三、雑用から逃れて、日本流の単品管理体制に向けて組織改革
商品部にとって、役割分担(与えられた仕事)を責任(数値責任も含めて)を持って行うことが段々と難しい時代になってきた。
米国と決定的に違う点は、各店舗に自主性(商品の品揃えや発注数量等)を持たせたという点であり、それによって、米国流組織が日本の小売業にそぐわなくなってきた。
数名のバイヤーの業務を一ヶ月間、分析した結果、問題点と思われるところを順不同で抜き出してみると、
① 事故商品が発生し、その対応に追われる
② 商品の投入管理(店舗へ)業務が定常的に発生する
③ 同僚バイヤーとは、雑談程度であまり情報交換はしない
④ 会議用の資料作り(ワープロ)に追われている
⑤ 店舗からの問い合わせ(納品)や相談等の電話対応
等であり、その合間を縫って、本来の業務である、
① 商品政策業務(方針、仕入基準、品揃基準等の作成)
② 商品計画業務(商品の仕様の確定、契約、売上計画の立案等の作成)
③ 販促業務(チラシと商品とのチェック、各種予算とのチェック)
④ 仕入先との商談(商品見本のチェック、契約)
⑤ 単品ABC分析(消化率のチェック、値下指示)等のデータ分析、傾向分析
⑥ 店舗向け商品案内書の原稿作成
等の業務を行っているが、各業務とも時間が足りないため、雑な処理で済ませている。
また、その他に以外と無駄な時間を費やしているのが、
① 手作業での各種分析資料(会議用、報告用、資料用)
② 単純な転記作業
③ コンピューター出力帳票の分析(異常値等の数値チェック)
等であり、現状の作業をこなすのが精一杯で、顧客ニーズの把握やニーズ商品のイメージ(対応)等の商品企画まで、手が回っていない。
しかも、顧客情報の収集は、極端な言い方をすれば、POS分析と仕入先からの情報だけを吸い上げて、商品を契約(仕入)している。
これに並行して、店舗側の業務分析も行っているが、結論は、「商品に関することは、すべてバイヤーに」であり、商品に関する疑問、仕入、発注、品揃、陳列、値下処理等で分からないこと、確認したいこと、相談したいことは、すべてバイヤーに直接電話をして聞いている。これでは、バイヤーは仕事にならないのも無理はない。
どの小売業でも、バイヤーの仕事には、書類上での業務分担と実際に行っている業務内容との間に大きなギャップがあり(雑用が多い)、それなりに努力をして、「売れるだろう」商品を導入しているつもりだが、実際にはなかなか売れず、販売指導、陳列の仕方、商品のトラブル等の後処理に時間を費やしている。
本来の商売は、一人の人が良い商品を仕入れ、その商品の良さを勧めながら売り、お客様に喜んでもらうことが理想である。
しかし、企業として、あるいは、チェーンストアとしては、それぞれの業務を分担し、組織として商売を行うためには、分業化する必要がある。が、今のチェーンストアにおいて、ほとんどが個人商店の出身である。それゆえ、売上が上れば、人を増やし、店を作り、そして、組織ができ、職務分担ができ上がった、後追いの体制が採られている。そのため、上流工程である商品計画、商品企画等は、バイヤー個人が商品情報やノウハウをしまい込みがちで、店舗や同僚とのコミュニケーションが悪く、組織が硬直化している。
業務改革で一定の成果をあげたI社は、業務改革を継続しながら、次は、店舗に焦点をあて、店舗自らがマーケットニーズを把握し、その状況と商品計画(企画)を踏まえた上で販売計画を立てる方法に変えた。
従来は、企画部が大枠の販売予算を立て、店舗と調整し確定する方法が採られていた。店舗とすれば、どちらかと言うと予算を押しつけられた面があり、積極的に達成しようという意欲にかけていた部分があったため、店舗が自主的に販売予算を立案し、責任を持って達成する仕組みに変えたのである。
そのため、バイヤーが立てる商品計画の精度や店舗に対する販売面の支援体制が課題として上がり、バイヤー、ディストリビューター、スーパーバイザーの役割を明確にして、それぞれの業務を無理なくこなして行けるような組織の整備を行った。
ここで、第三章の一(売れ筋を探す・創る・把握する)で取り上げた各担当者の役割分担を更に、詳細に説明すると、
