人はなぜ戦争をするのか

循環器と抗加齢医学の専門医が健康長寿を目指す「人」と「社会」に送るメッセージ

戦争に散った若人の願いを打ち砕く閣議決定

2014年07月02日 14時48分36秒 | 社会
集団的自衛権行使が閣議決定されました。これによって、わが国は戦争のできない国からできる国へと大きく転換しました。太平洋戦争で犠牲になった若人は草場の陰でこの決定をどのように受け止めているのでしょうか。昨年ベストセラーになった百田 尚樹氏の著書『永遠の0』は、ゼロ戦とともに散った一人の特攻隊員の人物像を通して、多くの日本人にカミカゼ特攻隊とは何だったのかを考えさせました。私は『永遠の0』の感動に浸りながら、45年前に読んだ『あゝ同期の桜』という本を思い出しました。『あゝ同期の桜』は戦後20年間の沈黙を破り、昭和40年に出版された海軍飛行予備学生第14期会の遺稿集です。戦争末期の検閲が厳しい中で書かれた手記にもかかわらず、死と向き合った若者の葛藤がせつせつと伝わってきます。彼らは平和な未来へ命を繋ぐかけ橋として能動的な死を選んだ、改めてそんな思いにさせられました。特攻隊員の死は、あたかも胎児が成長する時に使命を終えた細胞が振る舞う犠牲的な死と似ています。胎児期にはさまざまな器官が現れては消えていきます。それは、人間が誕生し、成長していくために不可欠な現象です。胎児期のわずかな期間しか生きることを許されない短命な細胞たちが人間の正常な発育を支えているのです。胎児の細胞に無駄な「死」はありません。すべての生に意義があり、すべての死に意味があるのです。平和国家の礎を築き、わが国に繁栄をもたらしたのは疑いもなく戦争に散った名もない若人です。憲法9条は若き英霊たちが戦争で生き残った人々に託した平和への願いの結晶です。たとえ集団的自衛権の行使が閣議決定されようとも、彼らの遺産である憲法9条を守り抜き、再び若人が戦争の犠牲になる世の中にしないことが私たちの使命ではないかと思います。