現在はどうなっているのかは知らないが、僕が当時通っていた京都の公立高校では、修学旅行がなかった。無い、と言ってしまえば正確ではなく、2泊3日の「宿泊行事」というものが組まれていた。修学旅行で韓国やハワイに行く現在のそれとは大きく趣きを異にしているが、それはクラス毎に出かけることになっていて、自主性を重んじて計画を各々に立てさせてくれていた(当然予算があるのでチェックは入るが)。
当時旅行が好きになりかけていた僕は委員をかって出て、行き先を信州に決めてしまった。多分に当時愛読していた北杜夫の「どくとるマンボウ青春記」の影響である。
そうして出かけた信州の旅は予想以上に素晴らしく、晴れわたった秋の空に山々が映えた。特にビーナスラインの車山から見た北アルプスから富士山に至る360度の展望は驚くほど美しく感動した。それが信州の初体験である。
その後、僕は信州に何度も訪れるようになった。むしろ社会人になってからの方がよく通った。夏は毎週末信州に居た年もある。
名古屋に住んでいた頃、鬱屈して僕は金曜の夜に大酒を呑み、錯乱してどうしても旅に出たくなって大坂発の松本行き夜行「ちくま」に深夜に乗り込んだ。名古屋発が25時前だったから、3時間と少し乗れば松本に着く。まだ酔眼のまま、松本電鉄の始発新島々行きに乗り込み、バスを乗り継いで早朝6時に上高地に着いた。
そして、登山客に混じって揺れる頭のままぶらりと歩き出した。徐々に陽が昇り、穂高岳が朝日に染まっていく。そのまま僕は河童橋を過ぎ、明神池に向かって歩いた。
朝の斜光線の中、靄が徐々に晴れていく。あくまで清涼な空気と煌めく光。鮮やかな緑は陽を反射してあまりにも美しく輝き、荘厳なまでにその姿を現している。登山の人たちは山を目指して先を急ぎもう周りには誰も居ない。こんな綺麗で神聖な場所がまだ在ったのかと僕は感動してそこから動けなくなった。
「なるほど、これは神河内だ…」
今でこそここは上高地という無機質な名称だが、かつては神の降り立つ場所だったのだ。水はあくまでも清冽であり、山々は気高く聳える。静寂の中に、神々がささやく声がそこかしこに聞こえてくるようだ。その奇跡のような光景に、前の晩に酔っ払っていたことも忘れ、しかしながら立ち尽くすしか術はなかった。
あまりクドクドと言うとウザいのは自分でも分かっているので止めるが、かのように信州は時々驚くような美しさを見せてくれる。都市部に住んでいる人間にとって、また大好きな北海道や沖縄には思い立って直ぐに行けない状況にある人間にとって、信州は手の届く楽園であって、気持ちをなだらかにしてくれる空間でもある。
僕は長く拠点を北陸に置いていたこともあって、北信濃の方が馴染み深い。新潟から行って、糸魚川から入るルートが近い。小谷(温泉がいい)、白馬(八方尾根は綺麗だなぁ)、大町(博物館だらけ)、安曇野(道祖神とワサビの故郷)と続いて松本に至るルートが一番のおなじみ。北アルプスを見上げる景勝地いっぱいのところだ。穴場はたくさん知っているがあんまり書かないでおこう。もう一つのルートは直江津から入る道。妙高、黒姫、戸隠を経て長野市に入る。北東へ行けば飯山や野沢温泉、さらにそのまま南東へと行けば上田、小諸、軽井沢へと到達する。こうして書いていると関東在住の人たちとは全く逆のルートだな。
思い出はそれぞれに濃くて、とてもひと記事では書ききれないのでまた機会を作ってチョコチョコと書いていきたい。なんせ自然満喫はもちろんだが、いろいろな側面があるのだ。
例えば長野善光寺から、上田、小諸となると歴史散策の様相を呈する。塩田平を歩くとどうしても真田だ。また軽井沢は文学散歩となる。それぞれ一日では追いつかない。また、海野宿や木曾の馬籠、妻籠ともなると映画のセットのような情景だ。
戸隠や諏訪は、神話マニアにはたまらない。有名な諏訪大社の御柱祭も見たが、信州には無数の神が存在する。自然が濃いからだろう。
また、温泉がいい。僕の温泉入湯データによると、居住地だった石川、兵庫両県を除いては、北海道に次いで温泉に数多く入っている。数もそうだが印象に残る露天風呂も多い。気持ちいいのである。
食べ物は蕎麦が代表か。それぞれの山間、谷には美味い蕎麦やがあって、どれが№1とはもちろん言い切れないが、僕は戸隠の蕎麦が好き。量なら上田の刀屋が最高だろう。
僕はこのGWの前半に信州に行ったばかりなのだが、またぞろ虫が動き出す。山々がまた見たいな。
当時旅行が好きになりかけていた僕は委員をかって出て、行き先を信州に決めてしまった。多分に当時愛読していた北杜夫の「どくとるマンボウ青春記」の影響である。
そうして出かけた信州の旅は予想以上に素晴らしく、晴れわたった秋の空に山々が映えた。特にビーナスラインの車山から見た北アルプスから富士山に至る360度の展望は驚くほど美しく感動した。それが信州の初体験である。
その後、僕は信州に何度も訪れるようになった。むしろ社会人になってからの方がよく通った。夏は毎週末信州に居た年もある。
名古屋に住んでいた頃、鬱屈して僕は金曜の夜に大酒を呑み、錯乱してどうしても旅に出たくなって大坂発の松本行き夜行「ちくま」に深夜に乗り込んだ。名古屋発が25時前だったから、3時間と少し乗れば松本に着く。まだ酔眼のまま、松本電鉄の始発新島々行きに乗り込み、バスを乗り継いで早朝6時に上高地に着いた。
