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今月の売れ筋商品(試食感想等)・流通革新レポート

PosBankシニアアナリストの村上が、座長を務めます。(尚、POSBANKは、商標登録済みです)

第五章  マーチャンダイジング(MDS)を援助するシステム群

2010年07月27日 | 流通革新             
一、商品経営を支えるマネージメント・コントロール

チェーンストアの店舗規模は、コンビニ店に比べると、食品スーパーの場合では10から30倍、GMSでは30から100倍であり、また、商品の取扱い数も食品スーパーの場合では1万から3万単品、GMSの場合では3万から15万単品であり、コンビ二店と比較すると規模や要員が大幅に違うが、基本的な考え方は、

① 顧客ニーズに対応した商品の品揃え(売れる商品を揃え、品切れをおこさない)
② 商品によって顧客に満足を与える(購入した商品を満足して食べて頂く、使用して頂く)
③ その結果、企業として利益を得る(税金を収めることにより、社会貢献する)

であり、どの企業も同様である。
本部組織の商品部については、コンビニエンス・チェーンや食品スーパーにおいて、食品部と非食品部の2部制で、GMSにおいては、衣料品部、家庭雑貨、食品部と生鮮部の3ないし4部制であり、テナント(専門店)が多い場合は、独立してテナント部が存在し、商品の特性別に部署が分かれている。更にその下部組織として担当部(デビジョン)が5から20あり、全体で20から80部署程ある。
その担当部(デビジョン)の中で更に、ライン(商品機能、用途別)に分かれている。全体で200から300ライン程あり、このラインにバイヤー1名ないし2名が対応し、全体で約200名から600名程度の要員が必要となり、更に、地域バイヤーとして100名から200名程配置されている。
バイヤーの業務は、商品の開発、企画および仕入先との契約(信用調査を含む)や契約済みの仕入先から仕入れた商品を店舗に安定供給する役割、また、店舗に対し、商品の特長及びターゲット、そして、販売についてのアドバイスをする役割等がある。この3つの役割を縦割りにした「バイヤー養成型組織」と3つの役割を横割にし、組織を分割した「業務遂行型組織」あるいは、「混合型組織」等と言う各社独自の組織体系をもっているが、徐々にではあるが、ムダの少ない「業務遂行型」に移行しつつある。
業務遂行型のバイヤーの役割とは、

【商品計画・バイイング・業務処理】
① 顧客ニーズ、素材や産地、商品開発や生産計画等に関するメーカー、商品改善、商標や特許等の法規制などの情報の収集
② 外部の専門家を活用して、商品企画をまとめ(コーディネータ役)、チャネル(開発、納品等)の開発、原料、素材、加工方法を指示してサンプル商品をメーカーから提示させる(直接物作りには、タッチしない)
③ 客層、地域特性、顧客ニーズ、天候等を考慮して、商品構成(デザイン、規格、素材、品質、色、サイズ、価格帯、量等)を決め、与件の変化(市況、競合、ニーズのギャップ等)や他社の状況の変化を加味して商品構成をかえる。
④ 自社の要件(納入条件、納入方法、納入サイクル等)にあった仕入先の選定
⑤ 商品の選定と選定理由、販売方法の指示(商品のポイント、セールスプロモーション、プレゼンテーション)の明確化
⑥ 販売期間、原価、売価、数量(扱い店舗の想定)をチャンス・ロスが生じないように決定する
⑦ 仕入先と商品の内容(販売期間、原価、売価、数量等)について契約する(契約内容をチェック)
⑧ 商品の選定理由、販売方法などについて関係部署(部内、関係部門、店舗、仕入先)間でコミュニケーションを円滑にする

等であり、発注から在庫、販売分析という一連のルーチン・ワークとルーチン・ワークから発生する様々な問題点(未納、遅納、物流センター・生鮮センター等の物流関連や事故商品、システム関連についてはディストリビューター(DB)が担当し、店舗からの要望商品等の品揃、陳列、販売、在庫や顧客情報等の店関連はスーパーバイザー(SV)が担当)については、バイヤーの業務からはずし、商品企画業務に専念できる体制になっている。
では、従来からあった商品別(実質は、担当部別)の売上、仕入、粗利・在庫等の数値責任は担当部が負うことにかわりはないが、担当部ごとの数値(予算、実績)の内訳部分については、バイヤーが責任を負う。
ラインは機能別、用途別に分けられた商品群で構成され、それを更に細分化する。相互に代替可能な商品で、なおかつ予め重要であるとみなされる具体的な特徴を持った商品群であるクラスフィケーション(通常は略して、クラスという)に分かれ、全体で約2000から3000クラス程あり、店舗の陳列の単位になっている。
このクラスの捉え方は、それぞれの企業によって異なり、それが売り場での品揃えや陳列に反映されるため、商品構成上、非常に重要であり、毎年改廃が繰り返えされている。
クラスの売上や利益があがれば、そこに含まれる商品群を拡大し、他のクラスにも適用できるのかできないのかを考える。逆に売上や利益が下がれば、すぐに縮少して対応する。
顧客ニーズの多様化の対応や100%の満足を与えようとして、手当たり次第商品を買い付けたり、ニーズの多様化に対応しようとして、何でも買い付けてしまうことは、店舗での在庫が増えて、在庫回転率の低下を招き、利益の減少につながってしまうので、商品を絞り込んで、品切れをおこさないようにするほうが売れる。
多様化への対応、ニーズへの対応、100%の満足といった抽象的で、それぞれの立場や職位や職務でまちまちな解釈ができる企業政策は、具体的な例をあげて解釈の統一を図る必要があり、バランスを考慮して行動する必要もある。
そのバランスとは、