① バイヤーの役割(商品企画のコーディネーターであり、商品のプレゼンテーター)
・ 商品情報(素材、デザイン、色等の傾向・開発、生産、販促等の計画情報・新商品のアイデア、既存商品の問題点等)の収集および分析
・ 商品の企画、開発(メーカーとの開発チーム)、仕入、(仕入先との交渉・契約・納入方法、代替仕入ルートの確保)
・ 商品の導入理由(なぜ仕入れたのか、いくらでどのように売って欲しいのか)
② ディストリビューターの役割(商品の物流コントローラー)
・ 商品物流に関するすべての窓口(対店舗、対仕入先)
・ 店別数量の決定と納品(衣料)、市場等からの商品仕入(生鮮)
・ 発注から納品までのシステム上の改善
③ スーパーバイザーの役割(販売のコンサルタントであり、商品のコミュニケーター)
・ 販売・商品等の商品経営に関するすべての窓口(対店舗…商品の説明や導入した理由)
・ 単品管理の指導(品揃えや陳列を含めた売り場の状況)
・ 店舗で捉えた商品の反応等の情報を報告(対バイヤー、対ディストリビューター)
等である。
バイヤーには、ルーチンワークをはずし、本来のバイイング活動に専念できるように、また、ディストリビューターには、商品が必要な時に、必要な量を店舗に届けることができる仕組み作りに専念できるように、更に、スーパーバイザーには、「売れる商品」を店舗に紹介する役割を持たせ、なぜ仕入れたのか、いくらでどのように売って欲しいのかを理解した上で店舗に売り込む、等と言った各々の体制を整え、役割分担を明確にする。
その後の商品の販売に関する責任は、店舗が負い、運用上のフォローは、ディストリビューターやスーパーバイザーが援助するという大胆な組織改革を行う。
日本の小売業の場合、中々業務の機能がうまく機能しない、長年の士農工商と言うか、
リーダーシップの在り方が欧米と基本的に違うため、一人の親方日の丸的な指導者と黙ってついていく従業員(考えることをしなくなる)に慣れきってしまい、自分から仕事を作り出すことができない体質を、180度変革(自分で考えて、積極的に行動を起こす体質)をする必要がある。
商品部にとって、役割分担(与えられた仕事)を責任(数値責任も含めて)を持って行うことが段々と難しい時代になってきた。
米国と決定的に違う点は、各店舗に自主性(商品の品揃えや発注数量等)を持たせたという点であり、それによって、米国流組織が日本の小売業にそぐわなくなってきた。
数名のバイヤーの業務を一ヶ月間、分析した結果、問題点と思われるところを順不同で抜き出してみると、
① 事故商品が発生し、その対応に追われる
② 商品の投入管理(店舗へ)業務が定常的に発生する
③ 同僚バイヤーとは、雑談程度であまり情報交換はしない
④ 会議用の資料作り(ワープロ)に追われている
⑤ 店舗からの問い合わせ(納品)や相談等の電話対応
等であり、その合間を縫って、本来の業務である、
① 商品政策業務(方針、仕入基準、品揃基準等の作成)
② 商品計画業務(商品の仕様の確定、契約、売上計画の立案等の作成)
③ 販促業務(チラシと商品とのチェック、各種予算とのチェック)
④ 仕入先との商談(商品見本のチェック、契約)
⑤ 単品ABC分析(消化率のチェック、値下指示)等のデータ分析、傾向分析
⑥ 店舗向け商品案内書の原稿作成
等の業務を行っているが、各業務とも時間が足りないため、雑な処理で済ませている。
また、その他に以外と無駄な時間を費やしているのが、
① 手作業での各種分析資料(会議用、報告用、資料用)
② 単純な転記作業
③ コンピューター出力帳票の分析(異常値等の数値チェック)
等であり、現状の作業をこなすのが精一杯で、顧客ニーズの把握やニーズ商品のイメージ(対応)等の商品企画まで、手が回っていない。
しかも、顧客情報の収集は、極端な言い方をすれば、POS分析と仕入先からの情報だけを吸い上げて、商品を契約(仕入)している。
これに並行して、店舗側の業務分析も行っているが、結論は、「商品に関することは、すべてバイヤーに」であり、商品に関する疑問、仕入、発注、品揃、陳列、値下処理等で分からないこと、確認したいこと、相談したいことは、すべてバイヤーに直接電話をして聞いている。これでは、バイヤーは仕事にならないのも無理はない。