そして、登山客に混じって揺れる頭のままぶらりと歩き出した。徐々に陽が昇り、穂高岳が朝日に染まっていく。そのまま僕は河童橋を過ぎ、明神池に向かって歩いた。
朝の斜光線の中、靄が徐々に晴れていく。あくまで清涼な空気と煌めく光。鮮やかな緑は陽を反射してあまりにも美しく輝き、荘厳なまでにその姿を現している。登山の人たちは山を目指して先を急ぎもう周りには誰も居ない。こんな綺麗で神聖な場所がまだ在ったのかと僕は感動してそこから動けなくなった。
「なるほど、これは神河内だ…」
今でこそここは上高地という無機質な名称だが、かつては神の降り立つ場所だったのだ。水はあくまでも清冽であり、山々は気高く聳える。静寂の中に、神々がささやく声がそこかしこに聞こえてくるようだ。その奇跡のような光景に、前の晩に酔っ払っていたことも忘れ、しかしながら立ち尽くすしか術はなかった。
あまりクドクドと言うとウザいのは自分でも分かっているので止めるが、かのように信州は時々驚くような美しさを見せてくれる。都市部に住んでいる人間にとって、また大好きな北海道や沖縄には思い立って直ぐに行けない状況にある人間にとって、信州は手の届く楽園であって、気持ちをなだらかにしてくれる空間でもある。
僕は長く拠点を北陸に置いていたこともあって、北信濃の方が馴染み深い。新潟から行って、糸魚川から入るルートが近い。小谷(温泉がいい)、白馬(八方尾根は綺麗だなぁ)、大町(博物館だらけ)、安曇野(道祖神とワサビの故郷)と続いて松本に至るルートが一番のおなじみ。北アルプスを見上げる景勝地いっぱいのところだ。穴場はたくさん知っているがあんまり書かないでおこう。もう一つのルートは直江津から入る道。妙高、黒姫、戸隠を経て長野市に入る。北東へ行けば飯山や野沢温泉、さらにそのまま南東へと行けば上田、小諸、軽井沢へと到達する。こうして書いていると関東在住の人たちとは全く逆のルートだな。
思い出はそれぞれに濃くて、とてもひと記事では書ききれないのでまた機会を作ってチョコチョコと書いていきたい。なんせ自然満喫はもちろんだが、いろいろな側面があるのだ。
例えば長野善光寺から、上田、小諸となると歴史散策の様相を呈する。塩田平を歩くとどうしても真田だ。また軽井沢は文学散歩となる。それぞれ一日では追いつかない。また、海野宿や木曾の馬籠、妻籠ともなると映画のセットのような情景だ。
戸隠や諏訪は、神話マニアにはたまらない。有名な諏訪大社の御柱祭も見たが、信州には無数の神が存在する。自然が濃いからだろう。
また、温泉がいい。僕の温泉入湯データによると、居住地だった石川、兵庫両県を除いては、北海道に次いで温泉に数多く入っている。数もそうだが印象に残る露天風呂も多い。気持ちいいのである。
食べ物は蕎麦が代表か。それぞれの山間、谷には美味い蕎麦やがあって、どれが№1とはもちろん言い切れないが、僕は戸隠の蕎麦が好き。量なら上田の刀屋が最高だろう。
僕はこのGWの前半に信州に行ったばかりなのだが、またぞろ虫が動き出す。山々がまた見たいな。
海も好きだけど山も好きで、そんでもって、旅にも慣れている私は、1人で上高地に行ったことがありますよ。
山荘の10人部屋を一人で使わせてもらったり、ちょっとだけ心細かったけど、大正池まで歩いたり、優雅に帝国ホテルでお茶したり、おそばを食べたり・・・
すっかり寂しがり屋となった今では、もうひとり旅は無理かも・・だからこそ、とても懐かしい思い出です。
その周辺では、立山・黒部や、白馬、乗鞍なんかも行きましたよ。もしかしたら、どこかで凛太郎さんとすれ違ってかもしれませんね。
Mamiさんもやっぱり旅人ですね。そうやって歩き続けるMamiさんになにか憧れの感情がわきます。
一人旅は見方によっては寂しいですが、発見の機会は増えます。長い旅は難しくても、道内には上高地に勝るとも劣らない素晴らしい風景が満ちていますから、ショートトリップでもいいので出かけられてはいかかでしょうか。(^O^)
妙高は中学時代にスキーと登山、大学時代はゼミの合宿で行っていました。関東の人間ですから、行く途中峠の釜飯を買うのが楽しみでした。
プロレスもいいけど旅もいい。
僕は信州には西から入るか南から入るか北から入るか…東から入ったことはまだないのです。峠の釜めしは信州を越えて食べに行かなくてはいけないので、ずいぶんと感覚が違ってしまいますね(笑)。
プロレス以外の記事まで読んでいただいて本当にありがとうございました。旅の話もプロレスと同じでリアルタイムではなく追想です。
縁があって何度も通ったので まるちゃんにもおなじみ。
冷たい水。
蕎麦の味のするおそば。
じっと見てると動く山で いつも緑に酔ってしまった。
街も歩き回った。
ヒトともいっぱい知り合った。
この街で 旅人でいることは難しかった。
>じっと見てると動く山
この表現は凄いですね。なんと感受性の豊かな方なのかと。
旅人でいることは確かに難しい。でもやっぱり旅人で居たい…と矛盾した葛藤が僕などにはあったりして。