① ターゲットとする顧客を決めて、顧客にあわせた品揃え
② 商品構成(アソートメント)のバランスをとる
② 過剰な多様化対応にならないように品揃えを維持する

であり、過剰な多様化にならないようにすることが、季節感と合わせて管理は非常に難しい。
衣料品であれ、食料品であれ、商品の売れ筋に絞り込み、死に筋商品をカットしてしまうと、この死に筋商品を購入していた顧客は、店員に「この商品はないのか」と訊ねる。このとき店員はどう答えるだろうか。あるいは、どう答えたら良いのだろうか。多様化の対応や顧客の立場に立つという考え方を優先していれば、「何日までに取り寄せておきます」だろうし、店の利益や業績を考えると「申し訳ございません、取り扱いをやめましたので」という答えになるだろう。後者で答えた場合は、顧客を逃してしまうのではないかといった心で葛藤しながらの応対になる。どちらが良いのかはそれぞれの企業の方針によるのだが、人(店長、商品部)によってその判断の良否が異なることが一番良くない。
その意味では「顧客ニーズの変化に対応」とするならば、後者の応対で済むことだし、カットする判断を店(担当者)がしたとすれば、代替商品なり、売れ筋商品をすすめることができるので、合理的であり、コンビニ店ではこの方法がとられている。
ところで、「変化」の与件には、

① 競合(商品であればメーカー生産計画など)
② 経済情勢(消費状況)と環境状況(天候等)
③ 消費者の消費動向(口コミ、マスコミ等の情報)

等があり、変化そのものは色々な要素があるが、急激にくるものではなく、徐々にくるものであり、中には、変化を先取りした計画(メーカーが仕掛ける)もあるし、それらの情報や兆候をいかに早く、入手できるか、そして更に、入手した情報の中から自社に合うものをいかに選択できるかにかかっている。
新しい商品を導入する際の考慮点は、

① 顧客を満足させられるような価値を付加した商品
② 販促計画(メーカー)の有無も大事な要素(売上に貢献する)
③ 品質管理・衛生管理は徹底的に(一つの商品で企業が窮地になることもある)
④ 新商品は顧客が欲しているかどうかを第三者の見方で判断する。
⑤ 販売方法(販売上の手間含む)の提示や陳列スペースを考慮
⑥ 商品の売れ行きのフォロー(売れない商品の早期判断、例外条件は割り切る)

等である。
ここで、大事なことは、バイヤー自身の思い込みや、こだわりによって開発した商品の場合でも、売れ行きが悪ければ(顧客の支持がえられなかった)、すばやく処分の対象とし、適切な処置をとらなければならないと言うことである。
メーカーの事例でもあるように、新商品を生み出すことにおいて、専門のスタッフを揃え、10ほどの新商品を開発し発売したとしても、その内の一つでもヒットできれば良いとされるほど難しいことなのである。そんなメーカーでさえ難しい新商品開発を小売業がもつのは、リスクが大きすぎる。
バイヤーがやるべきことは、それぞれの商品の販売計画(店別)をもとに、クラス別の全社計の仕入・販売・粗利・在庫・値下を含めた商品計画(数量・金額)をたて、それをさらに、ライン別商品計画、部門(デビジョン)別商品計画をたて、これらの商品計画をもとに、各店舗からの起案された販売計画と全社計レベルでの数値を調整し、部門予算として数値管理(コントロール)を行うことである。
この数値管理(コントロール)を行うための代表的な手法に「仕入枠予算(オープン・ツー・バイ)管理」がある。要約すると、販売予算と販売実績・仕入実績をもとに、翌月販売のための在庫(過剰、過少を防ぐ)を管理するため、仕入金額の上限値を設定(仕入枠という)し、店舗発注分も含めて仕入金額の実績を集計して、仕入、売上、在庫の数値バランスを管理(コントロール)することである。
この仕入枠予算管理は、バイヤーの買いすぎを抑制して、適正在庫を確保するためにあり、店舗での実在庫の内容(売れ筋・死に筋商品の在庫内訳)は、単品別のPOS売上実績(衣料の場合は、ファッション・レポートまたはタグ・レポート)で把握して、適切な処置をディストリビューター(DB)及びスーパーバイザー(SV)と協議して決める。
在庫に関連して、基本的な品揃えの考え方は、

① 用途別、デザイン、色、サイズ、機能、素材、容量、シーズン、年齢等
② ナショナル・ブランドのディスカウント
③ 品質を一定にする
④ 商品分類をはっきりさせる(細分化の基準・扱い品目数・価格帯等)
⑤ プライベート・ブランド(PB)の育成、産地開発
⑥ 新商品はどこよりも早くとりあげる(テスト販売の場の提供)
⑦ メーカーとの共同企画商品の開発

