On The Road

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「パープルレンジャー」シリーズ

2011-02-18 22:00:00 | OnTheRoadSSS
「パープルレンジャーは、『悪の最終結社Z(ザイト)』の脅威から地球を守れるか?」毎週このナレーションで始まる大人気TVドラマ「パープルレンジャー」は大人のファンも付いて家族みんなで楽しめる番組です。
この主役パープルレンジャーに抜擢されたのが、かつてコージのバイト仲間だったヤマモト君。主役の境遇と本人のそれとが微妙に重なり、「On The Road」の読者ならニヤリとさせられるでしょう。私高橋浩治が連作形式の読物として「パープルレンジャー」をリポートいたします。

第1話 悪の最終結社をリストラ?
第2話 パープルレンジャー誕生!
第3話 最終結社、悪の中間報告
第4話 デス・ナースはインディゴ・ブルーの微笑み
第5話 グリーンレンジャー、ミッション・スパイダーを実行せよ
第6話 夕ぐれの空をレッドに染めて
第7話 政子おばちゃんのCR必勝法、とにかく勝ち逃げせよ
第8話は、現在鋭意執筆中。今回はレッドレンジャーこと赤沢の過去と愛が語られる!


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On The Road Side StorieS

第7話-37

2011-01-19 20:37:00 | OnTheRoadSSS
 「へえ?おばちゃんって弟子がいるの?」
 青山は最後のレバーをグリルに乗せた。
 「会ったこともない子だけどね」
 おばさんは玉葱を裏返した。

 「おばちゃんの彼氏?ワタシのライバルネ」
 黄はきれいに畳んだナプキンで口元を拭いた。
 「私のホームページに訪ねてきた子だよ。美少女アイミって名乗ってたけど、男かもしれないね」
 おばさんはチャットでの会話を思い出していた。
 「なんでそう思うのかな?黄さんが女役をするよりわざとらしいとか?」
 青山がキャベツをタレにつけた。
 「美少女のアイミは、ダサい同級生やキモいおじさんに付きまとわれて困るって言うんだけど、何をやっても認めてもらえないっていう告白のほうが、真に迫ってるんだよね」

 「なるほどネ。美少女なら実力以上に評価されているはずだものネ」
 黄はタレ皿を重ねてフルーツを3人前注文した。
 「黄さんに賛成。俺だったら美少女が料理が下手でも、全然オッケー」
 青山はご飯を食べた。
 「中には、おばちゃんみたいに料理がうまくて、きれいな女だっているんだよ。青山君は女を見る目を養ったほうがいいね」
おばちゃんは笑って、キムチチゲの丼を端に寄せた。
 白衣にエプロンの男が、お茶を出した。
 「政子さんほどのいい女はなかなかいませんよ」

第8話につづく

第7話-36

2011-01-19 20:36:00 | OnTheRoadSSS
 青山がレバーを追加して、黄も同じ皿を頼んだ。
 「村崎君もよく食べるけど、青山君も負けてないね」と、おばさんが感心したように言った。「男の子ってよく食べるんだね。見ていて気持ちいいよ」

 病弱だったというおばさんの旦那のことを考えて、黄は箸を止めた。
 「おばちゃんも何か頼めば?シックスレンジャーズもおばちゃんに食べてほしいと思うヨ」
 「そうっすよ。俺ばっか食べてたら、また見殺しにされちゃう」
 と言いながら、青山はレバーを頬張った。

 「そうだね。ロースと野菜をもらおうか。息子達は肉ばっかりで、野菜を食べないから」
 おばさんはにっこり笑って追加を注文した。
 「おばちゃんに比べて、あいつらは不調でしたネ」と黄が言って、「俺だって、安めのジーンズ1本分投資したのに、45分で惨敗」と青山が悔しそうに言った。
 「残念だったけど、青山君のやり方は正しいよ。45分でだめならその日はツキがない」おばさんが笑った。「いい女とデートできたんだから、よしとしなさい」

 「それが必勝法みたいなもんですかね」
 青山が聞いた。
 「そうだね。この間も弟子の1人に教えたんだけど、あの子はうまく勝ち逃げできたかね。何をやってもだめで、せめてパチンコで勝ちたいと言ってたけど」
 おばさんは大きな声で笑って、野菜をグリルにのせた。

第7話-35

2011-01-19 20:35:00 | OnTheRoadSSS
 焼肉プサンハンに着くと、おばさんはキムチチゲと焼肉ランチを注文して、「私の息子達には追加で焼肉をどんどん食べさせてやって」と言った。
 「さては政子さん、パチンコであてたね」
 白衣にエプロンをした男が言った。
 「そうだよ。だから今日おごるのは私じゃなくて、シックスレンジャーズ。二人ともよく感謝して食べるんだよ」

 青山は複雑そうな表情で、タン塩とレバーを追加注文した。黄は満腹具合を見てからということで、まだ何も追加していない。
3人のテーブルのグリルに火が付き、水とおしぼりが運ばれてきた。
 「おばちゃん、パチンコ歴長いの?」
 黄が聞いた。
 「亡くなった亭主が教えてくれたんだよ。あの人って、仕事以外の趣味と言ったらパチンコだけだったからね」
 「それも、決まって給料日前だけ」
 キムチを運んできたさっきの男が言った。
 「そう。あの人はお金がある時には絶対パチンコをやらなかった。1か月を小遣いで過ごして、残ったお金でパチンコをするのが好きだったねえ」
 「それで、当たった時は上機嫌だったっけ。私まで振る舞ってもらいましたよ」

 「あの人が大儲けしたのを見たことはないけど、大負けしたこともなかったね」おばさんは嬉しそうだけどしんみりと言って、 「ほら、肉が焦げるよ。早く食べて」とごまかすように笑った。

第7話-34

2011-01-19 20:34:00 | OnTheRoadSSS
 「おばちゃん、俺、フランス料理より、焼肉がいいんだけど」
 青山が提案した。
 「若手には、おしゃれな店より肉かもネ」
 黄は笑いながら青山の後を追った。

 「せっかく、若い男の子たちと高級料理が食べられると思ったのに。仕方ない、プサンハンに連れていって」
 おばさんはがっかりしたような顔をしたが、すぐに「私はあそこのキムチチゲが大好きなんだよ」と笑った。「今の時間はランチタイムだけど、肉を追加する予算もあるし、たっぷり食べとくれ」

 「さすが、おばちゃん。今日は遠慮なくゴチになります」
 心なしか、青山の足取りは軽い。

 「パチンコではブルーを見殺しにしちゃったからね」
 おばさんは2人を見比べてから、「今度は青山君に乗せてもらおうかな」と言った。
 「来る時は黄さんが乗せてきたんでしょう?お安いご用です。俺が初めて後ろに乗せる女性の栄光は、おばちゃんのものです」
 「それは悪かったね。黄君は初めてじゃないよね?」
 「はい。ワタシはいろんな子を乗せたネ。ラーメンちゃん、タンメンちゃん、時々チャーハンちゃん」
 「さすが面食いの黄さん。1人違うけど」
 青山は言って、バイクのキーを取り出した。
 「おばちゃん、メットは?」
 黄がシートの下から、村崎のジャケットとヘルメットを出して、おばさんに渡した。