「それって入院している患者さんにいただいたんですよ」と声をかけてくれたのは、若い看護師さんだった。ほかの看護師さんと同じようにナース帽をかぶって髪をポニーテールにまとめている。
「これを描いたのはサトウさんですよね」と僕は言った。「よく知ってますね。私のことも覚えてますか?」
看護婦さんに言われて彼女の顔をよく見た。店の前では人をよく見ているけど、女性をこんなにじっくり見たのは初めてだ。
「懐かしくて声をかけたんだけど、覚えてないかあ」と言われた。コトバの最後を軽く伸ばす感じ。聞き覚えがある。僕が名札を見ようとすると彼女は左手で名札を隠した。「名札を見るのは反則。忘れちゃったかなあ」
「スズキさん?」僕は言った。名札を見なくてもわかっていた。
スズキさんは名札を隠していた左手を離した。「鈴木あずさ」と書いてあって、あずさって名前だったんだと思った。
「これを描いたのはサトウさんですよね」と僕は言った。「よく知ってますね。私のことも覚えてますか?」
看護婦さんに言われて彼女の顔をよく見た。店の前では人をよく見ているけど、女性をこんなにじっくり見たのは初めてだ。
「懐かしくて声をかけたんだけど、覚えてないかあ」と言われた。コトバの最後を軽く伸ばす感じ。聞き覚えがある。僕が名札を見ようとすると彼女は左手で名札を隠した。「名札を見るのは反則。忘れちゃったかなあ」
「スズキさん?」僕は言った。名札を見なくてもわかっていた。
スズキさんは名札を隠していた左手を離した。「鈴木あずさ」と書いてあって、あずさって名前だったんだと思った。