であり、店舗を含めた仕入についての考慮点を要約すると、

① 売れ筋商品は品切れさせずに、商品アイテム数は常に腹八分目
(満腹だと、新商品が導入できない…商品改廃をスムーズに)
② 商品は、売れ筋商品に絞ること
(やたらに、手を広げない…100%の満足は与えられない)
③ 死に筋商品は早く、一度に思いきった値下げをすること
(少しでも利益を得ようと段階的値下げは、まだ下がると思われ、結局廃棄処分に)
④ 色気をだして、カンで商品を発注しないこと
(ほとんどが、売れなくて不良在庫になる…仕入理由を明確に)

になる。
 何をいくつ仕入れて、いくらでどれだけ売れば、どれほどの利益がでるのか。また、値下げすれば、どれほど利益を逃すのか。こういった商売の基本中の基本である利益感覚を最重要視すること。すなわち、経営感覚を基本的には全員が身につけなければならない。
 あわせて、本部・店舖ともに、消費者に感動・感激・感謝してもらえるかがチェックポイントであり、改善・付加価値・他社との差別化が行われているかが、2・3番目のチェックポイントである。

六、在庫内容や在庫日数・回転率を改善すれば、利益は上がる

2010年07月23日 | 流通革新             
六、在庫内容や在庫日数・回転率を改善すれば、利益は上がる

どのコンビニ店に行っても、商品をながめてみると、きれいに整理整頓されていて気持ちが良いが、チェーンごとの売上に差がかなりある。
その違いは、在庫面に限ってみれば、陳列されている商品そのものの魅力が、前面ににじみ出ているかどうかの違いである。陳列されている中に欲しい商品があるか、あるいは、どこよりも新しい商品が入っているかと言う点である。どこにでも置いてある商品ならば日付が新しい、買いやすい、目立つように陳列されていると言うように、店舗でいろいろ工夫をして差別化を図りながら、売上をあげている。
飽きやすく、変わり身の早い顧客に対応して、本部から毎週新商品が推奨され、店舗では、商品の入れ替え作業がおこなわれるが、そこに問題点が内在している。
いくつかのコンビ二店のオーナーは、「毎週、毎週新商品の案内がきて、選ぶのも大変だが、それ以上に面倒なのは、カット商品の取り扱いである」と言い、早めにカット商品の案内書が届くので、FC(フィールド・カウンセラー)と相談して処分(売りきる)するように決めているのだが、「カット商品は、売れない商品なので、新商品を入れるために隅に置く、そうすると、もう全然売れなくなる」と苦笑しながら、バックルームをみせてくれたが「隅に置いておくと他の商品も売れなくなるので」とか「とりあえず、賞味期限があるものは期限まで、ないものは、そのまま置いておくが、これは全然売れない」と言う。
「自分で商売している時には、廃棄金額がいくらで、儲けがいくらなんてあまり考えなかったが、今は気になって、気になってしようがない。売上が3倍以上になったのでがんばるだけです」という積極的なオーナーもいれば、「うちの店では、まぁまぁ売れているのにカットされ、代わりに入れた推奨商品が全然売れないことがよくあって、本部もあまり信じられない」とか「数字が悪いのは、すべて店のせいにするので、こちらも最低保証があるので、自分勝手にやっている」などと過激な発言がとび出してくる。
業績がよければ、なにも言わないが、業績が悪いと不満が募ってくるのは、いたしかたないが、投げやりで商売を続けていては、どんな手を打っても業績はなかなか好転しない。
商売して、儲けるということは、本部と店とがお互いの役割を果たし、その結果として儲かるのであって、楽をして儲かる商売はあり得ない。
そのために、本部は在庫を減らす手段として、商品の最小ロット発注(発注単位を1にして小分け納品)、1日3便配送や毎日納品、カット商品の事前案内、発注端末機の導入による誤納の絶滅、定時納品、専用陳列棚の採用、POSレジの採用によるデータ管理、など様々な改善、改革に取り組んでいる。
「在庫を削減すると売上があがる」、という実例が雑誌等で紹介されたことで、コンビニエンス・チェーン各社は、こぞって在庫削減をめざして、売り場の品揃えを改善するために、各社各様のやり方で行っている。
あるチェーンでは、死に筋商品の即時カット、あるいは、別のチェーンでは、部門別に取扱い商品の10%カット等、ただ単に「一時的に在庫を減らす目的のためだけ」に、おこなったと言うところもある。どのコンビ二店に行っても、陳列はきれいに整理されていて、あまり差がなくなってきたが、その割には売り上げの差が縮まらないのは、なぜだろうか。
理由は、いろいろあるだろうが、在庫(陳列)商品に限って考えてみると、顧客が欲しいと思っている商品が多く置いてあることと、陳列されている商品が買いやすく目立つように工夫されていることと、更に、鮮度管理(製造日付の新しい商品)が行き届いている店とでは、顧客の入り具合が全然違うからであり、一時的にきれいに整理整頓しても、顧客にはなかなか受け入れてもらえない。
死に筋をなくし、売れ筋だけを揃えた売り場にすることが、顧客にとって魅力ある店ということになり、毎日そのために手間暇をかけている。そして、工夫している店舗ほど売上とともに利益をあげている。
ただ現状では、毎週、新商品とカット商品の案内書が届けられているので、新商品を導入して新鮮な売り場を保ちたいのだが、死に筋商品の処分(値下げしても売れない等)方法が前にも述べた通り、依然課題として残っており、廃棄処分する前に売り切ることができれば、その分利益として上乗せできるので純利益も比例して増収になる。
コンビニエンス・チェーンで先行した在庫削減の流れが、チェーンストアにも及んでいる。あるチェーンでは、前年に比べて、肌着部門の在庫日数が2日減った場合で約四千万円の増益、変わりない場合でも二千万円の増益であり、逆に4日増えた場合は約三千万円の減益となっている。また、食品の日配部門でも、在庫日数が0.4日減った場合で二千万円の増益、逆に0.4日増えた場合は約二千万円の減益となっている。
このチェーンでは、あらゆる商品、部門で在庫日数を削減できた店ほど利益率が高いという傾向があり、従来から進めている死に筋の排除と売れ筋の拡大をするために、単品に踏み込んだ「在庫管理・単品管理の徹底」をし、ロスを削減して新鮮な売り場作りを継続することにより、安定的な利益を確保しようとしている。
すなわち、マーチャンダイジング・サイクルの上流から下流まで、部分、部分の改善ではなく、トータルの流れとして、難しい問題を避けることなく、時代の流れにあわせた改革を行っている。
その意味では、どの仕事をやるにしても、計画することは大切であると頭では分かっていても、期限が迫ったり、難題があるとそれを避けたりして計画を中途半端にしたまま、次のステップに進んでしまう。そのため、実行時や、運用時にすべてしわ寄せがくる。それでも、無理して何とかこなし、表面上のつじつま合わせをするような仕事をやってきたのだから、小売業はそう言ったやり方から早く脱却し、新しいマーチャンダイジングへ本格的に取り組み、また、足を踏み込んでいく時期にきたのである。
特に、ほとんどの商品が同メーカーで、売り方や陳列、価格、そして鮮度(賞味期限)の違いによって、大きく売り上げが違うので、接客を含めた小売業としてビジョンを明確にして、戦略を計画して実行し、販売員が努力していかないと消費者の支持は得られない、

