魔界の住人・川端康成  森本穫の部屋

森本穫の研究や評論・エッセイ・折々の感想などを発表してゆきます。川端康成、松本清張、宇野浩二、阿部知二、井伏鱒二。

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人名索引・事項索引の三校を終えました。

2014-08-30 01:19:06 | 自著の紹介
 相変わらず、自著のことばかりで、ごめんなさい。
 本日、2014年8月29日(金)、とうとう、人名索引・事項索引の三度めの校正を終えた。
 自分なりに、万全を尽くして、ミスのないよう、また、読者に便利なように、頑張ったつもりだ。
 これで、私のすべきことは、すべて終わった。

 週明けの月曜日には、印刷所にすべてが届き、猛烈な勢いで1,600頁あまりの本(上下巻)が刷り上げられ、つづいて製本所に送られるのであろう。
 本の装幀については、この欄で皆さんに見ていただいた。装幀を担当してくださった盛川和洋さん、編集者のO氏に、心から感謝している。 本文以外にも、上下それぞれの巻に、カラーの口絵写真8頁ずつ、それにモノクロの写真も加えた。きっと、他の研究者や読者が見たことのない写真や資料も多くあるはずだ。これらのキャプション(説明)も、読者に、私がこの本で、読者に何をお伝えしようとしているかを、知っていただくのに役立つであろう。
 また、美しい写真が、読者の心を癒やすことができれば、幸いである。

 英文の要旨を付すこともできた。それは、この書が、日本の読者や研究者だけではなく、いま盛んになりつつあるアジアや欧米の川端康成研究者たちに読まれることを予想してのことである。
 私の26年前の旧著『魔界遊行―川端康成の戦後―』(林道舎)は、アメリカのミシガン大学の図書館にも蔵されているそうだ。
 海外で川端康成の作品が翻訳され、読まれ、愛好されるにつれて、研究熱も高まっている。
 そういう熱気のなかで、研究者たちは、日本の川端研究の影響を受けながら、新しい視点で、さまざまな研究・考究をはじめている。
 そうした人々が、まず知りたいのは、この本の中に、どんなことが書かれているか、であろう。

 英文要旨は、その意味からも付した。日本人でも、英語の得意な方は、まず、このAbstract を読むだろう。
 だから、この書のエッセンスを、この1頁に込めた。
 もちろん、日本語の「あとがき」にも、本書に込めた意図や内容を、くわしく説明してある。

 この本を書きはじめてから、大方、7年になろうとしている。ひととおり書き終えてから、本にするまでに、2年余りを要した。だが、我慢して、少しでも内容を濃くするため、正確にするため、つとめた。
 文章は平易で、読みやすいはずである。そして、どんどん読んでゆくうちに、私の描く川端康成の実像が浮かび上がってくるだろう。
 康成の切ない恋も、出会いや別れの数々も、太平洋戦争にどれほど心を痛め、戦時下と戦後を通じて、内奥から変貌していった、康成の「かなしみ」の深さを読みとっていただけるであろう。
 〈魔界〉の最深部において書かれた「みづうみ」(1954年・昭和29年)の銀平の言葉が、康成のかなしみを、よく伝えていると思う。
 だから、上巻の扉(とびら)にも、この言葉を、書きつけた。
 死に取り憑かれたかのような康成の胸に、最後に宿ったのも、この気持ちであったろう。


   君はおぼえがないかね。ゆきずりの人にゆきずりに別れてしまつて、ああ惜しいといふ……。僕にはよくある。なんて好もしい人だらう、なんてきれいな女だらう、こんなに心ひかれる人はこの世に二人とゐないだらう、さういふ人に道ですれちがつたり、劇場で近くの席に坐り合はせたり、音楽会の会場を出る階段をならんでおりたり、そのまま別れるともう一生に二度と見かけることも出来ないんだ。かと言つて、知らない人を呼びとめることも話しかけることも出来ない。人生つてこんなものか。さういふ時、僕は死ぬほどかなしくなつて、ぼうつと気が遠くなつてしまふんだ。          (「みづうみ」)

 康成が戦後、〈魔界〉に入っていった経過も、わかりやすく書いたつもりである。康成の〈魔界〉とは、どんな世界か。どんな作品なのか。
 そのあたりを、読んで、楽しんでいただきたい。
 それから、〈魔界〉が次第に力を失って、死への誘惑が濃くなっていった経過も、ていねいに論じた。
 小説でも読むように、読んでいただけたら、幸いである。
 長い物語だが、読み終わったとき、一つの偉大な生涯をたどり、知った、という感慨が読者の全身にひろがるであろう。
 その喜びを、著者とともに味わっていただきたい。

 そんな思いをこめて、今日、最後の作業を終えた次第である。9月の中旬ごろには、主要な書店に並ぶであろう。どうか、ずっしりとした感触を楽しんでいただきたい。私も、楽しみにしている。


  

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1 コメント

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お疲れさま (野上)
2014-08-30 07:12:34
はやく手にとって読みたいです。
本当にご苦労様でした!

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