一、商品経営を支えるマネージメント・コントロール
チェーンストアの店舗規模は、コンビニ店に比べると、食品スーパーの場合では10から30倍、GMSでは30から100倍であり、また、商品の取扱い数も食品スーパーの場合では1万から3万単品、GMSの場合では3万から15万単品であり、コンビ二店と比較すると規模や要員が大幅に違うが、基本的な考え方は、
① 顧客ニーズに対応した商品の品揃え(売れる商品を揃え、品切れをおこさない)
② 商品によって顧客に満足を与える(購入した商品を満足して食べて頂く、使用して頂く)
③ その結果、企業として利益を得る(税金を収めることにより、社会貢献する)
であり、どの企業も同様である。
本部組織の商品部については、コンビニエンス・チェーンや食品スーパーにおいて、食品部と非食品部の2部制で、GMSにおいては、衣料品部、家庭雑貨、食品部と生鮮部の3ないし4部制であり、テナント(専門店)が多い場合は、独立してテナント部が存在し、商品の特性別に部署が分かれている。更にその下部組織として担当部(デビジョン)が5から20あり、全体で20から80部署程ある。
その担当部(デビジョン)の中で更に、ライン(商品機能、用途別)に分かれている。全体で200から300ライン程あり、このラインにバイヤー1名ないし2名が対応し、全体で約200名から600名程度の要員が必要となり、更に、地域バイヤーとして100名から200名程配置されている。
バイヤーの業務は、商品の開発、企画および仕入先との契約(信用調査を含む)や契約済みの仕入先から仕入れた商品を店舗に安定供給する役割、また、店舗に対し、商品の特長及びターゲット、そして、販売についてのアドバイスをする役割等がある。この3つの役割を縦割りにした「バイヤー養成型組織」と3つの役割を横割にし、組織を分割した「業務遂行型組織」あるいは、「混合型組織」等と言う各社独自の組織体系をもっているが、徐々にではあるが、ムダの少ない「業務遂行型」に移行しつつある。
業務遂行型のバイヤーの役割とは、
【商品計画・バイイング・業務処理】
① 顧客ニーズ、素材や産地、商品開発や生産計画等に関するメーカー、商品改善、商標や特許等の法規制などの情報の収集
② 外部の専門家を活用して、商品企画をまとめ(コーディネータ役)、チャネル(開発、納品等)の開発、原料、素材、加工方法を指示してサンプル商品をメーカーから提示させる(直接物作りには、タッチしない)
③ 客層、地域特性、顧客ニーズ、天候等を考慮して、商品構成(デザイン、規格、素材、品質、色、サイズ、価格帯、量等)を決め、与件の変化(市況、競合、ニーズのギャップ等)や他社の状況の変化を加味して商品構成をかえる。
④ 自社の要件(納入条件、納入方法、納入サイクル等)にあった仕入先の選定
⑤ 商品の選定と選定理由、販売方法の指示(商品のポイント、セールスプロモーション、プレゼンテーション)の明確化
⑥ 販売期間、原価、売価、数量(扱い店舗の想定)をチャンス・ロスが生じないように決定する
⑦ 仕入先と商品の内容(販売期間、原価、売価、数量等)について契約する(契約内容をチェック)
⑧ 商品の選定理由、販売方法などについて関係部署(部内、関係部門、店舗、仕入先)間でコミュニケーションを円滑にする
等であり、発注から在庫、販売分析という一連のルーチン・ワークとルーチン・ワークから発生する様々な問題点(未納、遅納、物流センター・生鮮センター等の物流関連や事故商品、システム関連についてはディストリビューター(DB)が担当し、店舗からの要望商品等の品揃、陳列、販売、在庫や顧客情報等の店関連はスーパーバイザー(SV)が担当)については、バイヤーの業務からはずし、商品企画業務に専念できる体制になっている。
では、従来からあった商品別(実質は、担当部別)の売上、仕入、粗利・在庫等の数値責任は担当部が負うことにかわりはないが、担当部ごとの数値(予算、実績)の内訳部分については、バイヤーが責任を負う。
ラインは機能別、用途別に分けられた商品群で構成され、それを更に細分化する。相互に代替可能な商品で、なおかつ予め重要であるとみなされる具体的な特徴を持った商品群であるクラスフィケーション(通常は略して、クラスという)に分かれ、全体で約2000から3000クラス程あり、店舗の陳列の単位になっている。