五、売り場は「売る」ためではなく、「売れる」ための工夫を

2010年07月14日 | 流通革新             
五、売り場は「売る」ためではなく、「売れる」ための工夫を

以前は、店舗の業績が悪いと、店長や販売部が言い訳をするために、初夏の時期だと 、①カラ梅雨だったので、②梅雨が長かったので、③長期予報に反して…、等と天候による原因を題材にしていたが、現在では、ほとんどが経済状況や消費不況、消費税率のアップ等を原因としている。
あたりさわりのない理由をつけておけば、それで、経営陣は納得してしまう。こんな風潮が今でも多く残っているが、現在は、これに加えて、小売業に影響を及ぼす突発的(O― 157問題、遺伝子組み替え等)な事柄が、毎年のように起きている。
これらの対策については、公式な場では、意味不明、あいまいな答えしか返ってこないのが実情だが、店舗の売り場では、さまざまな工夫をかさねて、「売る商品」から「売れる商品の売り場作り」へ、各小売業ともしのぎを削っている。
たとえば、食料品売り場であれば、日配品の陳列は、「先入れ先出し」の原則が常識であったが、製造日付の新しい商品を前から順に並べていき、鮮度を強調した売り場体系にするとか、食品の着色料や添加物を自主規制していたチェーンストアが、無着色のたらこが並べられていた売り場に、若干着色された見栄えの良いたらこと明太子を品揃えに加え、売場に華やかさを持たせたりと、いろいろ試みたことで、着色されたたらこと明太子の品揃えによって、たらこだけで2倍、明太子を加えて3倍の売り上げになった。
その他、鍋用の野菜盛りセットや野菜サラダ、または、関連商品(調味料や食器)類を買いやすい場所に置いて売れる商品を訴求したり、あるいは、生鮮食品の調理・加工・パック作業をガラス越しに清潔感あふれる調理場をみせて、売れる売り場を演出したりと、大変な努力をしている。
衣料品や雑貨売り場でも、たとえば、タオル等のカラーコントロールで売り場を華やかにしたり、ワイシャツ等はアイテムごと、サイズごとに整理整頓をして買いやすくする、工夫をこらしているが、何かもの足りないのである。それはある意味で、売場の整理整頓が徹底されすぎて、きれいになりすぎるため、かえって商品に手がだしづらいと言ったことにある。もう少し、袋づめされている物など、一々店員を呼んで袋を開けてもらうようなことをしなくても、気楽に自分の手にとって、生地の感触を確かめるなど楽しめる雰囲気作り(サンプルなりマネキン等によるディスプレイ)を心掛けてくれさえすれば良いのだ。
せっかくマネキンに着せても、手に届くところに無かったり、近づくとホコリがついていたり、また、ディスプレイされているにもかかわらず、POPが付いていないため、その都度、服の中のタグを探してみなくてはいけなかったりと味気がない。通販カタログで、生地見本をつけて、ヒットした例もあり、顧客に気楽に、手にとってみる楽しみを与えるのも、売れる売り場作りである。
最近では、POPに工夫がこらされ、以前のようにただ漠然とした「売れています」、「おすすめ品」だけでなく、「ここが………ポイントです」とか食べ方、煮方、焼き方等のワンポイントフレーズが入るようになり、提案型のPOPが数多く見受けられるようになってきた。
このような指示は、本部から出されたものなのか、あるいは、自発的に売り場担当者から提案されたものなのかが問題であり、従来は、ほとんどと言って良いほど本部指示であり、売り方から商品の整理の仕方まで、マニュアルが整備され、マニュアル通りのオペレーションが強要されていたのが実態である。どのチェーンも横並びで、新店舗だけが、何か新しい試みを取り入れて他チェーンとの差別化を図っているにすぎない。これも、話題になれば、すぐに他チェーンが取り入れてしまい、実質的には、差が無くなってしまう。
だからこそ、地域に密着し、顧客ニーズにあわせた店を作ろうと思うならば、売り場の工夫が、現場サイド(店舗担当者やパート社員)から提案として上がってくる仕組みを作り、バイヤーが「売れるだろう商品」を仕入れたのだから、「売れる商品」に仕上げるには、「店舗の責任という意識」が芽生えれば、現場サイドからも地域ニーズにあった提案がなされるはずである。
現実は、衣料商品などが店舗に入荷され、担当者が商品をみて「これは売れる、これは売れない」という批判が最初にでてくる(本部やバイヤーとの信頼関係がない)。そのため、「売れない商品」は隅に追いやられ、よほどのことがない限り、売れ筋商品にはならない。
担当者は、商品が入荷された段階で、商品にランク付の判断を下すのではなく、顧客にどのようにしたら見て頂けるか、あるいは、手にとって頂けるかを工夫し、商品の魅力をいかに訴求するか(どうすれば売れる商品になるか)を考え、売り場で顧客に判断してもらうのである。このような意識改革とあわせて、スーパーバイザー機能(第三者的に商品を見る)も必要になる。
スーパーバイザー機能については、すでに、コンビニエンス・チェーンでは、フィールド・カウンセラー(FC)、運営担当者と言う職務名で呼ばれ、店舗に対し商品経営の相談をうけたり、指導する役割を持ち、顧客、店舗側の視点から物事を客観的に判断し、店舗と本部との潤滑油となり、機能を果たしている。しかし、チェーンストアの場合にも存在するのだが、人数が少いため、うまく機能していない。販売面の自主的運営を店舗に託すならば、このスーパーバイザー機能を充実させて、店舗を強力にバックアップする体制を整える必要がある。
チェーンストアやコンビニエンス・チェーンの一般的な販売の心構え、接客の基本的態度は、

