からないから、数量を少なくしたのだろうか等)してしまい、翌日から、店に行く順番を逆にしてしまうだろう。
「顧客が欲しい商品がなかった」時の重大さに、店舗は気付いていても、本部は、なかなか気付かない。仮に、気付いていても「事故で渋滞したので、申し訳ない」とか、「仕入先には、充分注意をしておきます」程度で終わりになる場合が多く、逆に定時に納品することの重要性を認識しているコンビニエンス・チェーンの場合では、その対応に大きな差がある。
コンビニエンス・チェーンでは、通常不良在庫をなくして在庫を削減するとともに、売れ筋商品は品切れしないように、新鮮な商品を陳列することが基本であり、いつ、いかなるときでも、発注した商品と数量が定められた時間内に店舗に届ける役割を負っている。それゆえ、物流面での重要性が良くわかっているはずであるが、物流を担当しているのが仕入先あるいはメーカーであり、両者の力関係もあるため、仕入先の中に踏み込んでいけるかどうかで、改革の度合いが違ってくる。
ただ、どのチェーンも当初は、ムダ(店舗の検品や本部の事務代行)や物流上のロスを少なくすることにより、納入原価を引き下げ、値入率を上げて店舗利益を増やすことから着手した。そして、次にマーチャンダイジング・サイクル上の「納品」にメスをいれ、改革がはじまった。

① 仕入先(問屋)の集約化
・ 数百社の仕入先を数十社に集約し、店舗の後方処理の改善(検品・検収)
・ 本部事務代行処理(仕入伝票の大幅な削減)
・ 商品原価の低下による値入率の改善

② 発注単位の縮小・小口納品
・ 余分な店頭在庫の排除(品揃えの豊富感に課題)により過剰在庫の防止
・ 仕入先による小分け納品(仕入先に負荷)
・ メーカーでの小口生産(メーカーに負荷)

③ 米飯2便制
・ 食べごろの商品を提供
・ 専用什器の開発と温度管理
・ 配送車の温度管理(配送時でも商品の維持管理)

④ 共同配送(牛乳)
・ 異なるメーカー商品を同一配送車で納品
・ メーカーデポを借用して、メーカー別地域割り
・ 共配伝票(24行)による伝票枚数の削減(検品と検収改善)

⑤ 温度帯別(牛乳・生鮮・加工肉のチルド物流)共同配送の開始
・ 新鮮で食べごろの状態を保ったまま納品
・ 複数メーカーの同一カテゴリー商品を共同配送
・ 取扱商品の拡大と店舗作業の効率化

⑥ 米飯3便制
・ 店舗の売上の山(ピーク)にあわせた商品の納品(朝・昼・晩)
・ 専用什器の温度管理の徹底
・ 専用工場の充実(全国数百ヶ所)

⑦ 配送環境の見直し(車、配送ルート、運転手の質等)
・ 低公害の専用配送車(冷暖房付き)…運転者が快適運転できるように
・ 通常配送ルートと迂回ルート情報(無線を利用)による定時納品
・ 商品を大事に扱う

⑧ 温度帯別共同配送センターの整備(200超デポ)と計画配送システム
・ 全地域への拡大
・ 商品の品質にあわせて、同一温度帯で管理し、新鮮な状態でタイムリーに納品
・ 配送距離と走行距離を最小に抑え、貨物量を平準化

であり、⑦配送環境の見直し(車、配送ルート、運転手の質等)ぐらいまでは、どの大手コンビニエンス・チェーンでも改革がすすんでいる。
一方、チェーンストアの場合、店には在庫があり、朝7時の納品予定の日配商品があっても、遅くとも11時頃には店舗に到着し、何とか12時頃までには品出しを終えることができるため、店舗の売上にはほとんど影響がないことから、あまり切実感を受けない。米国の小売業の成長戦略に習い、自前の物流センターを持つことで、いろいろな問題を解決しようとしている。多少改革には時間がかかっているが、チェーンストア各社とも着実に改革をおこなっている。しかし、仕入先、あるいはメーカーとの共同歩調による改革については遅れているのが現状である。
共配を含めた物流・加工センター構築による効果は、

