Organic Life Circle

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カリウムと健康

2006年02月26日 | 科 学


カリウムというのは化学名で、英語やフランス語の一般名ではポタシウム potassium といいます。植物を陶器 pot で燃やすとできる灰 ash である草木灰 = ポタシュ potash から名付けられました。今回はカリウムがどのように私たちの健康に関係しているかを考えてみたいと思います。


<カリウムは体内でどう働くか>

カリウムは体内で多くの重要な働きをします。神経信号を伝達し、糖分解酵素の働きを助け、正常な成長を導き、そして細胞内の電解質(電子を運ぶ物質)として浸透圧を調節し、筋肉を収縮・弛緩させます。血液中のカリウム濃度は、副腎皮質ホルモンによって、ほぼ一定に調節されております。カリウム濃度が低くなると突然死を引き起こすことがあります。また、濃度が異常に高くなると、筋肉が麻痺し、最悪の場合、心不全に陥ります。

正常な状態では、ナトリウム sodium は細胞外に、カリウムは細胞内に多く存在します。両者は細胞の内と外で、細胞膜を隔てて、終わることのない綱引きをしている電解質です。ナトリウムを過剰にとると、細胞からカリウムが絞り出され、細胞はより多くのナトリウムと水を含み、カリウムが腎臓から尿に排出され、細胞内に温かい水が増え、体が温まります。一方、カリウムを過剰にとると、細胞からナトリウムと水が絞り出され、腎臓から過剰なカリウムとともに尿に排出されます。このとき温かい水分が細胞から失われるため、体が冷やされます。人間の体はナトリウムの対しては再吸収の仕組みを備えていますが、カリウムに対してはありません。過剰なカリウムは即座に排出されます。従ってカリウムは常に一定量を食事で補給する必要があります。


<カリウムで高血圧を防ぐ>

ナトリウムとカリウムの関係について研究が進むにつれ、カリウムを豊富にとり、ナトリウムを制限することで、高血圧症が著しく改善されることが明らかになってきました。特に遺伝的な高血圧症の人は、食物中のカリウムに血圧が敏感に反応する傾向が見られるとのことです。浮腫(むくみ)を伴う高血圧症の人にしばしば処方される利尿薬は、腎臓の濾過機能を抑えて、水分、ナトリウムと同時にカリウムやカルシウムも体外に出してしまいます。カリウムは血圧を正常に保つために必要な物質なので、こうしたときは、カリウムが豊富な果物や野菜をたくさんとり、カリウムを補う必要があります。カリウムは腎臓の機能を抑えることなく水分とナトリウムを排出する、天然の利尿薬です。


<カリウムの必要量は?>

カリウムは、心臓をはじめとする筋肉細胞に多く含まれています。カリウムが不足すると筋肉が震えたり、引きつったり、力がなくなり、倦怠感が増します。カリウムの一日の必要量は決められていませんが、2~6gが妥当なところです。一方、ナトリウムの必要量は、従来考えられていたよりはるかに少なく、食塩で一日0.5g(ナトリウムとして0.2g)あれば十分とされています。


<カリウムが豊富な食べ物>

根菜類(ジャガイモ、サツマイモ、ニンジン)、アボカド、レーズン、豆類、柑橘類、カボチャ、バナナ、乾燥アプリコット、スイカ、メロン類、トマト、牛乳、卵、魚類(イワシ、ヒラメ、サーモン)、肉類(牛、豚、鶏)などには、カリウムが豊富に含まれています。ただし、肉類、牛乳、卵には、食塩量に換算するとカリウムと同じ程度のナトリウムも含まれています。
カリウムは水に溶けるため食品加工の際に失われることが多く、加工食品にはカリウムが少なく、代わりに保存性と食味を良くするためにナトリウムが保存料、調味料として加えられています。


<大豆と味噌のカリウム>

大豆はカリウムを豊富に含んでいますが、味噌にはカリウムはほとんど含まれていません。大豆の煮汁とともに捨てられてしまうからです。煮大豆をつぶして、糀と塩を加える際に煮汁を少し混ぜますが、これで少量のカリウムが戻されます。カリウムは酵素による化学反応や発酵を促進するアクセルとなり、ナトリウムはそれらを抑制するブレーキとなります。味噌とは、大豆の豊富なカリウムをナトリウムで置き換えて、ごくわずかのカリウムを加えてブレーキとアクセルのバランスをとり、じっくり発酵(熟成)するようにした蛋白質保存食品ともいえます。


<塩のカリウムが漬物をおいしくする>

漬物に、にがりを含んだ塩(非精製塩、自然塩など)を使うと、微妙なうまみが得られます。これは、にがりに含まれるカリウム、マグネシウム、カルシウムが酵素による化学反応や発酵を促進し、蛋白質などが分解され、うまみ成分や乳酸ができるものと考えられます。これらが塩味と合わさって、微妙なうまみを待たせてくれます。

(海波農園 菅波 任)


オーガニック・ライフ・サークル会報
2003年8・9月号(No.53)掲載

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