【販売の心構え】
① 店の信用を提供する
② 商品の有用性を提供する
③ 情報やサービスを提供する

【接客の基本的態度】
① 明朗な態度で、常に笑顔を忘れずに
② 落ち着いて、上品な言葉を使い、心から親切に
③ 自信をもって発言
④ お客様の立場にたって、
⑤ すべてのお客様に公平に
⑥ 商品知識や予備知識を豊富に
⑦ お客さまのよき友人、よき相談相手になろう
⑧ 購買心理をよく理解して行動しよう
⑨ ニーズをさぐり、積極的な販売をしよう

【コンビニエンス・チェーンの場合】
① 新しい商品を揃える … (鮮度管理)
② 売れ筋商品を揃える … (品揃え)
③ 感じの良い店にする … (清掃の徹底)
④ フレンドリーサービス … (一声掛ける)

等であり、接客の基本動作、服装と身だしなみが、こと細かく決められており、従業員自身が毎日セルフチェックを行い、売り場に立った時には、お客様に失礼のないようにする。
チェーンストアやコンビニエンス・チェーンは、対面販売や百貨店と違ってコンサルティング・セールスが少ないため、「⑨ニーズをさぐり、積極的な販売をしよう」と言うことが大変むずかしく、常に課題としてあげられる。
そのために、商品の動きやデータでの推測の精度、また、それをもとにして陳列の仕方やPOPでの訴求が重要となり、この部分の日々革新が販売上の最大のテーマとなっている。
コンビニエンス・チェーンでは、更に細かく、時間帯別(一日の売上の山が3から4回あるので)の陳列に挑戦している。
販売面での革新もマーチャンダイジングでは、重要な部分であり、小売業で働く人々が従来の既成概念(物を売って、代金をもらうだけ)から脱却しないと、顧客からの支持は得られない。
コンビニエンス・チェーンで、現在発生しているトラブルの多くは、「店は販売(前述の既成概念)だけしていればよい、あとのことはすべて、本部がやってくれる」と思っているオーナーが多いため、双方の思惑の違いによって起きているのである。
時代の流れによって、店舗の業務内容や仕事の内容、役割が変化することをオーナー自身認識して、販売に対する手間を惜しまないで頂きたい。
今の時代は、単なる陳列が良いとか、接客が良いとか、商品の品質が良いとかだけでは、消費者は購入してくれない。
即ち、『感動してもらえる…、感激してもらえる…、感謝してもらえる…』と言う三感主義をトータル『品質・陳列・接客・価格・鮮度・差別化等』で行うと、黙っていても、売れる商品・売り場になる、そして、消費者の口コミ等やマスコミに取り上げられる事により、より売れる商品になる、但し、同じことの繰り返しでは、すぐに飽きられるので、常に新鮮みを失わずに、新しい試みを行う必要がある。