このクラスの捉え方は、それぞれの企業によって異なり、それが売り場での品揃えや陳列に反映されるため、商品構成上、非常に重要であり、毎年改廃が繰り返えされている。
クラスの売上や利益があがれば、そこに含まれる商品群を拡大し、他のクラスにも適用できるのかできないのかを考える。逆に売上や利益が下がれば、すぐに縮少して対応する。
顧客ニーズの多様化の対応や100%の満足を与えようとして、手当たり次第商品を買い付けたり、ニーズの多様化に対応しようとして、何でも買い付けてしまうことは、店舗での在庫が増えて、在庫回転率の低下を招き、利益の減少につながってしまうので、商品を絞り込んで、品切れをおこさないようにするほうが売れる。
多様化への対応、ニーズへの対応、100%の満足といった抽象的で、それぞれの立場や職位や職務でまちまちな解釈ができる企業政策は、具体的な例をあげて解釈の統一を図る必要があり、バランスを考慮して行動する必要もある。
そのバランスとは、
① ターゲットとする顧客を決めて、顧客にあわせた品揃え
② 商品構成(アソートメント)のバランスをとる
② 過剰な多様化対応にならないように品揃えを維持する
であり、過剰な多様化にならないようにすることが、季節感と合わせて管理は非常に難しい。
衣料品であれ、食料品であれ、商品の売れ筋に絞り込み、死に筋商品をカットしてしまうと、この死に筋商品を購入していた顧客は、店員に「この商品はないのか」と訊ねる。このとき店員はどう答えるだろうか。あるいは、どう答えたら良いのだろうか。多様化の対応や顧客の立場に立つという考え方を優先していれば、「何日までに取り寄せておきます」だろうし、店の利益や業績を考えると「申し訳ございません、取り扱いをやめましたので」という答えになるだろう。後者で答えた場合は、顧客を逃してしまうのではないかといった心で葛藤しながらの応対になる。どちらが良いのかはそれぞれの企業の方針によるのだが、人(店長、商品部)によってその判断の良否が異なることが一番良くない。
その意味では「顧客ニーズの変化に対応」とするならば、後者の応対で済むことだし、カットする判断を店(担当者)がしたとすれば、代替商品なり、売れ筋商品をすすめることができるので、合理的であり、コンビニ店ではこの方法がとられている。
ところで、「変化」の与件には、
① 競合(商品であればメーカー生産計画など)
② 経済情勢(消費状況)と環境状況(天候等)
③ 消費者の消費動向(口コミ、マスコミ等の情報)
等があり、変化そのものは色々な要素があるが、急激にくるものではなく、徐々にくるものであり、中には、変化を先取りした計画(メーカーが仕掛ける)もあるし、それらの情報や兆候をいかに早く、入手できるか、そして更に、入手した情報の中から自社に合うものをいかに選択できるかにかかっている。
新しい商品を導入する際の考慮点は、
① 顧客を満足させられるような価値を付加した商品
② 販促計画(メーカー)の有無も大事な要素(売上に貢献する)
③ 品質管理・衛生管理は徹底的に(一つの商品で企業が窮地になることもある)
④ 新商品は顧客が欲しているかどうかを第三者の見方で判断する。
⑤ 販売方法(販売上の手間含む)の提示や陳列スペースを考慮
⑥ 商品の売れ行きのフォロー(売れない商品の早期判断、例外条件は割り切る)
等である。
ここで、大事なことは、バイヤー自身の思い込みや、こだわりによって開発した商品の場合でも、売れ行きが悪ければ(顧客の支持がえられなかった)、すばやく処分の対象とし、適切な処置をとらなければならないと言うことである。
メーカーの事例でもあるように、新商品を生み出すことにおいて、専門のスタッフを揃え、10ほどの新商品を開発し発売したとしても、その内の一つでもヒットできれば良いとされるほど難しいことなのである。そんなメーカーでさえ難しい新商品開発を小売業がもつのは、リスクが大きすぎる。
バイヤーがやるべきことは、それぞれの商品の販売計画(店別)をもとに、クラス別の全社計の仕入・販売・粗利・在庫・値下を含めた商品計画(数量・金額)をたて、それをさらに、ライン別商品計画、部門(デビジョン)別商品計画をたて、これらの商品計画をもとに、各店舗からの起案された販売計画と全社計レベルでの数値を調整し、部門予算として数値管理(コントロール)を行うことである。
