夜明けの曳航

銀行総合職一期生、外交官配偶者等を経て大学の法学教員(ニューヨーク州弁護士でもある)に。古都の暮らしをエンジョイ中。

火事場泥簿

2011年03月25日 | Weblog
みずほ銀行が、システム障害に陥っている件だが、未処理の給料振込等を優先的に解決するために、19日~21日の3連休、ATMを休止し、代わりに、全支店の窓口を開けて、一人10万円まで預金の引き出しを受け付けていた。その際、通帳・印鑑がなくても、キャッシュカードと運転免許証などの本人確認書類を見せれば引き出しできるようにしていた。

それを利用し、詐欺が行われたと知った。みずほ側で払戻請求を受けた際、システム障害のため、正確な預金残高を把握できないまま、10万円までは支払に応じざるを得ないことを悪用し、ありもしない預金を、中には複数の支店を回って引き出した者が、全支店におり、被害額は2億円に上るということだ。

こんな、人の弱みにつけ込んだ、火事場泥棒のような心ない犯罪があるだろうか?

この事態を収拾するためにまたみずほは人手をとられ、正常化が遅れるではないか?システム障害のことだけではなく、たとえば、みずほ銀行いわき支店は未だに営業再開できていない。近くにある七十七銀行は再開した(恩師に聞いた。今時、キャッシュカードもクレジットカードも一枚ももってらっしゃらない方なので、やっと引き出しできたということだ)というのに。それだけではない、4大バンクの一つが正常に営業できないということが、金融システムの機能不全を助長し、日本全体の復興を妨げるではないか?

また、いろいろな支援事業を性悪説に基づいて行わなければならなくなり(たとえば、配給の列に複数回並ばないようチェックするとか)、非常な非効率を招く。日本人の大半は馬鹿正直な人たちなのに、一部の心ない人たちのためにこのようなことになることを考えると、今回の詐欺は、未曾有の国難に際して足を引っ張る行為である。

生命・財産を失ったり、今も苦難に耐えている被災者を冒涜する者だし、非国民といってもいいのではないか?

このような人でなしの者には、厳正に臨むべきだ。

まず、民事的には、手間はかかるだろうが、一件一件、預金伝票と突合して、過払いした預金者に返還を請求すべきだ。不当利得は故意・過失がなくても成立するので、面倒でも全件きちんと請求してほしい。自分たちにも落ち度があるなどという遠慮は、彼らに対しては、全くする必要がない。 

刑事的には、詐欺罪の故意の立証は難しいだろうが、悪質な場合は警察にきちんと通報してほしい。


金融取引法の研究者としては、預金者の本人確認義務という論点について、またとないフィールドワークの機会だったので、3日間のどこかで、引き出しをやってみてテラーがどの程度の注意義務を尽くしているか、見ておけばよかった。家賃の振り込みなどで現金は必要だったのだが、混んでいるかな,と思ってOGとして遠慮したのだった。しかし、日曜日に出町支店の前を通ったので、「引き出す人で混んでいるかな」とちょっと入り口から覗いたら、ロビーにはあまり人がいなかったので。



宅配やゆうパックの情報をずっとチェックしていて、ゆうパックがいわき支店留めで送れるようになったので、25日の朝、大学に行く途中、近くの四条大宮郵便局にカップラーメン等を詰めた小包をもっていったら、「いわき支店はまだです」といわれた。

「そんなはずはない。私はさっきネットで見たんだから」というと、「確認します」とのこと。

その確認に10分以上かかり、局長を呼んで、「いったいいつの情報に基づいてだめだといったのか」ときいたら一昨日のものだという。

別に震災がらみでなくても、自分の仕事であるゆうパックの送付という業務が、東北方面には全然送れない状態から、毎日徐々に正常化していくのであれば、毎日情報をアップデートするのがプロとして当然だろう。ましてや、それが被災者の生命にもかかわるかもしれないと考えれば、より真剣にすべきだろう。随時ネットに公開され、一般家庭でもすぐ見られるようなものを、肝心の郵便局で見ていない、2日前の情報でよしとしていうというのが信じられないのだ。プロとして、人として、感受性に何か問題があるのではないか?

ヤマト運輸は、全然関係ない荷物の配達に来た人にきいても、そういう状況を把握しているのに、一体この郵便局のていたらくは何だ?何のために民営化したのかわからないではないか?

郵政会社に電話で苦情をいい、「こういう情報の全郵便局への周知はどうなっているのか?会社全体の問題なのか、それとも、会社ではきちんと指導しているのにきかなかったという、四条大宮局特有の問題なのか、今後のためにもはっきりしてほしい」といったのに、「会社として周知しているかどうかはお客様にはお伝えできない情報になっています」という木で鼻を括ったような対応、本当に呆れてものもいえない。


仙谷、馬淵などが復権し、これまでの与野党の攻防が全部無効化している。これだけの国難に直面すると、ここ最近の国会でのやりとりが、児戯に等しい馬鹿馬鹿しいもののように見えてくる。

首相の外国人献金問題もふっとんだし。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 石原都知事の見識を問う | トップ | 天地明察 小さいおうち »
最新の画像もっと見る

Weblog」カテゴリの最新記事