四、楽する発注から、発注を楽しくする

2010年07月01日 | 流通革新             
四、楽する発注から、発注を楽しくする

ここからは、マーチャンダイジング・サイクルの発注(仕入)の話に入っていく訳だが、コンビニエンス・チェーンは、フランチャイズ・システム(一店、一店が独立採算の経営)に対して、チェーンストアの場合は、レギュラーチェーン・システム(直営店)であるため、本部と店舗の責任の所在があいまいになっている面が多分にある。
チェーンストアもコンビニ店と同様な仕組みに、つまり、業務、組織改革をして、マーチャンダイジングを進めて行かなければ、旧態依然とした組織で利益のでない甘い体質のまま、二十一世紀に突入してしまう。
コンビニエンス・チェーンの場合、本部が商品を推奨して、その商品を導入するか、しないかは、店舗が決める。この段階から商品に対する責任と管理(商品別損益を含めて発注・陳列・販売・在庫・分析)は、すべてと言って良いほど店舗に移管し、店舗の自主マーチャンダイジングを推進することで、本部と店舗はお互いに切磋琢磨しあって良い業績を上げている。
もちろん、商品数(3000単品と2万から10万単品)の違いや商品の性格(手をかけずに食べられる食品中心と、食品の素材からファッション衣料まで扱う)の違いはあるにせよ、基本は、同じ「物販業」であり、お客様相手の商売で、お客様が望んでいる商品を陳列し、買って頂くことに関してはかわりない。そのために売れている商品は補充発注し、売れていない商品は発注をやめて処分していく。そして、売れてない商品の代わりに、「売れるだろう商品」を発注するのである。
実に簡単な仕組みではあるが、「補充発注」、「売れるだろう商品を発注」する場合、担当者が頭を悩ます点は、どのくらい売れるのかという数量の予測の問題である。
あるチェーンでは、店舗作業の省力化のために、コンピュータによる自動補充発注システムを導入したが、見事に失敗した。
導入から失敗までの経緯として、まず手始めに単品の種類が多く、賞味期限等がなく、それでいて在庫にしてもほとんど鮮度に影響のない商品である雑貨小物類から実験的に導入してみた。POSレジで売れた分だけを自動発注する仕組みで、6ヶ月間続けたのである。
当初から徐々に、店頭在庫の陳列状況は、品切れもなくきれいに整理整頓された売り場になっていったが、3ヶ月位経った頃から、商品の売れ行きに鈍りが出始めてきた。
やがて、5ヶ月経ったあたりでは、売り場そのものはきれいなのだが、新商品なども少なく、以前とまったく同じ品揃えのため、売上や商品回転率が3分の2ほどになり、それに加えて、不良在庫が増えだしたので、売上(移動平均)に応じて最低発注点を決め、在庫数量が発注点に割り込んだ時点で、自動発注するようにシステムを手直ししたが、結果は更に売上を下げてしまうことになった。
この時点で自動発注をやめ、また、システムの手直しをして、勧告方式(コンピュータが計算した結果を担当者が数量をチェックし、発注数を訂正)に切り替えてみたが、これも効果がなく、しかも、当初の目的である省力化も実現できなかったため、雑貨関係に関してのテスト実験はあきらめることとなった。次に、一日で売り切らなければならない日配商品でテスト実験を3ヶ月間行ってみたが、ほとんど同様な結果となり、更に、悪い事に廃棄が約2倍に増えてしまい、この時点で実験を全面的に中止した。
この事例を結論付けるならば、某雑誌の「動かないコンピュータ」でも指摘している通り、すなわち、メーカーSEの業務内容をよく知らずに、本から得た知識だけでシステムを提案し構築したために、このような失敗を招いてしまったのである。
この様な例が数社あるが、すべて失敗に終わっている。蛇足ながら、自動発注を提案したコンピュータ・メーカーだけが、ソフトの手直しの連続で得をした。
生鮮発注システムも、週間発注という前週の発注と売上からの発注勧告方式が採用されたが、手間を省くため、発注勧告数を手直しせずに発注したり、手直しする場合は、全単品を手直し(25日の週をはさんで3週間)することになり、勧告数量を削除し、発注数量を入力するため、入力に手間がかかる等の問題点を抱えながら、稼動している(原材料の場合、店舗の冷凍庫で保管できるため)。
自動発注方式は、発注精度を高めるために、コンピュータ・メーカーが様々な手法(米国の例を含めて)を紹介しているが、詳細なバック・グランド(背景)については紹介していない(知らない)ため、小売業は、コンピュータではじき出す数値が正しいものと勘違いし、つい導入してしまう。
日本では、まだまだ、発注をコンピュータに任せられるほど、コンピュータの技術(利用技術含む)は進んでいないし、その前にやらなければならない(製販一体のクイック・レスポンス等)ことが山積みになっている。
「補充発注」や「売れるだろう商品を発注」するのは、簡単であり、なおかつ、頭の痛い問題であるとも、記述したが、簡単な理由は、オーダー・エントリー・マシン(発注端末機)になにも考えずに、前回と同じ数量を入力したり、売れた分だけを入力していれば、発注作業は終わるからである。
後はコンピューターが自動的にデータを伝送し、発注した商品が指定日には届くため、別の担当者が代わりに陳列してもよいのだ。これでは、誰もができる楽(らく)な作業ということになってしまう。
発注端末機がなかった時は、商品ごとの仕入先を調べ、発注日かどうかを確認した上で、発注締切り時間のギリギリまでに商品コード、商品名、数量を電話で読み上げながら発注していたが、それを思えば、遙かに簡単ということになる。
発注作業が簡単になった分、「仕事が楽になりました」で、終わってしまうのでは、まったく楽にした意味がない。ほとんどの従業員(パート含む)は自分の給料が安いと思っているため、楽になればなるほど自分なりに納得してしまう。正直言って、店の業績や会社の業績にはあまり興味がなく、決められた額の給料を毎月決められた日にもらえれば…というような横並びサラリーマン体質が身に付いてしまっている(これも高度成長やバブル時代のツケか)。
会社が期待している「楽にした分、発注のために頭を使おう、考えよう」という発想とには、大きな開きがあるため、しつけや応対の教育だけではなく、全員が経営に参画しているという意識や管理帳票等の数値の見方や読み方、発注の意義などを教育して、体質改善を図ることが先決である。
そこで、発注精度を高めるためには、商品の動き(売れ方や残り方など)を含めて、POS分析データを分析、検証し、天候予測や地域の行事や催事などを加味して、仮説を組み立てながら発注を行っていく。この段階でコンピュータに異常数値を警告する仕組みを組み込んでおく必要がある。
これで一度目の検証を行い、更に、現場の売り場で商品の動きや顧客の反応等を確認し、売り場の手直しや次の発注のために問題点等を見つけ、「なぜ売れるのか、なぜ売れないのか」を分析した上で、二度目の検証を行う。
これを繰り返すことにより、考える癖と素早くニーズを察知する癖を身に付け、発注数量を少しずつ微調整しながら、確率を高めていく。その結果が自然と、発注精度の向上につながり、発注が楽しく(自分が予測した結果がすぐ分かる)なるのである。
また、スーパーバイザーがすすめる「売れるであろう商品」を売り場で検証し、売れない理由等をスーパーバイザーに報告・相談するためのアドバイザーであると思えば、更に仕事は楽しくなる。
単品別に発注(仕入)データと販売(POS)データ及び廃棄データを売上の高い順に並べて比較したグラフを作り、傾向(売れ筋を売上数より多く発注し、品切れ防止に注力している等)を分析すれば、発注担当者の発注精度や性格判断が行えると同時に、発注作業のための指導用資料も作成できるので、試して頂きたい。
今日この頃、相撲界の野球賭博が相撲界を揺るがす大問題になっているが、①勝ち負けを予想して②お金をかける、お金も仲間内での少額なら良いのだが、はまってしまって額がが高額になり、さらに、③暴力団が胴元であれば犯罪行為になってしまうが、商品の発注も売れる、売れない、を予測(客層・客数・天候・接客・陳列・地域イベント等を考慮)して、納品サイクルにあわせて発注数量を決め、実際の売上げとの差異分析を行い、どの要因をミスしたかを見つけ、次の発注につなげる、これを繰り返すことにより確率を高める。野球賭博との違いは、①の予想と②商品の品切れや廃棄等がお金と考えれば、が同じで、高額の掛け金と③の暴力団が絡んでいないことであり、この発注作業の予想行為は、犯罪行為ではないので、ぜひ、予想から予測行為にはまって欲しいものです…これが楽しく仕事を行うコツである。