この数値管理(コントロール)を行うための代表的な手法に「仕入枠予算(オープン・ツー・バイ)管理」がある。要約すると、販売予算と販売実績・仕入実績をもとに、翌月販売のための在庫(過剰、過少を防ぐ)を管理するため、仕入金額の上限値を設定(仕入枠という)し、店舗発注分も含めて仕入金額の実績を集計して、仕入、売上、在庫の数値バランスを管理(コントロール)することである。
この仕入枠予算管理は、バイヤーの買いすぎを抑制して、適正在庫を確保するためにあり、店舗での実在庫の内容(売れ筋・死に筋商品の在庫内訳)は、単品別のPOS売上実績(衣料の場合は、ファッション・レポートまたはタグ・レポート)で把握して、適切な処置をディストリビューター(DB)及びスーパーバイザー(SV)と協議して決める。
在庫に関連して、基本的な品揃えの考え方は、
① 用途別、デザイン、色、サイズ、機能、素材、容量、シーズン、年齢等
② ナショナル・ブランドのディスカウント
③ 品質を一定にする
④ 商品分類をはっきりさせる(細分化の基準・扱い品目数・価格帯等)
⑤ プライベート・ブランド(PB)の育成、産地開発
⑥ 新商品はどこよりも早くとりあげる(テスト販売の場の提供)
⑦ メーカーとの共同企画商品の開発
であり、店舗を含めた仕入についての考慮点を要約すると、
① 売れ筋商品は品切れさせずに、商品アイテム数は常に腹八分目
(満腹だと、新商品が導入できない…商品改廃をスムーズに)
② 商品は、売れ筋商品に絞ること
(やたらに、手を広げない…100%の満足は与えられない)
③ 死に筋商品は早く、一度に思いきった値下げをすること
(少しでも利益を得ようと段階的値下げは、まだ下がると思われ、結局廃棄処分に)
④ 色気をだして、カンで商品を発注しないこと
(ほとんどが、売れなくて不良在庫になる…仕入理由を明確に)
になる。
何をいくつ仕入れて、いくらでどれだけ売れば、どれほどの利益がでるのか。また、値下げすれば、どれほど利益を逃すのか。こういった商売の基本中の基本である利益感覚を最重要視すること。すなわち、経営感覚を基本的には全員が身につけなければならない。
あわせて、本部・店舖ともに、消費者に感動・感激・感謝してもらえるかがチェックポイントであり、改善・付加価値・他社との差別化が行われているかが、2・3番目のチェックポイントである。
チェーンストアの店舗規模は、コンビニ店に比べると、食品スーパーの場合では10から30倍、GMSでは30から100倍であり、また、商品の取扱い数も食品スーパーの場合では1万から3万単品、GMSの場合では3万から15万単品であり、コンビ二店と比較すると規模や要員が大幅に違うが、基本的な考え方は、
① 顧客ニーズに対応した商品の品揃え(売れる商品を揃え、品切れをおこさない)
② 商品によって顧客に満足を与える(購入した商品を満足して食べて頂く、使用して頂く)
③ その結果、企業として利益を得る(税金を収めることにより、社会貢献する)
であり、どの企業も同様である。
本部組織の商品部については、コンビニエンス・チェーンや食品スーパーにおいて、食品部と非食品部の2部制で、GMSにおいては、衣料品部、家庭雑貨、食品部と生鮮部の3ないし4部制であり、テナント(専門店)が多い場合は、独立してテナント部が存在し、商品の特性別に部署が分かれている。更にその下部組織として担当部(デビジョン)が5から20あり、全体で20から80部署程ある。
その担当部(デビジョン)の中で更に、ライン(商品機能、用途別)に分かれている。全体で200から300ライン程あり、このラインにバイヤー1名ないし2名が対応し、全体で約200名から600名程度の要員が必要となり、更に、地域バイヤーとして100名から200名程配置されている。
バイヤーの業務は、商品の開発、企画および仕入先との契約(信用調査を含む)や契約済みの仕入先から仕入れた商品を店舗に安定供給する役割、また、店舗に対し、商品の特長及びターゲット、そして、販売についてのアドバイスをする役割等がある。この3つの役割を縦割りにした「バイヤー養成型組織」と3つの役割を横割にし、組織を分割した「業務遂行型組織」あるいは、「混合型組織」等と言う各社独自の組織体系をもっているが、徐々にではあるが、ムダの少ない「業務遂行型」に移行しつつある。
業務遂行型のバイヤーの役割とは、
【商品計画・バイイング・業務処理】
① 顧客ニーズ、素材や産地、商品開発や生産計画等に関するメーカー、商品改善、商標や特許等の法規制などの情報の収集
