Organic Life Circle

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ストレスとビタミンC

2007年11月17日 | 科 学

外傷、毒物、寒冷、熱、病気、恐怖、不安、絶望、興奮などのストレスを感じると、脳下垂体が副腎に指令を送り、副腎皮質ホルモンや副腎髄質ホルモン(アドレナリン)が生成され、同時にビタミンCが使われます。副腎皮質ホルモンやアドレナリンが分泌されると、ストレスに対抗して積極的な防衛反応が起きます。ただし、副腎皮質ホルモンがあまりに多量に分泌されると、心臓、血管系、腎臓、関節などに異常が現れ、体温・血圧が低下し、時には心臓が停止、ショック死に至る場合もあります。

ほとんどの動物は、ストレスの強さに応じて、ビタミンCの合成量を調節し、ストレスがなくなれば、ビタミンCを分解する自動制御系を持っています。ただし、人間や猿、モルモットの場合、その自動制御系が存在しない(ビタミンCを合成する酵素も分解する酵素も持たない)ため、ストレスに弱い動物といえます。そのため、ストレスに対抗するには、十分なビタミンCを補給しておく必要があります。


<環境汚染物質とビタミンC>

環境汚染物質や毒薬物などが肝臓で解毒分解されるときも、ビタミンCが消費されます。環境汚染物質があふれている現代の環境、食生活を考えると、ビタミンCを十分に補給し、肝臓機能を助ける必要があります。

また、タバコに含まれるニコチンも、肺から吸収されて血液に入り、肝臓で解毒分解されます。タバコを1本吸うと約20~40mgのビタミンCが消費されるとの説もあり、これではタバコ1~2本で一日のビタミンC所要量を一度に消費することになります。タバコを一日数本吸う人と数十本吸う人では、ビタミンCの血液中の濃度があまり変わらないという実験結果がありますが、これは、ニコチンを解毒分解できる肝臓の限度が1日に1~2本程度で、それ以上は解毒できず、血液中にニコチンが残ってしまうからと考えられます。


<病気とビタミンC>

風邪のウイルスが侵入し始めたら喉が痛くなります。こんなとき、血液中のビタミンC濃度が高いと、ビタミンCが風邪のウイルスを不活性化し、ウイルスの侵入を食い止めてくれます。風邪が進行してしまうと、さすがのビタミンCもお手上げですから、風邪のひき始めにビタミンCを十分に補給して、症状が悪化するのを防ぎましょう。

癌を起こすウイルスを攻撃・退治する免疫細胞の活動にもビタミンCが必要です。細胞間を接着するコラ-ゲンがしっかりしていると、癌細胞が侵入しにくくなります。コラ-ゲンを作るには蛋白質とビタミンCが必要です。また、ビタミンCは活性酸素などの発癌物質も無害にします。他に、糖尿病、白内障、脳血管性痴呆症の予防、改善に効果があると報告されています。


<ビタミンCから見る人類の発展史>

猿は、亜熱帯の木の上で生活し、木の葉、果物、昆虫からビタミンCを得ていましたが、人類の祖先は木から降りたため、慢性的なビタミンC不足と食料とする動物との格闘、豹や虎などの夜行性肉食動物に襲われる不安や恐怖に直面してきました。また、体毛を失ったため、寒冷・熱などのストレスにも直面してきました。私たちの祖先は、道具を作り、火をおこすことができるようになり、かろうじて生き延びてきたのです。

人類の一部は動物を追って、温帯、さらに寒帯にまで足を伸ばしました。動物を追って高緯度まで行った人類は、日光が弱いためビタミンD欠乏症になりました。そこで、短い夏の間に、十分に紫外線に当たって、活性型ビタミンDを皮下脂肪に溜め込めるようにメラニン色素を失い、白人種となりました。一方、熱帯や亜熱帯に留まった人類は、あまりに強すぎる紫外線から細胞を守るためメラニン色素が増えて、黒人種となりました。中緯度に定着して農業を始めた人類は、それらの中間の黄色人種となりました。

いずれにせよ農業が発達するまでは、ビタミンCの主な供給源は、獣や魚の生肉、昆虫やその幼虫などで、慢性的なビタミンC欠乏のため壊血病や感染症による幼児の死亡率が高く、成人でも寿命は20~25才であることが発掘された骨などから推察されています。牧畜の発達によりビタミンCの豊富な乳が冬でも飲めるようになり、作物栽培の発達によりビタミンCの豊富な野菜が食べられるようになりました。中国では、数千年前から豆や穀物を発芽させて食べていたようです。豆や穀物などの種は、発芽するときに澱粉からビタミンCを大量に作り出します。そして現在、科学技術の発展は、ビタミンCの安価な合成を可能にしました。これらの栄養と医療の改善により、幼児の死亡率は急激に低下し、人類は地球上にあふれ出しました。