三、雑用から逃れて、日本流の単品管理体制に向けて組織改革

2010年06月23日 | 流通革新             
三、雑用から逃れて、日本流の単品管理体制に向けて組織改革

商品部にとって、役割分担(与えられた仕事)を責任(数値責任も含めて)を持って行うことが段々と難しい時代になってきた。
米国と決定的に違う点は、各店舗に自主性(商品の品揃えや発注数量等)を持たせたという点であり、それによって、米国流組織が日本の小売業にそぐわなくなってきた。
数名のバイヤーの業務を一ヶ月間、分析した結果、問題点と思われるところを順不同で抜き出してみると、

① 事故商品が発生し、その対応に追われる
② 商品の投入管理(店舗へ)業務が定常的に発生する
③ 同僚バイヤーとは、雑談程度であまり情報交換はしない
④ 会議用の資料作り(ワープロ)に追われている
⑤ 店舗からの問い合わせ(納品)や相談等の電話対応

等であり、その合間を縫って、本来の業務である、

① 商品政策業務(方針、仕入基準、品揃基準等の作成)
② 商品計画業務(商品の仕様の確定、契約、売上計画の立案等の作成)
③ 販促業務(チラシと商品とのチェック、各種予算とのチェック)
④ 仕入先との商談(商品見本のチェック、契約)
⑤ 単品ABC分析(消化率のチェック、値下指示)等のデータ分析、傾向分析
⑥ 店舗向け商品案内書の原稿作成