② 外部の専門家を活用して、商品企画をまとめ(コーディネータ役)、チャネル(開発、納品等)の開発、原料、素材、加工方法を指示してサンプル商品をメーカーから提示させる(直接物作りには、タッチしない)
③ 客層、地域特性、顧客ニーズ、天候等を考慮して、商品構成(デザイン、規格、素材、品質、色、サイズ、価格帯、量等)を決め、与件の変化(市況、競合、ニーズのギャップ等)や他社の状況の変化を加味して商品構成をかえる。
④ 自社の要件(納入条件、納入方法、納入サイクル等)にあった仕入先の選定
⑤ 商品の選定と選定理由、販売方法の指示(商品のポイント、セールスプロモーション、プレゼンテーション)の明確化
⑥ 販売期間、原価、売価、数量(扱い店舗の想定)をチャンス・ロスが生じないように決定する
⑦ 仕入先と商品の内容(販売期間、原価、売価、数量等)について契約する(契約内容をチェック)
⑧ 商品の選定理由、販売方法などについて関係部署(部内、関係部門、店舗、仕入先)間でコミュニケーションを円滑にする
等であり、発注から在庫、販売分析という一連のルーチン・ワークとルーチン・ワークから発生する様々な問題点(未納、遅納、物流センター・生鮮センター等の物流関連や事故商品、システム関連についてはディストリビューター(DB)が担当し、店舗からの要望商品等の品揃、陳列、販売、在庫や顧客情報等の店関連はスーパーバイザー(SV)が担当)については、バイヤーの業務からはずし、商品企画業務に専念できる体制になっている。
では、従来からあった商品別(実質は、担当部別)の売上、仕入、粗利・在庫等の数値責任は担当部が負うことにかわりはないが、担当部ごとの数値(予算、実績)の内訳部分については、バイヤーが責任を負う。
ラインは機能別、用途別に分けられた商品群で構成され、それを更に細分化する。相互に代替可能な商品で、なおかつ予め重要であるとみなされる具体的な特徴を持った商品群であるクラスフィケーション(通常は略して、クラスという)に分かれ、全体で約2000から3000クラス程あり、店舗の陳列の単位になっている。
このクラスの捉え方は、それぞれの企業によって異なり、それが売り場での品揃えや陳列に反映されるため、商品構成上、非常に重要であり、毎年改廃が繰り返えされている。
クラスの売上や利益があがれば、そこに含まれる商品群を拡大し、他のクラスにも適用できるのかできないのかを考える。逆に売上や利益が下がれば、すぐに縮少して対応する。
顧客ニーズの多様化の対応や100%の満足を与えようとして、手当たり次第商品を買い付けたり、ニーズの多様化に対応しようとして、何でも買い付けてしまうことは、店舗での在庫が増えて、在庫回転率の低下を招き、利益の減少につながってしまうので、商品を絞り込んで、品切れをおこさないようにするほうが売れる。
多様化への対応、ニーズへの対応、100%の満足といった抽象的で、それぞれの立場や職位や職務でまちまちな解釈ができる企業政策は、具体的な例をあげて解釈の統一を図る必要があり、バランスを考慮して行動する必要もある。
そのバランスとは、
① ターゲットとする顧客を決めて、顧客にあわせた品揃え
② 商品構成(アソートメント)のバランスをとる
② 過剰な多様化対応にならないように品揃えを維持する
であり、過剰な多様化にならないようにすることが、季節感と合わせて管理は非常に難しい。
衣料品であれ、食料品であれ、商品の売れ筋に絞り込み、死に筋商品をカットしてしまうと、この死に筋商品を購入していた顧客は、店員に「この商品はないのか」と訊ねる。このとき店員はどう答えるだろうか。あるいは、どう答えたら良いのだろうか。多様化の対応や顧客の立場に立つという考え方を優先していれば、「何日までに取り寄せておきます」だろうし、店の利益や業績を考えると「申し訳ございません、取り扱いをやめましたので」という答えになるだろう。後者で答えた場合は、顧客を逃してしまうのではないかといった心で葛藤しながらの応対になる。どちらが良いのかはそれぞれの企業の方針によるのだが、人(店長、商品部)によってその判断の良否が異なることが一番良くない。
その意味では「顧客ニーズの変化に対応」とするならば、後者の応対で済むことだし、カットする判断を店(担当者)がしたとすれば、代替商品なり、売れ筋商品をすすめることができるので、合理的であり、コンビニ店ではこの方法がとられている。