どの小売業でも、バイヤーの仕事には、書類上での業務分担と実際に行っている業務内容との間に大きなギャップがあり(雑用が多い)、それなりに努力をして、「売れるだろう」商品を導入しているつもりだが、実際にはなかなか売れず、販売指導、陳列の仕方、商品のトラブル等の後処理に時間を費やしている。
本来の商売は、一人の人が良い商品を仕入れ、その商品の良さを勧めながら売り、お客様に喜んでもらうことが理想である。
しかし、企業として、あるいは、チェーンストアとしては、それぞれの業務を分担し、組織として商売を行うためには、分業化する必要がある。が、今のチェーンストアにおいて、ほとんどが個人商店の出身である。それゆえ、売上が上れば、人を増やし、店を作り、そして、組織ができ、職務分担ができ上がった、後追いの体制が採られている。そのため、上流工程である商品計画、商品企画等は、バイヤー個人が商品情報やノウハウをしまい込みがちで、店舗や同僚とのコミュニケーションが悪く、組織が硬直化している。
業務改革で一定の成果をあげたI社は、業務改革を継続しながら、次は、店舗に焦点をあて、店舗自らがマーケットニーズを把握し、その状況と商品計画(企画)を踏まえた上で販売計画を立てる方法に変えた。
従来は、企画部が大枠の販売予算を立て、店舗と調整し確定する方法が採られていた。店舗とすれば、どちらかと言うと予算を押しつけられた面があり、積極的に達成しようという意欲にかけていた部分があったため、店舗が自主的に販売予算を立案し、責任を持って達成する仕組みに変えたのである。
そのため、バイヤーが立てる商品計画の精度や店舗に対する販売面の支援体制が課題として上がり、バイヤー、ディストリビューター、スーパーバイザーの役割を明確にして、それぞれの業務を無理なくこなして行けるような組織の整備を行った。
ここで、第三章の一(売れ筋を探す・創る・把握する)で取り上げた各担当者の役割分担を更に、詳細に説明すると、
① バイヤーの役割(商品企画のコーディネーターであり、商品のプレゼンテーター)
・ 商品情報(素材、デザイン、色等の傾向・開発、生産、販促等の計画情報・新商品のアイデア、既存商品の問題点等)の収集および分析
・ 商品の企画、開発(メーカーとの開発チーム)、仕入、(仕入先との交渉・契約・納入方法、代替仕入ルートの確保)
・ 商品の導入理由(なぜ仕入れたのか、いくらでどのように売って欲しいのか)
② ディストリビューターの役割(商品の物流コントローラー)
・ 商品物流に関するすべての窓口(対店舗、対仕入先)
・ 店別数量の決定と納品(衣料)、市場等からの商品仕入(生鮮)
・ 発注から納品までのシステム上の改善
③ スーパーバイザーの役割(販売のコンサルタントであり、商品のコミュニケーター)
・ 販売・商品等の商品経営に関するすべての窓口(対店舗…商品の説明や導入した理由)
・ 単品管理の指導(品揃えや陳列を含めた売り場の状況)
・ 店舗で捉えた商品の反応等の情報を報告(対バイヤー、対ディストリビューター)
等である。
バイヤーには、ルーチンワークをはずし、本来のバイイング活動に専念できるように、また、ディストリビューターには、商品が必要な時に、必要な量を店舗に届けることができる仕組み作りに専念できるように、更に、スーパーバイザーには、「売れる商品」を店舗に紹介する役割を持たせ、なぜ仕入れたのか、いくらでどのように売って欲しいのかを理解した上で店舗に売り込む、等と言った各々の体制を整え、役割分担を明確にする。
その後の商品の販売に関する責任は、店舗が負い、運用上のフォローは、ディストリビューターやスーパーバイザーが援助するという大胆な組織改革を行う。
日本の小売業の場合、中々業務の機能がうまく機能しない、長年の士農工商と言うか、
リーダーシップの在り方が欧米と基本的に違うため、一人の親方日の丸的な指導者と黙ってついていく従業員(考えることをしなくなる)に慣れきってしまい、自分から仕事を作り出すことができない体質を、180度変革(自分で考えて、積極的に行動を起こす体質)をする必要がある。