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文学や史跡で登場するマチを旅しながら、折々、紹介することを心がけています。

宮子 あずさ著『看護婦が見つめた人間が死ぬということ』

2014年03月09日 05時10分11秒 | 書評
 宮子 あずさ著『看護婦が見つめた人間が死ぬということ』

 全20章.
 さまざまな臨終、臨終へいたる症例が示されている.職業人として「死」を見つめる.

 臨終に立ち会う職業.
 その職業柄、残された家族にむきあう姿勢、対応が冒頭に述べられている.「さぞ事務的に仕事をしているように見えていることであろうかとおもいつつも、それ以上のことはできないのです」(2p).

 多くの症例をみつめていると.
 職業柄、「のぞましい死に方」、「かかりたくはない病気」ということがあるらしい.前者は「ピンピンコロリ」で、後者は「肺がんと膵臓がん」とのこと.

 多くの症例から見えてきたこと.
 うまく死ぬことは心がけていても<ダメ>で、激しい疼痛は人格をも変えてしまうということらしい.

 本書は著者30歳時点での著作.
 全20章を通じて、見えてくるものはなにか.それぞれの症例でとりあげられているケースは、人間模様のいかなる局面を示すものなのか.

 比較文化.
 臨終にのぞむ患者の「個」のほかに、患者をとりまく「家族」の対応が記載されている.かつて、家族に看取られる、子が親を見送る.他人よりも血縁が見送る.
 そこに、微妙な変化が生じていること.それが行間ににじみ出ている.
 <勘当された兄弟の亡骸を、兄弟がひきとりにこないため、無縁仏であつかわれる>.

 無縁仏
 以前にもあった.ただ、それは<行旅死亡人>など路上の死者で、診療所の病床から発する者ではなかった、と記憶する・

 単独生活
 現在、単身居住が増えている.緊急に病院にはこばれたとき、その私財・私物の保護などに看護職はどう向き合っているのか.
 そうした点も、気になるところであった.

 本書は1998年04月、講談社文庫として発刊されることになる.ここでは、海竜社 1996年発行で書評を書いておく.


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