ところで、「変化」の与件には、
① 競合(商品であればメーカー生産計画など)
② 経済情勢(消費状況)と環境状況(天候等)
③ 消費者の消費動向(口コミ、マスコミ等の情報)
等があり、変化そのものは色々な要素があるが、急激にくるものではなく、徐々にくるものであり、中には、変化を先取りした計画(メーカーが仕掛ける)もあるし、それらの情報や兆候をいかに早く、入手できるか、そして更に、入手した情報の中から自社に合うものをいかに選択できるかにかかっている。
新しい商品を導入する際の考慮点は、
① 顧客を満足させられるような価値を付加した商品
② 販促計画(メーカー)の有無も大事な要素(売上に貢献する)
③ 品質管理・衛生管理は徹底的に(一つの商品で企業が窮地になることもある)
④ 新商品は顧客が欲しているかどうかを第三者の見方で判断する。
⑤ 販売方法(販売上の手間含む)の提示や陳列スペースを考慮
⑥ 商品の売れ行きのフォロー(売れない商品の早期判断、例外条件は割り切る)
等である。
ここで、大事なことは、バイヤー自身の思い込みや、こだわりによって開発した商品の場合でも、売れ行きが悪ければ(顧客の支持がえられなかった)、すばやく処分の対象とし、適切な処置をとらなければならないと言うことである。
メーカーの事例でもあるように、新商品を生み出すことにおいて、専門のスタッフを揃え、10ほどの新商品を開発し発売したとしても、その内の一つでもヒットできれば良いとされるほど難しいことなのである。そんなメーカーでさえ難しい新商品開発を小売業がもつのは、リスクが大きすぎる。
バイヤーがやるべきことは、それぞれの商品の販売計画(店別)をもとに、クラス別の全社計の仕入・販売・粗利・在庫・値下を含めた商品計画(数量・金額)をたて、それをさらに、ライン別商品計画、部門(デビジョン)別商品計画をたて、これらの商品計画をもとに、各店舗からの起案された販売計画と全社計レベルでの数値を調整し、部門予算として数値管理(コントロール)を行うことである。
この数値管理(コントロール)を行うための代表的な手法に「仕入枠予算(オープン・ツー・バイ)管理」がある。要約すると、販売予算と販売実績・仕入実績をもとに、翌月販売のための在庫(過剰、過少を防ぐ)を管理するため、仕入金額の上限値を設定(仕入枠という)し、店舗発注分も含めて仕入金額の実績を集計して、仕入、売上、在庫の数値バランスを管理(コントロール)することである。
この仕入枠予算管理は、バイヤーの買いすぎを抑制して、適正在庫を確保するためにあり、店舗での実在庫の内容(売れ筋・死に筋商品の在庫内訳)は、単品別のPOS売上実績(衣料の場合は、ファッション・レポートまたはタグ・レポート)で把握して、適切な処置をディストリビューター(DB)及びスーパーバイザー(SV)と協議して決める。
在庫に関連して、基本的な品揃えの考え方は、
① 用途別、デザイン、色、サイズ、機能、素材、容量、シーズン、年齢等
② ナショナル・ブランドのディスカウント
③ 品質を一定にする
④ 商品分類をはっきりさせる(細分化の基準・扱い品目数・価格帯等)
⑤ プライベート・ブランド(PB)の育成、産地開発
⑥ 新商品はどこよりも早くとりあげる(テスト販売の場の提供)
⑦ メーカーとの共同企画商品の開発
であり、店舗を含めた仕入についての考慮点を要約すると、
① 売れ筋商品は品切れさせずに、商品アイテム数は常に腹八分目
(満腹だと、新商品が導入できない…商品改廃をスムーズに)
② 商品は、売れ筋商品に絞ること
(やたらに、手を広げない…100%の満足は与えられない)
③ 死に筋商品は早く、一度に思いきった値下げをすること
(少しでも利益を得ようと段階的値下げは、まだ下がると思われ、結局廃棄処分に)
④ 色気をだして、カンで商品を発注しないこと
(ほとんどが、売れなくて不良在庫になる…仕入理由を明確に)
になる。
何をいくつ仕入れて、いくらでどれだけ売れば、どれほどの利益がでるのか。また、値下げすれば、どれほど利益を逃すのか。こういった商売の基本中の基本である利益感覚を最重要視すること。すなわち、経営感覚を基本的には全員が身につけなければならない。
あわせて、本部・店舖ともに、消費者に感動・感激・感謝してもらえるかがチェックポイントであり、改善・付加価値・他社との差別化が行われているかが、2・3番目のチェックポイントである。