凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

そして、今夜も旅の空

2009年09月26日 | 都道府県見て歩き
 人よりも多く旅をしているほうだと思う。

 いろいろなきっかけから旅行が好きになった。幼少時に冒険譚を読み漁った経験、自転車で遠出を始めたこと、また従来よりの珍しモノ好きの性格、ユースホステルとの出会い、人との邂逅の面白さ、歴史散策や文学散歩へののめり込み、食い道楽、また現実逃避癖、遁走の習性、などなど。
 若い頃は本当に旅ばかりしていた。
 そして、そのことを今になって書き残しておきたくなった。

 最初はHPを作る予定だった。いや、途中まで作成した。タイトルは「今夜も旅の空」。ところが、以前書いたように諸般の事情があって完成には至らず、負担のかからないブログで吐き出していくことにした。それがこの、カテゴリ「都道府県見て歩き」である。
 最初に書いた「旅心さそわれて」、そして北海道から書きはじめて、ここまでまる5年。あの頃はまだ30代だったことを思うと、感慨もあるし、またノロマであったとも思う。ただ、書いていて本当に楽しかった。追体験の悦びと言おうか。
 いずれにせよ、これが最終記事である。過去の旅行の話は、まだまだ書き尽くせてはいないので、また何らかの形で様々に顔を出してくるはずだが、とりあえずの中締めとしたい。

 もちろん、僕よりもずっと多くの足跡を残している人はゴマンといらっしゃるし、オマエ程度で旅を語るのはおこがましいと思う人も多いことだろう。けれども、これは数の問題でもない。強いて言えば濃度だろうか。
 今もあの時の、旅のひとコマひと場面を克明に思い出すことが出来る。時に怒涛の如く溢れ出る。郷愁に押し潰されそうになるほどに。

 旅の様々な思い出は尽きることがない。
 思いつくままに。
 白い蝶がまるで紙吹雪のように舞い降りたあの天塩の祝福のとき。
 北海道の羽幌で見た、天売島と焼尻島の間に焼けるように沈む大きすぎる夕陽。
 キタキツネに案内された雄冬の絶景。
 流氷迫るオホーツクの海岸で、夕焼けで真紅に染まった神々しい斜里岳と出会えた僥倖。
 十和田湖で見た天の川。
 本土最南端の佐多岬で野宿中、東から西へとブンと音がするように飛んだ流れ星。
 北アルプスの山々が朝の斜光線に包まれ、上高地が神河内へと姿を変えた瞬間。
 屋久島の限りなく澄み切った水と、森の力漲る巨木。
 波照間島の、初日の出と、西の空に架かる虹が同時に現れた光景。
 夜汽車を待つ人気のないプラットホームから見た、蒼い月が煌々と輝いていた夜空。
 自転車で峠を上りきったときの一杯の水の甘露。
 札幌の生ビール。釧路の燗酒。積丹の一升瓶ワイン。沖縄の泡盛。
 三春の桜。美瑛のひまわり。野尻湖の紅葉。浜頓別の吹雪。
 あのときの空。あのときの風。あのときの薫り。あのときの歌。
 そして、なにより沢山の人たちに出会えたこと。
 
 全てが、奇跡だったように思える。

 色褪せない思い出は、僕の財産であり、他に代替出来ないもの。いつまでも胸に焼き付いて離れない心の中の神話。もしもそんなよろこびを知らずにここまで過ごしてきたとしたならば、俺の人生なんてスカスカだったに違いない。
 そんな追憶の断片をこうしてネット発信で書き残すことが出来たのは幸福だった。昔であればただこっそりと大学ノートにでも書いていなければしょうがなかったであろうに。こんな時代に感謝している。

 まだ僕の人生は終わってはいない。また旅に出たい。思い出を積み重ねたい。そして、今夜も旅の空の下で幸せを噛み締めつつ眠りたい。



 「都道府県見て歩き」完結です。ここまで読んで下さって本当にありがとうございました。


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4 コメント

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旅は良いですよね~ (jasmintea)
2009-09-29 12:50:04
旅に出掛けて、迷子になって、地元の方に親切にして頂き、おいしいものを食し、素晴らしい景色に心打たれ、先人達の思いを受け取りたい。
私にとって旅は生きていく糧です。
そして、「都道府県見て歩き」をずっと拝読して、折れそうな心に元気をもらいました。
きっと凛太郎さんの描写がイキイキとしていたり、その地を思う気持ちが伝わったからなのでしょうね。
これで終わりだと思うと寂しいですがまたの機会に違う形で書いて下さいね♪

こんなに長く1つのテーマを連載した凛太郎さんに敬意を表します。
お疲れ様でした。
返信する
>jasminteaさん (凛太郎)
2009-09-29 21:55:42
ありがとうございました。jasminさんには初期の頃から細かく読んでいただいて。読んでくださる人がある嬉しさ。本当に感謝しています。
ブログで設定したカテゴリって、書くことが尽きれば終わるんですね。不思議でもなんでもないのですが妙に感慨深い。でも、ちょっと引っ張り過ぎましたか。本当はもっと早く完結してないといけませんね。

それにしても、旅はいいもんです。尽きせぬ思いが僕にもあります。確かに「生きていく糧」であり、同時に生きてきた軌跡でもあります。
書くことが尽きたはずなのですが、書きたいことはまだあります。特に東日本はまだ記事を短めに書いていた(当時は自制が働いていた)こともあり、あのことも、このことも書いていない。他のカテゴリ内で補完していきたいと思います。またよろしければ読んでやって下さい。
返信する
おつかれさま。 (まるちゃん)
2009-09-30 09:20:45
途中から読ませていただいたけれど あっちへこっちへページを移動して いろいろな土地の旅を楽しみました!
個人的にはやっぱり 食いものが出てくるのに惹かれちゃいましたw
凛太郎さんの食べる描写 すごいんだもの。
『わしわし』食べる凛太郎さんが目に浮かびます。

ところでブログデザイン 新鮮ですね。
ペンと本(ノートかな)が お会いしたことはないけれど凛太郎さんにぴったりです。
あちらで読みましたが いろいろ工夫されたのね。
うん ばっちり。
読みやすいです。
ひまわりがないのは寂しいけれど いつか登場する時 大きな喜びになりますね!
返信する
>まるちゃん (凛太郎)
2009-10-01 23:13:00
まるちゃんは僕の昔の記事を本当に丁寧に読んでくださいましたよね。ああいうの、嬉しかった。
ブログってのは時系列の波をどうしてもかぶりますので過去に書いたものは埋もれてしまう。それが読まれる嬉しさは替え難いものでした。

振り返ると、喰いモノの話が多いですね(笑)。食い意地がいかに張っていたかつーことですな。しかも量がないと寂しいというメタボまっしぐらのこの人生。これからもあちこちでワシワシと喰らっていきたいと思いますよ(いいかげん歳を考えなさい)。

テンプレは妥協の産物なんですが、読みやすければ良かったなと。前より行間が狭く圧縮された感じで心配だったんです。
ヘッダーだけでもカスタマイズさせてくれればひまわりもまた登場するのですが…。
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