On The Road

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2010-01-22 19:41:41 | OnTheRoad第3章
 「それって入院している患者さんにいただいたんですよ」と声をかけてくれたのは、若い看護師さんだった。ほかの看護師さんと同じようにナース帽をかぶって髪をポニーテールにまとめている。
 「これを描いたのはサトウさんですよね」と僕は言った。「よく知ってますね。私のことも覚えてますか?」

 看護婦さんに言われて彼女の顔をよく見た。店の前では人をよく見ているけど、女性をこんなにじっくり見たのは初めてだ。
 「懐かしくて声をかけたんだけど、覚えてないかあ」と言われた。コトバの最後を軽く伸ばす感じ。聞き覚えがある。僕が名札を見ようとすると彼女は左手で名札を隠した。「名札を見るのは反則。忘れちゃったかなあ」

 「スズキさん?」僕は言った。名札を見なくてもわかっていた。

 スズキさんは名札を隠していた左手を離した。「鈴木あずさ」と書いてあって、あずさって名前だったんだと思った。


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