① メーカーからの配送頻度が上がり、リードタイムが短縮されることで、センターの在庫回転率が改善される
② メーカー側では、発注情報をオンライン化することで、より精度の高い生産計画が可能になり、全体として在庫負担が軽減される
③ 仕入先にとっては、配送先が格段に少なくなり、配送にかかる設備投資や運送コストが少なくなる。

であり、物流コストを大幅に削減することを目指すとともに、生産から販売までの在庫回転率を改善することにより、商品の鮮度をあげて店舗の売上を向上させる。
特に、物流センター化にともない、発注データを店舗からメーカーまでのオンライン化にすることで、メーカーでは発注データに基づいた生産計画の情報の精度が向上し、物流過程での流通在庫をコントロールすることも可能となる。
すなわち、EOSやPOS等の情報システムと物流とが連動することにより、マーチャンダイジング・システム全体として在庫削減が可能となり、無茶な値引き交渉(仕入原価1円など)ではなく、理にかなった仕入原価の交渉が仕入先とおこなえるようになる。
ただ、チェーンストアの場合では、すでに大規模な物流センターを構築し、多額の投資をしているため、仕入先との商品の原価交渉や物流代行費などで、もめることが多い(仕入先もすでに物流関連投資(設備、車、要員)をすませているので)。
扱い商品数が少なく、納品量が一定でない仕入先などには、引き取り代行(帰り車の利用などで)もおこなっているが、仕入先が負担する物流代行費が両方あわせて原価の15%前後にもなり、悲鳴をあげている仕入先も少なくない。
ある仕入先では、「いままでは、物流代行費の負担が多くても多少の逆ザヤ(利益がでない)は、大手チェーンとの取り引きがあるという、宣伝費のつもりでなんとかやってきたが、ここ2、3年の経済状況では、もう取り引きを中止せざるを得ない」と言うところまで追い込まれている。その仕入先の社長は、物流代行費だけの問題ではないと前おきして、「このまま消費不況が続くと店舗も我々仕入先(メーカー)もぜんぜん儲からない、この閉塞状態をなんとか打開していかないといけない」と言い、さらに、「いままでは物流コストのことをあまり意識しないで納入原価を決めていたけれども、今後は、物流コストも含めて製造原価を見直し、より一層のコストダウンを図りたい」と付け加え、原価に占める物流コストの大きさを再認識していた。
今後の物流戦略のポイントは、

① 品質・味・鮮度の維持管理の徹底
・ 温度帯別物流
・ 適正頻度、適量納品
・ 専用車両の開発

② ローコスト・オペレーション
・ 複数メーカー商品の共同配送(窓口問屋制)
・ 仕分け等の単純作業の自動化
・ 労働環境の整備による女性ドライバーの採用

③ 計画配送
・ コースの適正化(時間と走行距離の最少化)
・ 貨物量の平準化
・ 迂回配送ルートと緊急配送体制の整備

④ 店舗内作業の軽減と環境への配慮
・ 集約配送により、納品車両の減少
・ 検品、検収の簡素化(欠品や誤納の撲滅)
・ 低公害車の使用

であり、メーカー、仕入先等とお互いの物流ノウハウ、加工技術ノウハウおよび資源(遊休地)等を出し合い協力して、物流改革を押し進めていく必要がある。
この 仕入先(問屋)の集約化は
・ 数百社の仕入先を数十社に集約し、店舗の後方処理の改善(検品・検収)
・ 本部事務代行処理(仕入伝票の大幅な削減)
・ 商品原価の低下による値入率の改善
であり、7&Iグループが規模拡大していく上で、業務改革や上流工程の改善等の基本施策になった、仕入先の集約(共配化や帰り車の利用含む)は、後々物流チャネルの大幅な見直しになり、物流コストの削減と共に小売業のマーチャンダイジング上の短縮と間接経費の大幅なコストダウンに繋がった(発注システムのコンピュータ化・ターンアラウンド伝票とあわせて)。
今後とも、物流問題(コスト)を疎かにはできないし、仕入原価を構成する上での占める割合を如何に少なくするかが問われている。