<人間とアドレナリン、そして戦争>

アドレナリンは、副腎髄質から分泌されるホルモンで、ごくわずか(血液中に0.2mg=1万分の2g程度)分泌されただけで、心臓がどきどきし、血管が収縮して顔が青ざめ、血圧が上がり、グリコーゲンが分解されて血糖値が高くなり、エネルギーが全身に充満し、立毛し鳥肌になります(0.3mgでは、ショック死することがあります)。これらは、急に襲われたときに戦うための生理的反応です。このとき、道具を持ったりして、思いがけない力で襲った相手に立ち向かったり、破壊したり、すごい勢いで逃げたりできるようになります。アドレナリンが分泌されると、ビタミンCが大量に消費されます。この恐怖が去ると、血管が拡張し、深い呼吸とともに顔色や皮膚が赤みを取り戻し、副腎髄質から快感ホルモン(ドーパミンやノルアドレナリン)が分泌され快感(高揚感)が沸き上がります。

ビタミンCの側面からみると、人間は、極端にストレスに弱い動物であると同時に、非常にストレス(恐れや不安)を感じ易い動物であることがわかります。大脳(前頭葉)や間脳(黒質)の発達により、不安や恐怖が異常に拡大され(妄想、幻想)、他の動物には見られない行動様式を生み出しました。他の動物では、争っても、同種の相手を殺すところまではしません。相手が、負けたと表明したら戦いは終わりです。しかし人間は、相手を殺し、その再生を防ぐため遺体を切り刻み、ときには食べるところまで行うこともありました。人間は、動物に襲われ、動物と闘い、生き延びてきた恐怖を、脳の奥深くに持っているのかも知れません。また、この恐怖と闘って勝利したときの喜びも、一種の快感(高揚感)として、脳の奥深くに持っているのかも知れません。

このいつ襲われるかも知れないという不安や恐怖感が、戦争につながります。また、勝利したときの高揚感が記憶に新しいと、また高揚感を求めて再び戦争を始めてしまいがちです。戦争や争いを防ぐには、不安や恐怖感を取り除く努力(相互理解)が必要です。また、高揚感を抑える理性も必要です。


<ビタミンCサプリメント>

ビタミンCはブドウ糖から水素を4個取り去った構造をしています。ブドウ糖は、体の中のエネルギー物質です。しかし、急にエネルギー補給をする場合は、ブドウ糖を直接口から飲むことはせず、点滴で血管に直接注入します。これはブドウ糖の分子が小さく、胃壁の保護層(粘膜)を擦り抜けて胃壁を傷め、胃潰瘍や胃癌の原因になるからです。ビタミンCもブドウ糖と同じく分子が小さく、胃壁を傷める可能性があります。

科学技術の進歩により、ビタミンCの純粋な結晶が安価に得られるようになりました。しかし、純粋なビタミンCをそのまま大量に(一度に数グラム)摂取すると、酸度も強く、胃壁を傷めます。ゆっくり吸収されるタイムリリース型、またはいろんな物質との塩(エン)になっているバッファ型は、酸度も低く、あまり胃壁を傷付けません。ただし、バッファ型の場合、どんな鉱物質との塩になっているかで、取り過ぎにならないように注意する必要があります。例えば、ナトリウムとの塩では、ナトリウムの摂り過ぎに注意しなければなりません。カルシウムとの塩 calcium ascorbateは、カルシウムの補給にもなり、妥当なところかと思います。


<ビタミンCは食物からが基本>

ビタミンCを食物から摂ると、ビタミンCと同時に、他の栄養素も一緒に摂れるため、より多くの効果があります。ビタミンCは、生体内のいろんな化学反応を助けるだけで、それらの反応の原材料ではありません。原材料が無ければ、化学反応は進みません。また、ビタミンCは他のビタミンと共同作業で機能を発揮することが多いため、単独より、一緒に他のビタミンも摂った方が良いのです。また、最近、抗癌作用で注目を集めているファイトケミカル phyto chemicals も、ビタミンCと一緒に摂ると、抗癌効果が一段と高まるという実験結果があります。ファイトケミカルは、植物に含まれる、まだ作用が解明されてない多くの化学物質類のことです。

ビタミンCのサプリントは、風邪のひき始めや、急なストレスに対応しなければならないときに、即効的に補給するのがよいと思われます。この場合は、一度に大量でなく、こまめに少量(1g以下)ずつ時間をおいて補給し、胃壁を傷めないように注意する必要があります。

(海波農園 菅波 任)


オーガニック・ライフ・サークル会報
2004年9・10月号(No.59)掲載

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