等の業務を行っているが、各業務とも時間が足りないため、雑な処理で済ませている。
また、その他に以外と無駄な時間を費やしているのが、

① 手作業での各種分析資料(会議用、報告用、資料用)
② 単純な転記作業
③ コンピューター出力帳票の分析(異常値等の数値チェック)

等であり、現状の作業をこなすのが精一杯で、顧客ニーズの把握やニーズ商品のイメージ(対応)等の商品企画まで、手が回っていない。
しかも、顧客情報の収集は、極端な言い方をすれば、POS分析と仕入先からの情報だけを吸い上げて、商品を契約(仕入)している。
これに並行して、店舗側の業務分析も行っているが、結論は、「商品に関することは、すべてバイヤーに」であり、商品に関する疑問、仕入、発注、品揃、陳列、値下処理等で分からないこと、確認したいこと、相談したいことは、すべてバイヤーに直接電話をして聞いている。これでは、バイヤーは仕事にならないのも無理はない。
どの小売業でも、バイヤーの仕事には、書類上での業務分担と実際に行っている業務内容との間に大きなギャップがあり(雑用が多い)、それなりに努力をして、「売れるだろう」商品を導入しているつもりだが、実際にはなかなか売れず、販売指導、陳列の仕方、商品のトラブル等の後処理に時間を費やしている。
本来の商売は、一人の人が良い商品を仕入れ、その商品の良さを勧めながら売り、お客様に喜んでもらうことが理想である。
しかし、企業として、あるいは、チェーンストアとしては、それぞれの業務を分担し、組織として商売を行うためには、分業化する必要がある。が、今のチェーンストアにおいて、ほとんどが個人商店の出身である。それゆえ、売上が上れば、人を増やし、店を作り、そして、組織ができ、職務分担ができ上がった、後追いの体制が採られている。そのため、上流工程である商品計画、商品企画等は、バイヤー個人が商品情報やノウハウをしまい込みがちで、店舗や同僚とのコミュニケーションが悪く、組織が硬直化している。
業務改革で一定の成果をあげたI社は、業務改革を継続しながら、次は、店舗に焦点をあて、店舗自らがマーケットニーズを把握し、その状況と商品計画(企画)を踏まえた上で販売計画を立てる方法に変えた。
従来は、企画部が大枠の販売予算を立て、店舗と調整し確定する方法が採られていた。店舗とすれば、どちらかと言うと予算を押しつけられた面があり、積極的に達成しようという意欲にかけていた部分があったため、店舗が自主的に販売予算を立案し、責任を持って達成する仕組みに変えたのである。
そのため、バイヤーが立てる商品計画の精度や店舗に対する販売面の支援体制が課題として上がり、バイヤー、ディストリビューター、スーパーバイザーの役割を明確にして、それぞれの業務を無理なくこなして行けるような組織の整備を行った。
ここで、第三章の一(売れ筋を探す・創る・把握する)で取り上げた各担当者の役割分担を更に、詳細に説明すると、

① バイヤーの役割(商品企画のコーディネーターであり、商品のプレゼンテーター)
・ 商品情報(素材、デザイン、色等の傾向・開発、生産、販促等の計画情報・新商品のアイデア、既存商品の問題点等)の収集および分析
・ 商品の企画、開発(メーカーとの開発チーム)、仕入、(仕入先との交渉・契約・納入方法、代替仕入ルートの確保)
・ 商品の導入理由(なぜ仕入れたのか、いくらでどのように売って欲しいのか)

② ディストリビューターの役割(商品の物流コントローラー)
・ 商品物流に関するすべての窓口(対店舗、対仕入先)
・ 店別数量の決定と納品(衣料)、市場等からの商品仕入(生鮮)
・ 発注から納品までのシステム上の改善

③ スーパーバイザーの役割(販売のコンサルタントであり、商品のコミュニケーター)
・ 販売・商品等の商品経営に関するすべての窓口(対店舗…商品の説明や導入した理由)
・ 単品管理の指導(品揃えや陳列を含めた売り場の状況)
・ 店舗で捉えた商品の反応等の情報を報告(対バイヤー、対ディストリビューター)

等である。
バイヤーには、ルーチンワークをはずし、本来のバイイング活動に専念できるように、また、ディストリビューターには、商品が必要な時に、必要な量を店舗に届けることができる仕組み作りに専念できるように、更に、スーパーバイザーには、「売れる商品」を店舗に紹介する役割を持たせ、なぜ仕入れたのか、いくらでどのように売って欲しいのかを理解した上で店舗に売り込む、等と言った各々の体制を整え、役割分担を明確にする。
その後の商品の販売に関する責任は、店舗が負い、運用上のフォローは、ディストリビューターやスーパーバイザーが援助するという大胆な組織改革を行う。
日本の小売業の場合、中々業務の機能がうまく機能しない、長年の士農工商と言うか、
リーダーシップの在り方が欧米と基本的に違うため、一人の親方日の丸的な指導者と黙ってついていく従業員(考えることをしなくなる)に慣れきってしまい、自分から仕事を作り出すことができない体質を、180度変革(自分で考えて、積極的に行動を起こす体質)をする必要がある。